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炎の糸

 車に戻り、カーナビで炎の糸を検索する。


 お、あった。

 マップに赤いマグマ地帯があり、すぐ近くに素材の反応がある。

 炎の糸だから、燃えてるマグマとかに関係してたりすんのかな? マグマが作り出してる糸なんだろうか? よく分からん。

 兎に角この場所へ行ってみるか。行けば分かるはずだ。

 俺は素材を回収するため車を走らせる。


 洞窟内をしばらく走っていると、だんだん車内の温度が高くなってきた。

 車の温度調節ボタンを回してエアコンを付け、車内に冷風を送る。

 あー涼しい。

 魔力燃料になってもエアコンて使えるんだな、この車。

 お、何か凄い景色が見えてきた。

 洞窟の先に真っ赤なマグマの湖が広がっている。

 俺は車を止め、歩いて崖まで近づき下を見る。

 下にはグツグツと煮えたぎるマグマがあり、表面からはコポコポと気泡が吹き出ている。

 灼熱地獄だ。こりゃ落ちたら確実に焼死するな。

 洞窟全体がマグマの熱さで気温が高くなっていて非常に暑い。

 汗が額から垂れ、地面にポタポタ落ちている。

 まるでサウナ風呂にいるみたいだ。

 早く素材を採取してとっととこのエリアから立ち去ろう。

 確かもうこの辺りにあるはずなんだよな、炎の糸。どこだろな……。

 俺は洞窟の周囲を見回す。

 あ、あった!

 洞窟の遠くの壁に高さ十メートル以上ある巨大な蜘蛛の巣が張ってあるのだが、何とその巣は火でメラメラと燃えていた。

 燃える蜘蛛の巣か。てことはあの燃えてる糸が炎の糸だな。

 そうか、炎の糸の素材は蜘蛛の糸だったのか。

 火に燃えても焼けないなんて不思議な蜘蛛の巣だな。どういう性質なんだろうか。

 俺はふと、その燃える蜘蛛の巣に1匹の巨大な蜘蛛が張り付いている事に気づく。

 何だあれは……? 魔物か? 

 俺の車と同じぐらいのサイズがある。かなりデカい蜘蛛だな。

 しかもその巨大蜘蛛も火でゴウゴウと燃えていた。

 何と巨大蜘蛛は火で焼かれているにも関わらず、巣をカサカサ動いている。

 火で焼かれても死なない蜘蛛か。火に耐性のある蜘蛛なのかもしれないな。

 俺は糸の採取を後回しにして、ひとまず巣にいる火炎蜘蛛を駆除しようと思いすぐにカーナビで敵を調べてみる。

 


ファイアスパイダー レベル13

スキル/手裏剣、火耐性

魔法/ファイアストーム



 案の定、この蜘蛛は火に耐性があるらしい。それに何だか魔法も使えるみたいだし。ちょっとやっかいそうな相手だな。

 火属性の魔物だからおそらく氷魔法に弱そうな気がする。

 さっき覚えたブリザードの魔法を使ってみるか。

 

 巣にいる火炎蜘蛛は俺に気づいたらしく、前足2本を前に出して火の風を目の前に作り出した。

 その火の風は地面に吹きかかり、地面でグルグルと渦を巻いていく。

 その風は強さをどんどん増していき、地面に炎の竜巻が発生した。

 なるほど。あれが火炎蜘蛛の魔法『ファイアストーム』か。

 地面から天井まで届く炎の竜巻が熱風を撒き散らしながらこっちに前進して来る。

 マズいな、こっちに来る。

 危険を感じた俺はすぐにブリザードを発動させる。

 すると車のヘッドライトから雪山で吹くような猛吹雪が放たれ、凍てつく冷気が炎の竜巻に襲いかかった。

 俺のブリザードと敵のファイアストームが互いの中央で衝突する!

 ピキッ!

 何と放った冷気は一瞬で炎の竜巻を凍らせた。

 洞窟の地面に一本の長い氷の柱が作られた。凄まじい冷却力だ。

 それを見て、遠くの蜘蛛の巣にいた火炎蜘蛛がピョン、と空中に飛び上がった。

 火炎蜘蛛は空中で8本足すべてをピンッと伸ばし、体を回転させていく。

 シャアアアアアアアッ! と高速スピードで回転し続ける火炎蜘蛛。

 その姿は回転する手裏剣のように見えた。

 燃える手裏剣だ。

 炎の手裏剣となった火炎蜘蛛は、回転しながらこっちに向かって飛んで来た。

 炎の手裏剣は凍りついた柱を破壊し、回転しながら車のフロントガラスに向かって突っ込んで来る。

 ならばと俺は再びブリザードを使い、飛んでくる手裏剣に吹雪をぶつける。

 凍てつく吹雪で冷却され、空中を飛ぶ炎の手裏剣は一瞬でカチコチに凍ってしまった。

 だが凍った手裏剣は勢いが付いていたので、回転しながらこっちに突っ込んできた。


 ガシャアアアアアアッ!

 

 車にぶつかり、凍った手裏剣は衝撃で粉々に砕け散った。

 洞窟の地面に凍った蜘蛛の体や手足が散らばる。

 

《軽自動車のレベルが14になりました! 軽自動車は『魔力アップ』を覚えました! 軽自動車の基本魔力が大幅に上昇しました!》


 お、魔力を強化してくれたみたいだ。

 よしよし。魔法関係の強化はありがたい。

 しかしレベルアップしたってことはあの火炎蜘蛛は死んだのか。

 ブリザード、恐るべし。


 危険が去ったので俺は車を走らせ、燃える蜘蛛の巣に近づく。

 マグマの手前にメラメラと燃える巨大な網目状の巣が張られている。

 蜘蛛の糸はまるでオイルでも塗ってあるかのようにメラメラと燃え続けている。

 これが炎の糸か……。

 凄く燃えてるけど、この素材って手で掴んで採取できるんだろうか? 

 俺は車から降りて巣に近づき、手を伸ばして燃えている蜘蛛の糸を採取しようと試みる。


「あちッ!」


 俺はすぐ手を引っ込め、自分の手を冷まそうと口でフーフーする。

 メチャクチャ熱いなこの糸。火傷するかと思った。

 燃えてんだから当たり前か。素手で火に触れるわけないもんな。

 じゃあどうやって採取したらいいんだこれ? どう考えても素手じゃ無理だろ。

 ……うーん。火を触る方法か。何かいいアイデアはないかな。

 そうだ、ブリザードで凍らすか。

 おお。いい考えだな。炎が凍ってしまえば簡単に糸を触れるようになるはずだ。

 よし、それで行こう。


 俺は車に乗り込み、燃える蜘蛛の巣へ向けてブリザードを発動させる。

 ヘッドライトから吹雪が発生して燃えてる糸に冷気を吹きかかる。

 予想通り、一瞬で蜘蛛の巣はカチコチに凍り付いた。

 さすがブリザード。何でも凍らせるんだなこの魔法。

 て……あれ?

 何と凍ったはずの炎の巣はすぐに火をゴウゴウと吹き出して氷を溶かしてしまった。


 え、何それ……。

 ブリザードでも凍らないのかこの糸……?

 どうするか。これだと炎の糸が採取できないぞ。参ったな……。

 あ、そういえばビニール傘があったよな。あれで引っ掛けて採るってのはどうかな。

 いや、あれはスライムと戦ったとき草原に置いてきてしまった。べドロの目玉を収納スペースに積んだときには中にはもう無かった気がする。

 うーん、傘も使えないのか。何かいい方法はないものか。

 俺はその場で腕を組んで考える。


 あ、そうだ! 魔力の水があったな!

 助手席のボックスに入れておいた瓶、あれを手にかければ触れるようになるんじゃないか? 

 あれは言ってみれば魔法の水だ。

 普通なら触れるはずのない透明な妖精だって触れたわけだし、あの魔法の水なら火だって普通に触れたりするんじゃないかな。

 よし、試しにやってみるか。

 

 俺は助手席のボックスから魔力の水が入った瓶を取り出して車の外に出る。

 そして瓶の蓋を開けて中の水を両手にチョロチョロかける。時間が経ってるから少しぬるくなってるな、この水。

 よし、終わった。これで触れるか試してみよう。

 俺は燃えてる巣に近づき、火でメラメラと燃える蜘蛛の糸に触れてみる。 

 おお! 熱くない! 

 さすが魔法の水! 普通に触れる!

 俺は素手で燃える蜘蛛の糸を引っ張る。

 あれ? 切れないな。よく見るとこの糸、思ったよりかなり太い。

 しょうがない、せーの!

 俺は足で踏ん張り、両手で掴んで思い切り蜘蛛の糸を手前に引っ張る。

 巣の網がビヨーンと伸びる。

 ん〜〜! こ、の、や、ろ! 

 ふんがあああああッ!

 ブチブチブチブチ!

 ようやく切れた。

 しかも、かなりまとめて千切れてくれた。

 ふう。かなり硬い糸だったな。確かにこの丈夫さなら釣り糸に使えそうだ。

 俺は燃えている千切れた糸の網を手でまとめ、一つの束にする。

 よし、これで炎の糸は入手できた。

 合成に必要な『ウォーク石』と『炎の糸』を手に入れたので、これで合成アイテムである『炎の釣り竿』を作ることができる。

 さっそく釣り竿を作ってみよう。


 俺は車のボンネットを開け、まずウォーク石を中の液体に放り込む。

 次に束にしたメラメラと燃える炎の糸を手で掴み、液体に入れる。

 しかし炎の糸を入れる直前、魔力の水の効果が失われたのか急に手が熱くなり出した。


「あちちち!」


 慌てて俺は炎の糸をボンネットの液体の中に放り込んだ。

 あぶねーあぶねー。

 ギリギリ間に合ったからいいものの、危うく火傷するとこだった。

 一定時間しか有効じゃないんだな、あの水……。 

 必要な素材をすべて入れ終えたのでボンネットを閉め車から離れる。

 例のごとくヘッドライトが光り出し、ジジジと火花を散らしながら空中でアイテムを生成する。

 しばらく待ってると完成したらしく、釣り竿は地面にポトッと落ちた。

 できた。炎の釣り竿だ。

 しかも糸を巻き取るリール付きの釣り竿だ。竿に付けてある糸は案の定メラメラ燃えていた。

 俺は釣り竿を拾ってみる。ガッチリした硬さがあるが非常に軽い。

 釣り竿は糸だけが燃えており、それ以外のロッド部分はまったく燃えてなく普通に持てた。

 ブランと伸びた糸の先を見ると、フック状の釣り針があった。

 どうやらこの針もウォーク石を素材にしているみたいだった。果たして鉱石で出来てる魚の硬い口をこの針で貫通できるんだろうか?

 それを確かめるためにも、早くマグマに行って釣り糸を垂らしてみよう。 

 でもこれ、俺の人生で初の釣りだったりするんだよな。

 人生初の魚釣りがマグマを泳ぐ魚って、いきなりハードル高くないか……?

 まあ何とかなるか? こうして立派な釣り竿があるわけだし。釣りはテレビで見たぐらいの、にわか知識しかないけど。

 あれ? そういえばまだ何か足りない気がするな。何だろ。

 あ、エサだエサ。釣り糸に付けるエサが無いんだよ。ルアーが無いからエサを付けないとダメだ。

 鉱石魚ってナニ食うんだろ。魚だからミミズとかかな? 洞窟にいんのかな、ミミズ。

 でもいたとしてもミミズなんかマグマに入れたらすぐに燃えつきちゃうか……。じゃあミミズはエサには使えそうもないな。

 錬金術の本には鉱石魚のエサまでは載ってなかったんだよな。

 マグマでも燃えないエサってなんだろ。そんなのあるんだろうか?

 ……あ! さっき倒した火炎蜘蛛!

 そうだ、あれをエサに使おう! 

 あの火炎蜘蛛は火耐性があるんだから、もしかしたらマグマの中に入れても燃えないんじゃないかな。 


 地面を見ると、あちこちにメラメラと燃え続ける火炎蜘蛛の肉片が落ちている。

 凍って飛び散った蜘蛛の手足が再び燃えて氷を溶かしたのだ。

 俺はもう一度さっきの瓶に入っている魔力の水を両手にかける。

 その濡れた手で、地面に落ちてる手の平サイズの燃える肉片を持ち、釣り針に肉を通す。

 よし、刺さった。これでエサの準備はできた。

 次は鉱石魚の場所を探そう。

 俺は車に戻り、カーナビで素材の位置を調べてみる。

 お、目の前にあるマグマに反応がある。どうやらそこで釣れるみたいだ。


 よし! ではさっそく鉱石魚を釣ってみよう!

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