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1000通りの計画  作者: Terran
第七章 太陽の神子
48/99

学院オリエンテーション 5




[300]

 最も時間の掛かりそうな遠くの大きな施設から回ったからか、残りの巡回はさほど労もなく回ることが出来た。


◇◆◇


《魔導バスの終点からバスセンターの車庫》


「送迎は普段使用人が申請していますが、どうやらここで受付をしているみたいですね」

「魔導車がこんなに並んでいると壮観です。これを維持するのにも莫大な資金が必要なのでしょうね」

「馬車だと厩の臭いは正直苦手だけど、魔導車の中の臭いも大概苦手だわ」


◇◆◇


《一般運動場と併設された公園》


「運動場は遊びや健康目的の軽い運動や体操などで使われているみたいですね。公園は噴水と星見台がヒーリングスポットとして人気があると書かれています」

「何て素晴らしい意匠のされた噴水広場なのでしょうか。それに星見台から眺める星空にも興味を惹かれます」

「星見台まで登ったら癒やしより疲労が上回る自信があるわ」


◇◆◇


《教会と広場にある花壇と慰霊碑》


「教会には六大神全ての神像とそれぞれの宗派に対応した聖堂があるだけでなく、主要神様以外の宗派の方向けの略式祭壇がある部屋まで備わっているみたいです」

「素晴らしいです。主要神様以外の宗派にも目を向けて下さるなんて、まさしく先進国ならではの先進性の表れでしょう」

「お祈りは好きよ。動かなくてもいいもの」


◇◆◇


《一般購買部とAC専用購買部》


「レストボックスでは販売できない物を主に扱っていますね。AC専用の方には試験販売として最新の魔術具や魔導具も並んでいるみたいです」

「そんな、困ります!AC専用購買部に置いてある物は見てると欲しくなる商品ばかりです」

「レストボックスは売っていないのかしら。AC専用でも買うわよ」


◇◆◇


《兵舎と一般訓練場》


「学院の教導員、つまり教官や警備隊の詰め所と魔術を伴わない戦技の教習施設ですね。馬術の練習場としても使われているみたいです」

「現役の騎士様もいらっしゃるのですよね。それに騎乗馬も我が国の馬より一回りは大きいです」

「ここに来ることは無いわね。次行きましょう」


◇◆◇


《医務室と療養棟》


「授業や訓練で怪我をした生徒が搬入されます。授業中に具合が悪くなった際にお世話になるかもしれません」

「ここでは薬師様以外にも様々なお医者様がいらっしゃるのですね。とても興味有ります」

「そのうち授業で治療術は習うわよ。ここって貧血や立ち眩みでも療養棟って使えるのかしら」


◇◆◇


《ガーデンホールと庭園》


「生徒同士の交流と成長を目的としたグループ単位での派閥の形成と力関係を示す場です。派閥の規模や成績によって借りられるホールのランクも変わるみたいですね」

「気の所為でしたら申し訳御座いません。先程から大勢の方に会釈やご挨拶を頂くのですが、あのチョーカーは上級生の方々ですよね…」

「言わないで。出来れば今すぐ逃げ出したいわ…」

「ふふ。お姉さま、笑顔でお返ししてください」

「うぅ、お姉様達。何て物を残してくれたのよ…」


◇◆◇


《図書塔と自習室》


「この塔の中は全階層図書室みたいですね。隣り合う校舎には予約可能な自習室があるみたいです」

「この立派な塔の中全て書物なのですか。どうしましょう在学中に読み切れる自信が有りません」

「何でも図書室のどこかに会員専用のコーナーがあるらしいわ。お姉様達に何冊か写本を頼まれてるのよ。リヴィア…」

「筆跡ですぐにバレてしまいますよ」

「そうよね…」


◇◆◇


《学生食堂とオープンカフェテラス》


「学生食堂は十年ほど前にリニューアルしてメニューも大幅に変更されたみたいです。世界各国の料理が楽しめるという触れ込みですね」

「世界中の異国料理が頂けるだなんて、まるで夢の様では御座いませんか。どれか一つを選ぶのにとても苦労しそうです」

「私達はお弁当だから利用することはなさそうね」

「そんな、お二人とご一緒出来ないだなんて。かくなる上は、私もお弁当に挑戦するしか道はありませんね…」

「ふふ。セイ、隣のエリアとカフェテラスには持ち込みもできますから。そこでなら食堂もお弁当も好きに使えますよ」

「そんな素敵な場所が…!」

「うぅ、食事の時間くらい人の少ない所で落ち着いて食べたいわ」

「まあ、なんて美しいのでしょう。綺麗です。優雅です。開放的です。先進的です」


◇◆◇


《談話室と遊戯室》


「ここは談話室や遊戯室が並んでいますね。今は授業時間中でしょうから、人は少ないみたいです」

「ここで貴族家の子女同士が語らい、娯楽に興じるのですね。私、異国の遊戯はあまり馴染みが無いので上手くやれるか不安と期待が綯い交ぜです」

「安心してセイ。遊戯なんて周りに合わせて笑っていればいつの間にか終わってるものよ」

「ドルセーラお姉さまはセシリアお姉さまのとにかく前に出るスタイルと、ミルミアナお姉さまの手段を選ばない策略に揉まれてきましたからね」

「嵐に抵抗しようなんて考えるのは人の驕りよ」


◇◆◇


《講堂と中庭》


「私は入学式には出られませんでしたが、学期の区切りの式に生徒を集めたり、外部からの特別講師を招いての講義などに使われるようです」

「ここに教職員の方を含めて500名も入っていたのですね。改めて人が居ない状態で観ると大きさにも内装の造りにも圧倒されてしまいます」

「密室で知らない大勢に囲まれるなんて拷問よね」


◇◆◇


《職員室と生徒会室》


「職員室は場所だけ把握していればいいですね。お姉さま、こちらが生徒会になります」

「私はこうした制度には馴染みがないのですが、生徒の代表という事は高貴な方や実力のある方が優先して選ばれると聞き及んでいます」

「リヴィア、私は絶対に入らないわよ?」


◇◆◇


 そして校舎を一通り観てから、オリエンテーションは終了となった。


「とても、疲れたわ…」

「リヴィア様、ドルセーラ様、本日は本当に有り難う御座いました。お二人のおかげで大変愉しいひと時を過ごせました。心よりお礼申し上げます」

「ふふふ。今日だけでセイととても仲良くなれた気がします。これからもお姉さま共々よろしくお願いいたします」

「こちらこそ不束者ですが宜しくお願い致します。リヴィア様とドルセーラ様に出逢えた幸運を我が国の神と人神様にも感謝を捧げたいと思います」


 それから集合場所で時間まで待つ間、同じようにオリエンテーションを終えた生徒達を確認する。

 おそらく他のクラスの一回生も同じ時間に回っていたのだろう。

 通常のルート選びでは大変な混雑に見舞われていた。

 まあ、それでグループだけでなく生徒同士のコミュニケーションを取らせようという目論見だったのだろうが。それに混じっていたらドルセーラが気疲れでリタイアしていたかも知れない。


 ルヴォルの姿は見えなかった。

 遅刻で参加して終わりまでに合流出来ないとは、折角こちらで決闘を回避させたのにどんな取り調べ態度を取ったらそうなるのだろう。

 と思ったが容易に想像できた。

 これからクラス全員の顔と名前と特徴と能力の把握と、私とドルセーラを憶えて貰う為の行動を一人ずつでも確実に済ませなければ。

 貴族科Aクラスはいずれ各国を支える重要な役職に就くだろう有望な貴族の子女ばかり。

 最低限、ここさえ抑えておけばプロシアもあれこれ細かい事までは言わないだろう。


 それにしてもセイを観ていると前世の故国の記憶を刺激される。

 この世界にも似たような国と民族が居るというのは不思議な感覚だ。

 何となく一緒に居て安心出来る相手である。

 これからも個人的に仲良くするのもやぶさかではない。




[301]

 結束というものは両立が難しい。

 寮への帰宅後に食卓で今日あった出来事を報告していると、ヒルデが大変ショックを受けていた。


「ええぇ、アルトも一緒だったのに私だけ別行動だったなんてあんまりですよぉ〜」

「ん、ヒルデの分もしっかり護衛したから気にしなくていい」

「もーっ、そういう問題じゃないんです。お嬢様と一緒が良かったんですよぉ。もーっ」

「ヒルデは英雄科の仕事があるから、それは怠れない。これはれっきとした役割分担」


 王都や所領の邸宅では従者であっても私達とは食事は別々に、他の使用人達と摂らせていたが、ここ魔術学院の白金寮では例外的に同じ食卓を囲む事が許可されている。


「う〜、こんな事なら英雄科はアルトに任せるんでしたぁ。きっと私より席も高かったはずですし」

「ヒルデは正々堂々で隠形はボクの分野。合理的に考えても今の分担がベスト」


 とはいえ例外なのは従者だけである。

 というのもヒルデとアルトも学院生である限りは、この敷地内に限れば同等の身分を学院が保証しているのと同義である。

 白金寮がいくら治外法権であろうと、学院長の孫が学院の掲げる公平の理念から外れる訳には行かない。

 と説明して許可を貰ったのだ。


「リヴィアの従者は賑やかね。シドは何か報告とかあるかしら、無ければそれでいいけど」

「えっと…。事故もなくて普通でした」

「そう、良かったわ。普通が一番よね」


 ドルセーラ組の会話終了。

 実に簡潔で無駄が無い。

 シドは仕事ぶりも同様で、言われてない事まで気を回すタイプではないが、言われた事に関しては無駄を省いた効率的な動きで短時間でテキパキと済ませるので、意外と出来る執事という評価だ。


「お姉さまはどうですか。セイとは上手くやれそうでしたか」

「そうね。留学生でこの国の常識はまだ分からない事が多そうだけど。悪い子じゃなさそうだし、付き合うとしても悪くないんじゃないかしら」

「ふふ。一日でお姉さまにそこまで言わせるなら合格ですね」

「分かってると思うけど、セイは完全にリヴィア目的で傍に来たわよ。だから私の友人にというのは少し違う気がするわ」


 祖父母のオマケ、両親のオマケ、姉弟のオマケ。

 ドルセーラは常に誰かのオマケという立場に甘んじて生きてきた。

 ここでは妹のオマケである事を意識しているのだろう。


「知り合って初日に友人にというのはハードルを上げすぎです。切っ掛けは別でもこれから徐々に仲良くなれそうかどうかが大事ではないですか」

「リヴィアがそう思うならそれでいいわよ。私に自力での友人作りなんて、どうしたらいいか分からないもの」


 そのオマケという考え方は自信の低下や自己評価の低下を招いている。

 本当は姉兄達の中で一番潜在能力が高いというのに、自ら選んだのではなく、境遇によって知る機会を放棄し腐らせてしまうのは、彼女の境遇に一枚噛んでいる身として多少なりとも責任を感じる。

 平たく言えば見るに忍びないのだ。


「そこは当然サポートしますから。ふふふ。今日のお姉さまは義母さまがご覧になっても頑張っていたと思ってもらえますよ」

「そうかしら。自分じゃ上手くできたかなんてよく分からないわ」


 言葉とは裏腹に感情の色からは満更でも無さそうである。

 心理学は畑違いだが、私に依存させるつもりではないので急激な意識改革や誘導は避けて、少しずつ時間を掛けて意識改善させる方向にしておこう。

 その為にも。


「シド。これから毎日、誰か目についた方を観察して、その人が何をして何を考えていたのかを想像して夜にお姉さまに報告しなさい。

5分程度の短い時間で構いません。人選は任せますがなるべく偏らないように」

「…どれくらいの期間ですか」

「仕事に差しさわりのない簡単なものですから。少なくとも学院に通う間は続けなさい」

「分かりました」

「ちょっとリヴィア、勝手に私の従者に妙な注文しないでよ」


 確かに例え姉妹でも対等な立場である以上は主人を飛び越えて従者に命令を下すのは本来ならばマナー違反である。


「お姉さま。他の者の視点を知らずに友人付き合いは難しいですよ。それにもっと従者との意思疎通は行うべきです。必要なのはたったの5分だけですから」


 しかし、明らかに主従のコミュニケーション不足が見て取れる状態で、それが原因で生活に支障を来すと判断される状況であれば話は別だ。

 まともな従者ならば自ら進言して主人をサポートするべき状況である。


「うぅ、似たようなことは入学前にお母様にも言われてたわね。

分かったわよ、5分だけだものね」


 なるほど、私が言うまでもなく既に注意されていた内容だったか。

 だからといって二人のペースに任せていたら、ほとんど進展の無いまま一年くらい簡単に過ぎてしまいそうである。


「そうですよぉ。従者との意思疎通の時間はとても大事です。私もさっそくお嬢様のご意見に従って今日の目についた生徒についてご報告しますぅ」

「ん、ボクもする」

「アルトはお嬢様とずっと一緒に居たじゃないですかぁ」

「それでも情報は多い方がいい」

「そうですけどぉ〜…」




[302]


◇◆◇


 食事が終わり、それぞれの部屋へと戻った後。

 妹の助け舟について反芻する。


「リヴィアの所はとても仲がいいわよね。はあ、シドもとりあえず観察と報告はする方向でいいわね」

「はい。至らなくて申し訳ございません」


 余計な事を言わないから選んだ従者だけど、正直扱いきれていないとは思っている。

 人との付き合い方が分からない。

 距離感とか言われても分からない。

 何故人によって一々変えなくてはならないのか、全部に一定の距離感が最初から定まっていれば悩む必要も探る必要も無いのに。


「いいわ。本来なら私から何か意見を求めるべきだったもの。さすがはリヴィアよね。ねえ、シドはあの子のことって何か聞かされてる?」

「いえ、母君が神子様であるとしか」


 まあそうでしょうね。

 私にも詳しいことは何も聞かされていない。

 まして使用人に聞かされているのは一緒に生活する上で必要な最低限の事だけ。


「本当はね。お祖父様もお祖母様もあの子はあのまま田舎の領に置いて、必要な時以外は外出するのも禁止して、成人してもお披露目会も学院通いもさせないつもりだったのよ」

「それは、徹底していますね」

「でも今こうして学院へ最年少入学をしてある程度の自由まで得て通ってるの。どうしてだと思う?」


 そんなに大事ならずっと誰の目にも晒さないという選択肢はあったはずなのに、ある時期から祖父母の方針が少しずつ変わり始めたのを感じていた。

 祖母はすぐに方針を変えるべきと言い、祖父は断固反対すると言い、一時は喧嘩にすらなりかけた。

 けれど大伯父様、国王陛下と密会してから渋々ながら祖父が折れたのを知っている。


「解りません。優秀だからですか」

「そう、優秀だから。お祖父様もお祖母様も学院通いを許可せざるを得ないくらい、それが最善策と思わせるくらいとびきり優秀だったからよ。

信じられる、あのお祖父様が許可を出すなんて?」


 祖父はその後しばらくは終始不機嫌で、学院の事となると話題にするのも嫌がり、妹との打ち合わせも全て祖母に仕切らせる形にしていた。

 きっと自分だとつい反対意見を口にしてしまうと思って、それなら最初から関与しない事で余計な横やりを入れないようにしていたんだと思う。


「どうして自分にそれをお話になられたのですか」

「単純な話よ。私はこれでも大貴族の一人なの、例え誰からも期待されてなくてもね。だから大公家の一員として、一族の中で一番価値がある妹を最優先にする義務があると思うの」


 この家は常に妹に重心が置かれている。

 何をするにも両親も祖父母も一番に考えるのはあの特殊すぎる妹の事から。

 姉妹ということになってるけど、私と妹では本来は身分が違う。

 私達は正確には分家で、妹だけが本家で直系王族。

 両親も祖父母も優しいから口には出さないし、そうしろという圧力も掛けて来ないけど。

 本来なら私に与えられるべき役割はお目付け役の姉ではなく、乳母姉妹としての従者の様な立場であるべきなのだ。


 優しくする、公平に扱う、義務を負わせない?

 舐めないで欲しい。

 期待されるのなんて真っ平ごめんだけど、期待されないのだって結構クるんだ。


「だからねシド、観察と報告する人物は妹の害になりそうなのを優先しなさい。報告に必要ならば5分と言わずに10分でも一時間でも構わないわ」

「分かりました」


 私の従者は本当に余計な事を言わない。

 私の声が少し上擦ってても、いつも通りに返す。


「それだけよ。もう部屋に戻っていいわ。植木の世話をする時間でしょ」


 そう言ってベッドに身を預けて、さっさと出るようにと手で合図する。


「ドルセーラ様」


 珍しくすぐには退室せずに声を掛けてくる。


「何よ、私もう疲れたから手短にして」


 今はあんまり人と顔を合わせたくない気分なのに。


「自分はドルセーラ様の事を主人だと思ってます」


 しかも無理して慣れない気遣いをしてきた。


 よして欲しい。

 人には相応の役割がある。

 気遣いが苦手なら無理してやらなくたって、別に期待されてないんだから、それが相応の役割なんだって納得しておけばいいのに。

 こっちはさっき自分で言ったばかりのなけなしの強がりを少し後悔してる所なんだ。


「私に付いてたって出世出来ないわよ。でも、好きにすればいいわ」

「では、お休みなさいませ」


 人の事は言えない。

 立派な姉になんて絶対なれないし、腹を括って妹の役に立つ従者にもなれないけど。

 せめて妹の足を引っ張る真似だけはしたくない。


 ああ、私にも人並みの自尊心があったんだ。


「足手まといって思われたくないなぁ…」


 セイが羨ましい。

 初対面であの人を惹きつける魅力を持った優秀な妹に気に入られようと積極的に近づけて。

 私も姉妹じゃなかったら、あんな風にあからさまに近づいたり出来たのだろうか。


 無理ね。そんな勇気無い。

 きっとあの遠巻きに観るしか出来なかったその他大勢と同じだった。

 なら今の位置に甘んじてもいいんじゃないかな。

 姉という立場で生まれた、ただそれだけの幸運を使ってでも、隣の席を陣取ったって。


 ああ、きっとお母様も同じだったんだ。

 従姉妹という立場を使って、神子様の隣の席に居座る道を選んだんだ。

 母娘二代で同じ事をしようとするなんて、因果なものよね。

 リヴィアは私にとっての太陽なのよ。

 セイには悪いと思うけど、その席は簡単には譲れない。


 はあ、でも三年間もこのモチベーションを維持出来る自信がない。

 結局私はちょっとずつ色んな人に甘えながらしか生きていけないのだ。





《余録》


「セイ、悪いけどリヴィアの隣の席は譲れないわ!」

「いいえ、いくらドルセーラ様でも、私だって譲れません!」

「そう言うと思ったわ。だから教えておいてあげる」

「何を言われても引きません!」

「そう言っていられるのは今の内よ。いい?

例え私を押しのけても、リヴィアの隣の席には座れないのよ」

「何故ですか。ま、まさか…」

「ええ、その通りよ。席を狙っているのは私達だけじゃないの!」

「そんな、では他に誰が狙っているというのですか!」

「『勇者』よ!」

「ゆ、勇者…様…!?」

「ええそうよ。例えメンタル最弱の私を押しのけてもその次には勇者が待ち構えてるの」

「そんな…、勇者様が相手だなんて…」

「どう、負けを認める気になったかしら?」

「何故ですか、ドルセーラ様は自ら勇者様に負けを認め切ってるのに、どうしてそんなに余裕でいられるのですか!?」

「ふ、セイもまだ甘いわね」

「…なん…、ですって……」

「リヴィアが勇者と結婚したとしても、私は小姑の座が約束されているからよ!」

「あっ…!あああぁ…っ!!」

「よえやく理解したようね。そう、例え勇者との結婚を阻止できなくても、私は小姑。でもセイ、貴女は何?」

「あぁ…、嗚呼ぁぁ…」

「元同級生?それが何になるのかしら?」

「私では、最初から相手にならなかった…のですね…」

「ふ、勝ったわ…!」



◇◆◇



「お嬢様、起きて下さい」

「…うぅ。…シド、今何時だと思ってるのよ…」

「お嬢様、今日からリヴィアゼアお嬢様とご学友の方と一緒に早朝訓練をすると言っていたではありませんか」

「…はっ!?いけないわ、私の席が…」



・夢オチです。

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