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勇気あるメスガキ タオ・メイメイ パーティを追放(以下略)15

  タオ・メイメイは勇者である。

彼女は例え自分より遙かに大きな敵が相手でも愛用の魔導ショットガンを手に突撃し、全身全霊の弾丸を浴びせて打ち破る。

その勇気は今まで何度も強大な敵を破ってきたが、その向こう見ずな勇気は時に蛮勇でしかない。

現に、いま彼女が握っているのは愛用の魔導ショットガン・バレア2ではなく殺傷力の低いファンクル護身小型拳銃である。

これは彼女が最近購入し、スカートの中に忍ばせていた秘密の武器ではあるが小口径の1号拳銃弾がたったの2発しか装填されていない。

4人の男を相手に威嚇するには、豆鉄砲と言っても差し支えない。

男達がその気になれば簡単に取り押さえられて更に悲惨な未来が待っているだろう。


 「護身用拳銃か。なるほど、それがお嬢ちゃんの武器ってわけだな。俺たちは丸腰だ。こいつは参った」


 カーンはメイメイに向きなおると大袈裟に被りを振った。


 「動かないでって言ったのよ! 顔面を吹き飛ばすわよ!」


 メイメイはファンクルの銃口をカーンに向けた。

目の前にはイチを取り押さえる二人の男、余裕たっぷりの表情で堂々とメイメイに向かうカーン。そして浮足立ち棒立ちになるホーイッツという状況である。


 「果たしてそんな威力がそいつにあるかな? 見たところ弾丸は小口径の1号拳銃弾。バレルも短く、装弾数はたったの2発。4人を相手にするには問題のある銃だ」


 「動かないで!」


 そう言うメイメイの顔に明らかな動揺が見て取れる。


 「その手の護身用拳銃は威力もなけりゃ射程も短い。本来は相手の急所に押し付けて引き金を引くのが正しい使い方だ。試しに俺を撃ってみるか? よほど上手い場所を狙わなきゃならんぜ」


 メイメイは勇者である。ただし子供の世界の勇者である。

向う見ずに目の前の男に対して引き金を引くという事に自信が持てない。

迷いは戦意を挫き、冷静な思考を奪う。

事実伸ばした手は震え、視界は狭まりカーンがゆっくりと近づいて来ている事に怯えはじめている。

誰をどの順番で撃てばいいかわからない。

撃った後にどうしたらいいかわからない。

どうすればイチを助けられるかわからない。

メイメイは完全にパニックを起こしていた。


 「動かないで」


 そう言うメイメイの言葉が上ずっている。このままでは引き金を引く前にカーンに取り押さえられてしまうだろう。


 「お嬢ちゃんは勇敢だ。それに、賢い。だから、撃ったらどうなるかわかるよなぁ?」


 凶悪な笑顔を浮かべるカーンが、獣のような目を光らせメイメイを組み伏せようと足腰に力を込めた瞬間、


 「撃て! メイメイ撃て! お前の好きに撃てばいい!!」


 イチは力の限り叫んだ。

その心からの叫びがメイメイの銃に勇気の力を与えた。

メイメイは引き金を引いた。

己の心が叫ぶままに。


 「ぐあっ____!!!!」


 一発目は目の前にいるカーンの眉間に突き刺さった。

彼の言う通り小さな弾丸は頭蓋を貫通するまでの威力は発揮しなかったが、一瞬彼を無力化させた。


 「うごッ________目が、目がッッッッッッ! このメスガキがあ!!!」


 二発目はイチの首を取り押さえている男の右目に命中した。

彼は右目を庇う為にイチから腕を放してしまった。


 その一瞬をイチは見逃さなかった。


 「うわっ!」


 イチはリャン・ハックマン直伝の護身術を反射的に使い自分の腕を押さえつけている男の足を払うと、バランスを崩した男の腕を取りそのまま腰を使って投げ倒した。


 「メイメイ! 逃げるぞ!」


 「がッ!」


 イチは狼狽し立ちすくむホーイッツに渾身の掌底を食らわせて突き倒すと、なりふり構わずメイメイと共に部屋を飛び出して脱出を試みるのであった。


 小さなハーフエルフの向う見ずな勇気がイチを救ったのである。


 ◆


   イチとタオ・メイメイは死に物狂いで屋敷を抜け、屋敷の外に広がる林の中に飛び込んだ。

ただ靴が進むほうに足を動かし、灌木をかきわけ、『黒い森』の中の一部に紛れ込んだ。

どれほど走ったか、遂にメイメイの息が限界に達したころには追跡者の気配も感じなくなり、一瞬息を整える時間が生まれた。


 「メイメイ………………ありがとう」


 イチもメイメイと同じく息を切らせながら、短くはあるがこれ以上ない感謝を伝えた。


 「…………それで、どうするの」


 メイメイは常に目の前しか向いていない。苦しそうに息を切らせながらも頭にあるのはこれからどう行動するかだ。

イチや他の仲間がメイメイを信頼しているのは、この性分があるからだったのだろう。


 「武器は?」


 「もうないわよ」


 「そうか」


 状況は最悪である。

イチの指は切断を免れたものの、上手く力が入らず未だに血が溢れている。なんとか応急処置として引き裂いた衣服を包帯替わりにしているが完全な止血には至っていない。

メイメイに怪我はなく、戦える状態にはあるが常識で考えれば戦力にはならないだろう。なにしろ武器がないのだ。

相手は最低でも4人。負傷はさせたものの無力化には至らず、そのうちのホーイッツは曲がりなりにも魔法使いだ。

真正面からぶつかれば恐らく銃などで武装した3人の山賊を相手にする必要があるし、ホーイッツのマナアローの魔法も脅威になる。

とてもではないが普通に考えて勝ち目はない。


 「このままじゃパルテルラット先輩とピィピが危ない。反撃して、先輩達を解放しそのままラクシュ嬢を救出する」


 しかしイチは迷うことなく決断した。

このイチの勇気こそ彼女をこの小説の主人公たらしめる物であり、そして『破天』と呼ばれた冒険者の従者であったイチならば、この決断を蛮勇と呼ぶべきではない。


 「どうするの?」


 メイメイも勇者である。

凡百の冒険者であれば命欲しさというより、空手で自分たちの人数を上回る敵を相手にする理不尽に絶望を感じ、イチの考えに同調しなかったであろう。

この場合普通の冒険者であれば、一度体制を立て直してから最低でも対抗できる武器を揃えてから反撃に出る事を選ぶだろう。

しかしイチは逆上した山賊たちがパルテルラット達に更なる暴行を加える事を恐れ、速やかな反攻を選んだのである。


 「武器を作る。メイメイ、石を探すぞ」


 「石? 石なんかで倒せるわけ…」


 「石じゃない。靴を使うんだ」


 木々に囲まれた闇の中、そう言ってイチは力強い笑みを作った。

皆さまの感想やレビュー、評価が作品の方針に良い影響を与えます。


小説も、読者様と物語のコミュニケーションですからね。


1話完結なのでイチ達のこんな姿が見たいなどの要望などもあれば是非!

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