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ポイズンポーションを作ろう

 敵のいない、見晴らしのいい原っぱを見つけたので、そこで車を止める。


 助手席のボックスの中から例の分厚い錬金術の本を取り出し、運転席に座りながらペラペラ捲る。

 この本のどこかに毒に関するページが載ってるかもしれない。丹念に調べよう。


 しばらくページを捲ってると、毒の回復に関係してそうな『ポイズンポーション』の作製方法のページを見つける。

 そこには「このポーションは毒を無効化する調合薬です」と説明書きが記述してあり、さらに「車に使用すると毒耐性付与の永続的効果をもたらします」とあった。

 永続的効果! 

 つまりずっと毒に対する耐性が付くという事らしい。

 てことは1回このポーションを使用すれば、作り直す必要も、使う必要も無いと言うわけか。

 かなり便利なアイテムだな。毒を受けるたんびにポーションをいちいち使うなんて面倒くさいもんな。

 よーし! これは作りがいがあるぞ!

 やる気スイッチが入った俺は、鼻息を荒くしながら作製方法を見てみる。

 合成に必要な素材は『トルドの実』、それと『ラガス石』、あと『べドロの目玉』とある。この3つを合わせると作製できるみたいだ。

 ちなみに、いずれもこのグリンフォール草原で採取できる素材らしい。

 ……。

 今度は3つも素材が必要なんだ。これは少し骨が折れそうだな……。

 ちょっとテンションが下がる俺。

 トルドの実は、たぶん名前からして木の実とかだろう。ラガス石は、まんま石のことに違いない。

 問題はべドロの目玉だな。

 どうやら生き物の目玉を抜き取らないといけないみたいだ。

 素材集めでそんな事しなくちゃいけないのか。何か嫌だな、それ。

 考えたら何か気持ち悪くなってきた。

 はあ……。

 やる気スイッチ、わずか数秒で電源オフ。


 そもそもべドロというのが何なのかがよく分からない。

 目があるんだから、動物や虫などの何らかの生物だとは思うが……。

 とにかくこれで必要な素材の情報は得ることができた。

 さて、それじゃまずは簡単に採取できそうなトルドの実を探すか。けど素材の形までは本に載っていないからどう探すか。


 そういえば俺は素材感知スキルを獲得している。それはカーナビで素材の位置を調べられるスキルと言っていた。

 じゃあカーナビでさっそく検索だ。

 俺は目の前のカーナビの画面を指でタッチし、試しに検索画面でトルドの実と打ち込んでみる。

 するとマップに緑色の点が表示された。広い草原の中に、ポツンと1つだけ点が表示してある。

 この原っぱの向こうの方だな。

 よし、行ってみよう。

 俺は車を走らせ、カーナビを見ながら緑色の点があるポイントに向かう。

 進行方向である魔力の泉からは逆方向になるが、まあ仕方がない。毒に対抗する手段は絶対に必要だ。急がば回れだ。


 車を走らせていると、草原の中に小さな茂みがあるのが見えてくる。カーナビの緑色の点はそこを示している。辺りに魔物はいないようだ。

 俺は茂みの手前で車を止め、運転席から降りて茂みの葉っぱに実が成っていないか調べてみる。

 あった。

 色は濃い緑色。

 丸い形をしていて、全体にイボがたくさんある実だった。大きさは野球ボールぐらいある。

 俺は枝から実をもぎ取り、手に入れた実を眺める。

 これがトルドの実か。

 よし、まず1つ目の素材をゲットだ。カーナビで探すと簡単だな。

 さて次はどうするか。ラガス石にするか。落ちてる石を拾えばいいだけだと思うし。

 俺は採った実を助手席に載せ、カーナビで2つ目の素材、ラガス石を検索する。

 1点だけ反応があった。ここから2、3分ぐらい先だ。近いな。

 俺は反応があった方向へ車を走らせる。


 しばらく草原を走っていると、遠くの原っぱに、小さな岩がポツンと1つだけあるのを発見する。水晶のように透明な色をした岩だ。

 俺は車を岩の近くに止め、運転席から降りてこの水晶のようなキラキラした岩に近づく。

 岩は俺の身長ぐらいあり、幅は3メートルぐらいあった。

 これがラガス石か。キレイな石だな。

 俺は岩を手でペタペタ触ってみる。ひんやりしている。

 次に拳で軽く叩いてみる。当たり前だが硬い。とてもじゃないが壊せそうにない。

 さてどうするか。

 岩を丸ごと採取するわけにはいかないので細かく砕きたいところだが、見たところ素手で破壊するのは難しそうだ。

 つるはしを持ってるわけでは無いし、弱ったな……。

 そうだ。車の回転斬りで破壊するか。

 おお。ナイスアイデア。あの巨大な芋虫を破壊できたんだ。ひょっとしたら岩もイケるかもしれない。

 さっそく試してみよう。


 俺は車に乗り、運転して車を岩に横付けにしたあと、ハンドルにある回転斬りのボタンを押す。

 車は隣接する岩に向かって、高速回転で剣をブンブン振り回す。

 

 バキッ!


 ……。

 嫌な音がした。

 車の回転が止まったあと、俺は何があったか車を降りて確認する。

 見れば、車に取り付けていた牙の剣がポッキリ折れていた。車にくっ付いていた木枠も取れてしまっていた。

 牙の剣はどうやら岩の硬さに負けたらしい。そんなに硬いのか、この岩……。

 岩を破壊できないのもそうだが、それよりも大事な攻撃手段を1つ失ってしまったのがショックだ。しかもMPを使わない物理攻撃をだ。

 だがクヨクヨしてても仕方ない。剣はまた作ればいい話だ。

 それよりもこの硬い岩を砕く他の方法を考える方が大事だ。そっちに集中しよう。

 硬い岩を砕く方法か……。そんな方法あるかな。

 ファイアボールがあるが、あれに岩を破壊する威力があるのか疑問だ。あの魔法は焼き払ったりするのには有効だが、破壊には不向きな感じがする。

 そうだ、そういやさっきサンダーを覚えたんだ。あれはどうだろう。

 ふむ。サンダーか。

 稲妻って落ちると木を真っ二つにする破壊のイメージがある。

 なるほど。サンダーならこの岩を砕くことはできそうだな。これなら行けるかもしれない。よし、やってみるか。

 ただ気になるのはサンダーの消費MPだ。さっきステータスを見たら残りのMPは35あった。

 消費MPを使いまくるファイアボールでさえも3発は使えて、それでも少し余る量だ。

 1発ぐらい使っても大丈夫かもしれないな、サンダー。

 と言うわけで俺はハンドルの『サンダー』と書かれたボタンを押す。


 車のヘッドライトが光り出す。

 光の中でバチバチと電流のようなものが精製されている。と思ってたら次の瞬間、


 ズドンッ!


 強烈な稲妻が正面に放たれる。

 稲妻は目の前の岩に衝突し、岩はドリルで貫かれたかのように粉々に砕かれた。

 やった! 大成功だ! 

 サンダーで岩を破壊できた!

 ステータスを確認すると、消費MPは5だった。おお、しかも消費魔力が少ない。

 このぐらいなら何度も使える。これはしばらくサンダーは攻撃の主力として使えそうだな。

 でも何で破壊力があるのにサンダーは5でファイアボールは9もMPを消費するんだろうか?

 もしかしてファイアボールって単発魔法に見えて、意外に範囲攻撃の扱いなんだろうか。スライム5体をまとめて倒してたし。

 それに比べて、サンダーの攻撃は単体攻撃のような感じがする。あくまで使ってみた個人的な感想だが。

 まあそんな事より早く石の採取をしよう。いつまでもここにいたら魔物が集まって来るかもしれないし。

 俺は車から降りて、散らばって落ちている石の欠片の中で、手頃な大きさのものを拾う。

 俺は手に持ったラガス石を眺める。

 透き通るような石だ。本当に水晶みたいだ。

 ポーションを作るのになぜ石が必要なのか分からないが、とにかくこれで2つ目の素材、ラガス石は入手できた。


 よし、あとはべドロの目玉だけだな。

 探しに行こう。

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