真要素核 4
[362]
破壊し過ぎた異境から一度抜け出して別の異境へと試験場を変更した。
正確に力の上限と現在の制御技術の限界を知るには外界と同じ条件設定の異境で、どの程度の影響を与えられるかを見定める為には多少の破壊は仕方がない。
小世界として破綻なく運営できるレベルまで整地した作品だけに荒らしてしまうのは大変忍びないのだが。
そう感じるなら一度で調べ切れるように全力を出さなければならない。
少なくとも私は資源を無駄にするのは好まないのだ。
◇◆◇
・【経絡核】
今回の大工事で最も大きな変更点となったのが氣功関係である。
特殊な混血であるリヴィアには専用の経絡マップが必要であり、魔力以上に緻密で複雑な正経と奇経を設計しなければならなかった。
前世の知識は触りの部分でしか役に立たなかったのだ。
優れた達人ならば自身の経脈を整理する奥義をも身に着けるというが、それは単純な構造をした単身の人間だからこそ出来る芸当。
前世では決してお目に掛かる事も無かったであろう最高難易度のリヴィアの身体で氣功の鍛錬をしてきた私には、人間尺度の万物に通じる氣功の極意ならば既に修得済みである。
事実、こうして経絡核をリヴィア専用にカスタマイズして創造した今、私達には海も大地も空もその先の星々すらも、ハッキリと視えている。
つまり、今までの私達は「氣を極端に感じ取れない身体」で修行を重ねていたのだ。
そんな不都合な環境下でもある種の到達点まで理解が達していた私達からすれば、その楔が解放されただけでも既に氣に関して解らない物が何も無くなってしまった。
視えてから、経絡核が完全では無い事に気が付いて、更に改良を加えた。
最初の経絡核では海や大地や空や宙の氣を操るには適していなかったのだ。
そして改良が終わると、私達は自在に天地万象の氣を自在に操れるようになっていた。
つまり仙人として初手から完成の域に至ってしまっていたということになる。
これは完全に想定外。
大地を隆起させ、雲を動かし、風を吹かせ、雨を降らせ、川の流れを変えて、地割れを起こして、昼を夜へと至らせ、星を落とした。
最早これは氣功に非ず、【万象功】とでも云うべき力と化していた。
なるほど、万象功ならば体内魔力を用いたとしても時間差を起こさずにあらゆる座標へと事象を引き起こせる。
繋がってさえいればわざわざ転移に魔法を使う必要すら無い。
天地万象にも経絡に当たる節が備わっているのだから、そこから選んで為したいだけ為せば事象として反映されるのだ。
仙術とは則ち天地を一つの流れとして読み取って、後は適切に力を用いるだけの簡単な作用だったのだ。
そこに不思議も不条理も介在する余地は無い。
しかしこれは、あまりにも人の観測する領域からはかけ離れ過ぎていて、逆に私には邪魔な力となるかも知れない。
万象功も仙術も、理法の枠組みから外れる事が無いのだ。
だというのに、あらゆる事象を理法で片付けられてしまうのは異法への適応力や必要性を下げてしまう要因になり得る。
不自由でなければ前方向への進化も進歩も無い。
使えば楽なのは間違いないが、今後は適度な距離感を保って付き合って行きたい。
という理由で、普段はほとんどの機能をオフにするが、万象功の観点から最適化された武功を一系統構築してこれを『絶招功』と名付けようか。
そして絶招功に関してだけは私達と分体にも一通り転写しておく。
武術の最終形態に至る究極の答えが一つしかないのなら、試行錯誤の必要性を感じないからだ。
元より私もリヴィアも武芸に興味が無いので、ここは端折ってしまっても良いだろう。
誰の力も借りず、誰の助言も受けず、経過はどうあれ自力で一なる解に辿り着いたのだ。
武功くらい一生免除されても誰からも文句を言われる筋合いは無い。
仙術は既に確認段階で試してしまった。
仕方がないので絶招功の試験に移る。
試しに絶招功を使って、曲げた指を急に伸ばして空を弾く。
所謂『指弾』と呼ばれる武技だ。
弾き出された氣は空気の壁を穿って突風を起こし、少し遅れた衝撃波で大地を抉り抜きながら直線上の岩壁を打ち砕く。
バゴンッ!
破壊の衝撃は岩壁に波紋状の亀裂を残して、余韻の振動が辺りを震わす。
まるでバトル漫画のようではないか。
こんなことってあるのか。
障害物の無い方向へ打ち出したらどうなるのだろうか。
実際にやってみよう。
先程と同じく絶招功で練られた指を弾いて氣を乗せた空をくり貫いて放つ。
キュウウウゥゥゥゥゥ…。
破裂音を引き伸ばしながら彼方まで衝撃波と共に消えて行った。
進行方向上の空気がイオン化していて独特の臭いを残している。
確かに抵抗力の少ない通り道を見極めて放ったが、よもや目視範囲内では消えずにそのまま飛んでいくとは、これまた想定外である。
あれではどうなったか分からないので、次は手頃な石を絶招功を乗せた腕力で投げてみる事にした。
石礫である。
手首のスナップだけで真っ直ぐに放る。
パアアアウウウウゥゥゥゥゥゥンンンンッッッ!!
光の帯を残して、そのまま光の彼方へと消し去った。
進行方向へぽっかりと円心状に抉れた地面がジュワジュワと音を立てながら赤熱から飴色に融解している。
リヴィアの身体を防波堤にしたかのように斜め後方にも向かった衝撃波の余波によって大地が吹き飛んだ跡が残っている。
なるほど、足の裏とその地下へは絶招功で掴んだ大地がびくともせずに鎮座しており被害を全く被っていない。
ここを疎かにすればリヴィアの身体は後方へと吹っ飛んでいただろう。
絶招そのものは以前の状態でも繰り出す事は出来ていた。
まあ、絶招とは全ての動作が完璧に連動した一瞬だけ発揮させる至技ではあったが、それでも武功の極致を物にしていたと言える。
対してこの絶招功と名付けた武功は、全ての挙動が呼吸も歩く動作も瞬きすらも絶招状態という、完璧を維持する、いや完璧を普遍的にまで昇華させた一なる解なのだ。
呼氣を絶招功と一体としてみる。閉じた眼を通さずとも感じ取れる力の流れ。
絶招功の真に優れている点は力の強さでは無い。
無敵である事でもない。
何でもない完璧な普遍性の集大成であるという点に尽きる。
どういう意味かと言えば、これだけの凄まじい破壊力を生み出しておきながらほとんど熱量の消費が無いという事実からも察せられるだろう。
整った呼氣はやがて周囲の音にかき消され、自分の身体の力の流れと自然の力の波長の境が消える。
日常生活においても、おそらく燃費が恐ろしく静かになり、ほんの僅かなカロリーで生命活動の維持を可能とするのだ。
並の生物と絶招功を極めた生物とでは熱量のロスに天と地ほどの違いがある。
元より生命活動から無駄を一切省いたリヴィアが絶招功を取り込めば、それはもう現象が起こっていないのと同じであり自然の流れる熱量に完全に埋没してしまう。
そうなれば誰にも力を感じ取ることは不可能となるだろう。
眼を開き氣を周囲に散らすと、大気が震え、大地が嘶き、力の流れは外側へ向けて逆流した。
しかし今のままでは駄目だ。
力の制御を覚えなくてはならない。
使う度に周囲一帯が吹き飛んでしまっては、安全装置の無い大量破壊兵器と何も変わらない。
やれやれ、異常な弱さを克服するために身に着けてきた技術の行き着く先が、今度は異常な強さを克服する技術を身に着けなければならなくなるとは、過ぎたるは及ばざるが如しとはまさにこの事。
万象功を用いずとも、絶招功のみでこれとは。
これはもう規格外であると認めるより他に無い。
力の強弱とはこうも極端なものなのだろうか。
いや、力は常に在る。
現象に反映されていないだけだ。
◇◆◇
結果としては、比較的容易だった三要素に関しては規模こそ凄まじいが予想通りの成果だった。
しかし経絡核は想定外の変貌を遂げてしまった。
派生した万象功は封印。
更に派生した絶招功も、これ一つあれば戦闘に関しては何も問題ないだろう。
まあ、今後も戦闘をする予定は無いのだが。
[363]
基礎要素の検証と改良を済ませるだけで三日が潰れてしまった。
日を改めまして、残りの仮想神核と煌虹核のテストに入ることになりました。
分体が学院生活を送っている裏側で本体はコツコツと自己鍛錬と研究の日々である。
創世魔宮の探索を休止して自動狩りのみに留めているので、今世始まって以来の初めての足止めとなっている。
実に歯痒い。
全能力と要素の見直しと再構成は思ったより難儀しており、リヴィアの新装開店リニューアルオープンへ向けて今暫く活動休止は続きそうだ。
本音で言えば自分の考えだけでは見落としが懸念されるので、再誕人にも検証に協力してもらって意見を募りたいところなのだが、先日の四要素が思ったより派手で、見せる事が今後に悪影響を及ぼしかねないので断念した。
アレは、駄目だ。
それに強さはリヴィアの印象には不要だろうし、あんな能力は付加価値としても明らかな蛇足である。
もっと常識的な理論にまで落とし込んで、出来るだけ劣化させ、そこから更に下位互換となる要素として新たに確立した技術として創らなければなるまい。
誰でも使える不完全さこそが技術としての体を成す。
手間はかかるが、ここで手は抜けない。
要するに技術とは、伝えた所で自分以外の誰も使えないのでは意味が無いのだ。
さて、次は長らく要素解明を後回しにしていた神氣の利用方法の確立である。
◇◆◇
・【仮想位階核】
神氣の発生は都度神力と魔核の概念を纏う形で展開していたが、これの理論としては加護の形質を変化させて創り上げた特殊フィールドのようなものだ。
精製した魔核からリソースを吸収する事でより情報圧を増していく、つまりは成長する加護である。
理論だけを先に構築して詳しい発現の源となる要素を発見していないまま行使している正体不明のエネルギー。
神力、転写、創世力、創造、次元、そして魔核のデータから逆説的に提唱した架空の理論。
合ってさえいれば使えるとばかりに有効な手段の無かった創世魔宮踏破のために編み出した要素だが、制御核を形成するに当たっては解明の後回しという訳には行かない。
そんな不思議パワーの神氣だが、加護や恩寵の付与や自身の纏う神氣の成長データを元に長らく研究を続けてきた結果、ある程度の推測は立ってきた。
これはおそらく生物的な要素ではない。
魔力も霊力も念力も氣も生物的な機能から発生させられる要素を含んだ力だが、どうも私が神氣と呼んでいるコレは生物の持ち得る器官から発生させられる類の力では無さそうなのだ。
つまり【魔脈核/心霊核/思念核/経絡核】のように経路を継ぎ合わせて最適化すれば済むような身体改造施術とは根本的に異なる。
関連する器官を調整すれば済む四要素と違い、人類の持ち得ない全く新しい機能を後付けで創造して付加しなければならないのだ。
データの有る物を一から発展させるなら創意工夫や試行錯誤でも太刀打ち可能だが、ゼロからの創造となれば勝手が解らず高いクオリティは望めない。
しかしこれは同時に、器官に帰属する要素ではなく後天的に付加する事でしか得られない機能というのであれば、上手く創れば自分以外の者にも付加できるようになるという意味だ。
私の使う従来の神氣はその都度神力を使って纏う必要があるため、どうしても神力の補充が必要となってしまう。
ならば予め神力や創世力を素材にした外殻を用意しておいて、それを付加する形で加護のように霊魂と紐付けしてしまえばどうだろうか。
概念を固定化してしまうと既存の神氣と比べれば利便性や機能面でも出力においても見劣りするだろうが、それでも世界基準では十分な性能を持たせられるだろう。
それに魔核や魔石から情報リソースを吸収して成長させられるようにすれば、いずれはそれなりの性能にまで発展出来ると思われる。
このように与えられたリソースの量で概念の強度が変化する加護とは、神話にある天使の階級制度と近しい要素なのかもしれない。
ならば擬似的に位階を付加する基底を創造し命名するとしたら、それは仮想の位階核(仮)とでも呼ぶのが相応しいだろうか。
この仮想位階核は、霊魂に記録された蓄積情報からパラメータを出力し、ダウンロードすることで予め付加された概念殻を変形させ、神氣というオーラを再現させて纏わせるための制御媒体と記録補助具としての機能がある。
高次概念なので基本的に外部から干渉される恐れも破壊される危険性もほぼ無いが、あくまでも仮想の核なので万が一喪っても本体は痛くも痒くも無い。
仮に破壊されても仮想位階核を修復させればそれまで通りの神氣を再発動させられる。
逆に概念殻を破壊されても、新しい概念殻と取り替えれば問題無く復元させられる。
神氣の強化情報は霊魂に紐付けされているので概念殻や仮想位階核が無くとも、バックアップデータ自体は無事なのだ。
あくまでも、仮想位階核は制御媒体、概念殻は外骨格の形成用素材。
霊魂に蓄積された情報リソースが根源である。
なので仮に仮想位階核を他者へ貸し出しても、残念ながら神氣の成長部分は移植できない。
しかし言い換えれば、個別に付加すれば各々で神氣を纏い強化していく事が可能となる。
理解りやすく言い直せば、他者にレベルアップの概念を与えられるのだ。
この世界には前世にあったゲームのようなレベルアップの概念は無さそうなので、これを与えられた者とそうでない者とでは明らかに規格外の性能差を生じさせることが可能となるだろう。
とはいえ未だ試作段階。
アーティマトンで検証してみた所、問題なく作用しているので調整を済ませたら我が眷属である再誕人にも付与して試させてみようと思う。
与えた魔核の質ごとに段階分けしたアーティマトンの性能差をチェックし、身体強度、筋力増幅、各種運動機能、神氣伝導率、といった項目を比較していく。
魔核や魔石の質は濃度や大きさや質量と属性相性によって獲得できる情報リソースの量や影響する強化項目にも差異が出てくる。
そうなると、この仮想位階核に具体的な神氣レベルの係数設定や、ある程度の簡易判別が可能となるオプションも加える必要がある。
となると神氣を成長させる材料となる魔核に内包されたリソースこそが経験値という扱いになるのだろうか。
一概にグラムで一山いくらという情報リソースとして量れる物でも無いので、何かしらの計測方法を発明して目盛りを定めなければならない。
亜空間には資料用にコレクションしてある多種多様な魔核や魔石を取り出して、総点検してリソース量の比較や計測式を割り出して指標を作らなければ。
それと後で仮想位階核の成長具合を計測可能な魔法具でも造っておこう。
彼等の意欲向上のために専用の魔法具で数値化した情報をカード型の魔導具に反映させたりして他の再誕人同士でも見える化していきたい。
六大神の鑑定システムとは別口なので設計は一から創らなければならないが、手駒の強化は今後の活動に必要となる。
前世であまりゲームをしてこなかった私と違い、ワイスマン辺りならこの手の情報にも詳しそうなので相談してみよう。
上手くやれそうなら仮想位階核の判別魔法具の製作やその管理を一任しても良さそうである。
◇◆◇
こうして仮想位階核の試験は長期観察として今後も続けていく事となった。
まあ、私の仮説から始まった生まれたばかりの新要素なのだ。
使える物になるかどうか全ては私の匙加減で決まる以上、焦らず慎重に進めよう。
[364]
今までは必要性を感じなかったので手付かずだったが、ここまで来たら残る要素にも副脳とも言える制御核を形成しようと思う。
◇◆◇
・【煌虹核】
他の要素とは明らかに毛色の違う、神力や権能といった理法の枠に収まりきらない力を制御するための機能を持たせたツールである。
形状は【虹色の剣】。
私の身体の核として形成。
私達の権能そのものを象徴として分かりやすく顕現させたもので、力の及ぶ範囲や細かな出力を調整するのに使う。
正直、私達の権能は異法に属する類の物なのでこの機能は使わないに越したことはない。
取り出し自由で一応は剣としての機能も備わっているが、強度がこの世界基準では有り得ないほど高いこと以外は取り立てて優れた武器ではない。
あくまでも象徴なのだ。
権能を発動させるのに必要な熱量を確保する為に神力を貯めておいたり、斬りつけたモノをリソースへと変換して蓄積する便利機能もあるので、いざという時に備えてなるべく多くの力を蓄積しておきたい。
いくつかの魔核を取り出して空中へと放り、意識して【煌虹核】で斬り付ける。
「『煌虹』」
斬り付けた魔核が解きほぐされ光の繊維となって煌虹核に吸い込まれる。
熱量や情報は勿論のこと、質量や存在力そのものもリソース化して吸収蓄積が可能である。
原理としては単純なのだが、【煌虹核】という専用の権能ツールを用いなければ机上の空論にしかならないような暴論とも言える理論で起こされる現象。
理論的で丁寧に創られた他の核と違いかなり抽象的なのだが、コレは知恵も技術も関係しない私だけの要素なので、自分さえ理解っていれば良い。
より大きな力を秘めた権能とはここまで神の都合が優先されて罷り通る物だとは。
理屈の合わない理や法則を無視した力に対して懐疑的で否定的な私からしてみれば、これほど科学者泣かせな力を自ら振るうというのは、無駄な感傷だと思うがとてもプライドが傷付く。
それが私の権能とは、皮肉にしても酷い。
くだらない矜持など捨てて目的だけを果たせとでも言うのか、それともこれこそが私の根源的な欲求の顕現とでも言うのだろうか。
だとしたら嗤える話だ。
これを拒絶して使わないでいるのは容易い。
ただ封印すれば良いだけの事だ。
だが、これが何故私の権能なのかを追求しないで研究者を自称など出来よう物だろうか。
良いだろう。
使おう。
敢えて、使っていこうではないか。
目を背けるだけの余裕も、ゆとりも、私には贅沢過ぎる。
どれだけ認めるのが苦々しくとも、仕方ないでは済まさずに受け止めるべき物は在るのだと認めよう。
私自身も成長するべきなのだ。
「『終末』」
【煌虹核】を掲げてコマンドを唱えると私の創った箱庭、今居る閉じられた異境全体が色を失った。
煌虹核を落として大地に突き刺さる。
「『煌虹』」
そのコマンドは実行されて、異境の全ては光の繊維となってほどけて、【煌虹核】に吸い込まれて消え去った。
◇◆◇
こうして機能テストは終了した。
後日、仮想位階核に対する再誕人の声は想像を絶する程の大反響となった。
特に男性陣は狂ったように百年迷宮へと繰り返し探索に出掛け、魔核の乱獲に明け暮れているらしい。
魔核を吸収させてから神氣のレベルアップ作業は今のところ私か分体にしか担当出来ない。
そして納品された魔核の一割から最大三割を報酬として当人の神氣の成長に充てる事にしている。
厳密には、納品者は三割の魔核を経験値として受け取る権利が与えられるが、更に二割分までは追加納品する事が可能であるということだ。
そして残った一割は経験値化を義務付けている。
神氣レベルと情報の記録された個別の『リライバーカード』には、追加納品した魔核の経験値相当のポイントを振り込むシステムがある。
因みにリライバーカードは本人への付与魔法なので他者が取り出したりはできない。
コマンドで簡単に出し入れが可能な再誕人の本人確認証のようなものだ。
「いいですか。出す時はこうやって手をかざして『ステータスオープン』と唱えて下さい。閉じる際にはカードに指を当ててから[✕]ボタンを押すか、『ステータスクローズ』と唱えて下さい」
何故かワイスマンは新規再誕人へと配布する際にキーとなるコマンドを統一させていた。
自由設定より全員共通の方が分かり易いと思ったのかも知れない。
「これですよ、これ!転生したのにコレが出来なかったのが心残りだったんです」
とか何とか言っていたが、きっと彼にとっては大事な儀式なのだろう。
身振りまで指南する意味はよく分からないが、好きにさせておこうと思う。
ここでも意欲向上のためのサービスとして、魔核の精算ポイントでのみ利用可能な特設ショップにて他所では入手困難なアイテムやオリジナル魔法具等と交換できる仕組みになっている。
因みに、再現実験の為に大量に作成してしまった魔法の鞄や魔剣なんかもショップには並んでいる。
流石に聖剣は購入した再誕人がうっかり外界で盗難
されると世界的な大事件になりそうなので自重した。
今のところは作り置きしていた便利グッズや美味しさを追求した聖体食といったお遊び品程度の物しか置いてないが、いずれは高額ポイント用に追加ギフト券なんかも置いても良さそうである。
しかし、ギフト券と聞くと金券をイメージしてしまうから別の名称が必要か。
効果は当然ながらギフトスキルの付与である。
キャパシティの都合もあるので無制限とは行かないが、桁を変えて三段階くらいまでは購入可能としよう。
これについてワイスマンに相談したところ。
「是非とも名称は『スキルオーブ』にしましょう!」
と言うので暫定的にスキルオーブ(仮)とすることにした。
ギフトオーブでも良さそうなものだが、まあ名称など聞いて判別できれば十分である。
きっと彼にとっては大事な拘りなのだ。
好きにさせよう。
何にしても、再誕人による魔核の納品量が前期比較で三倍以上となり、今も増え続けているというのだから意欲向上という目的は果たせたらしい。
精力的なのは結構だが、あまり無茶をして再び命を落とさないように気を付けてもらいたい。
いくら再誕人は何度でも再生可能だからと言ってもその処置は今のところ私本体でなければ出来ないので手間が掛かるのだ。
《あとがき》
こうして、この世界にも(ごく一部地域限定で)レベルシステム(手動)とスキルオーブ(手動)が実装されました。
どちらも元々無い概念なので、主人公が手ずから操作してあげないと実装できません。
世界のルールとして設定されている異世界は楽そうで羨ましいですね。
全自動化できる日は訪れるのでしょうか。




