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9 これ、貸して!

 謎のドラゴンたちに包囲される集落。事態は風雲急を告げていた!

 まあ、謎も何も若手アンドはぐれ者の集団みたいなんですけどね。あと、実はそれほど切羽詰まってはいなかったり。


「とりあえず外に出てみようか。若手のドラゴンたちを(そそのか)した首謀者に会えるかもしれないよ」

「い、いかんぞ!エルネは屋敷の中に隠れていなさい!」

「そうだね。ドラゴニュートに進化しているとはいえ、お前さんは卵からかえったばかりなんだ。大人しくしておくんだ」


 パパンとお祖母ちゃんの新旧の長二人から反対されてしまった。……だが、断る!


「残念だけど、隠れていてどうにかなる問題じゃなさそうなんだよねえ。十中八九連中の狙いはボクだよ。長の子どもがドラゴニュートなことを口実にして、パパンたちを攻撃するつもりだろうね」

「ならばこそ余計にやつらの目に触れさせる訳には――」

「隠していたらそこを突かれるだけだよ。それに、そっちの方が集落の皆からの印象も悪くなる。「長の子どもは隠さなくちゃいけないような存在なのか?」って具合にね」


 あちらとしては現体制を批判するための足掛かりになればそれでいいのだ。だからきっとボクが姿を見せようが見せまいが関係なく難癖をつけてくるはず。


「……良いではありませんか。クレナちゃんからの話ではヘキ君を気絶させたようですし、戦いになったところでそうそう後れを取ることもないでしょう。それにもし負けても、それはそれでエルネちゃんが自分の限界を知る良い機会ですわ」


 お、おおう?予想外にもママンからの援護が飛んできたよ!?


「し、しかしだな――」

「それともあなた、まさかエルネちゃん守り抜くこともできないのですか?」

「そんなはずがないだろう!……あ」


 あはははは!これは勝負ありだね。


「ママン、ありがとう。大好き!」

「はにゃああん!エルネちゃんが大好きって言ってくれましたわー!」


 あらー……。凛々しかったお顔が一瞬でデレデレになっちゃいましたよ。まあ、これくらいの家族サービスはするべきかな。


「パパンも、我が儘を聞いてくれてありがとう」

「……う、うむ」


 なはは。照れてる照れてる。お祖母ちゃんが「やれやれ……」といった調子で頭を振っていたけれど、まあ、これくらいの親子のじゃれ合いは許してくださいな。

 そんなやり取りがあって、改めて外に向かおうとしたところ。


「おや?」


 おやおやおやおや。なんと壁にかけられているのはハルバードではありませんか!

 お部屋の飾り?それとも儀典用かな?……それにしては装飾が全くないね。


「それは三代前の長の時に保護したドワーフが礼にと置いていった物じゃな」


 ほうほうほうほう!ドワーフさんの持ち物とな!

 これは後から聞いた話なのだけれど、希少金属を求めて山脈に分け入り遭難していたところを三代前の長――正確には長になる前のことだったそうだ――が保護したらしい。そして体調も良くなり人里近くにまで送り届けた際、せめてものお礼にと持っていたあのハルバードを押し付けられたのだとか。

 かなりの業物ではあったらしいのだが、いかんせんドラゴンの中に武器を扱える者はおらず、こうして会談の間に飾られたままになっていたのだそうだ。


「これ、借りていってもいいかな?」

「むむ、それは……」

「構わないんじゃないかい。どうせここに飾られていただけなんだ。それならエルネにでも使ってもらえる方がハルバードにとっても本望ってものだろうさ」


 お祖母ちゃんの後押しもあってハルバードをゲット!

 ちなみにパパンが言い淀んだのは、ドラゴンには己の身一つで戦うことを良しとする風潮があるからだった。つまり、武器を持つなんて自分の力に自信がないと言っているようなものだったという訳だ。

 うん、割とどうでもいいね。


「それじゃあ、行きましょう!」


 持ってみればその重さが手に馴染む。これは振るってみるのが楽しみになってきたよ。ウキウキな気分で屋敷の外に向かうボクなのでした。


 そして……。


「グッ、グオオォォォ……」

「弱っ!?」


 現在三体目のドラゴンを叩きのめしたところになります。

 外に出るとすぐに偉そうな態度と口調でグチグチ文句を言ってくるやつがいたから鬱陶しくなって、


「御託はいいからさっさとかかってきなよ。一匹残らずぶっ倒してあげるからさ。あ、そうそう。面倒だから全員まとめて相手をしてあげるよ」


 煽ってやったら頭に血が上ったようで、あっさりと突撃してきたのでした。

 なお、一体目は顎を掬い上げるようにしてハルバードの石突を強かに打ち付けることで瞬殺し、二体目は大振りな爪の一撃を避けて懐に潜り込んだところからの膝蹴りで撃破。三体目はハルバードによる突き、と見せかけたフェイントに引っかかり噛みつきにきたところを脳天に踵落としで轟沈させました。


 この間約二分半。テンポよく順番に襲い掛かってきたこともあるが、一体につき一分もかからずに倒すという無双っぷりを披露することになってしまったよ。


「うちの娘がとんでもなく強い件……」

「きゃー!エルネちゃん、凄いわ!!」

「ふうむ。今の三体はどれもかなり前に集落から追放された者どものはずなのですがなあ」

「はっ!大方修練なんてせずにガタイの良さにものを言わせた狩りばかりしていたのだろうさ。ただまあ、あれなら確かにヘキの小僧程度じゃ手も足も出なかっただろうね」

「ねえ、クレナ。エルネ様の動き、最初に会った時に比べてどんどん良くなってきていない?」

「アオイもそう感じているということは私の見間違いではなかったのですね。あの体に慣れてきた、ということでしょうか。ですがあの武器、ハルバードを持ったことで一層加速したようにも感じられます」


 屋敷前の広場――新年の挨拶やイベントごとを行う場所らしい――に重なるようにして突っ伏す三体のドラゴン。パパンたちにもおおむね好評なようで何よりだ。

 なお、何事が起きたのかと集まってきていた街の人たち(ギャラリー)は、人間サイズのボクによる巨大なドラゴンの瞬殺劇に目を白黒とさせていた。


 ハルバードの石突でガツンと地面を叩いて威嚇してやれば、唆されていた若手の連中はあからさまな態度で怖気づく。あらら、これはもう戦意を喪失しちゃっているかな。

 一方のはぐれドラゴンたちもようやくおかしいと気が付いたのか、忌々しそうな目を向けつつ様子を伺っていた。こちらはまだ戦意自体は残っているようだね。まあ、ここで尻尾をまいて逃げ出したら二度と集落にちょっかいをかけることはできなくなるだろうからねえ。ある意味後がないのですよ。


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