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沼の魔物

 最後の素材である『べドロの目玉』をカーナビで検索する。

 緑の点が出た。

 ここからもう少し先の場所にあるらしい。

 素材の検索結果なので緑色の点で表示してあるが、もしこの緑の点が敵ならタッチすれば能力が見れるかもしれない。

 そう思った俺は試しに緑の点を指で押してみる。



べドロ レベル5

スキル/ベロアタック、ボディープレス

魔法/アンデッド召喚



 案の定やっぱり魔物だったようだ。

 だが敵のレベルは俺より少し低い。

 レベル7へと成長した俺にとってはもはや格下。恐れる相手ではないだろう。

 ただ油断は禁物だ。どうやらこの魔物はスキル以外に魔法も使うらしい。

 初めてだな、魔法を使ってくる敵は。

 さて。戦う前に敵の分析だけはしておくか。ポイズンインセクトのように舐めてかかると思わぬ事態を招くかもしれない。


 まず『ベロアタック』だが、たぶん名前の通り舌ベロで攻撃して来るつもりなんだろう。

 どんな攻撃をして来るんだろな。

 単純に舌でひっぱたくとかだろうか。でも舌って柔らかいし、大した威力は無さそうな気がする。

 それに物理防御に特化したこの車なら、レベル5の魔物の打撃は大して効かないはずだ。

 あと考えられるとしたらそうだな……。

 舌によって車をひっくり返されるとかだろうか。それは少し考え過ぎか。

 いくら魔物とはいえ、舌ベロなんかで1トン近い軽自動車を倒す力があるとは思えない。

 だが相手は魔物だしな……。万が一と言うこともある。

 しかしそうなったとしてもこちらにはバランス補正があるから、倒されても起き上がれるかもしれない。


 次の『ボディープレス』だが、予想だと上から飛んで腹でぶつかって来る技に違いない。

 対処の仕方としてはそうだな。上から飛んで来るわけだから後ろに下がってかわすか。それで回避できるはずだ。


 気になるのは『アンデッド召喚』だな。これはたぶん死者を蘇らせる魔法だ。

 どんな攻撃が来るのかちょっと予想し難いな。見てみないと何とも言えない。


 まあ能力を見た感じ毒を出すわけでも無いし、加えてレベルも低いから特に戦っても問題は無さそうな魔物だと思う。

 ただ唯一懸念してるのは、車が剣を失っていることだ。

 回転斬りで敵が出した舌ベロを斬ってやりたいところだが、そうもいかない。

 でもその代わりに今はサンダーを獲得している。岩をも砕く魔法だ。

 これを使えば魔物なんて1発で木っ端微塵に出来るはずだ。

 よし、ではさっそくこの魔物のいる場所に向かうとするか。

 俺は3つ目の素材を手に入れるため、車を走らせる。

 

 草木以外、何も無いだだっ広い草原をしばらく走っていると、遠くに沼らしきものが見えてくる。

 原っぱにポツンとある大きな沼。

 草原のオアシスと言ったところだろうか。大きさは学校のプールぐらいはありそうだ。

 沼には生物はいない。代わりに白い骨が沼の周辺に転がっていた。

 俺は沼の数メートル手前で車を止める。

 車内から周囲を見回しても魔物の姿は見えない。安全を確認した上で俺は車から降り、落ちている骨に歩いて近づき調べてみる。


 地面に転がっていたのは4足歩行の動物の骨だ。形からして犬っぽい感じがする。

 待てよ。この骨はもしかしたらバロンウルフの骨じゃないだろうか。

 そうだ。間違い無い。大きさも似ている。

 バロンウルフはどうやらここで死んだみたいだ。

 沼の周辺を見ると、そこら中にバロンウルフの骨があった。みんなこの沼で命が尽きたようだ。

 飲み水があるのに何故だろう。水に毒でも入っているのだろうか。


 そのとき、目の前の沼の中からザバッと生物が出てくる。俺は驚き、音がした方を見る。

 沼から出てきたのは、巨大な茶色いカエルだった。2つのギョロっとした大きな目が特徴的な巨大なカエルだ。

 この巨大ガエルは沼から上がり、水浸しのままペタペタと歩いてこちらへ向かって来る。

 危機感を感じた俺はすぐにその場から離れ、走って車の運転席に戻りドアを勢いよく閉める。


 カエルの大きさはおよそ3から4メートル。横幅もそれと同じぐらいある。

 腹が出ていて、でっぷりと太りまくっている。足は太いが、両手は短い。

 カエルは口をモゴモゴさせたあと、ペッと何かを口から吐き出す。

 出てきたのは、バロンウルフの骨だった。

 なるほど、そういう事か。

 ここに死んでいるバロンウルフは、みんなこの巨大ガエルに食われたらしい。そして食ったこの巨大ガエルがべドロというわけだ。

 おそらく水を飲みに来たバロンウルフを襲って捕食しているんだろう。そしてどうやらべドロは捕食したバロンウルフを胃の中で溶かしたあと、消化し切れなかった骨だけを吐き捨てているみたいだ。

 しかしあの太った動きの鈍そうな体で、どうやってあの素早いバロンウルフを捕食するんだろ。

 そのときカエルの魔物は突然、その短い両腕を前に突き出し、


「グエゴ、ゲエゴゲゴ」


 と、謎の言葉を呟く。

 するとカエルの目の前に、小さな魔法陣が空中に描かれる。

 この宙に浮かぶ魔法陣はすぐにフッと消滅した。

 直後、魔物は口の中から何メートルもある太く長い舌ベロを、目にも止まらぬ速さでこっちに出してきた。

 伸びた舌ベロは大きく振りかぶり、横からムチのようにバチィッ! と車をひっぱたく。

 叩かれた衝撃でグルグルと駒のように回転する軽自動車。運転席にいる俺は自分がどっちの方向を向いてるのか一瞬分からなくなった。

 だが車はすぐに止まってくれたので何とかべドロを視界にとらえる事ができた。車は特に破壊された様子は無い。やはりレベル差のお陰だろうか。

 それを見たべドロは次の攻撃を仕掛けて来た。何と敵は巨漢にも関わらず、空高くジャンプした。

 来た! ボディープレスだ!

 すぐに察知した俺は瞬時にシフトレバーを切り替え、車を後方へバックさせる。

 上へ飛んだべドロは腹から落下。

 その巨大な体の全体重を乗せて、俺がいた場所にドスンッ! と腹で地面を叩きつけつける。

 衝撃で地面がひび割れしている。

 凄まじい重さだ。あれを食らったらいくら頑丈な車と言えども流石にペチャンコになってたかもしれない。

 地面に寝ていたべドロは立ち上がり、俺に向かって再び大きく口を開き舌を出そうとする。

 そうはさせまいと、俺はすぐに指でボタンを押してサンダーを発動させる。

 ズドンッ! という耳をつんざく轟音と共に車のヘッドライトからレーザー光線のような稲妻が発射。光線はべドロの顔面に命中した。

 グジャアアアッ! という破裂音で魔物の巨大な頭は四方八方に飛び散った。


 沼の周りはオレンジ色の液体が飛び散った。このオレンジ色はベドロの血と思われる。

 そこに、粉砕されてグチャグチャになったべドロの頭部の肉片が地面に飛散しているのが見えた。

 見るも無残な姿だ。

 べドロは大きかったので、散らばった肉の量も凄かった。


 カチャ、カチャ、カチャ。


 何か奇妙な音がする。

 見れば、バラバラに散らばっているバロンウルフの骨が勝手に組み上がっていく。

 沼のあちこちにあった骨たちが、次々にカチャカチャと音を出しながら組み上がっているのである。

 そして組み終えた骨は犬の形になり、歩きながら沼の中央に集まって来る。

 あれがアンデッド召喚か。さっきの魔法陣によりバロンウルフの死骸が復活したんだろう。

 集まった骨の犬たちは牙のある口を大きく開き、まとめて一気にこっちへ走って来た。

 ヤバい来る!

 慌てた俺はアクセルを踏み込み、犬たちに向かって正面から車を猛スピードで突っ込ませる。

 ガシャガシャガシャアアアッ!

 車に次々に轢かれる骨たち。

 ぶつかった衝撃で骨は全部バラバラに吹き飛んでいった。吹き飛んだあと、散らばった骨たちは動かなくなった。

 ふ。他愛も無い。もう少し骨のある奴かと思ったんだがな。

 俺は運転席から沼に落ちているべドロの死骸の付近を見回す。

 たくさん落ちている肉片の中に、オレンジ色に染まった大きな目玉が地面に落ちていた。

 大きさはスイカぐらいある。かなりデカい。

 あれがべドロの目玉か。

 俺は目的の素材を取るため車から降り、地面に転がる目玉に近寄る。

 よし。さっさとこいつを回収してここからすぐに出よう。

 俺は地面にしゃがんで、大きな目玉を両手で抱える。

 ふう、重いな。それにヌメヌメして気持ち悪い。

 抱えたべドロの目玉は場所を取るので、後ろの収納スペースに置くことにした。

 俺は車の後方のドアを開けて、目玉を中に積み込む。

 よし、これでようやく3つ目の素材を手に入れる事ができたわけだ。

 にしても今回は素材を集めるのにえらく手間がかかったな。素材集めでまさかこんな戦いが待ってるとは思わなかった。

 まあ何はともあれ、これでポイズンポーションの作製に必要なすべての素材が集まったわけだ。次はさっそく合成作業に取り掛かるとしよう。

 あれ? そういえば今回は魔物を倒してもレベルが上がらなかったな。

 もしかして相手の敵のレベルが低かったから、得た経験値が少なかったんだろうか。

 だとしたらあの骨たちも実はレベルがかなり低かったのかもしれないな。だからあんなに弱かったんだろう。

 

 そんな事を考えながら、肉片と骨が散らばるだけの地獄絵図と化した沼を見てたら何だか気分が悪くなってきた。

 俺は車を運転して、すぐに沼を脱出する事にした。

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