表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/26

洞窟の巨大ネズミ

 階段は石造りで、そこら中が苔むしている。幅は狭く、車が1台入るのがやっとな感じだ。

 さっそく俺は車で階段を下りていく。

 

 下へ進むにつれ徐々に暗くなっていく。

 外の陽の光が届かなくなっているのだろう。階段の向こうが真っ暗で何も見えない。

 視界が悪くなって来たので、俺はヘッドライトを点灯させる。

 車はガタガタ言いながら長い階段を下りていく。どこまでも続くような階段だ。かなり地中深くに下りて行ってるようだ。

 あの壁画に描かれた絵の通りなら、この先の地底に街があるはずだ。そこにおそらく草原を封印したガーディアンがいる。

 そいつを倒せば俺はこの世界から抜け出す事が出来る。元の世界に戻るため、何としてもそいつをこの地底の中で見つけ出してやる。

 

 どれぐらい下りただろうか。ようやく長い階段が終わった。

 階段が終わるのと同時に地面が石造りから土に変わった。

 俺は前方を見渡す。

 そこは洞窟のような場所だった。

 天井の高さも左右の幅も広がりがあり、車で走ってもまったく問題無さそうな広い洞窟だった。

 見たところ街は見当たらない。その代わり、地面のあちこちに小さな発光体があった。

 それはキノコだった。サッカーボールぐらいの大きさの光るキノコだ。

 キノコは笠の部分から青白い光を出して輝いている。この光るキノコのお蔭で、洞窟の中は明るかった。

 俺はヘッドライトの明かりを消し、光るキノコの明かりを頼りに車を走らせる。

 洞窟の地面は凹凸が激しいので、慎重に進むことにする。

 まったく人の手が加えられていない自然のままの洞窟だ。

 どこかに水脈があるのか天井からポタポタと水滴が垂れており、地面が湿っている。

 その湿った地面や壁にはゲジゲジが這っていた。さらに天井ではコウモリがバサバサと飛んでいる。

 何とも気味の悪い場所だ。

 このジメジメした場所はどうやら生き物たちには暮らしやすい環境らしい。

 さらに進んで行くと、たくさんの分かれ道があった。

 どの道が街に続いてるんだろうか。

 そう言えば街がどこにあるか調べて無かったな。カーナビで調べてみよう。

 俺はタッチパネルを触ってマップを出す。

 どうやらこの場所は『アンダール洞窟』と言うらしい。

 だがマップを見ても近くに街らしきものは表示されて無かった。

 仕方がないので、今度はマップを縮小してもう少し範囲を広げて探してみる。

 あった。

 遠くの場所に『名も無き街』と表示されている。

 マップに小さな四角い建物らしきものがたくさん点在している。見た感じ、かなり大きな街のようだ。

 まさか本当に地底に街があるとは……。

 その名も無き街はここからだいぶ先にある。これは思ったより時間が掛かりそうだな。

 ルート案内は分かれ道の右側を選んだ。俺は指示に従ってそっちの道を進んで行く。


 先に進んで行くと、大きな4足歩行の生物が歩いていた。

 それは冷蔵庫ぐらいある巨大なネズミだった。

 普通のネズミでは無さそうだな。おそらく魔物に違いない。

 できればネズミの駆除会社に電話したいとこだが、さすがに異世界までは出張してくれない。しょうがないから自分で駆除しよう。

 俺はカーナビで確認する。



マジックラット レベル12

スキル/噛みつき、魔法耐性アップ

魔法/ストーンミサイル



 どうやらこのネズミは魔法を使うらしい。

 やっかいそうな魔物だな。今のうちにマジックバリアを張っておくか。

 俺はハンドルのボタンを押して、防御魔法のマジックバリアを発動させる。すると白い光の膜が車全体を包み込んだ。

 よし。これで魔法防御が3倍に上昇した。

 これなら敵の攻撃魔法のダメージは軽減できるはずだ。

 こっちの存在に気づいたらしく、マジックラットは大きく口を開き、牙を剥き出しにしながらこっちに向かって走って来た。

 お、来たな。

 俺は敵に噛みつかれる前に、サンダーを撃ってカウンターを入れる。

 放たれた稲妻はマジックラットの顔面に直撃し、魔物は遠くへ吹き飛んだ。

 洞窟の地面をゴロゴロと転がる巨大ネズミ。

 やったか?

 だがマジックラットはすぐにムクリと起き上がり、全身をブルブルと振った。そしてケロッとした様子でこちらへ向き直る。

 おいおい……。まったく効いてなさそうだぞあのネズミ。これが『魔法耐性アップ』のスキル効果なのか。

 ならこれならどうだ!

 今度はファイアボールを撃ってみる。

 4メートルはある超巨大な火球がマジックラットに飛んで行く。

 火球は見事命中。ネズミを丸焼きにする。

 さすが自動追尾。狙った獲物は絶対に外さない。て、あれッ!?

 マジックラットは炎に包まれていたが、平然と立っていた。

 むしろ激しく燃え盛っていた炎の方が急に勢いを失くしていき、そしてすぐに鎮火してしまった。

 火が消えたあと、マジックラットは何事も無かったように自分の前足をペロペロ舐めている。

 ファイアボールも効かないのか。何なんだこのネズミ……。

 こりゃ本当に専門の業者にお願いしないといけない案件じゃないのか。

 待て。まだ俺にはトルネードがある。

 さすがにこれは効くはずだろう。竜巻が直撃して吹き飛ばされない者はいない。

 追い込まれた俺はトルネードを撃ってみる。

 洞窟内に竜巻が発生して、落ちてる石を巻き込みながら竜巻はマジックラットへ向かっていく。

 暴風に飛ばされた宙を舞う石たちが魔物にビシバシと命中していた。その石にはさすがに魔物も嫌がってるようだ。

 よし。ようやくダメージが入ったようだな。物理攻撃は効くみたいだ。

 あとは竜巻でネズミが吹き飛べば粉々になってしまうはず……て、あれ?

 見れば、魔物を吹き飛ばすどころか、魔物にぶつかった竜巻の方がすぐに掻き消されてしまった。

 竜巻が消えたので宙に飛んでいた石たちがゴト、ゴト、ゴト、と地面に次々に落ちていく。

 余裕の現れなのか、マジックラットは大きな欠伸をしている。

 トルネードの魔法も効かないのか……。

 これが魔法耐性アップ……。強過ぎるだろこのネズミ。

 まさかネズミ1匹にこんなに大苦戦するとは思わなかった。

 どうする。これはかなり厄介な相手だぞ。

 魔法が効かないとなると、それじゃどうやって倒したらいいんだ……。


 俺が頭を悩ませていると、マジックラットはその場で全身の毛を逆立たせる。

 魔力を使ったのか、地面に落ちている大きめの石が黒い光を発した。

 この黒い光を帯びた石は空中に浮かび上がり、弾丸のようなスピードでこちらへ飛んで来た。

 音速で飛ぶ大きな石の弾丸はフロントガラスをぶち破りそうになるが、車を覆っているマジックバリアの白い膜にぶつかったらしく、ガンッ! と重そうな音を立てて石を弾き返した。

 おお、弾いた! 

 あの石の弾丸を弾くなんてかなり強力なバリアだな。

 今の攻撃魔法はおそらくマジックラットの所有魔法『ストーンミサイル』だろう。防御魔法が無ければ貫通してたな。

 正面にいる敵の方を見てみると、マジックラットは自分の魔法攻撃を弾かれたのがショックだったのか、茫然自失と言った感じでボーッと呆けてこちらを見ている。

 どうやら戦意を失いかけてるみたいだ。

 よし、今のうちに作戦を立て直そう。


 このネズミに魔法は効かない。なので何らかの物理ダメージを入れる必要がある。

 だが剣を装備してないので、覚えた剣技は一切使えない。

 考えつく手段としたら、アクセルを踏んで単純に車で轢き殺す方法だ。

 だが相手のデカさは冷蔵庫並だ。ぶつかってダメージが通るか正直ビミョーだ。

 でも突っ込むしかもう手段が残って無い気がする。

 でも、もし車をぶつけて倒せなかったらどうする? 

 そしたら何度もぶつければいい話だ。

 1回バックで下がって、またドライブに入れて……。

 うん、それしかない。それで行こう。

 だが俺が考えてる隙を突いて、戦意が戻ったマジックラットは地面を駆けて猛スピードでこっちに突っ込んで来た。

 どうやら向こうも同じ事を考えてたみたいだ。捨て身で噛みつきに来やがった。

 俺はアクセルを踏んでカウンターを入れようとするが、今更加速しても間に合わなそうだ。

 マジックラットは大きな口を開いてこっちに走って来る。

 そのとき俺はいい考えが急に浮かんだ。

 マジックラットに噛まれる直前で、剣も無いのに俺はジャンプ斬りを使ってみた。

 ビヨ〜ン、と軽自動車は洞窟の高い天井のスレスレまで大ジャンプする。

 直前で車が飛んだので、ガチッ! とネズミは何も無い場所を噛み、攻撃が空振りに終わる。

 宙に打ち上げられた車の方は、万有引力の法則に従いそのまま真下へ落下する。


 グシャッ!


 地面にいるマジックラットを車が上から押し潰した。何かスイカのような丸い物に乗り上げたような、嫌な感じがした。

 サイドミラーを見ると、マジックラットが頭を車の下に潜らせているのが見える。

 車の下敷きになったマジックラットはまったく動いていない。今の一撃で倒したのかもしれない。

 それより落下の衝撃でケツが痛い。

 もう2度と使いたくない技ナンバーワンだな、ジャンプ斬りは。

 

 さて、ネズミがどうなったか見てみるか。

 車から降りて後ろを見ると、右側の後方のタイヤがマジックラットの頭を踏みつけていた。

 頭蓋骨が砕けたのか、頭がペッタンコに潰れている。魔物はピクリとも動かなかった。完全に絶命しているようだ。


《レベルアップしました!》


 明るい楽しそうな声が割り込んでくる。


《軽自動車のレベルが13になりました! 軽自動車は『ブリザード』を覚えました!》

 

 ブリザード。冷気系の魔法か。

 相手を寒がらせるぐらいじゃ大して使えない気がするが、凍らせるレベルの魔法なら強力な武器になりそうだな。

 しかし今回の戦いで分かったが、やはり剣は装備しておくべきだと思う。

 今みたいに魔法に耐性がある奴が出てきたら、途端にこっちの攻撃手段が無くなってしまうわけだ。

 しょうがない。また錬金術の本で新しい剣を作ってみるか。

 洞窟の素材で何か作れないか調べてみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ