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切り裂く!ウインドカッター

 巨大な蝶がこっちに飛んで来る。

 あの芋虫と同じようなサイズだ。

 大きな2枚の羽を広げるとより一層デカさを増して見える。


 空を舞う巨大な蝶は警戒してるのか、空中で静止してこちらの様子を窺っている。

 そしてその場で大きな羽を扇子のように前後させ、バサバサと扇ぎ始める。すると羽から紫色の粉が混じった猛烈な風が発生した。

 これが毒吹雪か。

 羽に付いている粉を撒き散らしているみたいだが、まあこの毒は想定済みだ。気にする必要はないだろう。

 その証拠に、車を見ても毒を受けてる様子は無い。

 問題は風の勢いで車が後方へズルズルと押し戻されてることだ。

 しかも風の勢いはどんどん強くなって来ている。このままだと車がひっくり返ってしまいそうだ。

 車が倒れる前に先手を打つことにしよう。


 俺は使うと決めていたサンダーのボタンを押す。

 ヘッドライトの前にビリビリと電流が走り、ズドンとサンダーが発動。

 車のヘッドライトから出たレーザーが空中で羽ばたく蝶に直撃する。

 サンダーを受けた巨大な蝶は、空中であっさりと木っ端微塵に砕け散った。


「よし、やった! 1発で倒した!」


 4発も必要なかった。やはりサンダーの魔法は1発当たれば充分強かった。

 硬い岩を砕くんだから、そりゃ並の破壊力じゃないか。

 しかもこのサンダー、前に使ったファイアボールと同じで自動で対象をロックオンしてくれてるみたいである。撃ったら勝手に蝶に目掛けて飛んで行った。


 羽ばたいていた蝶が死んだので吹いていた風もどうやら収まったようだ。

 ふう。よかった。何も被害を受けずに済んだ。

 俺は運転席から毒の粉を浴び続けていたボンネットを確認する。特に変化は見当たら無かった。

 車が変色していないとこを見ると、どうやら毒攻撃は無効化したみたいだな。

 お手製のポイズンポーションの効果が発揮されたらしい。


《レベルアップしました!》


 お、レベルアップか。

 サンダーを使って減ったMPをここで一気に全回復。ここまですべて計算通りの流れだ。


《軽自動車のレベルが8になりました! 軽自動車は『トルネード』を覚えました!》


 トルネード。竜巻か。

 おそらく攻撃魔法だと思うが、もしそうなら助かる。魔法の攻撃手段はあればあるだけいい。

 でもどの程度の規模の竜巻を出すのかは使ってみないとよく分からない。アメリカとかで発生する災害クラスだと使うのに躊躇するが、どうなんだろうか。

 それとも魔法の威力は自分のレベルに影響してるのかな。

 どちらにしろトルネードは範囲攻撃系の魔法だと思う。しかもああいう空中に飛んでる敵に有効な気がする。


 フロントガラスから遠くを見ると、新たにたくさんのポイズンバタフライがこちらへ飛んで来るのが見える。

 数は5匹ぐらいはいる。ちょっと多いな。

 丁度いい。あいつらにトルネードを使ってみるか。

 そう思った矢先、蝶の集団のうちの1匹がピカッと緑色に光り始めた。

 光りだした蝶は緑色のオーラをまといながら6本ある足を前に突き出す。すると足の先に半月状の刃のような光が作り出される。

 三日月のような光る刃だ。

 蝶はその作り出したエネルギーの刃を地上にいる俺に向けて撃ってきた。 

 光る三日月カッターがこっちに猛スピードで飛んでくる。


 ザシュッ! 


 三日月カッターは車を切って通過していく。

 運転席からボンネットを見ると、車には傷が一直線に付いている。

 だが切り裂かれた跡が付いたものの、幸いにもその傷は浅かった。

 俺はすぐにステータスを確認する。

 400あるHPが281に減っていた。

 1発で119のダメージか。結構エグいな。あと3発受けるとアウトか。

 これがウインドカッターか。やっかいな魔法だな。


 今度は他の飛んでいる蝶たちが足並み揃えて一斉に光り始めた。

 全員でさっきと同じウインドカッターを同時に撃つ気らしい。

 マズい。

 あれを全部食らったら確実に終わる。

 俺はその場から離れるためハンドルを回しながらアクセルを踏み込み、車を横の方向へ急発進させる。

 直後、空中から複数のウインドカッターがこっちに飛んできた。

 何発かは外れたがそのうちの2発が間に合わなかったらしい。

 車の後ろをザシュザシュッ! と切り裂いていく。

 ウインドカッターが被弾した瞬間、車の後ろからメキッと音がした。

 俺は後ろを振り返る。

 車の天井に裂け目が付いており、空の景色が見えるようになっていた。

 くそ、車が壊れ始めているようだ。

 もう残りのHPが少ないのだろう。

 2発受けたという事は、次の1発で終わるはずだ。

 俺はすぐにヒールを使い、敵への攻撃よりも車の回復を優先した。

 ステータスを確認すると、HPが400に戻っている。

 よし、何とか態勢を立て直すことができた。

 俺は反撃とばかりに新しく覚えたトルネードを使うことにした。

 ハンドルのボタンを押すとヘッドライトが光り、車の目の前に地面から雲まで届く細長い竜巻が発生した。


 竜巻は猛烈な風を巻き上げながら、空にいる蝶の群れの方へ前進していく。これも自動追尾型の魔法みたいだ。

 竜巻が近づくと空にいる蝶たちは次々に竜巻の中に吸い込まれていき、グルグル回転しながら風の力で体が引き千切れてバラバラになっていく。

 バラバラにされた蝶たちは竜巻の中でさらに細かい粉末になっていき、そのあとその粉は天高く舞い上がり、雲の中へと消えていった。

 すべての蝶を遥か上空へ送り飛ばしたあと、トルネードは消滅した。

 草原の原っぱに、穏やかな風が通り過ぎて行く。

 凄まじい威力。

 あれだけいた魔物たちが1発ですべて消し飛んでいった。

 これがトルネードの魔法か。

 俺はあまりの破壊力に呆然とする。


《レベルアップしました!》

 

 さっきレベルアップしたと思ったらすぐにまたレベルアップした。

 大量に敵を倒したから経験値がたっぷり入ったんだろう。


《軽自動車のレベルが9になりました! 軽自動車は『マジックバリア』を覚えました!》


 おお、マジックバリア。防御魔法か。

 ウインドカッターで魔法防御力に不安を感じてたところだ。いいタイミングで覚えてくれたな。気を利かしてくれたんだろうか。


《レベルアップしました!》


 さらにレベルアップか。急に大盤振る舞いだな。

 さっきので一気に5匹は倒してるから、まあ上がっても不思議じゃないか。

 それより今回は特別なレベルアップだ。

 そう、記念すべき10レベル目なのだ。

 レベルアップしてから初の2桁台に突入したわけだが、節目となるとお祝いに何か凄い能力をプレゼントしてくれるんじゃないだろうか。

 おめでとう! 祝10レベル! 

 みたいな感じで。


 何を覚えるんだろう。

 ここまで魔法、魔法と来てるから、そろそろ物理攻撃が来るんじゃないかな。

 火炎斬りとか烈空斬とか、派手な技を覚えたりして。

 カッコいいなそれ。すぐ使ってみたい。

 さあ、何をくれるのか耳を澄ませて聞いてみよう。


《軽自動車のレベルが10になりました! 軽自動車は『魔改造タイヤ』を覚えました! 軽自動車が階段を上がれるようになりました!》


 ……。

 階段を上がれる、か……。

 10レベルに到達して辿りついたものが、階段を上がる事……なのか。

 飼ってる犬が最初に覚えるようなスキルだよなそれ……。

 まあ百歩譲って階段が上がれるのはいいとしよう。

 それよりもその上がるための階段がどこにも見当たらない。

 そりゃそうだ。草原だから階段なんかあるわけがない。どこで使うんだそんなスキル。


 まあ今回は3回もレベルアップすることができたわけだ。

 ステータスも上昇して新しい能力もたくさん増えたわけだし、終わってみれば大収穫だった。よしとするか。

 それより道を阻んでいた敵がいなくなったのだ。先へ進むとしよう。


 さあようやく魔力の泉だ。これで魔力の補給場所を確保できる。

 何かやたら長かったなここまで来るの。これで泉が枯れてたら泣くかもしれない。

 そんな事ありませんようにー。


 俺はアクセルを踏み、車を再び走らせた。

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