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1000通りの計画  作者: Terran
間章 創作活動 3
71/99

モザイクストーン




[365]

 個々の強さの差を埋める簡単な方法とは何か。

 それは道具を使う事だ。

 統一された規格の武器や防具、優れたツールは全体の武力を底上げして個別の差は相対的に小さくなる。


 武力が[10]の者Aと[100]の者Bとでは他の要素を加えない公平なルールで戦闘をすれば、限りなく高い確率で武力[100]のBが勝利するだろう。

 しかし、どちらも同じ武力[3000]の機関銃を使って他の要素を加えない公平なルールで戦闘をしたら、果たしてどちらが勝利するのだろうか。

 [3010] VS [3100]

 どちらが勝ってもおかしくない。


 ではそれが大人数だったらどうだろう。

 全部で100人居たとして、最後まで生き残るのはAだろうか、それともBだろうか、それともどちらでもない誰かだろうか。


 元の値が誤差になるほど数が大きくなれば、変数次第で結果は容易に変動するだろう。

 量産されれば更に変数は複雑化して、結果に元の差がほとんど影響を与えられず意味を為さなくなる。


 では、片方にだけ優れた武具が与えられた場合はどうなるだろう。

 平均武力[100]のA軍100人に優れた武具[1500]を与え、平均武力[100]のB軍100人に平凡な武具[150]を与えたとしたら、果たしてどちらが優勢になるのか。

 [1600]×100 VS [250]×100


 答えは火を見るよりも明らかだ。

 例え不公平なルールであったとしても、余程の事が起こらない限りはA軍の勝利は揺るがないだろう。


 前世の世界の史実上でも、絶対優勢と思われた戦況をひっくり返すような冴えた奇策や奇抜な戦略で、戦力計算の前提そのものを無意味にするような方法で世の人々をあっと言わせる名軍師は多く居た。

 が、史実上の幾多ある戦争の数に対して、圧倒的戦力差をひっくり返して勝利を収めた戦争はいくつあっただろうか。

 断言しよう。

 そんなメイクミラクルは非常に少なかったと。


 多少の不測の事態は起こるだろうが、奇跡の起こらない戦闘の方が圧倒的に多い。

 余程の条件が揃わない限り圧倒的な戦力差はまず覆らないのだ。

 他の転生者に混じってこうして異世界で生きる私がこう考えるのは夢の無い話かも知れないが。

 まずはご都合主義や奇跡は起こらない前提で戦略や計画を立案するのは当然である。

 不測の事態に備えるのは、まずは成功の余地を確保してからだ。

 それでも戦争は研究が進めば進むほど変数は減り、戦力分析は信頼性を増し、戦力差が確実性を保証するようになっていくのは必然だろう。


 つまり何が言いたいのかというと、この世界が聖戦に勝つ努力や研究を怠っていないのは間違いなく、実際に過去100年間の聖戦の勝率は高い。

 にも関わらず海神領域の崩壊や、神子大量虐殺により戦況不振に陥るのは、明らかに何かしらの悪意によるネガティブな操作が行われている証明となる。

 まあ、そんなことは最初から分かっている事なので今更だが。


 ここで言及しているのは、この世界の人々がソレに気付いているという事だ。

 気付いていながら公式には発表せずに真実を伏せたまま上層部で対策を講じているという事実、それ事態が対策の一環である事は理解している。

 こういった不用意に不安を煽る情報に関しての統制は往々にして実行されるものだが、これが中々に厄介なのだ。

 つまりこの問題に対してリアクションを起こす、対策を講じるという事は、私はその事実を把握していると暗に示唆してしまう事に繋がりかねない。

 かといって正体を隠したままでは干渉する方法が限られるのは避けられず、回りくどい方法を執らなければならないのに、それでは根本的な解決には至れないというジレンマに苛まれる。


 というわけで、最近少々こうしたチマチマした支援しか出来ない膠着状態に疑問を持ち始めて来たところなのだ。

 私が何故ここまでして周囲に配慮し続けなければならないのだろうか。

 意を汲んで、察して先回りして、彼等のやりたい事をスムーズに出来るヒントを用意する。

 ここ暫くの間、リヴィアの能力開発の成果を観れば観るほど、慎重策の必要性が薄れて行っている気がしてならないのだ。


 自重に自重を重ねて、過度な干渉どころか必要最低限未満の干渉だけで事を進めようとするのは酷く非効率が過ぎる。

 そもそも頼まれてもいない自重とは、ただの縛りであり義務では無いのだ。

 ここの所、新生活で慣れない事を次々と細心の注意を払いながら自重している。

 今はまだ自作異境で適度にリヴィアのガス抜きをしながら付き合っているが、いずれはフラストレーションが溜まってしまうかも知れない。


 もし仮に、リヴィアのストレス値が許容量を超えたとしたら、私とて簡単に抑え込むのは難しい、というよりむしろ抑え込まないで発散に切り替えるだろう。

 私ならすぐに割り切ると自信を持って断言出来る。

 その時になって世界にどんな災厄が降り掛かるのか、想像も付かない。

 考えても無意味だからだ。

 しかし、そうなってしまえば世界救済どころではないだろう。

 せっかくここまでコツコツ積み上げてきた計画がご破算ではあんまりである。


 ならばどうすれば良いのか。

 世界救済を早めるのが最も効果的だろう。

 だから布石を打っておく事にした。

 もし仮に全て上手く行った場合、世界救済が早まるかも知れないという希望的観測の道筋も作っておく。

 出来なくて当然だが、出来たら理想的となる道筋だ。

 故に正道を用意しようと思う。


 私の性格的に、正道に理想や信用の一切合切を持つことは不可能だ。

 それでも一応、足掻いた、やっておいた、という足跡くらいは残しておこうと考えるに至った。

 配慮に配慮を、自重に自重を重ねるのは世界にとっては優しいかも知れないが、リヴィアの精神には優しくない。

 多少は世界にも人類にも、リスクを、責任を背負って貰っても良いのでは無かろうか。

 それで駄目になるなら、残念それまでという話だ。


 そして話は最初に戻る。

 要するに私は、この世界に他の異世界より優れた武具を与えることにした。




[366]

 結論から言うならば、私は新素材を世界に齎そうと思っている。

 夢のような新素材で武具を造り軍に配備して、聖戦を楽に勝って貰おうというのだ。

 実にシンプルである。


 私が新素材として注目したのは『モザイクストーン』と呼ばれる一種の合金とも言える物質だ。

 名前の通り鉱石であり、これは主にダンジョンから産出される、何の変哲もない洞窟型迷宮の壁材や床材の事を指す。


 実を言うと最初に海神ダンジョンの探索を開始した時から迷宮を構成する素材の研究自体は行っている。

 それらの研究は、関連する文献も読み漁り、様々な仮説を立ててダンジョンの出来る仕組みや性質を解明していくのに役立てていた。


 迷宮壁材は基本的にその土地の性質の影響を強く受けるため、鉱脈上に発生したダンジョンであれば迷宮壁材も鉱物を含んだ物となり、鉱床ダンジョンは採掘場として高い利用価値がある。

 更にこの鉱床ダンジョンの鉱物は魔鉱石へと変容しているケースが有り、希少な鉱物資源を産出する国の財産であり資源庫として扱われている。

 実際にエストバースの南方山脈の百年迷宮『レイジングマウンテン』を始めとした鉱床ダンジョンは、南方の広大な領土を統治するマルシエラ公爵家が管理しており、国内の魔鉱石需要の内訳で最も多くの資源を供給する要所として運営する役割を代々担っている。


 広域的にはこれら鉱床ダンジョンの魔鉱石も迷宮壁材に含まれるのだが、一般的にモザイクストーンと言えば迷宮壁材の中でも特に不安定で具体的な用途の薄い資源として活用出来ない部分の事を指す。

 ダンジョン内では硬かったのに、いざ地上に運び出すとただの土塊や石ころにしかならなかったり、一般的な資源となる鉱物がほとんど含まれていなかったりと、つまり価値を一切見出されない部分なのだ。


 勿論、そうした性質に関しては魔術協会でも大昔から研究されており、様々な推測から研究データを積み上げて仮説が提唱されてきた。

 それにモザイクストーンは特定の一種類を指す名称ではなく、迷宮の内と外で性質の変化する迷宮壁材全般を指すものであり、ダンジョン毎に、更に言えば階層毎に性質も変わってくる。


 そんなモザイクストーンの中には、ダンジョン内では複数の異なる性質を同時に持つ不安定で不自然な物もある。

 まあ、それこそがモザイクと呼ばれる由縁でもあるのだが。

 ダンジョン内では鉄と銅の両方の性質を持っているのに、外へ持ち出すと鉄と銅のサシの入っただけの鉱石になったり、さざれ石の類もその多くがダンジョン内ではモザイクストーン状になっている。


 まあ、文献や協会の研究データは参考資料程度だと思って、実際に異境もダンジョンも任意に生み出せる段階まで理解の進んだ私にしてみれば、モザイクストーンの具体的な仕組みは当然ながら理解している。

 だから更にもう一歩踏み込んだ研究もしているし、そこから新たな発見と成果も上げている。


 今まで散々言ってきたが、そもそもダンジョンは異なる世界の概念同士が融合して出来た異境が崩壊した際に世界へと流入した世界を象るリソースが大地に染み込む際に、消化不良を起こして魔化した土地そのものである。

 モザイクストーンは矛盾した異なる世界の地質が混じり合った迷宮壁材が、その両方の性質をダンジョン内限定で矛盾無く両立させている不安定な状態で生まれた不確定物質だ。

 故にダンジョン外へ持ち出すと不安定な状態から強制的に安定した状態へと変化してしまい、結果的に分子構造が自然な形で分離結合してしまう。

 だから異なる2つの金属の性質を持った単一の物質であれば、その性質の元となった異なる2つの金属に分離して安定する。

 ごくごく単純にそういう現象なのだ。


 そこで私の力の出番だ。

 もし仮にモザイクストーンを不確定のまま安定化させられたらどうなるのだろうか。


 答えは簡単。

 現実的には不可能とされる合金や全く新しい性質を持った素材を生み出せる。

 これは実際に実現可能な技術である。

 というのも、実は私が力を加えずとも最初から安定したモザイクストーンもこの世に存在しているからだ。


 偶然に発見される奇跡の物質。

 柔鋼やアダマンタイトやオリハルコンも厳密にはモザイクストーンのカテゴリーである。

 これらの金属が希少で産出量が少ないのも、自然界には存在せずダンジョン内で異世界の物質が混ざり合って偶然安定化した幻想物質だからなのだ。

 銀が魔鉱石化した魔法銀(ミスリル)なんかは自然界でも産出されるが、魔鉱石化したオリハルコンの亜種であるアポイタカラなんかはその希少性故に神話の鉱物とまで言われている。

 まあ、この間調子に乗って造った聖剣にオリハルコンを使ったりしたのも、こうした仕組みを完全に理解していたから可能だったのだが。


 モザイクストーンにも安定化しやすいレシピは存在する。

 アダマンタイトやオリハルコンは比較的安定化しやすいレシピなので、条件さえ整えばダンジョン内で偶然に産出される率もそれなりにあるのだ。

 とはいえ不確定状態のまま安定させるには一定以上の情報圧が必要なので、ダンジョンの規模が大きく深い場所でないと発生は望めない。

 それこそ鉱床のある百年迷宮ランクでもないと発見例がほぼ無いのもそれが原因である。



 では、ここまでの話を踏まえて。

 理論的には安定化させられるレシピでありながら、必要な情報圧が足りずに過去一度も発生した事例の無い物質があったとしたらどうだろうか。

 例えば、3000m級のダンジョンの情報圧があって始めて底の方にある鉱床で安定化させられるような極限環境物質は、発見不可能という意味で人々の目に触れる機会は訪れないだろう。

 しかしながら、ここに4000m級のダンジョンを発見した挙げ句に踏破した私が居る。


 さて、当時はダンジョンコア目的で潜っていた私だが、果たして迷宮壁材を調べなかった可能性はあるのだろうか。


 勿論、否だ。

 私が調べない理由が無い。

 従って、この世界の人々が誰も知らないモザイクストーンの安定化レシピを私だけが持っているのも必然と言えるだろう。

 この物質の発見は世界初となる。

 いや、宇宙初の発見例となるだろう。

 名前は、そうだな。


 『コズストーン』とでもしておこうか。




[367]

 海神迷宮深部で採掘したコズストーンはごく僅か。


 迷宮壁材はダンジョン内なら何処にでもあるものだが、大抵は僅かな揺らぎこそあっても物質として安定したこの世界原産の、土地の性質が反映された物質ばかりである。

 つまり鉱物が見つかっても何の変哲もないただの鉄やアルミや銅といった鉱石が大半なのだ。

 混じり合った鉱物同士のモザイクストーンとはまさしく偶然の産物であり、しかもそれが安定している状態で産出されるのは奇跡と言える。

 だから発見されても採れるのはほんの少しなんて事例はザラであり、突然森の中で鉱床ダンジョンが現れる可能性より、当然ながら元々鉱脈の通った地帯で発生したダンジョンの方が期待値は高い。


 海神迷宮は本格的な鉱脈とは離れており、それでも規模自体が大きかったから採掘出来るポイントが僅かにあったというだけで、鉱床ダンジョンと呼べる代物ではない。

 それでも参考レシピは分析出来たというだけでも運が良かったと言えるだろう。

 やはりリヴィアの運の良さを実感する。

 とはいえ、人事を尽くしてこその運の一押しなのだ。

 活用出来るだけの積み重ねが前提にあるから安心して甘受できるという物である。


 さて、自前の異境内の自営ダンジョンでコズストーンの生産と実験を繰り返す内に、モザイクストーンの新たな可能性の解明と、そこから導き出されるパターンを用いた理論式から新しいレシピの開発にも着手した結果。

 他にも新たな物質をいくつか生み出す事に成功した。


 影鉄または陰鉄『シェイズメタル』と、その魔鉱石化した『ミドスメタル』。

 魔術協会の研究資料では理論上不可能とされていた純魔鉱石化した金。

 そして、研究の副産物として金系統の属性固有魔法『金属化(メタライズ)』の開発が出来た。

 出来そうだから創ってしまったが、これは錬金術師の究極とも言える秘術かも知れない。

 金属の性質をモザイクストーンの要領で転写合成する魔法だが、これは危険過ぎて公表不能だろう。

 触媒さえ用意出来れば有機物ですら金属化が可能なのだ。

 あまりにも難易度が高くて、それでも使いこなせれば非常に利用価値が高いのも問題である。


 シェイズメタルは分子間力の存在確率の半分、つまり限りなく裏側に近い特性を持つ金属で、同質量の金属の裏側に重ね合わせられる優れた性質がある。

 雑に言うと、別の金属と合体させれば最大で二倍重く、二倍強く出来る。

 ミドスメタルは更にその半分、つまり1/4裏側にまで合わせられるので更に2倍重く、2倍強く出来る。


 2kgの鉄の剣なら同容積でシェイズメタルで4kg、更にミドスメタルまで加えれば8kgまで重くする事が可能で、耐久も元の4倍となる。

 軽量化の術式を付与すれば使い勝手はそのままで頑丈さだけ上げられるだろう。

 特に盾や防具に使うと効果的かも知れない。

 まあ、使い方なんてものは現地民が勝手に考えれば良い。

 私はただ提供するだけだ。


 供給の為の下地は既に出来上がっている。

 ヴァンスターク家との交渉で詫びの品としてゼライドにリクエストしていた、設立からの年月だけは長い「幽霊老舗商会ベルザ」。

 そのベルザを隠れ蓑にしてギルバート達のPTが挑戦している百年迷宮踏破へ全面支援。

 それにギルバートがH級冒険者へ昇格して爵位を得たら共同名義で領地経営をする念書もある。


 あのガルミン地方はかつて迷宮の氾濫で壊滅的打撃を受けて領主の居ない土地となった。

 本来ならば国の解決すべき案件だが、確実な土地の奪還を速やかに行うためにジェラルド率いる騎士団が動いて地表を制圧したという歴史がある。

 そして、曲がりなりにもエストバースの双翼将軍となったギルバートが自力で迷宮踏破に成功すれば、国も爵位と共にガルミン地方を領地として与え、名実ともにエストバース貴族となる、という筋書きだ。


 まあ、あの土地はあまり魅力的ではないし、ファナリアの騎士団がたまに見回りをしていて今更王国軍の管轄に戻す気も無いという半ば捨てられた領地だ。

 だからこそ自力で制圧して統治出来る者が居るなら爵位付きでくれてやるくらい国にとって痛手でも何でもない。

 むしろ大手を振ってのしを付けて与えてくれる。

 が、ギルバートもその仲間も領地経営なんて出来ない。

 いずれ経済に強い臣下を持つにしても、安定するまで暫くの間はファナリア家が面倒を見る事となる。


 そこで私へと後学の為に丁度良い教材として、表向き共同経営と銘打って丸々充てがわれる手筈となった。

 人の目のある狭いリンデノートではあまり無茶は出来ないが、中央から遠くて長い間人の手がほとんど入らなかった広大なガルミン地方でなら実験的な政策もやり放題である。

 適当にギルバートの希望をそれなりに叶えつつ、後は好きにさせて貰おう。

 そして私の創作鉱石の産出ダンジョンとして適度に領地に利益を齎しつつ、王国の軍備を強化させるのだ。

 誰もが幸福になる素晴らしい計画ではないか。


 まあ、ダンジョンの経営権をベルザ商会が支援の報酬として丸々頂いた後に実行に移る計画だが。

 あの程度のダンジョンならギルバート達のPTなら潤沢な援助があればクリアも可能だろうし、後は踏破報告を待つばかりである。

 いずれ使うだろうと思ってダンジョン経営の資格を持てる条件を満たした商会を貰っておいて正解であった。

 アーティア商会では設立からの年月が足りなくて単身では条件が満たせなかったのだ。


 ヴァンスタークの表の顔は王国銀行の頭取である。

 接収した土地を都合良く使う為に、所有する数ある幽霊商会にも魔石売買や土地関係の権利のついでにダンジョン経営権まで取っておいたのだろう。

 担保として一級魔石や土地やらダンジョンまで差し押さえた物を一度傘下の商会を通してから、後で王国へと召し上げられるシステムにしていたと考えるのが妥当だ。

 私としてもわざわざ一から権利関係を取るより、既に持っている商会を譲って貰う方が何かと都合が良かった。


 当然、ファナリア家もそういった傘下商会は持っているが、それを利用すればあからさま過ぎて目立ってしまう。

 しかしベルザ商会なら、例え同業者が外から分かる範囲で履歴を調べたとしても、ギルバートが領地経営を始めるにあたり融資を受ける為にダンジョンを担保に入れたようにしか見えないだろう。

 疑いを回避するのは変に宣伝するより、相手に勝手に納得して貰うのが最も手っ取り早い。

 現状では大して価値のないダンジョンだが、いざ発生する利益は莫大になる予定なので税収だけでも巨額になるかも知れないが、そこはそれ。

 ギルバートは上手い事やって平民からまさかのサクセスロードを突っ走っている姿だけ世間に見せていれば良いのだ。


 本人の知らぬ間に、生きた広告塔としてこれからも国民に夢を与え続けて貰いたい。

 それが世界を前進させる活力になるというのなら、私としても願ったりである。






《余録》


ギルバートの所属する「五ツ星」はS級冒険者PTとして有名です。

普段は冒険者にとっては実入りの悪いエストバース王国ではなく海外での活動が多く、メンバーの攻略したダンジョンの総数は十を超えます。

主人公の家庭教師をしていたギルバート抜きでも攻略は継続していました。


今回は兼ねてからの念願である百年迷宮攻略です。

これに成功すれば独立貴族になるギルバートの実質的に冒険者業引退が前提なので、かなり意気込んでいます。


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