出逢い
忘れ物を取りに夜の学校に向かった日向明。
幸運にも壊れた鍵の窓から不法侵入し中に入る。目当ての物を手に満足気に帰ろうと校門に向かう。
その時、視界に入った夜桜に心を奪われ立ち止まった。
「綺麗……だな」
春の始まり、風物詩の花が舞い散る姿に見とれる。
優美な桜に魅了されていたその時、夜目に慣れた瞳が別のものを映した。
「人……?」
人形のように動かない人間。
様子がおかしいと思うより早く、駆け寄っていた──
「お・おい!! どうした!! 大丈夫か!!」
桜の木にもたれかかり、地に座り込んでいた。
大声を掛けても反応が無い。
「おい!! お……ってこれ血?」
ぬるりと生暖かい感触と血の香りがした。暗くてよく見えない目を必死に凝らす。
相手の服と手に血がベットリついていた。自覚した途端、血の香りが強烈に漂う。
「ちょ……オイ!! オイ!!」
どこから流れた血か分からない。躰を揺すらず声を張り上げる。
何度目かの呼び掛けに、うっすら目を開けた。
「オイ!! 分かるか? 大丈夫か?」
「君は……」
「オレはこの学校の」
「僕を迎えに来た天使? それとも悪魔?」
「何言って……」
「死神でも何でも良い……どうか僕を連れて行って……もうたくさんだ」
身を引き裂くような叫びのようだった。突然の事に言葉も掛けれず動揺する。
男は悲鳴のような言葉を吐くと再び意識を失った。
「一体な……に……」
ハッと我に返ると口元に手を当てる。息はしていた。
でもこの血。誰か呼ばないとそう思い立ち上がる。
「おわっ」
振り返ると、サングラスに全身黒いスーツの黒ずくめの男逹が複数人こちらに向かって来ていた。
手をクロスし身構える。
「失礼致しました。そちらは当家の大事な坊っちゃまです」
長身の一人の黒ずくめの男が言った。一瞬ヤクザのように見える風貌と違い紳士のような物腰に呆気に取られる。
「はっ? えっ?」
驚いていると、他の男逹が意識の無い血まみれの男を連れて行こうとしていた。
「えっ……ちょっと待って」
「大丈夫です。怪しい者ではありません。御迷惑をおかけした御詫びは改めて致します」
そう言い名刺を渡すと早々と立ち去った。茫然と姿が消えるのを見送る。
片手に持っていた忘れ物に気付と目を下ろした。放心したまま呟く。
「いったい……何なんだ」
君は天使? それとも悪魔? 何でもいい どうか連れていって
そう言われた言葉が耳に残った──




