マグマで釣りをしてみた
「そりゃ!」
灼熱のマグマの中にエサの付いた釣り針をヒュッと投げ入れる。
ポチャ。
マグマ溜まりのちょうど真ん中辺りに落ちた。
さー、あとは魚が掛かるのを待つだけだ。
どうするかな。座って待つか。
俺は釣り竿を両手で握りながら、その場に胡座をかいて座り込む。
しばらくジーッとマグマの方を見続ける。
釣り糸には何にも変化は無い。
ホントにこんなんで掛かんのかな。
マグマから吹き上げる熱風の暑さで汗が出て来る。
これは長期戦になりそうだな。
忍耐力との勝負だ。
しばらくボーッと釣り糸を眺めていること数分、竿がクイ、クイ、と引っ張られる。
お! 来た! 本当に食い付いて来た!
俺は立ち上がり、釣り竿を両手でしっかり握り締めて手前に引き寄せる。
だが相手の引っ張る力が強いため、体がマグマの方へ持っていかれる。
落っこちたら死ぬ!
くそ! 負けてまるか!
俺は足に力を入れ、体が持って行かれないように踏ん張る。
そして釣り竿を手前に引きながらゆっくりとリールを手でグルグルと巻き、投げた糸を巻き取っていく。
しかしまたマグマに引っ張られる。
うーん、何かうまく引き寄せられない。この辺は素人だからだろうか……。または相手が重過ぎるから……?
マグマにいる魚は釣り針から逃げようとして体を左右に振って引っ張ってくる。
ここで無理に引っ張っると糸が切れて逃してしまうかもしれない。ここは慎重に行こう。
俺は糸が切れないように、魚に合わせて竿を左右に振っていく。
しばらく合わせていると魚は疲れたのか、だんだん引っ張るパワーが落ちてくる。
よし! 今がチャンスだ!
俺は再びリールをグルグル巻き上げる。
ズッシリした重量感はあるが、俺の力で引っ張れないことも無さそうだ。ここぞとばかりに俺は一気に糸をグルグル巻き取る。
いいぞ! いい感じに巻き上げてる!
来い! 来い! さあ来い!
ザバッ!
マグマから燃える釣り糸を引き上げると、ゴツゴツした『石の魚』がエサに食い付いていた。
やった! 釣れた!
俺は釣り上げた重い魚を、自分のいる方の地面に放り投げる。
ガコン!
硬そうな音を立てて魚が地面に落ちた。
釣り糸に食い付いたままの魚が地面でバタバタと暴れている。
大きさは20センチぐらいだろうか。
鉱石魚は石で出来ているので、暴れる度に地面にガン、ガン、ガン、ガン、という体がぶつかる硬そうな音がする。
マグマの中にこんなのが泳いでいたのか。
鉱石魚は溶岩から出したばかりなのでかなり熱そうだ。いま下手に触ると火傷するかもしれない。しばらく時間が経ってから触るとしよう。
いや待てよ。ブリザードがあるな。あれでさっさと冷やしてしまうか。
俺は車に乗って地面にいる鉱石魚に向けてブリザードを発動させる。
ビュウウウウウウウッ!
吹雪が地面でバタつく魚を冷やしていく。
ピキッ、と鉱石魚は氷漬けになり固まる。
よし、動かなくなったみたいだな。
あれ?
目の前を見ると、さっき釣りをしていたマグマがスケートリンク場みたいに凍っていた。
はー、凄いなブリザード。まさかここまで冷やす力があるとは。
あ、そうか。さっきレベルアップしたとき魔力が上がったって言ってたよな。だから魔法の威力が増したのか。
俺は車から降り、地面に置いてる鉱石魚を触ってみる。
こちらもキンキンに冷えてる。これなら普通に触れる。
俺は凍った鉱石魚を持ち、車の後ろの収納スペースに入れる。
よし、これで素材の鉱石魚が手に入った。あとはこれをマジックラットと合成するだけだ。
ふう……。ここまでかなり時間がかかった。剣1つ作るのにここまでやる事があるとは……。
まあ手間がかかった分、それだけ強力な剣なんだろう。
さて、それじゃマジックラットが横たわってる場所に戻るとするか。
俺は車を走らせ、巨大ネズミの死骸がある洞窟エリアに戻って来る。
お、いたいた。
冷蔵庫と同じぐらいの大きさのネズミがまだちゃんと寝っ転がっていた。
しかし改めて見ると異様なサイズだな。本当にボンネットの中に入るのかこれ……?
巨大ネズミの目の前に車を止め、外に出てボンネットを開く。
まずは簡単な鉱石魚から入れるか。
後ろの収納スペースから石みたいに固まった鉱石魚を持ち、ボンネットの中の青い液体に放り込む。
鉱石魚は重さがあるため、液体の中に早く沈んでいく。
さて、問題はここからだ。
俺は地面に横たわるマジックラットの横に立ち、巨大ネズミの頭の上と下を手で掴み、車の方に無理やり引っ張る。
せーの、よっこいせ!
俺はマジックラットの体を力いっぱい両手で持ち上げる。
ぐぬぬぬ……ッ!
く……これはちょっと重過ぎるだろ……。
何でこんなバカデカいのが素材なんだよ。おかしいだろ絶対。
うお……りゃああッ!
ドボ。
ふぅ……。何とか巨大ネズミの頭が液体の中に浸かった。
よし。まず頭は入った。
次は胴体を下から押し上げていこう。
ふん! ふん!
ズブズブと液体の中に入っていく巨大ネズミ。
ふぅ……。何とか胴体の半分まで入った。
あとは後ろの両足を持って最後のひと押しだ。
お、りゃ〜〜ッ!
ズルんッ! と巨大ネズミの後ろ足が液体の中にすべて入っていった。
はあ……はあ……。
よっしゃ、何とか入った。
これで一匹丸ごと中にぶち込んでやった。
ふぅ……。やればできるもんだな。はは。
俺は液体の中を見る。
底なし沼に落ちていくようにマジックラットの巨大な体は液体の中に沈んでいった。
あの冷蔵庫のような巨体が飲み込まれていった……。
どうなってんだこの車……?
2つの素材を投入し終わったのでボンネットを閉めて合成を開始させる。
ジジジ、とヘッドライトの光でアイテムが作製され、空中に長い大きな剣が作られる。
完成したらしく、剣は地面にポトリと落ちる。牙の剣と同じようにTの形の剣だ。
俺はそれを前と同じようにフロント部分に合わせる。すると魔法が掛かり剣と車が同化した。
そのとき例の音声が聞こえてくる。
《軽自動車は特殊能力が使えるようになりました! 軽自動車は『噛みつき』『魔法耐性アップ』『ストーンミサイル』を覚えました!》
おお。何かいろいろ覚えた。
あれ、けど今のって全部マジックラットが持ってた能力っぽいな。
そうか、この剣を装備すると敵が持ってた能力を覚えられんのか。いやこれはかなり便利な武器なんじゃないか。
魔法耐性が上がったのは嬉しい。それにストーンミサイルも使ってみたいし。
あと噛みつきも……。噛みつき!?
何それ。
車が噛みつくなんてことできるんだろうか……。さすがにそれは無理があるんじゃないだろうか。
まあそんなことにいちいち噛みついてる場合じゃないか。先へ進もう。
俺はアクセルを踏んで車を走らせる。
しばらく洞窟を走っていると、どんどん道幅が広くなっていくのが分かる。それに伴い天井も高くなっていく。
洞窟内が、まるで競技場か何かの巨大なドームの中にいるような感じになってきた。
もはや洞窟とは分からないぐらい、広々とした空間になってきた。
キャッチボールしたりサッカーをしてもまったく問題無いぐらいの広い空間だ。しかも先に進むほど空間の広がりは増していく。
だだっ広い洞窟を走っていると、向こうの方に建物が立ち並んでいるのが見えてくる。
どうやらあれが知識の塔の壁画に描かれていた、目的の『名も無き街』みたいだ。




