見たこともない素晴らしい花を君に
初めて短編小説を書いてみました。
遠い未来のSFです。
人が銀河系を超えて、繁栄を始めた時代。
「ステーション11、入港許可願います。」
私はノーラ。個人営業の巡回軌道パトロール。ステーションに雇われて周回航路を監視して過ごす
日々。久々に基地に帰還したところだ。
この仕事は退屈と敬遠されがちだが、私は気に入っている。
子供の頃から、星の海で過ごしたいと憧れていた。
私は、いわゆる『ロンリー・ベビー』。どこかの男女が気まぐれに自分の遺伝子を残したいと精子
と卵子を提供して、人工子宮で生まれた子供。それなりに財産は信託で大人になれば使えるように
されていたが、決して親の顔も名前も見る事も知る事も一生ない。
「ハーイ!ノーラ、久しぶり。ご機嫌な旅だった?」
ステーションの管制官のベティの明るい声が通信機から流れる。
「宇宙塵が少なくて、アルデバランが綺麗に見えたわ。」
「そう。良かったじゃない。ちょっと混んでるから入港待ちお願いね。」
星の海も好きだけど、たまには人口とはいえ、ステーションの青い空と地面が恋しくなる。
一応”休暇”なので、ショッピングに行こうか、オシャレして遊びに行こうかと待ち時間の間に
色々計画を想像していた。
無事にゲート入りして、専用スペースに我が愛機を停める。
頑張って中古で買ってから自らチューンアップやら塗装やら手を掛けている。
だって宇宙空間では、私の命がかかってるから。
休憩ラウンジに移動すると、ベティが先にいた。
手を挙げてこっち!と合図されたのでテーブルに向かう。
彼女おすすめの近くの惑星系のフルーツドリンクを私も頼んだ。
ライムグリーン色が美しく、酸味と甘みのバランスが良くて、とても美味しい。
「ベティ、ステーションではこの頃どうだった?」
「うん、まあまあかな。ちょっと人の移動があったくらいよ。」
「そう。じゃあ、グリーン・ゴーね。」
「ノーラはしばらくのんびりするの?」
「うん。たまには地面も恋しくなるわ。」
その時、ラウンジに背の高い見覚えのある若い男性が入ってきた。
あ、ベティの彼氏ね。
軽く彼が手を挙げるとうれしそうに彼女が顔を赤らめた。
「それじゃ、お邪魔虫は退散、退散。」
「え、ごめん。また連絡する。」
軽くウィンクして私は席を立った。
1週間ほど、我が家の片付けや掃除、買い物と時間がかかったけど、そろそろバカンスに行くこと
にした。とは言っても、郊外の植物園へ。私のお気に入りの場所でピクニック。
管理された美しい外の広い草原を風に髪をなびかせて、私は気持ちよく歩く。
途中の東屋でランチタイムにすることにした。
バスケットを置いて、初めて先客に気づいた。
12歳くらいの男の子。亜麻色の髪に美しい紫の瞳。初めて会った子なのになぜか知っている気が
した。
「こんにちは。ここにご一緒させていただいてもよろしいですか?」
彼はゆっくりと私の方を見上げた。
「ええ、どうぞ。僕はかまいません。」
穏やかで優しい笑みを彼は浮かべて答えた。
「よければ私の手作りですが、お昼がまだならご一緒しませんか?」
少し驚いた顔で目を見開いた彼は、
「…ご迷惑でなければ、うれしいです。」
とはにかみながら返事をした。
私と違って、ちゃんと両親がいるのかな?
どこか育ちの良さを感じさせるけど。
ランチを勧めると美味しいとうれしそうに彼は食べ始めた。
「もし良ければ、お名前を教えてくれる?」
「アレン=ボーナーと言います。」
「アレン、このステーションに住んでるの?」
「いえ、母の思い出に立ち寄りました。」
(あんまり深くは訊かない方がいいわね。)
しばらくお喋りして、美しい風景を2人で眺めていた。
「じゃあ、私は向こうへ行くわね。会えて良かったわ。」
すると彼はスッと何かの苗を取り出して、私に差し出した。
「この花を育てていただけませんか?とても美しい花が咲きます。」
突然で驚いたけど、受け取ってしまった。
「ありがとう。頑張って育ててみるわね。」
そう言って、別れ際に手を振って笑顔で離れた。
アレンはそんな私をずっと見送っていた。
そういえば、私の瞳とアランの瞳は同じ色ね。
私が巡回に出ている間はベティに預け、ステーションに帰った時は私が育てたその苗はすくすくと
育ち、やがて蕾をつけた。
ある朝、虹色に輝く白く美しい不思議な花を咲かせた。
本当に綺麗。とっても良い香りが部屋中に漂った。
なんだろう?花が私に笑ってるみたい。
私はとても幸せな気持ちに満たされた。
アランは父に言った。
「母さんに父さんが渡したかった花を渡せたよ。」
父は静かに横たわったまま、応えることはない。
ノーラは数年後、恋をする。
アランを身籠ったまま、事故に遭い、息子の顔も知らず、生命維持装置につながれたまま、アランを
産んだ。父は妻をかばい大怪我をし、子供が生まれた時に渡すはずだった花束を渡せなかった。
幼かった時はまだ意識があった父から、アランはそのことを何度も聞いて育った。
本当は時間遡行は禁止されているけれど、父の上司がアランの切なる願いを叶えてくれた。
「父さん、母さんに父さんの想いを伝えたよ。母さん、綺麗な人だったんだね。」
その時、動かない父がほほ笑んだように見えた。
アランは父も母も大好きだと思った。
あの2人のように自分も一歩一歩確かに人生を歩んでいこうと決意した。
いつか誰かと美しい花を共に笑って眺めようと。
拙いものですが、読んでくださった方がおられたらありがとうございます。
誤字報告して下さった方、ありがとうございます。
自分で書いてなんですが…読んで下さる方が増えていてビックリしました。
実はまだ投稿の仕方がよくわからないのですが、見出しごとの分け方での投稿を勉強してボチボチ書いていこう
かなと思います。読みづらいし。
AIをほんの少しでも使ってでの芥川賞の受賞にちょっと疑問を持っているこの頃です。




