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1000通りの計画  作者: Terran
第八章 緑の妖精王
58/99

千年樹の儀式 1



[330]

 食事が終わり、報告会をする為にドルセーラ達と別れて部屋へと向かう。


「ふふ。では部屋に戻ったら最初はヒルデから順番に聞いていきましょうか」

「はーい、お任せください。ところでアルトは何を取り出してるのですか」


 部屋に行く前に物置きで探し物をするアルトの意図が読めずに困惑するヒルデ。

 そう言えば持ってきたまま放置している物も結構ある。


「ん、砂時計。先手は譲るけど時間厳守で交代制。超過したら強制終了で」


 まさかの5分切れルール。

 そこまで細かく設定したがるとは。


「受けて立ちますっ」

「ふふふ。ではせっかくなので一部採用してもっと面白くしましょう。報告会は盤上遊戯で対戦しながら、待ち時間をそのまま一手の持ち時間とするのはどうでしょうか」

「ん、さすがリヴィア様。難易度が十倍になった」

「えぇ、えっと、話す内容と指し手とを交互に考えを切り替えながらやるんですかぁ」


 将棋盤と砂時計を抱えたアルトが出てくる。

 この世界にある将棋は、まあ間違いなく転生者が発案したものだろう。


「ボクはそれでいい。ヒルデが長考するほどリヴィア様と話せる時間が増える」

「な、なるほどぉ。そうなるルールなんですね。なら負けられませんっ」


 そうして始まった報告会の一局。

 要するに将棋を指しながら待ってる側がお喋りするだけである。

 アルトからは冒険者組合の組合員の動向や雇い主について、まだ調査中だが分かった範囲での報告。

 ヒルデからは英雄科の生徒の情報や彼等の実力の一部、そして勇者に関する事を。

 単純だが意外なほどルールに翻弄される二人。

 その勝敗も意外な結果となった。


◇◆◇


「負けた。勝てると思ってたのに…」

「いっぱいお話できましたぁ」


 げに恐ろしきはヒルデの直感。

 最初こそ頭の切り替えを持ち前の柔軟さと回転の速さで有利に進めていたアルトだったが、中盤になるにつれて長考をさせるのがアルトの狙いだと気付いたヒルデがインスピレーションだけで対応する早指しに変えてから形勢が大きく揺らいだ。

 勝つ事より考えさせる手を優先していたツケが出てしまい、秒で痛い所を差し返すヒルデに圧倒され始め、しまいにはアルトが長考する盤面ばかりになってしまっていた。


「この報告会の方法、とっても気に入りましたぁ」

「…次は油断しない」


 単純な思考力としてはアルトの方が上だろう。

 しかし早指しとなれば異様に鋭い直感を持つヒルデに分があるようだ。

 これは案外良い思考の訓練になるかも知れない。せっかく良い手を指しても、会話の内容が頭に浮かばなければ本末転倒。

 絶妙な思考のバランス感覚を要求されるのだ。


 報告会に頼らずとも情報だけならば自力でどうとでもなる。

 二人の報告で必要なのは感想や思い込みという主観の部分である。

 同じ情報でも多元的な思考から、新しい着想や連想する別の要素が浮かんでくる可能性がある。


 私は万知だが、全知ではない。

 故に揺さぶり、浮いてくる不確定要素に着目する。

 それをするだけの余裕がある内はそうするべきだと考えているからだ。




[331]

 知っていても黙っておく事は多々ある。


「お嬢様、大変ですぅ!」

「ん、由々しき事態」


 どうやら二人も授業が始まってからそれに気が付いたらしい。

 私も元々知っていた事ではあるが、まさか自分達以外に同じような生徒が一人も居ないとまでは思っていなかった。


「お嬢様、私達はずーっと騙されていました。魔術の勉強には杖が必要だったんです!」


 そう、魔術師と言えば杖。

 杖とは魔術の発動媒体であり魔力の制御は勿論、術式の構築と維持、展開と発動位置の指定までサポートするとても大事なツールなのだ。

 あと公式の場で魔術を披露するなら、無いと恰好がつかない。


「ええ、私も失念していました。

ギルバートが、ギルバートだということを」


 我らが師匠という事になっている魔術の天才ギルバートは発動媒体無し、詠唱無しでも魔力を練る時間だけ確保出来れば術式を発動してしまう。

 その為、中級魔術くらいなら杖を使わないで発動するのが日常的であり、杖は飾りだから祭典とか以外には要らないと普段から豪語していたのだ。


「うぅ、どうしましょうお嬢様。杖無しで魔術を使ったらやっぱり英雄科は違う、と言われて期待されちゃいましたぁ。魔術得意じゃないのに」

「ヒルデ元気だして。学院の生徒もほとんどが魔術得意じゃないから」


 問題はそこにもある。

 アルトもまたギルバートと同様に魔術に関しては天才であり、学び始めこそ遅かったものの発動媒体無しでも余裕で習得してしまっていた。


「アルトの目線だとそう視えちゃうだけですよぉ」


 そして、ヒルデの魔術の習得には私がサポートする事で時間を掛けて何とか形にしてきたので、ギルバートに「生徒は発動媒体が必要」という当たり前な事を気付かせられなかったのである。

 いや、いくらポンコツでも流石に自力で気付こうかギルバート。


「99%ギルバートが悪いですが、魔術師は杖を使うという当たり前に気づかなかった私にも原因はあります」

「違う、リヴィア様は悪くない。ギルバートがちゃんと勉強してなかったのが悪い。反省するまでおやつは抜きにするべき」

「それだと一生おやつ抜きになってしまいますよ?」

「そうね。一生食べられなくなるのはいいとしても、反省しないことが明らかでは意味が無いわ」

「ん、そうだった」

「そうですよぉ」


 私もギルバートに関してはそう思う。が、敢えて黙っていた私にも当然責任はある。

 本音を言えば、制御難易度の高い媒体無しの訓練を継続させたかったから黙っていた訳だが。

 学院ではこうも例外無く全員が杖を使う様子を見せつけられては体裁を気にする必要が出てくる。


「ここは購買で代用品をすぐに用意するべきでしょうかぁ」

「ボクとヒルデはそれでもいいけど、リヴィア様は立場があるから購買の安物じゃだめだと思う。いっそギルバート流は杖無しの流派ってことにして一生責任を取ってもらうべき」


 アルトは本当に容赦が無いな。

 しかし目立つ凄さはいくつも必要無い。

 だが一つも目立たせないのは違和感を齎す。

 下手に目立たせない為には上手く目立つ箇所を調整する適度な配分が大事なのだ。

 私の場合はまず見た目が目立つ、その上で魔導具を多数同時に制御する部分だけ見せられれば十分である。

 これに杖や術式の発動媒体を使わないという要素は蛇足だろう。


「多少目立ってしまいますが、学院指定の仕様から外れた発動媒体を使っていたことにしましょう」

「ん、素手は仕様外だから本当のことだしね」

「あ、それで発注している杖がまだ間に合ってないとするんですね。さすがはお嬢様ですぅ!」


 杖という物は魔術を使う者にとっては大事な意味を持っている。

 単に発動出来れば良いとするのであれば購買で市販されている汎用杖でも十分だ。

 だが魔術士見習いから魔術士となる際に、師匠が弟子の腕を一定以上と認めた証として、魔術に必要な道具を贈るのは古来よりの慣わしである。

 それは護符であったり指輪であったり法衣であったりと流派によって異なるが、近代では杖を贈るのが一般的とされている。


「では発注する杖の形状を決めておきましょう」

「わぁ、杖のデザインなんてどうしましょうか?」

「どうせならいい杖用意してギルバートに請求書を送りつけるべき」

「でも凝った作りだと本当に時間が掛かってしまいそうですよぉ」

「じゃあギルバートの所有してるいい杖を今すぐ届けさせるべき」

「えぇ、ギルバート先生と同じデザインなのは遠慮したいです…」

「ならギルバートの杖を素材にして新しく作ってもらえば解決」


 アルトは本当に容赦が無いな。

 だが正しい上に実に理に適っているので注意するべき点が無い。

 あとヒルデはギルバートの事を汚い物扱いしていないだろうか、何だか心配になってくるのだが。

 いや、ヒルデの年齢からしても思春期真っ盛り。脇が甘くてだらしない印象しかないギルバートに思う所が出てくるのも無理からぬ事か。


 魔術の発動媒体は特殊な素材が必要となる。

 それは魔力の通りが良かったり、魔力が良く馴染んでいたり、使う魔術の属性との相性であったりと求められる品質や条件も様々だ。


「私達はデザイン案だけ作っておいて、詳しいことはお祖母さまに相談してから決めるのが良さそうですね」

「ん、わかった。元凶のギルバートにも呼び出しかけておく」

「わっかりましたぁ。格好いいデザインがんばって考えておきます」




[332]

 物事には順序がある。


 ギルバートからの返信には大人が決してやってはならない悪い例から始まっていた。


「アルト君から連絡着たけどとっても忙しくてそれどころじゃなかったんだ。だから決して師匠として認めてなかったとかそういうのじゃなくてお祝いした方がいいかなって思ったけど大事な昇進試験があるから他のことに気が回らなかっただけなんだ。だから後でちゃんとお祝いするから許して欲しいな。あとついでに入学おめでとう。

追伸。聖戦で大将やったからS級冒険者になれたんだよ凄いでしょ?!それで今は南方山脈の百年ダンジョンの一つに挑戦してて手が離せなくてこれをクリアするとH級冒険者に成れるんだって!!これってとっても凄いことなんだよ!!?

追伸。トオル君にカレー粉の追加頼んでおいてください。あとチキンとビーフとポーク全部あると嬉しいです。あと大盛りでお願いします。サプライズでマトンも付けてくれると先生もっと嬉しいです」


 絶句。

 無言。

 静寂。


 読んだ一同はすぐには言葉が出なかった。

 ツッコミどころしか無いが故に、誰にもツッコんで貰えないとは、これ如何に。


「きっとギルバート先生の時代には手紙の書き方の授業は無かったんですね〜」


 立ち直りが早いヒルデがやや平坦な声で感想を漏らした。

 全部か、全部にツッコミたかったが労力を惜しみたくなってしまったのか。

 元気いっぱいなヒルデの瞳からハイライトを消すほどの筆力とは恐れ入った。


「これでも次席で卒業できるのだから、ヒルデも英雄科ということで必要以上に気構えする必要はありませんよ。というエールですね」

「わぁ、お嬢様は素晴らしいです。本当にそんな内容なんじゃないかって脳内変換できましたぁ」

「ん、ギルバート語は難解。でも見方を変えても何も解決してない」


 ヒルデはもう諦めたのかこの話題から離れたいようだが、流石にアルトは引き下がって貰えないらしい。

 ギルバートよ、今更多くは望まないがもう少し、本当にもう少し何とかならなかったのだろうか。


「言い訳から入って言い訳を重ねて、とってつけた社交辞令もそこそこに、すぐに自分のやってることを自慢し始めてる。

杖送れって伝えたのに何でこっちから物を送る話になってるのか不思議」


 アルトは手紙の内容からそれほどダメージを負っていない模様。

 冷静で的確である。

 いや違うな、ちょっと怒ってるかも。


「もしかしたらギルドのランク昇進は言い訳で、お祝いの品の素材を取りにダンジョンへ潜っているのかも知れませんよ」

「リヴィア様が優しいのは分かってるけどギルバートに甘すぎると思う。あれは駄目な子供。ちゃんと躾けないと将来大人になれない」


 三十路を超えたギルバートが半分の年齢にも満たないアルトから子供扱いされている。

 今からの成長を見越した将来とは、ギルバートが初老くらいの年齢になる頃の話だろうか。


「例えお嬢様の言う通りでも百年ダンジョン攻略だと数ヶ月は籠もりきりで、終わってすぐ送って貰っても試験には間に合いませんよぉ」


 問題はそこである。

 授業や訓練ならば発注遅れという事で代用品の杖でもまだ言い訳は立つが、試験には自分の杖で臨むのが慣例である。

 本音ではそんな役にも立たない常識など無視して構わないと思っているが、不必要に悪目立ちするのは立場上宜しくない。

 常識を学びに行っているという建前なのに、分かってて無視するのは誠意ある態度とは言えない。

 それに従者の晴れの舞台に相応しい装いを誂えるのは主君の務めであり、甲斐性の見せ所でもある。


「ふふ。それは心配いりません。お祖母さま立会の下で千年樹の儀式をする手配をあらかじめお願いしてありますから」


 そう、アルトからギルバート宛に連絡を送るのとは別に、予めプロシア宛に杖の作成許可を取り付けておいたのだ。

 これは、決してギルバートを信用していなかったからで、他意はない。


「リヴィア様はギルバートの生態に詳しい。ちゃんと備えてるって思ってた」


 千年樹の儀式とは大昔の魔術師が行っていた魔術儀式の一種で、千年生きた大樹へ自らの魔力を捧げ、それに見合った枝葉から天然の杖を生み出す技法である。

 現在は地神領域の歴史と格式ある森人族の一族くらいしか使っていないローカルで時代遅れの超マイナーな儀式だ。


「特注した物と比べれば流行りのデザインにもできませんし、少々古風な物になってしまいますが、儀式さえ成功させられればすぐに自分の杖を手に入れることができますよ」


 生木から直接作られるので、現代の技術水準で造られた最新の杖のような洗練された便利な機能の数々も搭載していない。

 ただの魔力媒体である。

 しかし、儀式さえすれば即日獲得出来るので、時間効率という観点で見れば圧倒的優位である。


「お嬢様。やりましょう!」


 ヒルデの瞳にハイライトが戻り、目をキラキラ輝かせていた。


「千年樹に祈りを捧げて杖を授かるなんて、まるで英雄譚に出てくる精霊の寵愛を受けた賢者様みたいですっ!」


 どうやらヒルデのツボに入ったらしい。

 予想通りの反応である。


「ボクもそれでいい。杖なんてあっても無くても一緒だし、効率重視でいい」


 アルトはいつも通り。

 元々杖に興味が無さそうなのでこれも予想通りの反応。


「ではさっそく今度の連休に行けるように旅行の準備をしておきましょう」

「はぁい。楽しみですぅ!」


 最初から千年樹の儀式の案を出しておいても良かったのだが、一応は先に師匠であるギルバートの顔を立てて、名誉挽回の機会を与えてから第二案として提示するのが筋である。

 便利な機能が無いのは事実だが、捧げた魔力に馴染んだ杖になる事から使い心地という面においては最新の杖にも引けを取らない。

 現代の特注の杖でも使用者の魔力を込めた魔鉱石を素材にする事で、より手に馴染みやすくなるとして製造技法を取り入れている工房もある。


 物事は順序良く進ませれば自然と目的地へと辿り着ける。

 それが出来ないのは運が悪いからではない。

 何処かに過不足が有るという事だ。

 プロシアなら生半可な樹は手配しないだろう。

 今こそハイエルフの血統を有効活用して欲しい。




[333]


◇◆◇


 千年樹とは、ただ千年生きただけの樹ではない。


 白状すれば私の目的は最初からこの儀式であった。

 ギルバートが杖の贈答を忘れていたのを知った半年前から、それこそ期限がギリギリになり選択肢が千年樹の儀式しか無くなるまで待っていたのだから。


「ギルバートには後でしっかりと反省させますが今回は緊急事態です。まずは杖の確保を最優先に、観光は目的ではありませんよ」

「ふふふ。千年樹を間近で観られる機会を得られるなんてそうありませんもの。この日が来るのを楽しみにしていました」

「英雄譚の一節と同じ場面を追体験できるなんて夢みたいですよぉ」


 エストバース王国の東端に位置するシルヴァンロード領は王国の三公の一角、シルフィード公爵家の支配する大領地である。

 大領地とは言うが領地の半分以上を深い森に覆われており、人の住まう領域は他の公爵領と比べればそう広くない。

 国境に面する国の要所の一つで、深い森を切り裂くように貿易路が隣国まで続いている以外は魔物の棲息する森が広がる。


「リヴィア様、この辺精霊多い。ボク達に気付いてざわついてる」

「ふふ。どうやら歓迎しているのは精霊だけではなさそうですよ」

「変装はしていますが、なるべく姿を見せない様に気を付けなさい」


 森の全体像を把握する者は居らず、かなりの部分が未開拓地のままとなっている。

 その中には長年放置されたダンジョンがいくつも有るとされ、一定の周期が巡る度に魔物の群れが目撃される。

 森の案内人の先導で、安全なルートを大恐鳥の背に揺られながら目的地へと向かう。


「お嬢様、さっきからずっと誰かに見られてる気配がしますよぉ」

「ん、それたぶん精霊術師。覗き見は魔術師よりずっと得意だし、精霊が不自然に静かな所がいくつもある」

「ええ。観るだけなら無害ですし、気にせず放っておきましょう」

「貴女の従者の方が優秀なようですね。話を通すべき相手には通達済です。構わず進みなさい」


 本来ならば大恐鳥の背に乗るのは熟練した技術を要するのだが、今回はプロシアの用意した【魔法の鞍】の効果により快適な旅を満喫していた。


(アルト。いい機会ですから使われている精霊術を盗んでおきなさい)

(了解。けどこんな雑な術式、使い道なさそう)


 魔法の鞍があれば例え赤子であっても飛竜に乗れると言われる程の素晴らしい魔法具である。

 実際に乗れるのか真偽の程は確かではないが、少なくとも今は揺れをほとんど感じない。


(そろそろアルトも術式の改変を学んでもいい頃合いでしょう)

(ん、それは楽しそう)


 魔法具ではあるが古の時代では当たり前に使われていたのか、過去に遺跡を発掘した際に一度に大量に発見された事があり、値段は高いが数はそこそこ出回っているため入手難易度は比較的低い。

 あくまでも他の魔法具との比較であり、下級貴族家では手が出せないような値段ではある。


「見えてきましたぁ。あれが風精樹の森ですね」

「お客人方、この辺りは魔物の棲息域からは離れていますが全く出ないわけではないです。樹海の前に集落に立ち寄りますので、それまではくれぐれも周囲にはお気を付け下さい」


 向かっているのは目的の千年樹があるという風精樹の森。

 大昔に地神領域の森人の一族がこの地へ移住した際に、魔物避けに故郷の森の苗木を植林したのが始まりだと言われている。

 今では国内に数箇所ある精霊の聖地の一つに数えられている。


「アルト、周辺に魔物はいそうですか」

「いない。ここ二日以内に大掃除された跡ならそこかしこに残ってる」

「では安心ですね」

「ん、安心しきっていい」

「ははは。お客人の言う通り、四日くらい前から森林の警備の巡回ってことで公爵軍が順番に回ってるとこです。さて、着きましたよ」


 ざわめく精霊が風を運び、私達を出迎えるように吹き抜けていく。


「ようこそ精霊の聖地へ。ここが風精樹の森への入口でシルフィード公爵家が三男ウェンデール様の管轄区域となっております」


 この感覚は覚えている。

 私が生後間もなく預けられたあの懐かしきカルムヴィントに似た、開けていて澄んだ軽い空気を感じられた。






《あとがき》


ヒルデは14歳、リヴィアとアルトは12歳。

思春期真っ盛りです。


大人過ぎるリヴィアと冷静なアルトが特殊なのであって、ヒルデが特別子供っぽい訳ではありません。

だらしなかったり無神経な大人にちょっと冷めた感情を持ってしまうお年頃なのです。

笑顔でツッコミを入れたり諌めたり出来るエスメラルダの領域に至るには、まだまだ修業が必要でしょう。


あと、リヴィアがギルバートに甘いのは周知の事実です。

使用人一同が「どうしてあんなに甘やかすんだろう」と思うくらいには激甘です。

因みにリヴィア本人は「ちょっと甘いかな」程度の認識だったりします。


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