第四話
地上調整機関アースガルズ————この場所は神々が住んでいる天上に存在し、人間達が生活している地上を管理している。
その場所で、アースガルズに所属する神様達は、地上における生物や資源のバランス・国や企業、個人などが適切な状態になるように、日ごと、システムを用いて調整していた。
その中で、タソガレをリーダーとするチーム「ライジングフォーチュン」は、地上で困っている人間を、幸せに導く任務を請け負っていた。
この話は、サクラ・ハヤテ・キラボシ・ミナモ・タソガレの五人が、地上のシステムを駆使して、ゲームクリエイターとして働く磯山由香の転職活動を支援するストーリーである。
果たして、磯山由香は理想的な転職を成功させることができるのだろうか?
設定
天上:神々が住んでいる世界。人間が住んでいる地上と、お互いの行き来はできない。
アースガルズ:天上に存在する場所で、神々が地上に対して影響を与えることができる機関。
システム:神々が地上に影響を与える場合に使用するもの。地上で言うところのコンピューターである。
神様:天上に住んでいて、人間と同じ姿をしている。
上級神:アースガルズで大きな権力を持つ神様。
最高神:アースガルズで一番大きな権力を持つ神様。
管理項目:上級神以上でないと使用できない調整。地上のコンピューターや機械を操作することができる。
その他:上級神以上は、地上で発生した過去の映像を自由に視聴することができる。また、上級神の許可を得られれば、一般の神様も視聴することができる。
1 磯山由香
私の名前は磯山由香。年は三十歳で、人からは男っぽい性格をしていると言われる。仕事はゲームクリエイターである。
ゲームクリエイターと言っても、いろいろ役割は存在するが、私は開発エンジニアを担当している。開発エンジニアというのは、ゲームの仕組みを作り出す仕事だが、具体的な作業はプログラミングである。例えば、ある操作ボタンを押すと、画面のキャラクターがジャンプするようにしたい場合、対応する動作が発生するようにプログラムを作成するのだ。
また、勤めている会社では、アプリゲームの開発をしている。アプリゲームとは、スマートフォンやパソコンにゲームをダウンロードして遊ぶもので、専用のゲーム機を買う必要が無い。こういったゲームは、多くが売り切りのゲームではなく、定期的にアップデートする必要がある。つまり、すでにゲームを遊んでいる人がいる状態で、ゲームの内容を変更するという意味だ。
私は、今の企業で長く働いているが、この仕事を楽しいと思っている。それは、子供の頃から好きだったものを、自分の手で作っているという満足感が得られるからだ。また、プログラムを作るのは非常に労力がいる作業だが、完成したときは大きな達成感を得ることができ、それが快感だからだ。結果として、自分が作り出したもので、ユーザーが喜んでくれたら最高である。尚、ユーザーとはゲームを遊んでくれる人達のことである。
しかし、不満な点も二つ存在する。一つ目は、日によって残業が非常に長くなることである。現在、私が携わっているゲームは、定期的にアップデートをしなければいけない。そうすると、アップデートしたタイミングで不具合が起きて、まともにゲームが遊べなくなることもある。その場合、ユーザーから苦情が入り、速やかに改善する必要が生じる。そうなると、残業が発生してしまうのだ。そして、二つ目は、待遇が良くならないことである。私は、専門学校を卒業してから、ずっと今の企業で働いている。しかし、出世だけでなく、昇給も経験したことが無い。
このように、今の仕事は好きではあるが、待遇が変わらないので、将来に不安を感じることがある。そのため、最近では、別のゲーム会社に転職しようか考えることがある。
私は、いつも通り社内で作業をしていた。仕事が一段落ついたので、社内の時計に顔を向けた。午後三時を回ったところだった。私は休憩するために席を立ったが、エンジニアチームのリーダーである小島が近づいてきた。小島は、三十代後半の男性で、与えられた仕様書を見て、各エンジニアに仕事を割り振る立場である。
「磯山さん、ちょっといい?」
「はい。何ですか?」
「新しい仕様書が届いたから、ここの部分を作って欲しいんだけど––––これ、仕様書。」
私は、小島リーダーから渡された書類を一通り確認して、彼に返答する。
「納期は––––一週間後ですね。でも、この仕様に対応するプログラムは、複雑になりますよ。もう少し、シンプルな企画に変更できないんですか?私が大変だってこともありますけど––––不具合が出る可能性も高くなりますよ?そもそも、この企画を複雑にしても、ゲームは面白くならないですよね?」
「ああ。それは俺もディレクターに指摘したんだけど、却下されて‥。」
小島リーダーは困った顔をしていた。
「とりあえず、作ってみますけど‥。」
「頼むよ。」
小島リーダーは私に頭を下げて、自分のデスクに戻っていった。
ゲームの開発をする場合、プロデューサーとディレクターがいる。プロデューサーはゲームの企画に関する最高権力者で、ディレクターは制作現場の最高責任者である。簡単に言えば、プロデューサーが一番偉い人で、ディレクターが二番目に偉い人である。
さきほど、小島リーダーが困った顔をしていたが、それは、ディレクターである山田が基本的に話の通じない人物だからである。山田は四十代後半の男性だ。私も、エンジニアとして何度か彼に意見を出したことはあるが、聞き入れてもらったことは無い。今回のように、小島リーダーを通して提案した場合でも、彼から良い返事が返ってきたことは無い。私と同じように聞き入れてもらえないのだろう。
私は、小島リーダーから渡された仕様書を再び確認して、
「来週は残業続きかなあ。」
と、憂鬱な気持ちになった。
2 同級生(磯山由香の視点)
私が働いている会社は、定時で午後七時上がりである。しかし、本日は二時間ほど残業してから退社した。なぜなら、本日、小島リーダーから渡された仕様書を見て、来週の負担を減らしたいと考えたからだ。これは、来週の残業時間を減らしたいという理由より、納期に間に合うか不安だという理由の方が大きかった。
私は、会社を出てから、最寄り駅の近くまで来ていた。さっさと帰宅して休みたい気持ちが強かったが、私は歩道沿いの防護柵に腰をかけた。それは、駅周辺の人混みを見ていたら、うんざりしてきたからだ。今日は、不本意で面倒な仕事を押し付けられて、精神的に疲れていたのだ。
「帰るのも面倒くさいなあ。」
私は、心の中でつぶやいた。柵に座りながら、俯いて目を閉じる。雑踏から、知らない人達の話し声が聞こえる。とても耳障りに聞こえた。しばらくの間そうしていると、男性が声をかけてきた。私は目を開けて、声の主に顔を向ける。
「あ、やっぱり磯山さんだ。」
私は、最初、その男性が誰か分からなかった。しかし、しばらくして思い出した。
「もしかして、川上君?」
「うん。覚えていてくれて良かった。高校以来だよね。」
彼は、川上大輔君と言って、高校の同級生だ。その当時は、仲が良かった。
「そうだね。どうしたの?こんな所で。」
「ああ。この近くで働いているんだよ。磯山さんこそ、どうして?」
「私も近くで働いているの。」
「そうだったんだ。偶然だね––––ところで、大丈夫?すごく疲れて見えたけど。」
「うん。実は、今日、仕事で面倒な案件抱えちゃってさ。それで、項垂れてたの。」
「そうなんだ。ちなみに、俺、まだ晩御飯食べてないんだけど、良かったら一緒にどう?––––そこで、ゆっくり仕事の不満でもぶちまけ合わない?」
「え?––––ああ、そうだね。いいよ。」
「じゃあ、どこにしようか––––お酒とか飲む?」
「うん。明日は休みだから大丈夫だよ。」
「そうなんだ。俺も明日は休みだよ。」
私は、高校の同級生である川上君と再会し、一杯やることになった。
私と川上君は、居酒屋で飲み交わすことにした。店内は、提灯がぶら下がり、所々にビールケースが置かれていて、典型的な大衆酒場であった。彼が話しかけてくる。
「磯山さん、おしゃれな店じゃなくて良かったの?」
「うん。私、そういうの気にしないから。」
「そうなんだ。それは、男としては、楽で良いけど。」
私と川上君は、二人用のテーブル席に、それぞれ着席すると、給仕の女性がやって来た。とりあえず、ビール二つと適当な料理を頼み、まもなく乾杯した。私は久しぶりにビールを飲んだので、苦味が際立って感じられた。仕事が忙しくて、しばらく飲酒することも無かったのだ。私は川上君に話しかける。
「いやー、残業で疲れた体に、ビールは最高だね!」
「そうだね。磯山さんって、結構お酒好きなの?」
「そういうわけでもないけど、割と飲める方だよ––––普通の男性と同じくらいには!」
「本当に?俺より強かったりして。」
「そうかもね。」
「そういえば、さっき『仕事で面倒な案件抱えちゃって』って言ってたけど、何かあったの?」
「うん。私、ゲーム会社で働いているんだけど、複雑なプログラムを作成するように言われたの––––それに意味があるのなら分かるんだけど、たいした理由もなく作らせるからさあ。」
「え?ゲーム会社で働いてるの?俺もなんだけど。」
「あれ?川上君もなの?どこ?」
私と川上君は、お互いの企業名を言い合った。そうすると、何となく親近感が沸いてきた。普通は競合他社としてライバル視するものかもしれないが、あまり良い役職に就いていないからだろうか、どうでもよかった。
「へえ、磯山さんはエンジニアやってるんだ。でも、エンジニアって、いつも勉強してないといけないから大変だよね。」
「そうなんだよね。場合によっては、帰宅してから勉強することもあるからね––––そういうところを理解してくれると嬉しいな。」
「ああ、実は、俺も少しは勉強してるからさ。簡単なプログラムしか作れないけどね。」
「え?でも、デザイナーなんだよね?それなら、デザインの勉強だけで良いんじゃないの?」
私が疑問に思った理由は、ゲーム制作は基本的に分業するからである。ゲームの方向性を考えるプランナー、プログラムを作るエンジニア、イラストを描くデザイナー、音源を作るサウンドクリエイターなどがある。
「そうなんだけどさ。実は、一人で作れるように勉強してるんだよ。今の会社辞めようかと思ってるから‥。」
「え?そうなの?」
「うん。今の会社は派遣で入っているんだけど、いつまで経っても正社員に上がれないから––––あと、二年前までは、別のゲーム会社で正社員だったけど、そこは待遇が良くならなかったし––––だから、独立しようと思ってるんだ。」
「でも、一人で全部を作るなんて無謀じゃない?」
「そうだね。それは、俺も理解してるよ。だから、デザイナーが担当する部分だけ重視して、プログラム部分とかは難しくしない方向で考えてる。」
「そうなんだ––––でも、川上君の話しを聞いてたら、『どこの企業も変わらないんだなあ』って思ったよ。」
「え?」
「私も専門学校を卒業してから、今の会社で働き続けているけど、昇進どころか昇給も無いんだもん––––だから、たまに、別のゲーム会社に転職しようか考えることがあるんだ。」
「ああ。そうなんだ。だから、どこに転職しても、基本的に意味が無いって思ったんだ。」
「うん。」
私は答えてから、不安な気持ちになった。それを察したのか、彼は、
「まあ、明日は休みなんだから、今日は思いっきり飲もう!」
と、明るく話しかけてきた。
「え?ああ、そうだね。ごめんね、しんみりしちゃって。」
「いいさ。」
それから、終電に間に合う時間まで話しをした。久しぶりに会った同級生は、高校生のときと同じように、優しい男だった。
3 有名動画配信者(川上大輔の視点)
俺が目を覚ますと、カーテンの隙間から光が差し込んでいた。ベッドの上に置いていたスマートフォンで時間を確認すると、正午を過ぎたところだった。
「ああ、ずいぶん寝過ごしちゃったな。」
俺は、軽い頭痛を感じながら、ベッドを降りた。そして、すでに昼だったが、朝のルーティンワークを始めた。
とりあえず、俺は、シャワーを浴びて、食事を済ませた。その後に、部屋の掃除や洗濯を始めようと思った。しかし、思い直して、家事と並行してインターネットの動画を見ることにした。パソコンを置いているデスクに移動して、自分が、よく見ている動画配信サービスから、お気に入りの動画配信者を選択する。その配信者は、ゲーム関係の配信者で有名な人物で、「ナイト」と言う名前だ。
ナイトは、基本的に話題となっているゲームの批評をしているが、ゲーム会社の事情に関して話すことも多い。俺は、自分自身がゲーム会社で働いているため、正直、ゲームの批評はどうでも良かった。なぜなら、遊んでくれている人達の要望は、情報として会社に入ってくるからだ。しかし、企業の末端で働いているので、会社の事情に関しては詳しく知らない。企業の詳細なことは、上層部しか知らないからだ。そういう理由で、俺はゲーム会社の事情を中心に、彼の動画を頻繁に視聴していた。
「どれがいいかな?」
俺は、しばらく考えてから、「ゲーム会社の実情」という動画を選択した。ワイヤレスイヤホンで音声だけを聴きながら、並行して掃除や洗濯を始めた。
「はい、どうも、ナイトです。僕は、いつもゲーム関係の批評を中心に動画作成していますが、今回はゲーム会社の実情について動画を作ってみました。これを見てくれた視聴者の皆さんが、少しでもゲーム会社のことを理解してくれたら幸いです。」
いつも通りの言い回しで、彼の動画が始まった。しばらく聴いていると、彼は、昨日の夜に俺が磯山さんと話した内容を語り始めた。
「某有名ゲーム会社で働いている人達から聞いたのですが、彼らは、『会社に勤めてから何年も経つが、まったく給料が上がらない』と話していました。誰でも知っている人気ゲームの制作に携わっているそうで、そのタイトルは––––。」
ナイトが発言したゲームタイトルは、本当に誰でも知っている名前だった。もし国内におけるゲームソフトで歴史の年表を作ったなら、間違いなく記されるタイトルだ。そして、彼は、そのゲームタイトルに関わった人達の、具体的な年収まで話した。それは、一般企業の新入社員と同じくらいで、俺や磯山さんとも変わらなかった。ナイトの動画は、さらに続いた。
「また、その某有名ゲーム会社で働いている人達は、別の有名ゲーム会社で働く知り合いがいるらしく––––又聞きになるんですが、その人も同じような待遇みたいです。」
彼の発言を聴くと、俺の中で、昨日の夜に磯山さんと話した事が確信へ近づいた。それは、どこに転職しても、基本的に意味が無いという話しの事だ。実際には、それなりの待遇を受けている人もいる。しかし、それは大手企業に新入社員で入社できた内の、一部の人だけだろう。
俺は、ナイトの「ゲーム会社の実情」という動画を視聴した後も、彼の動画を何本か再生した。そして、一通り家事が済んでからイヤホンを外し、ベッドに横たわりながら考えた。
「やっぱり、一人でゲームを作って販売するしかないのかなあ?」
俺は独り言を言いながら、ゲーム制作関連の書籍を手に取った。本を開いて勉強を始めるが、読み進めている途中で、不安な気持ちになってきた。それは、一人でゲームを作った場合、売れなかったら、時間と金だけを消費してしまうからである。
俺は、それでも読書を続けていたが、しばらくしてから、再びパソコンのあるデスクに移動した。それは、プログラミングの学習をしようと思ったからだ。
「本当、やることが多すぎて大変だなあ。」
俺は、つぶやきながら、パソコンの画面を見た。すると、読書前に見ていた、動画配信者ナイトの画面が映った。そのとき、俺は、彼の動画内に記載されているコメントが目に入った。
「これから、少数でゲームを作ろうと考えている方がいましたら、僕に連絡してください。状況を教えてくれたら、多少のアドバイスはできます。」
ナイトが視聴者に向けて書いたコメントだったが、その後にメールアドレスも記載してあった。
「これ、お金とか取られるのかな?」
俺は、そう考えたが、コメントには続きがあった。
「尚、アドバイスをしたからといって、金銭の要求はしません。但し、もしかしたら今後の動画でネタにさせていただくかもしれません。」
俺は、それを見てから、しばらく考えた。そして、彼にメールを送信することにした。
4 エラー(磯山由香の視点)
川上君と再会してから、二週間近く経過した。私は、彼と連絡先を交換していたので、何度か連絡を取り合った。しかし、ゲーム制作の勉強が忙しいことを理解していたので、自分からは連絡を控えていた。川上君は、本当に独立するのだろうか?
私は、先週の金曜日が納期だった仕事を終えて、社内で新しいプログラムを作成していた。そのとき、ディレクターである山田の声が聞こえてきた。どうやら、彼は電話をしているらしい。
「分かりました。じゃあ、なるべく早く直しますので、よろしくお願いします––––いやー、無能な部下を持つと苦労しますよ。それでは、修正が終わったら連絡しますね。」
山田は電話を切ると、社内の人間に向かって怒鳴り出した。
「この間のアップデートで深刻な不具合が出てるってよ!誰が対応したんだよ!」
それを聞いて、ゲームプランナーの女性が答える。
「その企画を出したのは私ですが、プログラムを作ったのは磯山さんです。」
「ああ?じゃあ、磯山に責任とってもらわないとダメだなあ。」
山田は私の席まで歩いてきて、話しかけてきた。
「おい!お前のせいでエラーが出てるってよ!」
「––––はい。すいません。」
「さっさと不具合を直せよ!ユーザーからクレームが殺到してるって言ってたぞ!」
「––––はい。」
私は山田の怒号に意気消沈した。
「磯山。いつまでに直せるんだよ!」
「状況を確認しないと分からないので、サポートセンターから情報をもらってきます––––情報確認と検証が終わったら、おおよその修正時間を報告します。」
「さっさと終わらせろよ。お前のせいなんだから。」
山田は私のことを罵倒し終えると、自分の席に戻っていった。
それから、私は、エラー修正の手順に沿って作業を進めた。原因が判明してから、ため息が出た。なぜなら、プログラムが複雑なため、修正するのに時間がかかるからだ。それでも、自分の失敗なので、休憩もせずに続けた。修正作業を始めて三時間ほど経過したときに、山田が再び近寄ってきた。
「まだ直らないのかよ!いつになったら、直るんだ!」
「三時間前に報告しましたが、あと二時間くらいかかると思います。」
「そんなに、かかるのかよ!お前、本当にプロか?」
「はい––––ですが、私は、エラーが出ることを見越して、仕様書の改善を小島リーダーに要求しました。リーダーも同意見でした。それでも仕様書を通したのはディレクターですよね?」
私は、エラーが自分のミスだということを自覚していた。しかし、山田とプランナー側にも責任はあるので、口答えした。
「あ?それの何が悪いんだよ!こうした方が、売上が良くなるんだよ!」
「売上––––それって、ユーザーを楽しませた上で手に入れるものじゃないでしょうか?––––私が仕様書の改善を求めたのは、複雑にした部分にユーザーを楽しませる要素がないからですよ。」
「お前、エンジニアのくせに、プランナー側の仕事に口出しするのか?いいから、さっさと直せよ!お前のせいだろ?」
山田は、イライラした様子で私のデスクを蹴っ飛ばした。それから、自分の席に戻っていった。私は、驚かされたが、気にしないようにして作業を再会した。山田は、度々、こういう言動をとるのだ。
結局、私は、定時の就業時間を大幅に超えてから、修正作業を終えた。社内には、私と小島リーダーしか残っておらず、ディレクターとプランナーチームは既に帰っていた。
5 シキの提案
ライジングフォーチュンの作業場で、各メンバーは大型モニターを眺めていた。画面には、磯山由香が映っている。
「この女が山田って奴からパワハラを受けたから、俺たちが助けてやるってことか?」
そう話すのはハヤテである。ハヤテは、オレンジがかった茶色いショートヘアの美少年だ。白いシャツに藍色のネクタイとパンツを身につけていて、男子校生のように見える。
「それよりは、待遇改善の方が重要じゃない?彼女は、十年くらい働いているのに、昇進どころか昇給も無いのよ––––会社の人事制度を変える必要があると思うわ。」
ハヤテに話しかけるのはミナモである。ミナモは、黒いロングヘアの綺麗な少女である。白いシャツに藍色のリボンとプリーツスカートを着用していて、女子高生のように見える。
「でもさ、この磯山さんって女性に、この会社を変える力は無いよね?––––彼女が、直属の上司である小島って男性に意見を出しても、その提案は必ず却下されるでしょ?––––それに、正社員ではあるけど、役職を持ってるか、圧倒的な営業実績でも持っていないと、上層部や他の部署も相手にしないんじゃないかな?」
ミナモに対してキラボシが意見した。キラボシは、暗い茶色のミディアムヘアをした美少年だ。ハヤテと同じ服装をしている。
「––––確かに、そうね––––私達は何をしたら良いのかしら?」
ミナモがキラボシに返答した。すると、サクラが話し始めた。サクラは、黄味がかった茶色いショートヘアをした美少女である。ミナモと同じ服装をしている。
「ところでさあ、磯山さんが、二週間くらい前に川上大輔さんって人と再会してたけど、なんだか恋の始まる予感がしたね!」
それを聞いて、ミナモが答える。
「まあ、そうなったら素敵かもしれないけど、それは双方が相手を好きじゃないとダメだからね。」
「まあ、そうだね。でも、どちらも印象は悪くなさそうだったよ。」
「サクラは気が早いわね。印象が少しくらい良くても、そこで手伝ったら二人の迷惑になるかもしれないわよ。」
「そうだよね。じゃあ、もう少し様子を見て‥。」
「二人とも、恋愛の話しは終わりにして、今回の問題点を考えるわよ。」
タソガレが二人の話しに割り込んだ。タソガレは、茶色いミディアムヘアをした美人で、スタイリッシュなデザインの制服を着用している。ライジングフォーチュンのリーダーで、管理や助言をする立場から、メンバーからは先生と呼ばれている。キラボシがタソガレに話しかける。
「でも、先生は、どうしたら良いと思いますか?磯山由香さんが困っていることは分かりますが、助ける方法が難しいですよね?」
「そうね。普通に考えたら、会社の環境を改善する必要があると思う。でも、彼女は発言力が無いから、彼女自身で会社を変えることはできない––––そうすると、独立かしら?」
「独立ですか?ずいぶんハードルが上がりますね。」
「そうね。でも、磯山由香も言ってたでしょ? 『どこの企業も変わらないんだなあ』って––––すべてのゲームクリエイターが悪い待遇では無いにしても、多くは厳しい条件で働いているのよ。だから、転職させる方向に仕向けても、意味が無いでしょ?」
「まあ、そうですね––––でも、そうすると、彼女のような立場にいる人が大勢いる中で、彼女だけを助ける理由は何でしょうか?」
「そうねえ。確かに、彼女と同じような立場の人も一定数いるわよね。」
タソガレはキラボシの質問に答えられなかった。全員が沈黙する。
そのとき、扉の開く音がした。各メンバーは作業場の扉に顔を向ける。
「やあ、お疲れ様。」
扉から入ってきたのは、最高神シキであった。シキは、三十代半ば位に見えるが、落ち着いた茶色いショートヘアをして、整った顔立ちをしている。また、タソガレと色違いの制服を身につけているが、長身なのでモデルのように見える。
「最高神?––––どうしたんですか?」
タソガレは驚きの表情で答えた。他のメンバーも不思議そうな顔をしている。それは、シキは上級神以外の前では、滅多に顔を見せないからである。つまり、ライジングフォーチュンのメンバーでは、タソガレくらいしか、彼と顔を合わせることがほとんど無い。
「え?ああ。今回の件は、地上に与える影響力が大きくなりそうだから、私が対応しようと思ってさ。」
「えっと、最高神が手伝ってくれるってことですか?」
「いや、手伝うんじゃなくて、私が全部やるよ。だから、君たちは対処不要だよ。」
「でも、ここに磯山由香の書類が届いてるってことは、私たちが対応するんじゃないんですか?」
「その予定だったんだけど、プラン変更にするよ。」
アースガルズのシステムでは、地上で言うところのスーパーコンピューターが、最初に救済すべき人間を選別する。選ばれた人間の書類は、最初にシキが確認するが、その後にシキが適当なチームへ仕事を割り振っている。
「変更ですか。珍しいですね?」
「そうだね––––実は、磯山由香と同じ状況の人間が多数いるみたいで、根本を変更する必要があるみたいなんだ––––びっくりしたよ。磯山由香と同じ内容の書類が次々に出てくるからさあ。」
「大変でしたね––––でも、最高神が慌てるなんて、珍しいですね。」
「勘弁してくれよ––––ちなみに、私は、ここへ入室する前に君たちの話しを少し聞いてしまったんだけど、今後の活動に役立つと思うから、私の見解を言わせてもらうよ。」
「え?どこから聞かれてたんですか?」
「彼女らが恋の話しを始めたところからだよ。」
シキは、サクラとミナモに視線を向けた。彼は話しを続ける。
「それで、私が言いたいことは、磯山由香を救済する理由の部分だけど––––現在、彼女が勤めている企業は、ユーザーを楽しませる目的でゲームを作っていないよね?彼らはユーザーから集金するためにゲームを作っている。しかし、磯山由香は自分の待遇が改善することを願っているものの、ユーザーを楽しませることに重きを置いている。その場合、後者の方が、世の中にとって有益になるよね?」
「確かに、そうですね。」
タソガレが同意すると、キラボシがシキに意見した。
「ですが、例えば、家族を裕福にする目的で、金銭を稼ぐことに固執するとしたら、それを悪いことだと言えるでしょうか?」
「それは良くないさ。自分が欲しくないものを売りつけられたり、騙されて買ったりしたら、買う側は嬉しくないだろ?––––その場合、自分の家族は幸せにできるかもしれないけど、他の誰かを不幸にしている。それは、努力する方向を間違ってるんだよ––––押し売りする技術や騙す技術を磨くんじゃなくて、より良いものを作れるように努力して、その上で金銭を稼げば良いのさ。それなら、誰も憂き目にあわないだろ?」
「––––なるほど、そうですね。その方が世に出回る物も、良い物が多くなる。」
「結局、私が君たちに伝えたいことは、特定の相手を手伝う判断基準に、世の中を良くしようと考える気持ちも含めて欲しいってことさ。」
シキは、キラボシに意見を言うと、サクラに顔を向けた。そして、彼女に対して話しかけた。
「ところで、もしかしたら、彼女の––––ええっとサクラさんか––––サクラさんの妄想は現実になるかもしれないね。」
「え?そうなんですか?」
「ああ。まあ、絶対とは言えないけど。もしかしたらね。」
「えへへ。期待してます。」
シキは、サクラの言葉を聞いてから、作業場を出ていった。
6 独立(磯山由香の視点)
私は、仕事を終えて、自宅で晩御飯を食べていた。自覚していることだが、非常にイライラしていた。これは社内でも同様で、他のスタッフとの会話も最低限に、黙々と仕事をしている状態だ。なぜなら、社内において、数日前に発生したエラーは、私だけが悪いことになっているからだ。それにより、私は他者と会話をする気が無くなっていたが、他の社員は私を蔑み始めていた。
私は、食事を終えてから、スマートフォンを弄っていた。すると、電話がかかってきた。相手は川上君だった。
「あれ?どうしたのかな?」
私は、そう言いながら、通話を始めた。
「もしもし、磯山です。どうしたの?川上君。」
「ああ。もしもし。少し、話しがしたくてさ。」
「話し?」
「うん。今、時間は大丈夫?」
「大丈夫だよ。自宅で、ゆっくりしていたところだから。」
「ああ、そうなんだ––––実はさ、会社を辞めることにしたんだ。」
「え?そうなの?独立する準備ができたってこと?」
私は、彼が辞職することに驚いた。もっと先のことだと思っていたからだ。
「まあ、そうだね。正直、不安だけど––––それなりに貯金を貯めておいたから、しばらくは挑戦できると思うよ。」
「そうか、頑張ってね。––––ちなみに、いつ頃、出来上がりそうなの?」
「予定では、四ヶ月後かな?––––とりあえず、雑な作りだけど、試作品は作ってあるんだ。」
「そうなんだ。」
「ところで、磯山さんは最近どうなの?会社のことだけど。」
「え?ああ、最悪だよ。この間、アップデート後にエラーが発生したんだけど、私だけの責任にされちゃってさ––––実際、私のプログラムに不備があったことは認めるんだけど、ディレクターとプランナーが責任を取らないんだもん。私は事前に、複雑なプログラムにする必要がないことを指摘したのに、ディレクター達が勝手に自分達の企画を通して、不具合が出たら私だけの責任にされたんだよ。ひどいでしょ?」
私は、エラーの件を思い出し、怒りと共に話した。
「誰も助けてくれなかったの?」
「エンジニアチームのリーダーは修正完了まで待っててくれたけど、別に助けてくれたわけでは無かったね。そのリーダーも分かってるんだよ。ディレクターに意見を出したところで、聞き入れてくれないことをさ。結局、みんな、ディレクターの言いなりなんだよ。プロデューサーは、ディレクターとしか話しをしないしさ。」
「そうなんだ。俺が勤めてる会社よりも、環境が悪そうだね。」
「ああ、そっちよりも悪いのか––––でも、転職しても待遇が変わらないなら、辞める必要もないからなあ。」
「まあ、そうだね。可能性が低くても、残っていれば出世できるかもしれないからね。」
「うん––––でも、エンジニアチームのリーダーを見てると、出世に魅力を感じなくなってくるけどね。」
「まあ、磯山さんの話しを聞く限り、少し給料は上がるかもしれないけど、自分の意見が通らないことは違いないからね。」
「そうだね––––ところで、そろそろ寝る準備するから、またね––––あと、川上君のゲームが出来たら、見せてね。」
「あっ、ちょっと待って!」
川上君は、私が電話を切ろうとするのを阻んだ。
「え?どうしたの?川上君。」
「え?ああ、いや、何でもないよ。ごめん––––じゃあ、またね。」
「うん。」
私は、電話を切った。川上君は私に何かを言おうとしていたが、重要なことなら、そのうち彼の方から言ってくるだろう。
数日後、私は、社内で普段通り仕事をしていた。仕事が一段落ついたので、社内の自動販売機で飲み物を買おうと思った。自動販売機はオフィス外の廊下に設置されているので、私は廊下に出た。私は、飲み物を購入してから、オフィスに戻ろうとした。すると、何処からか声が聞こえてきた。
「誰だろう?」
私は、そう思って、声のする方へ向かった。すると、曲がり角から山田と小島リーダーが見えた。小島リーダーは悩ましい顔をしている。私は、それを見てから、彼らの死角に隠れた。その状態で、二人の会話を聞くことにした。それは、二人が明らかに人前で言えない話しをしているように見えたからだ。
「ディレクター、流石に良くないですよ。」
「仕方ないだろ?ゲームの売上が足りてないんだから。」
「ですが、ガチャの確率操作で痛い目をくらった会社だってあるじゃないですか。」
「そんなのバレなきゃいいだけだろ?」
「失敗したら、まずいですよ。」
「これを知っているのは、私と小島君だけだよ?だから、大丈夫だよ。」
「どうして、そこまでするんですか?」
「––––私は、これで結果を出せたらプロデューサーに昇格できるかもしれないからだよ。でも、プロデューサ―になる場合、新作のゲームを作る必要があるだろ?そのゲームの費用だって稼がなきゃいけないからな。私がプロデューサーになったら、遠くないうちに、君のことはディレクターに上げてやるからさ。」
「––––はあ。分かりました。約束ですよ。」
「ああ。では、頼むよ。」
私は、二人の会話を聞いてから、急いでオフィスに戻った。二人に盗み聞きしたことを知られたくなかったからだ。
山田と小島リーダーが話していたことは、ゲーム業界ではタブーとされていることである。ガチャと呼ばれるのは、ユーザーが金銭を支払うことで、強いキャラクターやアイテムを入手できるシステムで、課金したユーザーは他のユーザーよりも有利にゲームを進められる。問題なのは、ガチャでは強いキャラクターやアイテムごとに確率が公表されているが、その確率が実際と違うことである。例えば、強いキャラクターの確率が三パーセントと表示されているのに、本当は一パーセントしかない等である。過去に、国から注意を受けた企業や、ユーザー達に賠償した企業も存在する。
私は、オフィスで仕事を再開してから、不安な気持ちになった。それは、このまま今の会社で働き続けることに不安を覚えたからだ。もし不正が外部に漏洩したら、会社は大打撃を受けるだろう。しかし、悪いことをしているのは、自分が働いている企業側である。私は、そんなことを考えながら、終業時間まで仕事を続けた。
自宅へ向かう帰り道で、私は、数日前に川上君と話し合ったことを思い出していた。
「独立かあ––––。」
7 ラベンダー(磯山由香の視点)
私は、今日も会社で仕事をしていた。しかし、山田と小島リーダーの話しを聞いてから、仕事に身が入らなくなった。なぜなら、自社のゲームでユーザーを喜ばそうと考えていたのに、自社がユーザーを裏切る方向に舵を切ったからだ。とは言え、仕事をしないと収入が無くなってしまうので、働かなければいけない。なんだか、自分も不正に手を貸しているような気分がして、心に葛藤が生まれていた。
仕事が終わると、私は、さっさと会社を後にした。自分が働いている企業だったが、距離を置きたかったのだ。悪いことをしていないにも関わらず、責任逃れをしている気持ちになった。
しばらくして、私は、帰りの電車に揺られているときに、自分のスマートフォンを確認した。すると、通知があることに気づいた。確認してみると、川上君からの連絡だった。
お仕事、お疲れ様です。川上です。
あれから職場では上手くいっているでしょうか?
上司に恵まれていない様子なので、心配です。
ところで、今度の土曜日ですが、一緒に食事でもしませんか?
それは、俺の作った試作品を試して欲しいからです。
プロのエンジニア目線で、感想をいただけると幸いです。
もちろん、食事代は、俺が払います。
連絡待ってます。
という文面だった。もっと砕けた言い方で書けばいいのにと思ったが、彼は相手に気を遣う性格なので、彼らしいと思い直した。そのとき、文章の最後に、画像が添付されていることに気づいた。
「何の画像だろう?彼のデザインしたキャラクターとか?」
と、思ったが、花の写真だった。この花は、確か、ラベンダーだった気がする。
「どうして、ラベンダー?」
と、疑問に思ったが、降車する駅に着いたので、さっさと帰ることにした。
私は、帰宅して、食事を済ませた。すると、さきほど川上君から送られてきた画像が気になってきた。特にすることも無かったので、パソコンで調べることにした。
「えーと、『ラ・ベ・ン・ダ・ー』っと。」
私がインターネットで検索してみると、ラベンダーに関する情報が出てきた。
「ふーん。ハーブティーやアロマで使用されているのね。効能はリラックス効果や安眠作用––––なるほど。」
ラベンダーの効能について調べてみたが、私は特に睡眠障害を持っているわけでもないので、どうでもよかった。それから、調べるのをやめようと思ったが、不意に、
「そういえば、花言葉ってあったよね。」
と思い出した。花言葉について調べてみる。
「えーと、ラベンダーの花言葉––––いろいろあるみたいだけど––––ん?『あなたを待っています』?」
私は、ラベンダーの持つ花言葉から、「あなたを待っています」というものが気になった。
「うーん。川上君がラベンダーの画像を送ってきたのって、理由があるよね?だって、そうでなきゃ、意味が分からないもんね––––彼は会社を辞めて独立した状況だから、理由として考えられるのは、この花言葉だよね?」
私は、推論した結果、川上君は私を仕事仲間に引き入れたいのだと考えた。私が思い上がっているかと考え直してみるが、ほぼ間違いないと思った。他の花言葉は、沈黙・期待・疑惑と並ぶが、まったく心当たりが無い。
「もし仲間に入れたいのだったら、はっきり言えばいいのに––––まあ、今度の土曜日に確認すればいいか。」
私は独り言を言った。
その後、私は、彼に連絡して、次の土曜日に落ち合うことにした。
8 仲間(川上大輔の視点)
土曜日の昼過ぎ、俺は喫茶店のテーブル席に座っていた。店内は、木製の素材やインテリアが中心で、落ち着いた雰囲気だった。これから、磯山さんと会う約束をしている。目的は、自分が作ったゲームを試してもらうこと、あとは––––。
しばらく待っていると、彼女が店に入ってきた。俺は、席から立ち上がって、片手を挙げた。磯山さんは、そんな俺に気づいて、近寄ってきた。そして、俺に話しかける。
「お待たせ。」
「ああ。来てくれて、ありがとう。」
俺たちは、挨拶を済ませてから、給仕に飲食物を注文した。そして、二人で遅い昼食を取り始めた。割と料理が美味しかったので、彼女も喜んでいるようだった。食事を終えてから、俺は磯山さんに話しかける。
「あれから、磯山さんの会社はどう?––––エラーの責任を一人で取らされたって言ってたよね?」
「え?ああ。あれ以来、社内で最低限の口しか利かないようにしてる––––私が全責任を負わされてイラついているって理由もあるけど、他のスタッフが馬鹿にしたように見てくるんだもん!」
「それは酷いね。」
「そうでしょ?だから、この頃は仕事をしていても面白くなくて––––ところで、川上君が作ったゲームって、ここで遊べるの?」
「え?うん。ノートパソコンを持ってきたから、ここで遊べるよ。ちょっと、待ってて。」
俺は、バッグからノートパソコンを取り出して、ゲームを始められるように準備をした。そして、パソコンを磯山さん側に向けて、操作の説明を始めた。説明を終えてから、彼女に話しかける。
「––––じゃあ、始めてみて。」
「うん。分かった。でも、シューティングゲームを作ったんだね。」
磯山さんは、そう言って、俺が作ったゲームを始めた。尚、シューティングゲームとは、敵に狙いを定めて、それを倒すゲームである。彼女に何度かプレイしてもらってから、俺は彼女に感想を聞いた。
「磯山さん、どうだった?」
「うん。はっきり言って、これを一人で作っただけで凄いと思う。だけど、正直なところ、あんまり面白くないかな––––操作が難しすぎるし、昔の3Dシューティングゲームと変わらないって言うか。あと、何か一つでいいから、他と差別化できるものが欲しい––––あ、ごめんね。言い過ぎたかな?」
「いや。正直に言ってもらった方が助かるよ。ちなみに、部分的にアセット使ってるから、全部一人で作ったわけじゃないんだけどね。」
ゲーム業界におけるアセットとは、誰かが作ったデータのことを指す。このデータは、画像・音声・プログラムなど、多岐にわたるが、使用することで開発期間を短くできる。尚、すべてが有料というわけではなく、無料で入手できるものも存在する。
「ああ、それは分かってるよ。でも、それでも凄いと思うよ。」
「うん。ありがとう––––ところで、このゲームを改善するとしたら、磯山さんだったら何をする?」
「––––うーん。さっきも話したけど、操作性の部分を変えるかな?このゲームで操作する戦闘機だけど、移動するボタンは問題ないんだよ。でも、攻撃ボタンが多すぎるんだよね。攻撃ボタンが五つもあるけど、二つ位に絞った方が遊びやすいと思うよ。」
「––––人気のアプリゲームに似せて作ったんだけど、ダメだったか。」
「川上君が似せたアプリゲームって、もしかして––––。」
磯山さんが俺に告げたゲームタイトルは、ちょうど、俺が参考にしたものだった。
「ああ、そう、そのゲーム。磯山さんも遊んだことあったの?」
「開発の勉強として、少しだけね––––ところで、アップデートが必要なゲームを作るわけじゃないよね?––––私は、川上君が個人でゲームを作るって聞いたから、売り切りのゲームを作るんだと思ってたんだけど。」
「うん。売り切りのゲームを作る予定だよ。定期的にアップデートするゲームなんて、個人じゃ運営できないからね。」
「それだと、定期的にアップデートするゲームを、参考にしても仕方ないんじゃない?」
「え?ああ––––確かに、そうだね。」
彼女から指摘されたことは的確だった。俺は、自分の思慮が浅かったことを痛感した。
「でもさ、正直なところ、羨ましいと思うよ。」
「羨ましいって?」
「だって、定期的にアップデートするゲームより、売り切りで販売してるゲームの方が基本的に面白いでしょ?でも、ゲームを作る以上、ユーザーを楽しませるものを作りたいと思うじゃない?––––私の会社が、アップデート必須のゲームしか作ってないから、『じゃあ、どうして、その会社で働いてるんだよ!』って突っ込まれるかもしれないけど。」
「ああ、そういえば、磯山さんの会社って、そういうゲームで有名だったよね。」
「うん。今って、そんなゲーム会社ばっかりだから、仕方ないんだけどね。」
磯山さんは、心が満たされない様子をしていた。
「まあ、そうだね。」
しばらく沈黙が続いたが、俺は意を決し、彼女に提案した。
「––––それならさ、磯山さんも俺と一緒にゲームを作らない?––––俺は、デザイナー目線で面白いと思える企画は立てられるけど、エンジニア目線で面白いと思える企画を立てることでは磯山さんに敵わないからさ––––力を合わせれば、きっと面白いゲームを作れるよ。」
俺が磯山さんを誘った後、彼女は、少し考える仕草をしてから、話し始めた。
「––––今の話しだけど、もしかして、送ってきたラベンダーの画像って、その意味を込めてたの?」
「え?ああ、そうだよ。分かってくれてたの?」
「うん。なんでラベンダーの画像を送ってきたのか理由が分からなくて、ネットで調べてみたんだけど、花言葉が『あなたを待っています』だったからさあ––––けっこう洒落たところがあるんだね。」
「喜んでくれたなら良かったけど。」
「うん。それで、とりあえず、一緒にゲームを作る話しだけど––––今の仕事をしながら、時間の空いてるときに手伝うのは大丈夫。だけど、会社を辞めるかどうかは少し考えさせて。」
「え?手伝ってくれるの?」
「うん。いいよ。」
「––––あ、ありがとう。」
こうして、俺は磯山さんを仲間にすることができた。俺は、自分の負担が軽減されて嬉しい気持ちはあったが、それ以上に、心の許せる相手と作業を進められるようになったことが嬉しかった。
9 アドバイス(川上大輔の視点)
磯山さんにゲーム制作を手伝ってもらえるようになり、数日が経過した。俺は、一人で自室に籠り、知り合いとゲームをしていた。一人で居るのに他人とゲームをしているというのは不可解な感じだが、オンラインゲームをボイスチャットと共に利用しているということだ。
尚、オンラインゲームとは、インターネットを利用して遠くにいる相手と遊べるゲームのことである。また、ボイスチャットとは、同じくインターネットを利用して遠くにいる相手と会話ができるサービスで、電話と違って両手を自由に使える。そのため、ゲームのコントローラーを操作しながら、相手と通話ができるのだ。
「ああ!また、負けました。強いですね。ナイトさん。」
「このゲームは十年前のシリーズから遊んでるので、ちょっと自信があるんですよ。」
俺がオンラインゲームで遊んでいる相手は、有名動画配信者であるナイトだった。実は、この間、彼の連絡先へメールを送信してから、たまに連絡を取り合うようになったのだ。そして、今回、一緒にゲームをすることになった。勿論、ゲーム制作の相談も兼ねている。
「そうなんですね。いやー、何度やっても勝てないや。」
「ハハハ、ありがとうございます––––ところで、川上さんは、試作品のゲームを知り合いに見せるって話してましたよね?どうでした?」
「この間、見てもらいました。そうしたら、『売り切りのゲームを作るのに、定期的にアップデートするゲームを参考にしてどうするの?』って言われました。操作ボタンが多すぎるって。」
「ああ。見せた相手もゲームクリエイターの方でしたよね?––––その方は良い視点を持ってますね。」
「え?ああ、そうですね。俺も言われたときに、的確な指摘だと思いました。」
「結局、定期的にアップデートするゲームって、運営を続けるために収益を受け続ける必要があるんですよね。そうすると、継続してお金を手に入れる仕様で作らなければいけなくなる。売り切りのゲームだったら、単純にユーザーが面白いと思えるように作ればいいんですけどね。」
「ああ、なるほど。つまり、アップデート必須のゲームは、作り方に制限が加わるってことですか。」
「そうです。だから、基本的に売り切りで販売するゲームの方が面白くなりやすい––––まあ、アップデートするタイプのゲームは、みんなで盛り上がれるってメリットはあるんですけどね。」
「みんなで盛り上がれる?」
「ええ。そのゲームが続いている間は、他のプレイヤーと盛り上がることができるでしょ?売り切りのゲームだと、発売してから数ヶ月も経ったら、話題にも上らなくなりますよね?」
「ああ、なるほど。ゲームがつまらなくても、他の人と盛り上がりたい人には適しているってことか。」
「そうですね。」
「そういえば、ナイトさんに言われた通り、相手にラベンダーの画像を送ったんですけど、上手くいきました––––ありがとうございました。」
「それは良かったです。頼みづらい内容だと思ったので、提案したんですけどね。」
「まあ、仕事をしている相手に、別の仕事を依頼するわけですからね––––あまり、彼女の負担にならないように気をつけます。」
「それが良いと思います。」
「でも、最初にナイトさんの提案を聞いたときは、正直、俺は意味が分かりませんでした。何でラベンダーの画像を送信するのか?––––でも、確かに、同じことをされたとしたら、俺もラベンダーを調べてるんですよね。」
「人間は、意味が分からないことをされたら、それに意味があるんじゃないかと考えるんですよ。そして、花言葉というものを知っている人は多いから、今回みたいに花の画像を送ると、調べる人は多い。––––ちなみに、この考え方はゲーム作りでも活かせるので、検討してみてください。」
「ゲーム作りにも活かせる––––へえ、参考にします。」
「ところで、結局、試作品として作られたシューティングゲームは、改善する予定ですか?」
「はい。そのつもりです。」
「これは僕の意見なので、川上さん自身で決めて欲しいんですが、二人で作るのであれば、あんまり複雑なゲームは作らない方がいいですよ。」
「まあ、それは分かりますけど、少数で作るわけですからね。」
「はい。ただ、川上さんの試作品でも、やりすぎだと思うんですよ。」
「え?やりすぎ?」
「はい。まず、3Dを辞めて2Dのシンプルなゲームにすると良いと思います。また、ストーリー部分でシナリオを無くせば、作業もずいぶん少なくなりますよ。」
「でも、今のゲームは3Dが主流だし、シナリオは大事じゃないですか?」
「まあ、それはそうです。ですが、3Dを2Dにするだけで、作業量が大幅に軽減されるメリットは大きいです。また、シナリオが必須のゲームは、実際は多くないですよ。」
「え?そうですか?少し考えるので、待っててください。」
俺は、そう言って、自分が遊んだ過去のゲームソフトを思い浮かべた。しばらく考えてから、
「すごく昔のシューティングゲームなんですが、それは、今、遊んだとしても面白いと思います––––そのゲームは2Dで、シナリオがありませんでした。」
「川上さんが何のゲームを思い出したのか分かりませんが、昔のレトロなゲームは、目的がはっきりしてるんですよね。」
「目的?」
「ええ。シューティングゲームだったら、敵を狙って倒すというゲーム部分に力を入れていて、他の部分は簡潔にしている––––今のシューティングゲームは、ゲーム部分だけじゃなくて、シナリオにも力を入れたり、武器をカスタマイズしたりもするでしょ?––––そうすると、日常的にゲームをしないユーザーには難しいんですよ。」
「なるほど。」
「操作自体も難しくなりますが、ゲームのルールを理解するのも時間がかかります。そうすると、素人は遊び始めても、すぐに辞めてしまいますよね?」
「ああ、そうか。」
「とりあえず、ある程度できたら、また僕にも遊ばせてください。」
「はい。勿論です。」
俺は、その後も、しばらくナイトとゲームを楽しみ、ゲーム関係の話しを続けた。彼にとっても、プロのゲームクリエイターから情報をもらえるのは助かるらしい。
とりあえず、俺は、ナイトからアドバイスしてもらったことを参考に、企画を立てようと思った。そして、企画書を作成したら、磯山さんに見せようと考えた。どうにかして、成功させたいと思うが、それはユーザーを楽しませた上でなければいけない。そうでなければ、ゲームを作る意味なんてないのだ。
10 企画書(磯山由香の視点)
今日は、会社が休日だったが、川上君から連絡を受けて、彼の自宅へ行くことになった。川上君は喫茶店で待ち合わせるように提案してきたが、彼の制作現場に興味があったので、訪問することにした。
彼の住所に辿り着くと、低層のマンションに住んでいるらしく、玄関口にオートロックがかかっていた。通話をして開けてもらい、彼の部屋のインターホンを押す。すると、川上君が出てきた。
「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
「ああ、じゃあ、こっちの部屋に来てくれる?」
彼に案内された部屋は、ゲームを作るための機材が揃っていた。デザイナーが使用するものだけではなく、音響関係のものまで並んでいた。私は、彼に話しかける。
「すごいね。デザイナーが使う機材以外も揃えてるんだ。」
「うん。でも、お金に余裕があるわけでもなかったから、なるべく費用は抑えてるけど。」
「まあ。それはそうだよね。」
「じゃあ、ここで、ちょっと待っててね––––コーヒーでいい?」
「え?うん。」
そして、彼は、部屋を出ていった。しばらくして、飲み物と茶菓子を持って、部屋に戻ってきた。
「良かったら、食べてね。」
「うん。ありがとう。」
彼は、飲食物を置いた後に、今度は、デスクの上から書類を持ってきた。書類の先頭には「企画書」と書いてある。
「磯山さんは、動画サイトって見る?」
「え?ああ、たまに見てるよ。何で?」
「実は、ゲーム系の配信者と仲良くなって、彼と磯山さんの意見を参考に、この企画を考えたんだ。」
「そうなんだ。その人って、何て名前なの?」
「ナイト。」
「え?ナイトってゲーム系でトップクラスに有名な人だよね?何で知り合いになったの?」
「向こうの連絡先が書いてあったから、ゲーム制作に関して相談してみたんだよ。そうしたら、流れで仲良くなったんだ。この間は、一緒にオンラインで格闘ゲームをしたよ。」
「へえ。すごいね。」
「うん。それで、彼の意見も取り入れて、この間のゲームを作り直すことにしたんだけど––––これが、その企画書。」
「うん。じゃあ、見せてもらうね。」
私は、彼から渡された企画書を一通り読んでみた。その後、彼から変更点を聞いた。3Dを辞めて2Dで作ること、シナリオを無くすこと、私が提案したようにボタンを減らすこと。私は彼に話しかける。
「ずいぶん思い切ったね。これは、もはやレトロゲームだよね?」
「そうだね。ナイトにアドバイスを受けてから、昔のゲームについて考えてみたんだ。そうしたら、最先端のゲームよりも、昔のゲームの方が面白いと思うようになってきて––––勿論、今のゲームだって面白いのはあるけど。でも、技術よりも大事なことがあるってことだったんだよ。」
「言われてみると、そうかも。」
「結論としては、その作品で伝えたいことだけに注力して、他の部分は簡潔にする。そうすることで、ユーザーは自分の好きなことだけを長く体験できるようになる––––ゲームって、結局はゲーム部分が重要なんだよね。だから、シナリオを楽しみたいならアニメや漫画でも見てる方が良いし、複雑な操作をしたいならパソコンでも弄ってる方が良いってことさ––––まあ、中には複合的に必要なケースもあるけど。」
「––––そうだね。」
「とりあえず、この企画書通りに進めたいと思うんだけど、磯山さんは意見とかある?」
「ううん。無いよ。」
「じゃあ、俺が作ったプログラムのコピーを渡すから、磯山さんが面白いと思うプログラムに変更してもらっていい?」
「うん。適当なところで見せるから、川上君のイメージに沿ってるか教えてね?」
「わかった。」
その後、私は、川上君の作ったデザインやBGMなども視聴させてもらった。彼の努力が痛切に感じられたので、尊敬する気持ちが生まれてきた。そして、この間、喫茶店で話したときよりも考え方が適切だったので、カッコよく見えた。
「なんだか、今日の川上君、理路整然としていて、敏腕ゲームクリエイターって感じだよ。」
「え?本当に?」
日が暮れ始めた頃に、私は、彼の自宅を出た。帰り道で、今、働いている会社をどうするか考えた。
11 辞表(川上大輔の視点)
磯山さんに企画書を渡してから、二週間が経過した。俺は、自宅でゲーム制作の様々な作業に奮闘していた。例えば、キャラクターの画像や、使用するBGMの種類を増やした。やる事が多くて大変だったが、磯山さんは、会社に通いながら、俺の仕事を手伝ってくれている。それを考えると、俺も頑張らないといけない。
日が暮れて、そろそろ晩御飯でも食べようと思っていると、スマートフォンに通知が届いた。磯山さんからだった。しかし、彼女からの連絡を確認して、俺は驚いてしまった。
お疲れ様、磯山です。
川上君に託されたプログラムの内、いくつかは改善してみたよ。
出来たものだけ、圧縮して送るね。
気に入らなかったら、教えてね。
それと、働いている会社に辞表を提出したんだ。
だから、来月からは、もっと協力できると思うよ。
早くリリースできるといいね。
どうやら、磯山さんは会社を辞めるようだった。それを知って、俺は、責任感を感じてしまった。俺が誘ったから辞めたのだろうか?とりあえず、彼女に返信をした。
お疲れ様です。川上です。
たった今、磯山さんからの連絡を受けて、驚いています。
今日は、何時くらいに帰宅できそうですか?
それに合わせて電話します。
あと、プログラムの改善ありがとうございます。
後で、確認させてもらいます。
何にせよ、磯山さんに確認しない限りは、彼女の気持ちなんて分からない。だから、直接、話しを聞こうと思った。そして、俺が連絡してから十五分ほどして、彼女から返信が届いた。
磯山です。
今日は午後九時には帰宅できると思うけど。
でも、何だか驚かせちゃったみたいで、ごめんね。
川上君が深刻になるようなことは無いから、気にしないで。
磯山さんから「気にしないで」と返信を受けたが、彼女が気を遣っているように思われたので、結局、俺は気がかりだった。
俺は、晩御飯を済ませてから、少しの間だけベッドで休憩した。その後、磯山さんに電話するまで時間があったので、彼女が改善してくれたプログラムを確認した。
磯山さんから送られてきたプログラムの一つは、プレイヤーが操作する戦闘機の動きに関するものだった。自分が作ったものから、彼女が作ったものへ変更してみる。そうすると、非常にしっくりくる動きになっていた。
「これは、昔、遊んだゲームと同じような動きだ。」
磯山さんが、俺の記憶にあるゲームをプレイしたことがあるのか分からないが、それと同じような操作性だった。
また、彼女が改善したプログラムの中には、戦闘機のアニメーションを滑らかにするものが含まれていた。磯山さんのプログラムに書かれた指示通り、自分が増やしたキャラクターの画像を設定する。そうすると、戦闘機を操作したときの、画像の移り変わりが滑らかになった。
「おお、俺が作ったプログラムより、はるかに自然なアニメーションだ。」
素人目には、大したことに感じないかもしれないが、実際に作っている人間は、この微妙な違いを追求しなければいけないのだ。なぜなら、少しでもユーザーに楽しんでもらいたいからだ。アニメーションの滑らかさに関しては、参考にしたゲームを凌駕していた。
このように、俺は、彼女が作成したプログラムを試していると、午後九時を過ぎていることに気づいた。磯山さんに電話をかける。そうすると、彼女が話しかけてきた。
「もしもし、川上君?」
「もしもし、もう帰宅した?」
「うん。」
「何で電話したのか分かってるかもしれないけど、会社を辞めたって聞いたから。」
「うん。もう先週の内に辞表は提出してたんだけどね。」
「え?そうだったの?でも、何で辞めたの?俺が誘ったから?」
「辞めたきっかけは川上君に開発を誘われたからだけど、前々から辞めようとは考えてたんだよ。」
「そうだったんだ。」
「もう辞めるから教えるけど、この間、ディレクターとエンジニアチームのリーダーが、悪いことを話してる現場に出くわしたの。」
「悪いこと?」
「うん。ガチャの確率操作をするって話し。川上君も同業者だから知ってると思うけど、ユーザーに見せてる確率と、本当の確率が違ってるやつだよ。そうすると、課金してくれてる人に、多くお金を払わせることができるって詐欺。」
「え?それを磯山さんの企業がやってたの?」
「すでに行ってるかは分からないけど、少なくとも、近々やるんだと思う。」
「そうか。それだと、正直な人間は会社に居づらくなるよね。」
「そうゆうこと。この間、川上君は私にラベンダーの画像を送ってきたよね?––––それより、少し前の話しで、そのときから辞めることを真剣に考えてたんだよ。」
「そうなんだ。」
「だから、川上君が気にすることじゃないよ––––今は面白いゲーム作ることだけを考えよう。」
「うん、わかった––––ところで、さっき、磯山さんから貰ったプログラムを試してみたよ。」
「え?どうだった?」
「良かったよ。俺のプログラムよりも格段に。操作する戦闘機の動きが、昔、遊んだことのあるゲームと同じように感じたよ。それと、キャラクターのアニメーションが滑らかで、それは参考にしたゲームを超えてたよ。」
「へへ、気に入ってくれたなら良かったよ。でもさ、戦闘機の動きに関してだけど、動く速度や反応速度を何度も変えてみた最良の結果が、今回のプログラムなんだよね––––何が言いたいかというと、昔のゲームを作ってたクリエイターさん達も、ものすごく試行錯誤して作ってたんだなあって。」
「ああ、なるほどね。」
「だから、結局、ユーザーが楽しむために最適なものを追求しなきゃいけないんだよね––––ガチャの確率操作なんて悪いことを考えてる暇があったら、面白いゲームを作ることに努力すればいいのにさ––––まあ、もう辞める会社だから、今さら振り返っても仕方ないけど‥。」
磯山さんの言葉を聞くと、俺は、彼女から寂しさを感じた。良いものを作るために働いていた企業が、確信的な悪行をしていたのだから、無理もない。
「それじゃあ、来月からは、俺と面白いゲーム作ろうよ!」
「––––そうだね。」
こうして、来月から、磯山さんに手伝ってもらえる時間が長くなった。俺は、嬉しかったが、プレッシャーも大きくなった。なぜなら、ある程度の収益が得られなければ、磯山さんの生活にも響くからだ。だから、ヒットさせるために、どうしたら面白い作品を作れるのか、もっと追求しようと思った。
12 完成(磯山由香の視点)
私が退社してから、一ヶ月が経過した。それからは、自宅で作業をする日もあれば、川上君の自宅に行って作業をするときもあった。
彼は一人で様々な作業をしていたので、私はプログラミング以外に手伝える作業がないか聞いた。結果として、デバッグ作業や情報収集もするようになった。デバッグ作業とは、作ったゲームに不具合がないか確認することである。基本的にエラーが発生する場合というのは、プログラムに問題のあるケースがほとんどだ。そのため、プログラム作成者である私がデバッグをすることは、非常に効率的だった。
本日は、川上君の家で一緒に作業をしていた。そして、ついに、川上君は画像データや音声データの全てを作り終えた。これを私が作成したプログラムに設定すれば、新しい試作品の完成である。川上君が話しかけてくる。
「これで不具合が無ければ、ほぼ完成だね。」
「そうだね。なんかドキドキしてきた。」
私は、全てのデータを組み込んでから、テストプレイしてみた。結果として、致命的なエラーは発生しなかった。その後、細かいところを修正した後に、再度テストプレイした。私は、彼に話しかける。
「とりあえず、問題は無さそう。」
「じゃあ、ベータテストの準備をするよ。」
後日、私達が作ったゲームのベータテストを行った。ベータテストとは、ほぼ完成したゲームを外部の人達にテストプレイしてもらうことである。そこで問題があった場合に、問題箇所を修正するのだ。状況に応じて、テストする回数は変わってくる。
私達が作ったゲームは、私が働いていた会社のゲームより遥かにシンプルな作りなので、大きなエラーは発生しなかった。そのため、修正する部分も、それほど苦労しなかった。川上君がレトロなゲームを提案してきたことが、今更ながら正解だったと思った。なぜなら、ここで致命的な問題が発生していたら、長い時間がかかり、開発を続ける余力も無くなっていたからだ。
ともあれ、私達は二人でゲームをリリースできる状況になった。私は、この瞬間、今まで感じたことの無い達成感を得ることができた。なぜなら、製品としてリリースできるゲームを、働いていた会社でしか作ったことがなかったからだ。
しかし、川上君に顔を向けてみると、私以上に喜んでいるようだった。それは無理もないことである。なぜなら、私は途中から作品に参加したわけだが、彼は試作品を作るまでは一人で進めてきたのだから。そんなことを考えていると、川上君が話しかけてきた。
「磯山さん、本当にありがとう!」
彼は本当に嬉しそうな顔をしている。
「どういたしまして––––でも、リリースしても売上が取れるか分からないよ。」
「それはそうだけど。でも、純粋に嬉しいよ––––ところで、もし売れたら、一緒に作るの続けてくれる?」
「え?まあ、貯金が厳しい状態になるまでは、続けようと思ってるけど。」
「そうか。ありがとう––––でも、そうだね、まずはリリースしてからだね。」
彼は、そう言って、作ったゲームを販売する手続きに取りかかった。私は、上手くいって欲しいと思ったが、どうだろうか?
ゲームをリリースしてから、二週間ほど経過した。その間、私と川上君は、作ったゲームの宣伝をしていた。その作業は特に彼の自宅で行う必要もないので、ゲームが完成してからは、それぞれの自宅で作業をしていた。
ある日、私が作業をしていると、電話がかかってきた。川上君からである。
「もしもし、磯山さん?」
「もしもし、どうしたの?」
「ああ、良い連絡なんだけど––––俺たちが作ったゲーム、順調に売れてるみたいなんだ。今の段階で、これだけ売れていれば、二人で続けていけると思うよ!」
「本当に?」
「ああ。それで、良かったら、今日の夜に食事でもしない?打ち上げってことで。」
「うん。いいよ。でも、川上君の家じゃダメなの?––––ついでに、私も売上情報を確認したいんだけど。」
「ああ。磯山さんが良いなら、家で構わないよ––––飲食物は用意しておくけど、食べたいものとかある?」
「うーんと、唐揚げと、何か甘い物。」
「分かった。じゃあ、待ってるね。」
私は電話を切った。彼からの連絡を聞いて、ものすごく嬉しかった。それは、ユーザーを楽しませる目的で作ったゲームが認められたから、また、川上君とゲームを作り続けることができそうだったからだ。
彼の家に向かうまでには、ずいぶん時間が残っていた。私は、何の服を着ていくか考え始めた。多少、可愛らしさの残っている方が良いだろうか、それとも、大人っぽい方が良いだろうか?会社に勤めていたときは、基本的に地味目なパンツスタイルでいることが多かった。それは、川上君と仕事を始めたときも同じだった。私は、自分の見た目を、あまり気にしないからだ。
「どうしよう––––買い物に行こうかな?」
私は、そう思って、自宅から近いアパレルショップへ買い物に向かった。
13 これから
午後七時頃、川上大輔は、インターホンの呼び出し音を聞いた。彼は、共用玄関のオートロックを解除して、磯山由香が来るのを待つ。もう一度、インターホンが鳴ってから、扉を開けた。
「ああ、磯山さん、待ってたよ。」
「うん。なんだか、久しぶりに会うみたいだね?」
「そうだね。二週間前に会ってるのにね。」
大輔は、由香の姿を見て、少しドキッとした。彼女が女性的な服装をしている姿を、初めて見たからだ。由香は、ネイビーのノースリーブに、クリーム色のロングスカートを身に付けていた。また、いつもより化粧もしっかりしていた。彼女は、普段は身なりに無頓着で地味だが、地顔は割と美人だった。そのため、着飾れば、男を惹きつける魅力を持っていた。
大輔は、由香を作業場に案内して、テーブル横のクッションに座ってもらった。テーブルには、すでに料理が並んでいた。由香が大輔に話しかける。
「用意してもらって、ありがとうね––––あ、唐揚げもある。」
「うん。一応、俺の手作りなんだけど。口に合うと良いなあ。」
「そうなんだ。」
「じゃあ、とりあえず、乾杯しようか。」
大輔は、由香と彼のグラスにスパークリングワインを注いだ。その後、二人は、お互いのグラスを軽くぶつけた。
「かんぱーい。」
二人は、乾杯の挨拶をしてから、一口ずつワインを飲んだ。由香が大輔に話しかける。
「このワイン美味しいね。」
「うん。これは、そんなに高いわけじゃないんだけど、美味しいんだよね。俺は、あんまり酒を飲む習慣は無いんだけど、たまに買うんだ。」
「そうなんだ。まあ、勝利の美酒だから美味しいっていうのもあるけど。」
「ああ、なるほど、それもあるね。」
二人は、その後、料理を食べ始めた。しばらくしてから、大輔が由香に話しかけた。
「そういえば、今度、銀行の口座を教えてくれる?収益を渡したいから。」
「え?ああ、そうだね。分かった。」
「とりあえず、利益は半分ずつでいいよね?」
「え?今回は、そんなに貰えないよ。だって、川上君の方が作業量は多いでしょ。だから、次回から折半しよう。」
「いいの?」
「勿論だよ。」
「ありがとう。」
「ところで、次の企画ってあるの?」
「うん。考えているのは、いくつかあるよ。でも、磯山さんも企画があったら言ってね。いつも俺がやりたい企画を進めるわけにもいかないからさ。」
「ありがとう。それじゃあ、私もやってみたい企画を考えてくるね。」
「うん。その方が、二人とも、モチベーションを高くできるからね。」
「まあ、そうだね。」
由香は、大輔から企画を出すように促されて、嬉しかった。それは、自分が面白いと考えるゲームを、作れるようになったからだ。会社に居たときは、ゲーム全体の内で、ごく小さな部分しか提案はできなかった。それが、これからは大きな部分で影響させることができるようになったのだ。
由香と大輔は、一時間ほど経過して、近隣のスーパーマーケットに買い物へ向かった。大輔は、あまり多く飲酒する予定ではなかったのだが、由香が催促してきたのだ。帰ってきてから、再び打ち上げを始めた。二人が高校生だったときの思い出話しや、それぞれが好きだったゲームの話しなど、過去を懐かしむような内容が多かった。
「でもね、川上君は高校の時、子供っぽく見えたんだよね。」
由香は、ずいぶん飲んでいて、頬に赤みが差していた。化粧だけのせいでは無かった。
「ああ、女子からは、そう思われてたのか––––どうりで、モテなかったわけだ。」
大輔は、由香と比べ、抑えて飲んでいた。他人に気を遣うタイプだからだ。
「でも、嫌われてるわけじゃなかったよ––––弟みたいって言うか。」
「なるほど。じゃあ、もっと男らしくならないといけないな。」
「––––うーん。でも、一方的に意見を押し付けることを男らしいと思ってる人っているでしょ?」
由香は、その発言をしたときに、かつてのディレクターだった山田を思い出した。
「ああ、いるね。」
「そういうのは違うんだよね––––何というか、他人のことを思い遣った上で、強く意見を通して欲しいというか––––自分のために意見を通しても、ただのワガママでしょ?」
「まあね。」
「川上君は、創作するときに、喜ばせる相手を考えてるから––––男らしいと思うよ。」
由香は、そう話すと、少し恥ずかしくなった。そして、
「私、川上君のことを意識するようになってる?」
と、思った。大輔が話しかける。
「そう思ってもらえてるなら、良かったよ。」
「––––うん。」
「じゃあ、今から、磯山さんに一つ提案しても良い?」
「え?提案?何?」
大輔は、少し間を置いてから話しかけた。
「––––できれば、仕事だけじゃなくて、プライベートでも俺のパートナーになって欲しいんだ。」
由香は、少し考えてから返答した。
「––––え?それって、付き合うってこと?」
「うん。」
由香は、戸惑ったが、大輔の顔を見ると、彼が真剣な表情をしていることに気付いた。
「––––お願いします。」
由香は、普段さっぱりした性格をしているが、しおらしい様子で答えた。突然の告白に、すっかり酔いも醒めてしまった。そんな様子を見て、大輔は優しく笑った。
二人は、まだ一つの仕事で成功したに過ぎない。しかし、より強い信頼感を手に入れたことで、これから直面する困難にも立ち向かっていけるように見えた。
14 正直者が馬鹿を見ない
ライジングフォーチュンのメンバーは、作業場の大型モニターで、磯山由香と川上大輔の様子を見ていた。
「最高神がおっしゃってた通りのハッピーエンドだったね。」
サクラが全員に話した。
「そうね。でも、私たちが対応するときよりも、シンプルだったね。」
ミナモが答えた。
「そこが、すごいんじゃねえか––––最低限の労力で、何の違和感も無く進めるなんてさ。」
ハヤテがシキを崇めた。
「ところで、最高神から、みんなにアドバイスがあるのよ。」
タソガレが全員に話しかけた。
「アドバイス?」
キラボシが答えた。
「ええ、確認だけど、今回、最高神が調整したことは二点あったわよね––––一つ目は、有名動画配信者として川上大輔にアドバイスしたこと––––二つ目は、ラベンダーの花を使用させて、磯山由香に勧誘をほのめかしたこと。」
「はい。」
「参考にして欲しいのは二つ目のやり方で、地上にあるものを調査してから、その情報をインターネットで相手に送るってことなの。具体的には、あなた達が地上にあるものを調べて、地上の機械を操作できる私が相手に送信するってこと。」
「何で、そうするんですか?」
サクラがタソガレに尋ねた。
「そうすることで、地上に違和感を出しづらくできるし、他人を巻き込みづらくなるからよ––––例えば、以前、ハヤテが強制的に雨を降らせてから、ミナモが水蒸気で虹を発生させたわよね?」
「はい。」
ハヤテとミナモが同時に答えた。
「その目的は、相手に、海に反射する虹を見せたかったから、だったわよね。でも、例えば、こちらで相応する画像を作り出して、相手に見せれば解決することでしょ?」
「確かに。」
ハヤテが答えた。
「だから、あの時で言うと、雨を強制的に降らせたことで被害を受けた人間も居たはずよね?––––それを、加工した画像を送ることで回避できるってことよ。それなら、予定に無い雨を降らせる理由も無くなるからね。」
「なるほど。」
「だから、今回、最高神が行ったラベンダーの画像みたいな方法を、これからは試してみましょうね?」
「はい。分かりました。」
タソガレは、ライジングフォーチュンの作業場を出て、シキの居室にやってきた。
「失礼します。」
「ああ、お疲れ様。」
「最高神のお手並みを拝見しました––––それと、メンバーに最高神のアドバイスを伝えました。」
「うん。これから、彼らが、もっと上手いやり方ができるようになると良いね。」
「そうですね––––ところで、磯山由香の会社は、どうしましたか?」
「とりあえず、ガチャの確率操作について、地上に証拠を公開したよ。結果として、彼らの会社はユーザーに損害賠償を払うことになってるね。さらに、会社の株価も大暴落してるから、株主も怒ってるよ。」
「そうですか。」
「尚、山田啓二と小島光良の両名は、会社から厳しい処分を下されるみたいだね。小島光良に関しては巻き込まれた部分もあるから、こちらで多少フォローするつもりだけど––––山田啓二は情状酌量の余地も無いよ。」
「そんなに酷いんですか?」
「調べたらさ、彼は、けっこう裕福な家庭に生まれていて、そこそこの英才教育を受けてるんだよね。だけど、自分の利益しか考えていない上、他人を利用することばかりしている。実際、就職してからは、大して勉強もしていないみたいで、人に指示を出すだけみたいだよ。」
「就職してからって、最初からじゃないですよね?確か、五十近かったはずだし‥。」
「いや、そのまさかだよ。三十年近くの間、他人より高い給料をもらってるくせに、仕事は大して努力していないよ。ゲームクリエイターとは名ばかりで、プログラミングもデザインもできないみたいだよ。」
「何で、そんな人がディレクターなんてしてるんですかね?」
「彼の提案した企画で、大きな利益を得たことがあったみたいだよ。でも一度だけで、まぐれさ。」
「まぐれ‥。」
「まあ、上手くいったとしても、継続して努力する姿勢が必要ってことだね––––『ゲームを作る以上、ユーザーを楽しませるものを作りたい』と、磯山由香は言っていたけど、これを繰り返すことが、ゲームクリエイターのあるべき姿なのにね!」
「––––最高神、なんだか、すごく気持ちが入った言葉ですね?」
「え?そりゃそうさ。だって、私は––––だって、僕はゲーム系動画配信者ナイトだからね!」
シキが、そう言うと、タソガレはクスッと笑った。
「でも、あんまりゲームばかりしないでくださいね?最高神も、仕事はしてください。」
「ええ!これだって仕事の一環なんだよ––––まあ、タソガレ君の言うことも分かるけどさ。」
「ふふっ。」
タソガレは、シキが戸惑っている様子を見て、笑った。
こうして、今回はライジングフォーチュンの代わりに、シキが人間を救済した。シキはタソガレに話さなかったが、実は、磯山由香が勤めていた会社以外にも、同様の悪行をしていた企業が多数見つかったのだ。シキは、それら全ての証拠を地上に公開したため、日本のゲーム業界に大きな衝撃を与えた。「正直者が馬鹿を見る」、シキは、その言葉が大嫌いなのだ。
シキは、タソガレが帰ってから、居室でゲームを始めた。まもなく、彼は独り言を言った。
「ああ、昔のレトロゲームが進化した感じだね。これは面白いなあ。」
彼が始めたゲームは、磯山由香と川上大輔が作った作品であった。その後、しばらくして、シキはゲームをクリアした。
「川上さんは私のメッセージを理解してくれたみたいだ––––このゲームにはシナリオが無いが、クリアしてもストーリーに謎が残っている––––私が彼にラベンダーの画像を送らせた理由は、相手に疑問を残すことで興味を持たせる手法を知ってもらいたかったから––––磯山由香が『何か一つでいいから、他と差別化できるものが欲しい』と言った部分を、ストーリーに謎を作ることでクリアしたわけだ。」
シキは、そう思うと、ゲームが映る画面を消した。
シキは、川上大輔に対して、ラベンダーの画像を送らせた理由を「磯山由香に頼みづらい内容だと思ったので、提案したんですけどね。」と言っていた。しかし、彼の本心は、「川上大輔に面白いストーリー作りを教えたかった」だったのだ。
(完)
本作では、ゲーム業界にスポットライトを当ててみました。
作者は、ゲームクリエイターとして働いたことはありませんが、その仕事に就こうと思ったことがあります。その間は、ゲーム開発のプラットフォームであるUnityで簡単なゲームを作ったこともありました。
結果として、私は、ゲームクリエイターにはなれませんでしたが、勉強して開発した経験を活かして、本作を書くことができました。
本作では、ディレクターの山田という人物が主人公にパワハラをしてきますが、これは作者が実際に何度も受けたことのある経験です。読んでくれた皆さんが、他人に迷惑をかけないように、モラルについて考え直してくれたら幸いです。




