表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1000通りの計画  作者: Terran
間章 創作活動 3
69/99

真要素核 3



[360]

 先日の大改装から暫くして、各要素の核もある程度馴染ませることに成功した。


 本日はその性能試験をするために特設した自作異境の一つに来ている。

 異境の中に別の異境を持ち込むような物なので入界には少し手間取ったが、何とか異境内のパラメータを変更して再調整する過程で別の発見があったのだが、それはまた別の話。

 変に異境の波長が外部に顕出されては実用化の際に別の問題が発生してしまうので後で改善しておこう。


 階層式の高次元区分けよりも立体的な多次元ツリーマッピングで構築した方が万が一の場合を想定すれば適切かも知れない。

 しかし複雑化すればそれだけ展開時のコストが上がるのが問題なのだが、そこは各次元に予めリソースを分配しておけば軽減可能だろう。

 何だかんだ便利に使っている内に多次元区分も随分と細分化してきているので、一度整理した方が良さそうだ。


 いや、それは今は置いておく。

 まずは機能テストである。



◇◆◇



・【魔脈核】

 まずは最も扱いに慣れている魔力からだ。


 9つに別けた魔脈核は魔力形質別に精製済みである。

 リヴィアの中に流れる8種の混ざり合った異なる魔力を別々に使用出来るように経路を造った。

 更に間口には14種類の源属性に対応するフィルターを形成することも考慮して多層構造にしている。


 どうやら混血種には稀に異なる魔力形質を同時に持って生まれる者が居るらしい。

 そうしたケースは魔力へ特定の指向性を持たせようにも、異なる反応をする性質同士が混ざっているため操作が安定せずに暴発の恐れがあることから、一般的には本人の安全を考慮すれば魔術師になる事は諦めざるを得ない。

 リヴィアの場合なら幼少期は全ての能力値が低く、比較的まともな魔力値ですら人並み以下だったのが逆に悪影響を最小限にしていたのだろう。

 類稀な魔力操作の才能と理解力により、不可能に近い混沌とした魔力の操作ですら僅かではあるが制御できていたのも大きい。

 実は知らず知らずの内にかなりの綱渡りをしていたのだ。


 今でこそこうして8種類の異なる魔力を扱えるのは魔脈核有ってこその芸当。

 魔物にはこうした別々の魔力を扱える個体もいるので、誕生から12年越しに核を有したリヴィアも似たようなものなのだろう。

 因みに9つある魔脈核の内、8つは性質の異なる魔力に対応させ、9つ目の魔脈核は従来通りの混沌とした未精製魔力用である。


 こうして生まれて初めて、体内魔力(オド)を使って術式を単独で制御することに成功するに至った。

 リヴィアがやや燥いでいるのでもう少し実験を続けておく。

 魔力を魔力のまま放出したり拡散させたり、宙空のマナを自在に制御するのは今まで散々やってきたが、自分のオドを直接体外へと行使するのは手応えが違う。

 これが通常の人類が扱う魔力と魔術の感覚なのかと思うと感慨深い。


 この感覚の違いを表現するのなら、仮想現実で銃火器を取り扱うのと、実際に手に持って扱うのでは全然勝手が違うのと似たようなものだろう。

 ダイレクトに伝わる感触は魔術や魔法を使っているという実感が伴っていて不思議と充足感がある。

 なるほど、確かにこれを実戦で使えたらさぞ気持ち良いに違いない。


 しかし身体からダイレクトに行使するという事は、次元魔法など一部の魔法や術式にはどうしても物質的な制約を課せられて不向きである。


「『次元断裂(ディメンションラプチャー)』」


 ハンドの弾いた指がパチンと鳴らすと共に大地がクジュッと縮むように消失して傷痕がパックリと開く。

 大きな音も立てず衝撃も振動も無く、ただ地面には空間の歪みと深くのっぺりとした切り口だけが残った。


 認識した任意の座標軸を乖離崩壊させられる次元断裂は、仮に物質に当たればマテリアル体の結合を崩壊させられるので生命体ならば確実に滅却可能だが、マナで使わないと命令から発動までに僅かな時間差が生じてしまうので対象に回避する余地を与えてしまいかねない。

 私の基準では『攻撃魔法』の存在意義は必中且つ一撃必殺出来ないようでは全て欠陥品である。

 そんな欠陥品のクオリティなら魔術でも十分再現可能であり、魔法である必然性が皆無なのだ。


 神性相手でも有効な『次元魔法』による攻撃はなるべく研究を進めておきたい。

 下位互換である界属性魔術でも似たような事を可能とする固有魔術も開発したが、そもそもこの世界では界属性自体が未発見なので披露する場面が有るかどうかすら怪しいものだ。

 私にとっては最も馴染み深く身近な概念なのだが。


「『次元干渉(カット・ディメンション)』」


 ハンドの指を弾いた音と共に発動する。

 音の届く範囲内全ての空間を距離や物に関係なく位置情報を障害ゼロで結ぶ。


 これは疑似固有魔術として開発した魔術。

 予め音を媒介に空間の一部を切り取って座標を解析して、以降の自身の使う別の魔術を思いのままにその空間内で展開する補助術式である。

 先程の次元断裂ではハンドの指を弾いた際に発生した音を媒介して特定の空間へ即座に現象を引き起こさせていた。

 そのまま体内魔力を出力して現象を引き起こすだけなら、都度伝達スピードの都合でどうしても展開が遅延する。

 先に展開したカット(次元干渉)を併用する事でその時間差を圧縮して発動までの隙を限りなく減らしてみたのだが、それでもマナ行使の魔法と比べれば残念な性能と言わざるを得ない。

 何せどんなに処理速度を向上させても音媒介である以上は音速を超えられないのだから。


 これが魔術の限界なのだ。

 光媒介でも不可能では無いのだが、如何せん拡散による情報の劣化が早くマテリアルへの干渉力に様々な問題が有り汎用性が低くなる。

 諸々の条件を加味すると魔術で行使するのならば、真空状態なら光媒介、空気中や水中ならば音媒介が適している。


「『神光(エル)』」


 これは座標掌握マーカー。

 大きさも範囲も自由自在に変えられる虹のリングを展開する。

 とりあえず四方の半径10km程の範囲を設定して大空に水平な巨大な虹の輪を出現させる。

 カットの完全上位互換魔法である。


 これ自体の消費はほぼ無い。

 何かをされるのが見た目にも対象にモロバレだが、光媒介や音媒介の抱える法則上のデメリットが無い。

 つまり理の持つ制約の影響を受けないのが特徴である。

 虹を出した状態ならばどんな事象も時や空間の制限すら無いのだが、目に見える現象としてあからさまなのが問題である。

 人前で使うなら逆にこれをデフォルトとして浸透させて違和感を当たり前の現象として周知させ、認識に慣れさせてしまうのが正解か。


「『宙元素爆発(エーテル・バン)』」


 虹の範囲内にある大岩を無作為に選んで空間ごと無音爆破させた。

 正確には爆発現象ではなく、空間を内側から爆発的な増大作用で押し出しているに過ぎないので破裂時には無音なのだ。

 但し、撒き散らされた破片はパラパラと音を立てて辺りに降り注ぐ。


 常に世界を満たし、最初から対象の位置に存在している宙元素(エーテル)へと干渉して膨張と縮小を操作することで爆発に似た現象を再現する界属性の術式である。

 まずエーテルが在ることを認識出来ない者には何が起こったのかすら解らないだろう。

 これなら動植物や魔物も無機物だろうと、理論的にはその境なく常に等しく吹き飛ばせると思われる。


 内包エネルギーの都合で神性相手では効果は薄いだろうが、こちらから注ぎ足せばその限りではない。

 理論上の威力に上限は無いのだ。

 半分しか効果が無いなら二倍、一割しか効果が無いなら十倍のエネルギーを注ぎ込めば欲しい結果が得られるのだから、実に単純明快である。

 推測だが対象が物質世界へと干渉可能な熱量を伴った存在であるのなら、それが上位存在であろうとそれなりの効力は期待できるだろう。



◇◆◇



 その他にも既存の技術を再確認しつつ、新技巧を踏まえて魔脈核を利用した試験は一通り完了した。

 界属性魔術や『次元魔法』を重点的に強化したのは、単純に他の誰も対抗手段を持っていないからだ。


 いや、より厳密に言えば唯一対抗手段を持ち得る可能性があるのはこの世界の概念とは別の概念を持った上位存在だけだろう。

 裏を返せば、邪神ならばこれらに類する力を振るえるかも知れないのだ。

 故に、私達が既存の概念以外の力に対する理解力を育むために異法に属する力を開拓する必要があったのだ。


 結果としては上々。

 界属性魔術や『次元魔法』はその特殊な成り立ちの関係上、予め導き出した理論がクオリティにそのまま反映される力。

 逆に理解力さえあれば反復練習や努力はほとんど必要無い。

 一度確認できれば以降は常に理論通りに一定の効力を発揮させられる。

 全能を切り分けて単一機能へと落とし込んで枠に収めた力とでも言うべきか。


 他の魔術は所詮、下から上へと押し上げた力。

 低次元の要素を用いて高次元へとアプローチを仕掛けてその一端を垣間見ようとする。

 低次の存在がいじらしい努力によって為す技術。

 偽の奇跡である。


 高次の存在が上から下にある物質次元に合わせて全能を削ぎ落として特定の事象だけを引き起こすのが『次元魔法』の理論である。

 まず前提となるレイヤーそのものが違う。

 だから使いようによっては神性すら滅せるし、低次の存在に防ぐ手段は無いのだ。

 高次存在同士が物質次元内で争うなら、この程度の力は扱えていなければ話にならない。


 いや、私の悪い癖だな。

 想定する対象を過大評価してしまう。

 これを扱える高次存在は高レイヤー世界の存在くらいなものか。

 となると、ほとんどの世界の神性程度では私と同等には扱えないだろう。


 だが、それが何だと言うのだろうか。

 私達の相手にしようとする対象が扱えない程度の存在であるという保証が無いのだから、過剰だろうと何だろうと身に着けておくべきなのだ。

 下準備という物は相手の想定を上回ってこそ真価が有る。

 過大評価、最悪の想定、大いに結構。

 準備不足よりずっと良い。




[361]

 やれる事の多い万能エネルギーである魔力をどうにかするのに魔脈核の把握は最優先にしたが、一応の成果は出た。

 続いて霊力と超能力用に形成した心霊核と思念核の調整と試験である。



◇◆◇



・【心霊核】

 今までは護符や装飾品といった魔導具で装着していた分霊の巣を霊格に紐付けした心霊核をポケットとして仕舞い込んでおけるようになった。

 つまり全くの手ぶらで分霊を持ち歩ける。

 ついでにどれだけ遠隔からでも出し入れが可能となった。

 更に、心霊核に分業させることで即時形成した分霊を生み出す方法を確立する。


 まだまだ改良の余地が残っており、持続時間や強度の問題で簡単な用途以外の実用化に耐えうる性能にはまだ到達していない。

 とはいえ次元を跨がずとも分霊の出し入れや非実体素材を収容できるというのはとても便利である。

 何なら魔力による支配領域の拡散と同様に、霊力で殖やした私達で広い空間を満たすことも実現できるかも知れない。


 霊力自体にはこれと言って複雑な混ざり物も無かったので心霊核以外には複数の節こそ造ったが大きな変更点は無い。

 霊力の扱いには特に不満は無かったのだが、心霊核を持った事で不可能だと思っていた現象の数々を現実の物に出来る可能性を得てしまった。

 自然界にいくらでも在ると思っていた精霊も、心霊核を用いれば私手ずから生み出すことすら可能だろう。

 そうなればこの世界の法則をまた一つ解明できる目処が立つ。

 大変興味深い。


 本来なら霊魂は己の肉体を器として収まるように満たされるものだが、多量の分霊を扱い幽体や霊体に関する知識と技術を伸ばし続けた結果、新しく霊力の集積と制御をする心霊核を得たことで、器以上の膨大な霊魂を圧縮して収めるという能力を身に着けるに至った訳だ。

 元々無数の分霊を操作するというのは器から霊体が溢れ続いているのと同様の現象とも捉えられる。

 それは自然界において霊体としては酷く不安定な状態であり、独立したゴーストタイプの魔物より霊体強度が低かった要因でもあった。


 それが心霊核で解消された。

 霊圧とでも呼べば良いのか、圧縮して強度を桁違いに引き上げた霊体は物質干渉も容易となる。

 霊力の扱いは抽象的で曖昧、それでいて他の要素より苦労が少なかったのは、ただ単にランクの低い扱いしか出来なかったからなのだと悟った。

 垂れ流しの霊力にあれこれと上手にお使いをさせられていたのは、大した力も必要ないくらい希薄で御しやすかったからなのだ。


 霊圧を増した存在感ある霊体は曖昧な意識での操作には向いておらず、今までのように数十万体を同時に操縦なんて真似は出来そうに無い。

 井の中の蛙。

 他に競合相手の居ない分野なのでその程度の能力で満足していたが、他の要素が飛躍的に向上するならば現状の技術力では不足となるだろう。

 これは訓練の大幅な見直しと、新たな利用方法の確立とを推し進めなければならない。


 試験的には既存の技術はどれも余裕で再現できた。

 失敗では無いが、そもそも下地が低過ぎて既存の技術の中に新しいスペックに対応するだけの価値が無いのだ。

 何とかしなければ。



◇◆◇



・【思念核】

 念力はこの世界の魔力とは相容れない概念に基づいて作用している。

 逆とか反対という意味ではなく、互いに接点を持たず干渉し合わないチャンネルそのものが異なる為に常にすれ違う性質なのだ。


 魔力ではどんなにアプローチを試みても念力や超能力を観測不可能であり、超能力側からも魔力を感じ取ることも計算に入れることも不可能である。

 だというのに、それぞれの発生ホルモンに関してはどちらか片方しか実現が難しい器官配列になっているのだから不思議である。

 自然に任せていてはどちらかしか開花しない仕組みなので、私のように人為的な操作によって両立する仕組みを確立させなければ両立は無理なのだ。


 思念核を8つ用意して感情ホルモンごとに別口経由する仕組みへと変更したところ、制御の難しかった超能力全般が驚くほど理路整然とした行使を可能となり、リヴィアの制御も大変スッキリしたようだ。

 特に感情による波形の乱高下による調子の不安定さが大きく改善され、気分を整えずとも必要な分量を維持したり、時に感情が力に作用したり、力が感情に引っ張られるというデメリットも極力抑えられるようになったのだ。

 ほとんど感情と切り離して超能力を使えると言っても良い。

 悩みのタネだった超能力の最大の難点を解決してしまった。


 本来ならESPにしろPKにしろ特殊なホルモンを燃料にして発現する有限の力なのだが、自前でそのホルモンを半永久的に合成可能な私達にはその枷は無い。

 しかし、これはこれで更に危険な力となった。

 最大の弱点を失ったということは、いよいよ以てこの魔術至上主義の世界では誰にも超能力を止められなくなる。

 防ぐ方法が無く、感知する手段が無く、大元を特定する手立ても無い。

 超能力なんて、在る事を実証できたらそれで良かった興味本位から発見した力なのだが、よもや無敵に近い性能にまで発展するとは。


 機能的だからそうしたのだが、思念核を複数持つことそれ自体が規格外であり、要するに肉体の制限を受けないESP器官やPK器官である思念核は、おそらく超能力世界があったとしても完成品を造るのは不可能に近いだろう。


「『燃えろ』」


 視界内にある木が突如燃え出すが、周囲へ熱こそ伝えても燃え広がる事なく灰にして鎮火する。

 発火現象(パイロキネシス)

 以前では実現の難しかった能力だが、思念核を得てからは何の苦も無く起こせる。

 対象の区別も思いのままだ。


 火力調整も燃焼スピードも自在とは、どういう原理なのか科学的に証明するより先に、出来るという確信を持って実現してしまった。

 こんな事が可能なら魔術なんて不要では無かろうか。

 どうしたらジェット燃料でもぶっ掛けたかのように急激な超高温の出火を起こせるのか、既存の法則式では解明出来ない。


「『曲がれ』」


 大地を紙くずのように持ち上げて捻り上げる。

 メキメキと音を立てて見えない力でひしゃげて絞り折り畳んでいく。


「『潰れろ』」


 みるみる体積を1/5、1/20、1/100へと光と熱を発しながら圧縮していく。

 最後は拳大まで小さくして落とすと、ゴパッと地面を陥没させる。

 どうやら自然には発生しない程の高密度高硬度の塊にしてしまったらしい。


「『……』」


 手をかざして落ちた塊を引き抜いて手元まで引き寄せる。

 直径15cmで5トンの球体をフワリと持ち上げて移動させられる。

 これまた無茶な現象である。

 塊は周囲を歪ませる力を纏っており、冷めきっていないのか超高熱を放って更にその周囲を陽炎で揺らめかせている。


「『凍れ』」


 一瞬で熱量を奪い取って凍らせる。

 突如塊の表面が凸凹と突起物を形成して奇妙な規則性ある結晶化を果たす。

 突風と共に周囲に粉雪が舞い散り、近くの地面が裂けた。

 私達は塊からしか熱量を奪ってはいないのだが、絶対零度となった塊は周囲から熱を取り込んだのだろう。

 おそらく塊の冷却前に余波の熱を浴びていた周辺の大地が、今度は冷えた塊に熱を奪われて急激な状態変化の関係で膨張と縮小を起こし、それが地面のヒビ割れとして表れたのだ。


「『爆ぜろ』」


 わん、という轟音と共に塊は砕け散り粉塵を巻き上げて周囲へ甚大な破壊を齎した。

 リヴィアの身体だけを避けるように周辺へと散り散りになった破片は、大地に欠けた巨大な爪痕を作り、空に浮かぶ雲を吹き飛ばして、一瞬で周囲一帯の地形を変えてしまった。

 クレーターの端から川の水が滝となって流れ込み、徐々に湖が形成されていく。


「『……』」


 両手を広げて見えない力を使い身体を空中へと持ち上げて、周囲の空間を撓ませて放つ。


 一瞬で二十km先の上空へと水平移動して急停止。

 空気抵抗も摩擦も音の壁も余波も無く、急発進と急停止である。

 完全に物理法則を超越している。

 これを一秒も掛からずに移動したのだから、傍から見れば瞬間移動にしか思えないだろう。

 だが、これはあくまでも高速移動である。


「『戻れ』」


 パッと、元のクレーターの上空に戻る。

 こちらが瞬間移動。

 正確には元の位置情報へ軌跡をなぞるように巻き戻しただけ。

 『転移魔法』と違い魔力は使わないが、ホルモンの過剰分泌を必要とする上に、分担していなければ発狂しかねない程のトランス状態が必要となる。

 万が一必要な力が足りなければ、たちまち肉体が崩壊してしまうだろう。


「これは、改善の余地があるわね」


 反動の酔いも酷い。

 短距離ならいざ知らず、遠方なら転移魔法の方が遥かに安全快適だろう。

 周囲には雷でも落ちたかのような焼け跡が拡がっており、発生させたエネルギーも全てを移動に使えている訳でも無さそうだ。

 要訓練である。



◇◆◇



 他にも些細な力も含めて試せるだけの超能力を試してみたが、以前より全ての面で桁違いに性能が向上している。

 現象を起こすだけなら起点こそホルモンでどうとでもなるが問題は反動である。

 大きな力には大きな代償があるもので、物理法則なら運動エネルギーだったり熱エネルギーだったりするが。超能力の代償とは単純なエネルギーのやり取りではなく、下手をすれば因果律の歪みを引き起こし、場合によっては天命を大きく削られるようだ。

 代償を極力減らして熱量効率を向上させるにはエントロピーをもっと上手く制御する必要が有るだろう。

 その技術を会得すれば他のESPやPKも効率的な運用を見込め、更に幅広い分野で活用できると思われる。


 今はここが自分の領域内だから反動を気にせず無制限に力を行使できるが、代償のメカニズムを解明するまでは暫く領域外での大きな力の行使は控えて、なるべく実験だけに留めた方が良いだろう。






《あとがき》


これが商業向けの物語なら、手に入れた力の使い方を訓練する回は今後使う事になるフラグなのですが、この主人公だと使う日が訪れるか不明です。

故意的に使おうとしない限りそんな日は来ないかも知れません。


使うかどうか分からない=必ず使う

の公式は現実問題では成り立ちません。


ですが、使うかどうか分からない修業ばかり本編より長く描いて、実戦でそのほとんどを使わないで終わったりすると、

「じゃあアレは何だったんだ?」とお叱りを受けてしまいます。

使うかどうか分からないと前もって言っているのに、理不尽ですよね…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ