01:プロローグ:凛子サイド
「凛子ちゃん、今日からよろしくね~」
初対面でにこやかに挨拶をする義兄の印象は”住む世界が違う人種”であった。
父親が再婚し、新しく出来た同居人だ。
再婚を機にパン屋を開いた両親、貯金をしたい私は家事を担う代わりに同居させてもらうことになった。
そして、目の前の義母の息子である男は名前は佐野奏、26歳で私より3つ年上らしい。
170センチ弱程の小柄な体型、ふわりとしたミルクティー色の髪に全身お洒落な格好、目は大きくぱっちり二重で自分より瞳が大きいのではないだろうか。
とても人懐っこくキラキラとした世界に住んでいるような人、自分とは正反対の義兄とこれから上手く関わっていけるのだろうか…。
義兄と言っても戸籍は違って、書類上奏は離婚した父親に属しているらしい。そのため、厳密には赤の他人だ。
この家が職場からアクセスが良いらしく、生活費を入れることで同じ家に住むということになったらしい。しばらくすると引っ越す予定ではあるので、母親を心配してついてきたのかもしれない。
父と新しい母は互いにパン職人で仕事の関係で知り合ったらしく、長年交際を重ねてきた。凛子自身も再婚以前から母となる女性のことも知っており、穏やかで素敵な女性だ。ずっと1人で私を育ててきた父親のことを心配していたので、自分としては再婚はとても嬉しい。二人で念願のパン屋”やまねこパン”を開くので、せめて家事だけでも頑張って手伝おう。
まさかこの歳になって兄が出来ると思っていなかったが、母の話によるとあまり家にいない人のようなのでなんとかなるだろう。