草原のガーディアン
「ガーディアン?」
「はい。ガーディアンはこの草原を守っているリーダー各の魔物です。彼はススムをこの世界に閉じ込めるため、草原から出れないようこの世界に封印の魔法をかけました。しかしガーディアンが消滅すれば、この草原にかけられた封印は解かれるはずです」
「なるほど。じゃあその封印を解いたら、俺は元の世界へ帰れるってわけか?」
「それは何とも言えません。ですがこの草原が封印から解放されて崩壊する事によって、ススムの意識はこの世界から遮断されるはずです。その時が元の世界へ戻る唯一の機会になる事は確かです」
「唯一の機会? じゃあその機会を逃したら俺はどうなるんだ?」
「おそらくこことは別の世界に、あなたの意識は飛ばされるでしょう」
「え、それってつまり、また魔物のいる世界に行くって事なのか?」
「その可能性はあります」
そうか……。
草原の封印を解いたからと言って必ずしもこの危険な旅が終わるわけでは無いのか。
だが悩んでても仕方ない。少なくともこの泉に来た事によって、この世界の事が段々と分かって来たことは事実だ。
このまま前進を続ければ、また何か新しい発見があるかもしれない。
案ずるより生むが易し。あまり深く考え過ぎず前向きに気楽に行こう。
「分かった。じゃあ、まずはそのガーディアンを倒しに行く事にするよ。その後どうなるかはその時になってみないと分からないし」
「そうですか。ではススム。私からあなたにささやかなアドバイスです。この泉を出たら北を目指しなさい」
「北?」
「はい。その方角に『知識の塔』があります」
「知識の塔? 何だそれ?」
「草原のガーディアンはススムに存在を知られないよう、この草原のどこかに身を潜めて隠れています。知識の塔にはそのガーディアンの居場所を示してあります。知識の塔は隠れたガーディアンを探知するための、いわば発見器です」
「発見器……。へー、そんな便利な建物があるんだ」
「知識の塔はススム、あなたが作り出したものです」
「え、俺が作った……? どういう事だ?」
「知識の塔は、この世界から出たいと思うススムの強い気持ちによって、ススムが無意識に作り出したものです。この世界に初めから存在していたわけではありません」
「俺が無意識に作った? んなアホな。俺にそんな力があるとは思えないんだけど……」
「ススムの乗っている車も同じです。それもススムがこの世界に無意識に作り出した物質です」
「え? この車を俺が作り出した? そんな覚えはまったく無いんだけど……?」
「おそらくススムは前の世界で、その車に強い思いがあったと思います。その強い念が、この世界で形として存在しているのだと思います」
「念か……。まあ確かあの車は生活に必要なものだったから強い思いはあったような気がするけど……」
「その作り出した念の元はススム、あなたです。ですからその不思議な乗り物の正体は、実はススム、あなた自身かもしれません」
「え、この車が俺なんですか? 何だか理解し難い話だな……」
「私が分かるのはこれぐらいです。では私はひとまずこれで失礼します。ススムの旅に幸運がありますように……」
そう言って、泉の上に浮かんでいた妖精は姿を消した。
消えた……。
いろいろと親切な妖精だったな。あの妖精のアドバイスのお陰で少し希望が持てた気がする。
そうか。この世界を出るにはガーディアンを倒す必要があるのか……。
魔物たちのリーダー各と言うから、それなりに戦闘力はありそうだな。もちろんレベルも高いはずだ。
となると、戦う前にこちらも相応のレベル上げはしておく必要があるな。
さてどうするか。
言われた通り知識の塔へ向かうべきだが、その前にこの場所でいろいろとやっておきたい事がある。
まず目の前には魔力を回復する泉がある。ここなら魔法をいくら使ってもすぐに魔力を補給できるわけだ。
補給方法はそうだな。車のボックスの中に中身が空になったポイズンポーションの空き瓶が入っている。あれに泉の水を汲んで給油口から注ぐとしようか。
これで魔力はいつでも補充できるから、これからは魔法を好きなように使えるわけだ。
そこでさっそくだが試しにさっき覚えたマジックバリアを使ってみたい。
旅立つ前にその魔法がどのぐらい効果があってMPをいくつ消費するのか検証しておきたい。
俺はさっそく運転席に戻りハンドルのボタンを押してその場でマジックバリアを使用する。
車のヘッドライトが光り出したあと、車全体を白い光の膜が包んでコーティングした。
ほー、これがマジックバリアか。
俺はステータスを確認する。
魔法防御が通常の3倍になっている。倍ではなく3倍である。
さっきの100ダメージ以上あったウインドカッターが、30〜40ぐらいしか食らわなくなるわけか。これは驚異的な防御効果だ。
気になる消費MPはというと、最大50あったのが47になっていた。つまり3しか使用していない事になる。
ヒールと同じ使用量か。使い勝手の良さそうな魔法だな。
レベルを上げれば最大MPもどんどん上がるわけだから、これから益々このマジックバリアは使い易くなっていきそうだ。
こんな確認をしている間も車は白い光の膜で覆われており、光のコーティングをずっと維持していた。
かなり継続時間の長い魔法のようだ。
マジックバリアを1度発動させてしまえば、あとはもう魔法防御の事は気にせず攻撃だけに専念できそうだ。
その後、数分で車を覆っていた白い光は消えてしまった。
さて、次は魔力の補給をしてみよう。
俺は助手席のボックスからポイズンポーションの液体の入ってない空き瓶を取り出し、手に持って車の外に出る。車から出る前に予め給油口の蓋は開けておく。
瓶を持って泉へ足を運び、空き瓶のキャップを外す。そして瓶の口を水の中にそっと浸ける。
瓶の中が泉の青い水で満たされるのを確認して、水の中から瓶を取り出す。
これで魔力の水が瓶に入った。あとはこれを車に使うだけだ。
俺は車の給油口に行き、給油キャップを外してから魔力の水を給油口の中に注いだ。
注いでからわずか数秒で瓶の中身がすぐ空になった。一瞬だったが、これで念願だった魔力の供給が完了した。
だが瓶の容量は小さいので1回の魔力の供給量はたぶん少ないはずだ。具体的にはどれぐらい回復したのだろうか。
俺は運転席に戻りステータスを確認する。
車のMPは全回復していた。全回復と言っても消費したのは3だけなので、MP3の回復だ。
消費したMPが少ないから瓶1本辺りでどれぐらいの回復量かよく分からなかった。
これじゃ検証にならないな……。
グオオオオオォォォォ……ォォ……。
そのとき、何かの唸り声が聞こえた。




