罪深き者の義務
[373]
[再誕人の邂逅]
新たに研究チームを結成した。
「ワイスマン、こちらはプロフェッサー。あなたの後輩になります。ここでの活動について色々と教えてあげてください」
紹介したのは一目で精霊族と分かる額の結晶と透き通る金髪を結い上げた白衣の美少女研究員。
「こんにちはワイスマン。新たにチームへ配属となりましたプロフェッサーです。好きなことは研究と実験と革命と実験。今のテーマは再誕人の素晴らしさを語ることです」
紹介されたワイスマンは傍から見ても明らかに動揺して脂汗を流している。
「え、まさか…うそ…!ドクター…、ですか…?」
「プロフェッサーですよワイスマン。もし仮に昔の顔馴染みに見えたとしても、それは他人の空似でしょう。だって再誕は蘇りではなく新しい命への生まれ変わりですから。さあワイスマン、再誕の歓びを共に語り分かち合いましょう。さあ、さあ!アハハハハハハハッ」
プロフェッサーは私の言う説明をすぐに理解して再誕人の仕組みに大きな感心を寄せた。
これからはアーティマトン研究や魔法具研究にも携わって貰う予定である。
積もる話もあるだろうし、後はワイスマンに任せることにした。
◇◆◇
「プロフェッサー。随分お若いように見受けられますが」
「ええ、ええ。当然、選択可能な最も若い年齢を希望しました。だってそうでしょう、この様な奇跡を体験出来るのですもの!我が愛しの神の御業、本当に素晴らしいわ。アハハハハハハハ!
あ、でも頭部は未回収なので造り物ですけどね。脳味噌入ってませんが記憶や思考は身体の方でしていますので安心して下さい。アハハハハハッ!」
「えぇ…、何だかテンション高いですけど」
「そう、そうよ、そうなのよ!これスキルなの、既存のじゃなくてオリジナルのよ、素晴らしいわ!アナタの居た世界ではこういうのって、なんて言いましたっけ、あ、そう固有スキルって言うんでしょう?」
「確かにそういう呼び方はありましたけれど」
「ねえ、ねえねえ、ワイスマンはどんなスキルにしたのかしら。ああ待って、当てる、当てるわ。そうねえ、アナタがワイスマンなんて名乗ってるんだからきっとそれに因んだスキルなんでしょう?解ったわ、きっと思考加速ね!」
「い、いえ、スキルの内容については基本的に口外しないものなので」
「いやですね、私とアナタの仲じゃない。アハハハハハハハ。あー私?私はね、【覚醒】ですよ。解るかしら、覚醒とはつまり目覚める力よ、だから睡眠がほとんど要らなくなるのよ!生物は基本的に睡眠状態がデフォルトでしょう?だから覚醒状態をデフォルトにしたら色んなことが効率的になると考えました。それに、それにね、何だかいつも頭が冴えていてとってもクリアなの、素敵でしょう。素晴らしいでしょう。アハハハハハハハ!」
「いや、まるで薬を使ってるみたいにしか見え…」
「アハハハハハハハ。解ってるじゃないですか、そうよ、そうなのよ。思考がパアって明るくなるの、パアって。こんな晴れやかな気分で好きな事をやって良いだなんて我が愛しの神は最高よね!
ここなら誰にも咎められずに可愛い子供達を作り放題なのよ、アーティマトンと言ったかしら、再誕人は神の力が必要みたいだけど人造人間なら私達でもほとんどの工程に携われるわ!いい、いいわ、とってもいいわ。アハハハハハハハハハッ!」
「プロフェッサーにとっては楽園でしょうね」
「楽園、そう楽園だわ。だって死後なのよ、私達にとってここは。なら楽園で当然でしょう?我が愛しの神に用意された楽園なのよ!好きにさせて貰いましょう、好きにすれば良いと言っていたわ。なら好きにしましょう、とことんまで!だってもう原罪も何も気にする必要なんて無いのよ、罪も、裁きも、ここはそう、超越しているのよ!アハハハハハハハ」
「確かに我々の女神は超越してますね、本当に転生神の様で」
「そう、そうよ、そうなのよ。私達のしてきた事は間違いではなかった。そうよね?繋がってた、そうよ、全部必要な事だったのよ。だって我が愛しの神が産まれた、そうでしょう?全てが繋がってたから、だから私達が再誕人となったのも運命、ええ、間違いないわ。エドが知ったらきっと報われるわね、ええ、エドは報われるべきだったの。ああ、エド。どうしてアナタは再誕人にならなかったの。解ってる、解ってるのよ。遺体が無ければどうにもならないものね。魂が成仏していたら戻って来れないものね。でもこれで良かったのよ、だってエドが亡くなったから繋がったのですもの。そうでしょう?我が愛しの神の誕生は必然だったの、だから私達が再誕したのも、楽園に居るのも、全部必然なのよ!プロジェクトは成就したの。ああ、でも続けないと駄目よ。繋がってるのですもの、まだ、まだよ、まだまだ続いているのよ。後は我が愛しの神の求めるままに、我が愛しの神の求める結末へ向けて、私達にやれる事をするの。アハッ、アハハハハハハハ!」
「プロフェッサー、末期の頃より活き活きしてませんか…」
「やだもう、ワイスマンったら。末期ではなくて全盛期でしょ!今が、そうなの。だから今が全盛期なのよ!これからずっと、ずーっとそうなるのよ。アハハハハハハハ!
さあ、さあ、さあさあ、始めましょう。新しい世界を。私達が叶えられなかった世界を、新しい私達が叶えるのよ。聞けばエドの計画を引き継いでいる者達も居るのでしょう?けれど我が愛しの神の願いの障害になる様なら排除しなければならないわね。でも、でも仕方ないわ、そうね仕方がないのよ。私達が達成するべきは我が愛しの神のご意志だけ、それが最優先ですもの。ああ、素敵よ。素晴らしいわ!
新しいテーマはそうね、我が愛しの神の創る世界について、これよ。私達はね、ただ実行するわ。我が愛しの神の御心のままに!」
「プロフェッサーが信仰に目覚めるだなんて…」
「ええ、ええそうよ。これは新しい信仰の目覚めなのよ。だからもういいの、裏切り者の地獄はもう卒業したのよ。今あるのは信念、それに純粋な信仰心!
ああ尊い。尊みが深いわ。我が愛しの神はいと尊き存在。捧げましょう。この世界の全て、そう全てを我が愛しの神へ捧げましょう!この世界の理を解き明かしましょう。我が愛しの神は全てを知るの、何もかも全部を知るのよ。だから終わらせるの、我が愛しの神が求める、そう探求を全て終着させるの。それが答えになるの。この世界の往くべき、在るべき、到達すべき確かな答えへと。でも決まってる、そう、決まり切っているのよ。結末は最初から全て、そこへ至るための道順は出来てた。だからやるべき事も、きっとそう、決まっているのよ。エドが始めたこの物語は、我が愛しの神の手によって神話となって完結するわ!
アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハ…!!」
「プロフェッサー、泣いてるんですか…」
「何を言っているのかしら。私、笑っているじゃない。アハハハハハッ!
ねえエド、観ていてくれているかしら!貴方と私の共犯が遂に実を結ぶのよ!」
◇◆◇
「ところでプロフェッサー、宗主は本当に生き返らせて貰わなくていいんですか?探せば埋葬された場所だって見つかるかも知れませんけど」
「何を言っているの。そんなことをしたらまたエドは過労で倒れたり胃に穴が空いてしまうじゃない。再誕させるにしても仕事をしなくて良くなってからじゃなきゃ駄目よ!」
「宗主の胃に穴空けてた自覚はあったんですね…」
「エドは考え過ぎだったのよ。私も考え過ぎだったわ。けど我が愛しの神はこう仰ったの。『科学者に倫理観は妨げにしかならない』って。至言よね。私達の生前の行いは全て赦されたのよ?アハッ、アハハハハハッ!」
「そうなんでしょうか…」
「そうなのよ。今私達がこうしてまた研究に従事しているのが何よりの証拠でしょう?こんなこと、赦されないのなら有り得ないわ!」
「そう、なのかな…」
「ええ、だからもう罪とか罰とか、そんな些末な事で悩んではいけないの。そう、そうなのよ、能力ある者は反省なんて後回しにしてもっと建設的に前向きに生きるべきでしょう。それが我が愛しの神の、ひいては世界の為になるのよ!あぁ、素晴らしいわ。アハハハハハハハハッ!」
「(ああ、この人完全に悪い方にスイッチ入っちゃってるよ。でもどうしようもないしなあ…)」
「Dr.レグルス。いえ、ワイスマン。深く考えては駄目よ。我が愛しの神に汚れ仕事をさせたくないのなら、先に私達が代わりにやってしまえば良いのよ」
「!!」
「それが、きっと。私達が再び生を受けた本当の理由なのよ。悪い事も、汚れ仕事も、全部全部悪い大人が被れば良いの。だから、迷っては駄目よ!」
「はい…」
「アハハハハハハハハッ!さあ、こうしてはいられないわ!楽しい愉しい実験の時間よ!ワイスマン、これから忙しくなるわよ!」
「はい!」
《あとがき》
罪と悪は別物です。
そしてDr.ジュデッカは悪です。
例え蘇ろうとも、その心に信念があろうとも。
誰に理解されなくても、誰に何と言われようと、それは変わりません。
正義の逆は別の正義。
片方の正義が罷り通れば必然的にもう片方の正義は悪になります。
例えどんな理由があろうとも彼女は敗北者。
すなわち、悪です。
Dr.ガイアスの革命が成功していれば、彼女は英雄となっていたのかも知れません。




