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オーダー4

(´・ω・`)つ オムライス

 

 ここは京都府京都市のとある喫茶店。

 一見古ぼけた外見の何処にでもある個人経営の小さな喫茶店だが、そこには本日も今年の異常気象による炎天下の影響を撥ね飛ばす程の行列が出来ていた──


 ──その日の喫茶店のお昼休憩の時間帯。


「マスター、オムライスまだー」


 客席から見える厨房、オープンキッチンとも呼ばれる厨房でギャル店員がお腹を空かせて賄いのオムライスを要望していた。


 喫茶店は開店が10時オープンの14時まで。それから2時間のお昼休憩を挟んでの16時再開からの19時までという営業体制を維持している。


 マスターは大鍋でパスタを湯がきながらタバスコをマシマシにしてやろうかと思いながらマシマシにしてギャル店員に賄いを出した。


「おらよ、ナポリタン──」

「──の上にオムライス乗せてね。てかこれマスターのー」

「ファック」


 手早く卵を割り混ぜ混ぜしてトントンしたオムライスをナポリタンに乗せてナポリタンオムライスの出来上がり。


 そしてそのオムライスの調理工程を一部始終動画に撮っていたギャル店員は自身のSNSにアップしょうとマスターに翳した。


「ねーねー、これあげていーっしょ?」

「お前馬鹿なの? 駄目っしょー」

「キモっ、真似すんなし!」


 手酷く顔面ビンタを貰ったマスターは理不尽だとしながらもギャル店員の携帯を奪いとった。


「えー、なんでさー。別にいいっしょ。てかあーしのスマホ返せコラ」

「よくねぇよ。載せるのはオムライスだけにしとけ」


 過去にこの喫茶店が本人の意に反して繁盛した切っ掛けの事件を思い出し顔をしかめるマスター。

 あれは機械に疎いマスターがSNSの何たるかを知りネットの怖さを知るには十分の事件だった。

 オープンしてから数年、ひっそりと静かに営業していた喫茶店が一夜にして大人気店に変貌したマスターにとっては悪夢の一時。おのれギャル店員さえいなければと何度も夢に魘されるのはマスターの日常になった。


 そんなマスターのオムライスを作る一部始終を撮ったギャル店員の携帯を奪い、その動画を削除しょうとマスターがスマホの顔面に触れた。


 その時──


「あ……」


 バチバチッとスパークを立ててスマホの画面が一瞬で落ちた。


「──ふんっ!!」

「──おごっ!?」


 怒りの拳がマスターの鳩尾に突き刺さる。一瞬、マスターの体が宙に浮くのは最早ご愛嬌である。


「ああああああ、あーしのスマホがぁああああああ!!」


 プスプスと煙を上げながら焦げ臭い匂いをさせるスマホは既にお亡くなりになっている事は間違いないだろう。


 ギャル店員は『買ったばかしなのに……』と涙目でマスターを睨んだ。


「俺は雷属性なんだから仕方ないだろ」

「前にもなんか聞いたし!! なにその中二設定!! マスター三十路の癖に拗らせすぎだし!!」


 中二じゃねーよと叫ぶマスターはなら見とけと不思議言語を唱え出すとギャル店員に往復ビンタを喰らった。解せぬ。


「弁償するからそんなに怒るなし」

「弁償するからっていいわけじゃないし!! てか真似すんな、マジ殺すよ」


 データがと呟くギャル店員は黒焦げになったスマホを手に項垂れていた。


「画像なら前にお前がバックアップ取ってただろ。マイブロえすでーとかなんとかに……」

「マイクロSDカードだし!! てかこれ絶対SDカードも黒焦げになってんだから意味ない──てか燃えてるじゃん!!」


 バッテリーに引火したのか、炎を上げて燃え出したスマホをマスターが消火と足で踏みつけていく。


「あああああああーしのスマホがぁああああああ!!」


 粉々になってしまったスマホは最早破損とかそんなレベルではなく、完全な全損となっていた。

 先程までならば何とか奇跡的にデータだけは携帯ショップで吸い上げ可能かという所だったが、塵も吹けば吹き飛ぶ程に粉々になったスマホに奇跡もなにもないだろう。



「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


 此方に向かって丁寧なお辞儀をするお姉さん。『もう来ねぇよ』と呟いたマスターはギャル店員に肘内を喰らいながらも2人して携帯ショップを後にした。


 あの後、取り敢えず粉々になったスマホをかき集め何とかデータだけでも復旧出来ないかとしたギャル店員は、ズタボロになったマスターを引き摺りながら携帯ショップへと訪れた。


 悲壮感を漂わせやって来たギャルとボロクソのおっさんコンビの2人に一瞬動揺したショップ店員のお姉さんだったが、そこはやはりプロなのか直ぐに持ち直して本日のご用件は何ですかと聞いてきた。


 ギャル店員は粉々のスマホを入れた袋をお姉さんに見せ、『データだけでもいけますか?』と聞いたが『無理ですね』と返したお姉さんに『ですよねー』と項垂れたギャル店員はボソッと『ウケる』と呟いたマスターに顔面肘内を喰らわせた。


 その流れるようなやり取りに苦笑いを浮かべたお姉さんは『携帯の保証は入ってますか?』と聞き、ギャル店員は『タルいので入ってません』と言うと、『じゃあ買い直すしかありませんね』としたショップ店員のお姉さんが提示した金額にマスターは『なん、だと……』と声を失い、ギャル店員は『ウケる』と笑った。


 そんなこんなで10万近く払い終わったマスターはギャル店員と喫茶店へと向かっていた。


 既に時刻は16時を過ぎており、本来ならば喫茶店を再開させないといけない時間なのだが、一応は『スマホが壊れたのでショップに行ってきます』と張り紙を出しており、2人はのんびりとこのクソ暑い炎天下の外を涼みながら帰路についた。


「うげっ……」

「うぇー……」


 寄り道しアイスやかき氷を食べながら帰ること幾分、喫茶店に着いた時刻は18時を回っており、閉店時間まで残り僅かという差し迫った時間帯。


「「「「……オムライス」」」」


 それなのにも関わらず、この炎天下の中でマスターとギャル店員の帰りを列に並び待ちわびていた常連客一同の多数のお客様は一体何なんだろか。

 思わず『お前ら全員馬鹿じゃん?』『いや狂ってんじゃねーの』と声を上げて叫んだマスターとギャル店員は悪くない。

 お前らもう帰れよと叫ぶマスターだったが、余りの気迫と切羽詰まったお客様にドン引きし営業時間を延長しオムライスを作る事になったマスターだった。ギャル店員はスマホの初期設定があるとか何とかで帰った。おのれクソビッチと叫ぶマスターは深夜になるかという時間帯まで1人オムライスを作り続けたのだった。


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