ゆで卵が爆発した話。
皆さんは、「絶望」したことってありますか?
僕は今日絶望を味わいました。その話をしましょう。
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ある夜、まあ昨日なのだが。僕は小腹が空いていた。
冷蔵庫を漁ると消費期限が明後日に迫った卵が四つ。
これは使ってしまった方がいいぞと、卵料理を考える。
四つも食べられないので、二つは夜食に、
あと二つは明日のために作り置きしておこう。
最近、食中毒で痛い目を見たので、一応日持ちのするものがいい。
そう考えると、作り方も簡単なゆで卵が頭に浮かぶ。
そこからは普通に調理して、ゆで卵を食べる。(ちなみに塩派)
そのうちの二つを冷蔵庫に残して。
次の日、もとい今日。日曜日だ。
昼過ぎに起きた僕は、十五時頃になって、何か食べたいな。と。
ただ、食べ過ぎても夕食が食べられない。
お、これは作り置きのゆで卵の出番ではないか。
しめしめと、冷蔵庫を開ける。
しかし、ここで僕は気付く。卵ってレンジで温めたら爆発するのでは。
いや、少しなら大丈夫だろう。様子を見ながら加熱することにする。
まあ結果から言ってしまえば、全く問題なかった。
五百ワットで20秒ずつ温めるという慎重な行動により被害は出なかったのだ。
そう、ここまでは。
いや、むしろレンジ内で爆発した方がよかったのかもしれない…
「なんだ、意外と大丈夫じゃないか」
昨日は塩で食べたからと、今日は珍しく醤油と胡椒をかけながら思う。
味付けを終えたゆで卵の入った皿を持ち、部屋に戻る。
さあ食べるぞと。パソコンのモニターの前に座り、
箸でゆで卵をつまむ。
右手に力をこめ、卵を二つに分けようとした瞬間。
――――ゆで卵が爆ぜた。
どうやら、レンジ内で爆発こそしなかったものの、
内側では黄身が膨張し、文字通り一触即発の状態だったようだ。
顔と腕に走る強烈な痛み。
視界は真っ白になり、数秒間何も考えられなくなる。
今にして思えば、まさにゲームでいうところのスタンだった。
ああ、爆弾が目の前で爆発したらこんな感じなのかなと。
そんなことを思いながら意識を再起動する。
さっきまで真っ白に感じられた視界は黄色く、
どうやら眼鏡に黄身が飛び散っているらしい。
先ほどの衝撃を考えると、眼鏡がなければ失明していたのでは。
笑えない冗談だ。卵の黄身で失明なんて、笑い話にはもってこいかもしれないが。
さて、部屋に視界を向ける。
それはまさに地獄だった。
そこそこいい性能のパソコン、新調したばかりのキーボード。
また趣味でやっているギター、その他もろもろ。
部屋にあるもの全て――壁や天井さえも、黄色い斑点に犯されていた。
そう、黄身が飛び散っていたのだ。僕は言葉を失う。
ましてや、今日に限って醤油をかけていたことが被害に拍車をかけていた。
机にある黄身の一つ。それを指で拭き取る。
その瞬間、悟ってしまった。
拭こうとした黄身はむしろ広がり、机にこびりつく。
部屋中を掃除するのはどれほど大変なのかと。
ここで冒頭に回帰する。
僕は絶望した。
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そして現在に至る。
卵が爆発したのは前述した通り十五時頃。
僕が掃除を終え、この文章を執筆しているのが十九時。
――そういうことである。
髪も黄身まみれになっていて、シャワーを浴びたりと、
四時間掃除していた訳ではないけれど、すごく大変だった。
この作品を通じて何が言いたいかというと、人は絶望を乗り越えられるということ。
なんてね。冗談。今回は大したことなかったし。
文中でもしれっと触れた食中毒になったときが一番辛かった。
一歩も動けないほどの腹痛に襲われ、
調べたらこれが少なくとも三日、最悪一週間続くと。
そう知った時が人生で一番の絶望でした。死にたいと思ったもん。
それでは。卵臭い部屋から失礼しました。
また別の作品でお会いしましょう。というか他の作品も見て!