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2階 宝箱の罠

  ラプダンジーの塔、その二階から先は迷路である。

塔の円筒の中をちょうど大人の男が2人横に手を広げたくらいの通路を進んで階段を探さねばならない。

超常的魔法がかけられており人が出入りするたびにその構造を変え、その為に先人が作った地図が役に立たない。

ひとつ変わらないのは一階の落とし穴系の罠とは違ったまた別種の罠が仕掛けられている事だ。

迷路と言ってもラプダンジーの塔の直径から考えてそこまでの広さはないはずだが、塔の内部は外から見たよりも大分ある。

一種の異次元空間になっているのだろう。

そしてイチの目的は塔の攻略でなく少女の捜索である。

もし少女が妙な罠に引っかかっていたら救出しなければならない。

その為、全ての通路を探索し怪しい箇所は調べる必要があった。

一階のように落とし穴系の罠はないようだが、それでも厄介な罠はまだまだ随所に仕掛けられている。

イチは転ばずの竿を失ってしまったので、己の勘と注意力を頼りに持ってきたアイテムを駆使してこの奇妙な塔を進まねばならない。

読者としても気になるのは彼女がいかにその罠に苦しめられ、或いは回避したかが気になる事と思う。

この先、最上階にたどり着くまでのその一部始終を書き残していこうかと思う。




 イチが2階を探索している時である。


 袋小路の先に宝箱を発見した。

宝箱は木製で、子供一人が入れるほどに大きい。

中には金銀財宝や貴重なアイテムなどが入っているに違いない。が、イチはその宝箱を見てため息をついた。


 ______こんな宝箱に良い物が入っているわけがないだろ。


 イチはこの手の宝箱にひっかる冒険者についてモノ申したいことが沢山ある。

 

 バッチを与えられていない駆け出し冒険者にありがちな勘違いだが、そもそも宝箱に価値のあるものが入っている事は滅多にない。

そもそも、このラプダンジーの塔を別にしても大体の遺跡やダンジョンは既に先人が調査済みで価値のある物は大抵手に入れてしまっているのだ。

更にその価値のある物と言っても、それは古代技術の遺産でありその形はさまざまで手の平に収まるようなものから家一軒より巨大な物までさまざまである。

そういった遺産でなくても、芸術的価値のある彫刻物や旧王朝の茶器、失われたはずの魔導書や伝説級の刀剣など、おおよそ宝箱に入れるようなものではない。

無論、金銀財宝の類がしまわれた宝箱もないわけではないが、それならそれで例えば旧時代の探検家が乗っていた沈没船だったり古代君主の墳墓にあるのならわかるが、間違ってもそこいらの洞窟に転がっている物ではない。せいぜいあっても盗賊団のアジトくらいのものか。

それでも度々こういった宝箱型のトラップにひっかかる駆け出し冒険者が絶えないのは『ジェイムズ冒険記』と呼ばれるバルティゴ都市国家連邦で大ヒットした冒険小説の影響だろう。

この小説は実在したジェイムズ・クラックという冒険者を主人公にした痛快な冒険記であるがその内容の殆どがフィクションであり、始末の悪い事にこの時代の駆け出し冒険者は教育を受けていない者が多かったので創作物と現実を混同して考えている者が多かった。(そもそも字を読めない者も多いのだ)

その為、宝箱の罠にかかり命を落としたり妙な目に遭う冒険者の数は呆れるほどに多い。


 なので当然、イチはこの手の宝箱を見つけても無視する。

……が、今回ばかりは無視するわけにはいかなかった。

なぜなら行方不明の子供を探しているのだ。

触手類を仕込んだトラップに出会った場合、少女が中に囚われている恐れがある。


 ______嫌だなあ………。


 イチは宝箱の後ろに回り込んだ。

罠だとわかっていて手を出さなければいけないのはあまり気分の良い物ではない。


 このラプダンジーの塔で想定される罠としては、


・ガスの罠(開くと中から状態異常を起こすガスが出る)

・触手ミミック(箱の中に触手類が仕掛けられていて開けた人間を引きずり込み悪さをする)

・着替えの罠(箱を開けた人間の装備を強制的に妙な装備に変える)


 この三つである。


 それぞれの対処法として、ガスの罠は既にマスクをつけているので問題にならない。

触手ミミックについては後ろから開ければイチなら対処可能である。

着替えの罠はこれも後ろから開ければ問題ないという話を先人から聞いている。


 ______ええい、手間をかけさせて!


 イチは念のため右手に撃鉄を上げたカーペイト15式、左手にナイフを構え器用に宝箱の上蓋を開いた。


 「ぶしゃああああああああ!」という触手類が出す鳴き声と共に宝箱の中から触手が飛び出した!


 宝箱は触手ミミックだった!


 だがその飛び出した先にイチの姿はない。

行き場を失った触手は宙を彷徨うと一瞬遅れてイチに殺到した。

その数、4本。

どれも生々しい肉色をしており、粘液の為に鈍くテカっている。


 ______気持ち悪い!


 イチはまず一番脅威度の高い一本を射撃し退けると、ナイフの柄で撃鉄を叩く彼女独自の射撃技法で残る触手を一瞬で迎撃した。

 撃たれた触手は十字弾(現在で言うホローポイント弾に近い物。標的に当たると肉の内部で弾頭が変形する)が肉の中で弾け、内部をグズグズに破壊したために触腕としての機能を失い力なく萎びていった。


 ______バカバカしい!


 イチは慎重なステップでミミックの前へと回り込み、中身が空である事を確認し後ろ向きに離れていった。

大体の触手類は本体から離れれば離れるほど脅威はなくなる。

こちらに触腕が伸ばせない以上、無駄な弾薬を消費するのは愚かだし、通路の安全も既に確認しているのだから後退するにしても迷いはない。


 イチが十分に離れると、ミミックは残った触手を恨めしそうにイチに向かって伸ばしたが、届く事はなくまるでおいでおいでをする様に宙を無意味に彷徨っていた。


 ______まったく、この塔を作った奴は何を考えてこんな妙な罠ばかり仕掛けているんだ。まったくバカバカしい。


 イチは空になったシリンダーに新たな弾丸を込めると、来た道を引き返して更に探索を続けるのであった。




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イチ ぼうけんしゃ

【LV :   33】

【体力:  412】

【気力:  910】

【状態:  ふつう】


・触手ミミックを撃退した。




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