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1000通りの計画  作者: Terran
第五章 新時代の英傑王
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新時代の英傑王 4



[237]

 十二歳の誕生日を迎えて、成長の足跡を振り返る事にした。


 私は他者よりも身体が弱く産まれた。

 しかしそれは神々の加護の一種である重苦による基礎能力の大幅減少によるものだ。

 どうやらそういった先天性の能力低下はこの世界では呪いとして捉えられており、大抵の場合は産まれてもすぐに息を引き取るのだと後になって知った。

 その影響で寝返りを打つ事も、這うのも、歩くのも遅れたが、実際には影響半分、故意に因るものとの半々である。

 弱い身体では筋力の発育は勿論、骨の発育にも影響を与える。

 無理に発達させようとすれば後々に深刻な障害を残す恐れが懸念されたため、慎重に体内環境の調整から順々に整えていった。


 前例を調べようにも赤子ではそれもままならず、前世の知識を頼りに丁寧に育成させていく。

 それはもう、毎日が細心の注意を払う連続である。

 同時に、私は脳の発育の為にも多くの努力をしていった。

 脳の発育は幼少期にこそ真価が発揮される。

 しかし転生者が己の意識や脳の使い方を優先すれば、それは生前の物に酷似した機能に多少上乗せした性能にしかならないという仮説を立てて、なるべく今生の可能性を捨てない様に、あらゆる機能を発達させて偏らせない育成を施していった。

 お陰で前世の私では苦手だった分野も今生では思うがままに可能となり、脳の容量増加も一代限りの単為進化も目覚ましい成長を遂げていく。


 当然ではあるが、前世の私の情報だけでは大きく容量が余り、今生のこの身体の本来の意識というものも芽生える事となった。

 とはいえ、二つの意識という訳ではなく多重人格とも少し違う。

 一人の意識に並列する二つの思考パターンが同時処理している。

 私は私であると同時にリヴィアも平行してリヴィアでもあるのだ。


 脳の発育の他にも身体の神経系の発達にも当然気を使う。

 触覚だけでなく嗅覚や聴覚や味覚といった代表的な物から、物理的な物に含まれなくとも知覚出来るものなら何でも発達させていった。

 【魔力】や【氣】、【霊力】や【神力】まで、思い付く限りの知覚能力と感知能力を伸ばしていく。


 視覚は少し経ってから発育させていった。

 最も大きな情報収集媒体故に、頼り切りになる事を懸念して他の感覚器官の発達を待ってからの育成。

 体力を底上げする事も忘れず、徐々に筋力も発達させていった。

 魔術には手を出さず、ひたすらに地道な基礎を積み重ねて行き、初めて魔術に手を出したのはギフトを貰ってからである。

 それも、体内魔力を使わず体外魔力を使っての発現であり、身体に負担は掛けなかった。

 

 肉体の成長はヒルデの育成に着手してから自らに反映させ、この頃からようやく成長の質の向上を実感していく。

 ゆっくりとだが、他の同年代の子供達との差を速度ではなく質で埋めていくように。

 私が同年代の平均的な身長にまで育ったのは十歳頃になってからだ。

 大人の身体になる事をなるべく遅らせて、最大限の発育期間を設ける。

 リヴィアは私の影響を受けているのか他の子供達より圧倒的に成長が遅い。

 周囲はどんどん伸びていく中でもマイペースに無理のない成長を心掛けて、どんなに遅くても負担は与えず質の良い発育を目指す。


 そんな中で超能力の開発は大きかった。

 発現当初はあまり特筆すべき利便性は無かったが、これが意外にも私の方針とよく噛み合った。

 魔力や霊力とも違う、この世界の人々にとって認識不能な力による現象を引き起こすという事は、つまり何も証拠が残らないのである。

 今後も安全マージンを確保しながら、無理のない範囲で、多元的なアプローチを以て伸ばしていく。


 最近のヒルデの身長は同年代の男子の平均とほぼ同等、アルトと私は同年代だがアルトの方が一回り大きく成長している。

 やはり種族的な成長速度の差は大きいと言わざるを得ない。

 ヒルデはだいぶ女性らしい体つきになり、貴族の子息からの熱い視線を受けているが、当人はまだ今ひとつ理解していなさそうだ。

 対してアルトは女性らしさには興味が無いみたいだが、中性的な容姿も相まって独特の色香が漂い始めている。

 こうなってくると男性の方が色々と都合が良いと感じる。


 性別に関係なく見目の良さの与える心象は実力不足を補う作用を見込めるが、行き過ぎれば余計なしがらみが増える。

 若い時分では特にそれは顕著で、大多数の者には目で見た情報が印象の大半を占めてしまう。

 メリットとデメリットの均衡が崩れる前に、容姿などに左右されない実力を身に着けさせられればそれでいい。


 私も十二歳となったのだ。

 学院へ入学後からは徐々に大人の身体へと成長を始めると思われる。

 なるべく遅く長く、なだらかな成長曲線を描く様に調整はしていく予定だが、そんな事情を考慮せずタイムリミットは刻一刻と近付いて来ているのだ。

 多少の時間稼ぎはしているが、一人でやれる事など高が知れている。

 上手くやろうとしない者に任せて放置する事に抵抗を感じる程度には、私も少々この世界に馴染み過ぎている。

 結局の所、転生者の誰が世界を救うにしろ、救わないにしろ、いずれは線引をして白黒はっきり付ける必要が出てくる。

 その時に一人だけ未成熟な子供なので参加しても主張が通りませんでした、では話にならないのだ。

 既に準備が整った者には申し訳ないが、私の成長までは何としてでも足踏みさせなければなるまい。


 この世界の転生は公平で不都合が多い。

 あの作為的な転生特典の振り分け次第では産まれてすぐ命を落とす危険性があり、ギフトはあくまでも技能の補助輪であり本人の努力や実力が大きく反映され、どの家に産まれるかも選べるものではないし、必然以外の部分では全て確率通りだと思われる。

 世界を救うのが使命だとしても、そこへ到る道筋は示されておらず、勿論単純な力で解決する様なクエストも存在しないし、転生者だからと世界が優遇してくれるでもない。

 全て自己責任で、自分で考えた自分なりのやり方で、一人の人として可能な範囲内の事を積み上げて実行するより他ない。


 転生者だからと言って英雄としては生まれない。

 自分が他の者より英雄らしい英雄足り得る上等な人物になるしか無いのだ。

 何の支援も無しに、だ。

 全て自己責任とはそういう事であり、せいぜいが転生ボーナスで獲得したポイントの振り分けくらいしか有利な点は無い。

 とは言え、ギフトの組み合わせが任意に選べた事と、前世の人生経験があるのは大きなアドバンテージである。


 この世界が単純な仕組みならそれでも何とかなったのだろうが、残念ながら転生者よりスペックの高い人物は普通に存在しており、本物の英雄も居る。

 そして何より注意すべきは、この世界の上層部は転生者の存在を既に知っている事だ。

 完全に理解しているかどうかはさておき、転生者の使命についてはある程度把握されていると見て良いだろう。

 勘違いしているフシはあるが、その勘違いが転生者にとって、実に不都合な解釈なのだからたちが悪い。


 これは国の上層部しか知らされていない事実だが、現在は新生児が転生者だと判別されれば即座に殺処分されるシステムが出来上がっている。

 当然ながら転生者を見抜く技術も確立済である。

 故に、あれだけ居た転生者達が未だに世界救済を果たしていない。

 まあ、それらは全て先に転生してきた者達の大失敗が原因で現地人達に危機感を持たせてしまったのが始まりであることは、書館の禁書から読み取れた。


 それとこの世界では前世のゲーム的な知識があまり役に立たないようだ。

 難易度は前世の世界とほぼ同じ。

 あくまでも、この世界に住む他の現地人と同等の条件で、使命を全うしなければならない。

 他の転生者を判別する方法すらサポートは無いので自力で何とかするしかなく、転生時期もバラバラ。

 今まで何人の転生者が居たのかも不明。

 何人死んだのかも不明。

 誰が転生者なのかも不明。

 何を成してきたのかも不明。


 そもそも転生者同士に元からの面識も無い中での話なのだ。

 転生者達の情報を知りたければ、何とかして一人一人の手掛かりをゼロから足で捜してアナログな方法で突き止めるより他ない。

 大抵の者なら、これは自分には不可能と判断するだろう。

 実際に大半の者は諦めたのだろうと推測出来る。


 それでも不可能ではない、と私は考える。

 不可能である筈が無いのだ、それだけは確信出来る。

 私の最大の武器は前世での経験である。

 おそらくはこの世界へ転生したあらゆる人物よりも大きなアドバンテージ。いや、呪いのような物か。

 私とて、この経験という武器無しでは途方に暮れ、ただ闇雲に試行錯誤を繰り返して救済方法を探していただろう。

 ひょっとすると今と大差ない育成くらいは実現していたかも知れないが、それはあくまでもやれる事から達成した結果というものだ。

 その先が無ければ活かしきれない。


 私の前世の世界には魔力も魔物も無く、環境を破壊する科学によって支えられた消費文明。

 それでも歴史と技術向上により改善して、事件が始まるまでは比較的安定した世界だった気がする。

 自分の顔も名前も思い出せないが、そうであったという記憶だけは残っている。

 異世界に対する知識の大半はフィクションに詳しい部下の受け売りであり、私自身が真面目に考察した事など無かった。

 SFくらいなら暇潰しに触れもしたがそれだけで、そんなものが現実にあった所でその時の自分とは関係がない、と考えていた。

 本当に今更だが、こうなると分かっていれば予習は怠らず考察も組み立てていただろう。


 所詮私一人が何を想像したところで、何千万人、何億人に考察され支えられてきた知識の集大成には及ぶべくもない。

 今になって世界一の蔵書量を誇る書館を利用して知識を蒐集している自分が、酷く滑稽に思えてくる。

 前の世界で蓄積され、洗練されていた膨大な知識の何と尊いことか。

 学問や生活の知恵、人類の歴史だけでなく、雑学や取るに足らないと切り捨てた娯楽の知識ですら、真に不要な物など無かったのだ。


 だが今更嘆いた所で選択肢など限られている。

 酷く馬鹿馬鹿しいとは思うが、私はこの茶番に付き合わなければならない運命に立たされたのだ。

 ならばやるしかあるまい。

 状況は逼迫している。今回ばかりは尻尾を巻いて逃げる訳にも行かないのだ。

 転生者の一人として、この世界に生きる一人の人として、やるべき事を為して積み重ねて行こう。


 どうにも他の転生者達のやり方が洗練されておらず雑な気がしてならないのだ。

 人数も年月もあっただろうに、それでも通じないのはそれだけこの世界が手強いからなのだろうか。

 他の誰もが出来なければ実行する。そのつもりではあるが、これは実行を余儀なくされる可能性も高いと見て準備しなければならない。

 再設定するとしよう。

 やり方は大きく変えないが、これからは向き合い方や態度を少し改めようと思う。


 他の転生者は、残念ながら信用出来ない。

 それが、現時点における私の偽らざる評価である。




[238]

 私宛の手紙が届いた。

 夏も終わりに差し掛かり、いよいよ学院入学前の最後の仕上げに移ろうと思っていた所へアルバート商会を通してオリナウトから手紙が届いたのだ。

 書かれていたのは脚本の完成を報せる内容。たったの三ヶ月余りで書き上げるとは、大した物である。

 予め目を付けていた劇団の一つを押さえて、私を含めた関係者に脚本を贈るように通達する。

 そしてオリナウトには脚本家として演技指導に参加出来る様に計らった。


 オリナウトに脚本家としての才能があるかどうかに関しては気にしていない。

 そもそも素人が思い付きでどうにか出来るとも思っていない。

 この際、内容の出来は関係無いのだ。

 どんなに荒唐無稽だろうと、お遊戯会レベルだろうと構わない。

 今回の主旨は、彼が人に関心を示すきっかけを作る事そのものが目的なのだから。


 したがって、例えどんなに素人丸だしの演し物となろうとも、劇団の皆さんには精一杯オリナウトの書いた脚本を実現させて貰うつもりだ。

 ハイエンドな劇団は仕事が立て込んでいるので、この件には中堅どころを押さえている。

 無茶振りは十分承知なので依頼料には色を付けて支払うし、貴族のクライアント相手に付き合う経験も積めるのだから、これから王都で成功を収めたい劇団にとっては渡りに船ではなかろうか。

 中堅が演りたい劇と役だけで食べていけるほど王都は甘くない。



 それとは別に、ギルバートから長期休暇の申請があった。

 毎年夏になると三週間程の休暇を申し出るのだが、今回は期間がやや長くひと月半。

 本来ならば弟子の受験の年に教師の長期休暇など以ての外で、到底認められないのだが。今回は条件付きで許可をする事にした。

 ついでにもし期間を超過した場合は超過分の休日返上も申し渡す。

 物凄く厭そうな顔をしたが超過しなければ良いだけの事である。

 休暇の日程や内容も本人の申告通りで許可しており、期間を短くもさせていないのだから厭な顔をされる理由が無い。

 心当たりが無い訳でもないが、それは私がしっかり者の義妹というだけの話である。

 休日返上と言ったら確実に取り立てるのは当然の事で、私相手に宥め賺すのも煽てるのも通じないだろうが、そこはそれギルバートの自業自得である。


 そうしてギルバートは一秒でも惜しいと言わんばかりに急いで飛び出して行った。

 あの様子、おそらく遠征だろう。

 異境発生を見越して戦闘の勘を取り戻す為にダンジョンにでも潜ると観て間違いない。

 先日のパーティメンバーから攻略の助っ人を頼まれていたのは知っている。


 ギルバートは我がファナリア大公家の現在の聖戦枠担当なのだ。

 その為の準備である旨を話しはしなかったが、それは祖父や父との契約でなるべく伏せる事になっているのだろう。

 正直に話すのなら私としても許可しない訳には行かないが、当のギルバートはそれを盾にして前々から行きたかったダンジョンへ潜るつもりなのだ。

 超過のペナルティの話に後ろ向きだったのも、攻略の進展次第では超過も十分考え得るからで、確実な帰還期日の約束など出来ないからだ。


 そんな事情も解っているし、本当は必要無かろうともギルバートは家庭教師の肩書きと役割を担っているのだ。

 ならば何も詳しい事を話さないギルバートには約束の期日はきっちり守らせる。

 大公家の一員として情報を共有して、責任の一部を被せるというのであれば事情は考慮しよう。

 たが、家庭教師と教え子というスタンスのみで押し通させるのならば相応の対応をする。

 それはそれ、これはこれなのだ。

 裏向きの事情がどうあれ、表向きの約束した期間内に仕事を仕上げるのが社会人というものである。


 ギルバートの気持ちは察しているし、授業に関しては私を信頼して自力でも期間内に達成出来ると踏んでくれるのは解るが、それは教師の仕事を放り出す理由にはならない。

 最後までしっかり責任を果たして貰いたい。

 この後に待つ聖戦で更に授業時間は短くならざるを得ないのだから。




[239]

 神託が下った。

 次なる聖戦の地は人神領域、エストバース王国。


 異境の出現は人々の記憶に深く根付いた魔神領域の大敗から七年目。

 海神領域を奪われ、魔神領域には人の住めない地域が拡がり、その前の地神領域ですら辛勝という異境に対する恐怖が染み付いた昨今。この人神領域で勝利しなければ、おそらく世界には拭えぬ程の大きな爪痕を遺すことになる。

 決して負けられない聖戦が、始まろうとしていた。


 国ごとに違いはあるが、エストバース王国の貴族の聖戦への参加要項にいくつか定めがある。

 伯爵以上の爵位の貴族に課せられるのは一族の者から一人の参戦、並びに所領地に相応しい数の従者への託印と兵員の確保と、兵站の準備である。


 中級貴族である子爵や男爵は当主の代替わりの度に一度の参戦義務が発生し、こちらも所領地相応に従者への託印と兵員の確保や、兵站の準備も併せて義務付けられる。

 領地を持たない場合は、寄親の持つ兵達を率いる将となる。


 下級貴族以下、士長爵や騎士爵は、より上位の貴族の要請により参戦の責務が発生。

 また、叙爵して新貴族となった者には次の聖戦へ必ず参戦する義務が発生する。

 その際には従者への託印までが責任となり、兵員や兵站に関してはどちらが揃えても良いが、要請した上位の貴族側が用意するなり資金援助するのが基本である。


 これらに背けば状況次第で罪に問われたり、降爵や除爵も起こり得る。

 ここまで明確な貴族階級に応じた責務が定められ、国と世界の為に命を懸ける厳格な法律で縛られているからこそ、貴族は敬われ国から特別な扱いを受けられるのである。


 対して平民の参戦は立候補か、納税の免責や、金銭で雇われるものであり、罪人でも無い限りは拒否権も認められていて義務までは発生しない。

 例外として、聖印の発生した者に限っては神の定めた運命として参戦の責務が生ずる。


 この聖印というものが如何なる条件で発生するのかは不明だが、異境出現の神託が下ってからおよそ一ヶ月の間に世界中の成人した人々の中から一定の割合で授けられ、身体の目立つ部分に印として表れるのだ。

 聖印を授かった者には申告義務が課せられ、これを拒否したり怠ると処罰の対象となる。

 聖印を与えられながらも異境へ入らなかった場合、青白く輝く聖印は呪印へと変化し赤黒く変色する。

 余程の事情が無い限り呪印持ちは罪人として扱われ、次の聖戦には必ず参戦させられる。


 この聖印は教会へ申請すれば上位の聖職者の手により移植が可能で、聖印の発生した者から参戦を希望する者へと譲渡をすることで、参戦の権利ごと託印させる事が出来る。

 聖印を授かった領民の内、参戦に適さない者から移植して、参戦する従者や兵達へ託印するのが一般的とされる。

 また、呪印は新たな異境出現時に再び印としての機能を得る。

 異境へは印を持たない者単独では入る事が出来ず、必ず印持ちと共に入る必要がある。

 印一つにつき最大五人までの同行者を連れて行ける。


 貴族家に聖印を授かる者が居た場合、一族の別の者への託印は許可されているが、余程の事情でも無い限りは爵位に関わらず参戦の義務が発生する。

 これが比較的参戦義務の緩いはずの下級貴族でも平等に起こるため油断は出来ない。

 この強制参戦によって跡取りや当主を喪う例も少なくないのだ。


 例外として六大神の眷属たる各大陸の王家の血筋にのみ生まれつき表れる王紋の所持者には聖印は発生しないが、王紋そのものが印の上位互換であり、参戦せずとも変色したりはしないが、同行者ごと異境へ入る事が可能な点を含めて同様の効果が得られる。

 王紋は王家の血を引いていても必ず発生するものではなく、王紋を授かる事が王位継承権発生の条件とされている国がほとんどで、同時に王家の参戦枠には余程の事情が無い限り王紋持ちが選定される決まりがある。


 そして、極稀に移植出来ない聖印を授かる例もあるらしいが、その場合は神から新たなギフトを授かっている可能性が高いという。

 その印は【聖紋】と呼ばれる特殊なもので、同行可能な人数も多く、英雄たる活躍をする者になる可能性が高い事から、国から特別待遇される。

 見た目は他の聖印と変わらないが、異境へ入ったり移植しようとすると真の姿を表し、紋様が変わる特性があるのだとか。

 【聖紋】はギフトを授かり名誉貴族となれる可能性もある事から、自身に発生した聖印の鑑定の為に教会へと申請する者も少なくないという。



 聖印の発生確率は、異境出現領域なら平均して一万人に一人程度で、それ以外の領域で更に1/5前後である。

 どういう判別方法を取っているのかは謎だが、出現国が最も割合が多く、特に貴族の血族からの発生確率が非常に高いらしい。

 聖印の発生数は全体で数万人といった所か。

 となると、同行者も含めれば一度の聖戦に参戦出来るのはおよそ十万人から二十万かそこらだろう。

 海神領域の相手側の人数側はせいぜいが十数万といった所なので、参戦する両世界とも世界人口から観る発生数はほぼ同数なのかも知れない。


 我がリンデノート領からも若干名ながら印発生者が居た様だが、人口の割に酒造産業のお陰で比較的裕福な領であるため参戦拒否は認められており、教会を通しての託印の費用はファナリア大公家持ちとして無償で受けられる。

 ハバートート領の衛士隊や所領の騎士団の人数を考えれば、本人の立候補が無い限りは全ての聖印は回収されて移植に回されることだろう。

 こうして聖戦による民への負担を全て請け負えるからこそ、大貴族として相応の扱いをされる権利が認められているのだと改めて思う。

 そうでなくても今回の異境は国内に発生するのだ。

 余所から聖印を買ってでも参戦の意思表示をする貴族が大部分だろう。


 しかしギルバートで本当に大丈夫なのだろうか、指揮とか戦略とか諸々不安になるのだが。

 まあ、ああ見えて魔術学院次席のエリートという話だし、何とかするのだろう。

 私としては仮にも義兄だし、泣きついて来たら多少の支援はするが、概ね自主性に任せるつもりだ。




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