1-2 相棒
「して、お主は今後、どう生きていくつもりじゃ?」
そう話すのは、先ほど森で狼から救ってくれた老人ハンターのハーゲン。
狼退治だけでなく、家まで招待し、しばらくの間部屋を貸してくれるとのこと。
「まずは何も知らないこの世界で生きていく知識を身に着けたい。
それから、隠れたり気配を断つことに秀でているのは自覚しているから、それを生かした職に就こうかなと。」
「ふむ。ならば冒険者、または探索者かの。誰にも師事され鍛えられておらん状態でその腕前なら、問題なく食うていけるだろう。
その気配を消す技術を見込まれて、貴族や王族の間者にと言うものもおるじゃろうが、失敗は死と等しいからの、おすすめはできん」
間者…スパイのことか。失敗したら消されるよな…。
しかし冒険者と探索者、何が違うんだろう?
「冒険者と探索者の違いは、あまり厳密なものではないんだがの」
ハーゲンによると、このような違いらしい。
・冒険者
世界各地にある冒険者ギルドに帰属し、世界各地の依頼をこなす者全般を指す。
ギルドカードが配布される。個人、パーティごとにランクはF~Sまであり、日曜大工から素材の収集依頼、魔物の討伐依頼、盗賊団の掃討依頼など様々な依頼を受けられる。
・探索者
こちらも冒険者ギルドに帰属するが、冒険者ギルドの登録とは別に探索者登録も行うことで、
世界各地にある「ダンジョン」探索をすることができ、このダンジョン探索メインに活動するものを指す。
なぜ別かというと、ダンジョンは地上と異なり、狭い通路での戦闘や、罠があることなど、
通常の討伐依頼で求められるものとは別のスキルが必要になるためである。
「なるほど、ダンジョン探索…心躍りますね!」
「ダンジョンといったあたりから目が輝いておるの…。しかしな、みな、はじめはそういうんじゃ。確かにダンジョンは不定期に変動を繰り返し、その際にお宝が出現するから、それ目当てに潜るんじゃ。
だがダンジョン探索は厳しい。罠を見破れないものは、いくら腕っぷしが強くともすぐにお陀仏じゃ。
お主のような隠密行動が得意な奴も、細長い通路であれば隠れる場所もない。
憧れるのは構わんが、決して甘く見てはいかんぞ。
地下にわしが現役だったころに読んでいた本が何冊かある。それに目を通しておくがよい」
そう地下に案内され、どんな本があるか見てみる。
・ダンジョン探索の心得
・モンスター図鑑
・ハルムンドの歩き方
(この3冊は優先的に読むことにしよう。探索者になるための知識もそうだけど、
これから生きていく世界「ハルムンド」の常識を身につけないと。
とりあえず今日は…ダンジョン探索の心得かな)
ハクスラ大好き健人くん、やはりダンジョンは気になります。
ざっと目を通したところ、危険だから適性のない人間はやめておけ、死ぬ確率は高い、など脅し文句も多々あったが、それでもダンジョン熱は冷めていない。
ダンジョンは極めて危険であり、高ランクのベテラン冒険者であっても、ダンジョンは一瞬で命を奪い去るときがある。
落盤事故というのは起きないが、罠の危険度がヤバイらしい。
単純な落とし穴から、矢が飛んでくる、毒霧など。設置数自体はさほどないそうだが、だからこそ油断したところに引っ掛かり、死に至るケースが後を絶たないという。
(罠探知できるスキル…というのはないのか。ふむ…)
【スキル】
隠密行動 3
生命探知
魔力探知
気配遮断 3
(罠ではないけれど、生命探知、魔力探知は振っておいた方が良いかもしれないな。
しかし詳細な説明って見れたししないのだろうか?)
と思っていると、ウィンドウが現れ、
【生命探知:周囲にいる生命体を探知することができる。距離、方角を直感的に理解する。レベルを上げると探知できる範囲が増えるとともに、隠密スキル持ちも探知できるようになる】
【魔力探知:周囲にある魔力を含むものを探知することができる。距離、方角、持つ魔力の種類・強さを直感的に理解する。レベルを上げると探知できる範囲が増えるとともに、隠密スキル持ちも探知できるようになる】
(こんなものがあったのか…知らなかった。とりあえず便利そうだし、1ずつ振っておこう)
【スキル 生命探知 に何ポイント振りますか?残りSPは10です。】
- 1ポイント
【スキル 魔力探知 に何ポイント振りますか?残りSPは9です。】
- 1ポイント
【スキル】
隠密行動 3
生命探知 1
魔力探知 1
障害物探知
気配遮断 3
(お、新しいのが増えてる!これはダンジョン向け、罠探知できる、あたりじゃないか!?)
【障害物探知:周囲の地形や障害物、隠された罠を探知することができる。視覚に頼らず、周囲の様子を直感的に理解する。レベルを上げると探知できる範囲が増えるとともに、罠の場合は詳細まで把握することができる】
【スキル 障害物探知 に何ポイント振りますか?残りSPは8です。】
- 2ポイント
【スキル】
隠密行動 3
生命探知 1
魔力探知 1
障害物探知 2
気配遮断 3
(ずいぶん隠密系統に振った…けど、スニークは最強だったし、大丈夫だろう。
モンハウに遭遇したときなんかは逃げの一手になるのだろうし、隠密は大事。
ダンジョン探索には必須だし、他は後からじっくり鍛えていこう)
モンスターハウス、通称「モンハウ」という現象が稀に発生し、ダンジョン部屋内に大量のモンスターが出現することがある。
不定期に起こる変動ではなく、本当に前触れなく発生するため、遭遇してしまったらパーティメンバーに死者が出てしまうことも珍しくない。
(あと残りSPは6か…。スキルポイントの入手方法が気になるのと、スキルは地道な訓練や実践経験で、振らずとも上がったりするのか。また腕力、瞬発力とか身体能力関係は1振るとどのくらい実感できるものなのか。あと僕にあっている武器はなんだろう。複数使うのは効率が悪いだろうし…。
気になることが多すぎる。検証したい。そしてまた僕はレベル1、レベリングしたい!)
「お主、ダンジョン探索者になるんじゃろ?」
「うわぁ!びっくりした!!」
(生命探知、働いてないじゃん!びっくりしたわ!)
「何をそんなにびびっとるんじゃ…。まぁいい、餞別と思え、ここにある武器のうち一つ好きなのをやろう」
「いいんですか?なんか凄そうなのが多いですけど…」
そういいながら、探知スキルが働いてなかったのを反省して、探知するように意識してみる。
すると、ハーゲンの生命力を探知することができた。
さらに、ハーゲンが差し出した4つの武器のうち、2つからは魔力を探知することができた。
「この短剣と、大剣は…魔力がある。魔武器というやつですか?」
「よくわかったの!そうじゃ、この2つは魔武器。
大剣はフランベルジュといってな。ドワーフの名匠が打った魔武器のうちの一つ、炎の大剣じゃ。量産品ではあるが貴重な素材を使っており、火力も抜群で大剣使いから大人気じゃの。
短剣は…よくわかってないんじゃ。ダンジョンで出てきたユニーク品であるんじゃが、効果がわからんでの。切れ味もそこまでよくないのと、短剣使いが身内におらんで腐っていたんじゃ」
「そんないいものを…貰って良いのです?」
と言いつつ、フランベルジュを持ち上げようとする…が、
「はっはっは、全然持ててないじゃないか!」
「重すぎますよ…これ…」
「非力じゃのう。大剣はパワーがないと振り回されるだけじゃ。諦めるのが賢明じゃ」
「ではこちらの短剣は…おお、フランベルジュと違って手に馴染む。持っているのに全然重さを感じない」
この黒い魔武器の短剣、刃渡りはおよそ40cmほどあり、刀身に一筋、淡く青い光が灯っている。
見た目からはそこそこの重さがあるはずなのだが、素振りをしても全く重さを感じない。
まるで手に吸い付くかのような短剣に、健人は夢中になっている。
「魔武器としての効果まではわからんが…資金が貯まれば鑑定に出しても良いじゃろう。
お主にあっているようだしの、持っていくがよい」
「おおお!ありがとうございます!こいつは相棒にします!ええと、名前も付けてあげないと…。
うーん…。黒い刀身、青い光、いや藍色に見えるな…よし。決めた!
相棒の名前は、セイラン(青藍)だ!!」
「よ、喜んで貰えたようで何よりじゃ…」
長嶺 健人
【ステータス】
レベル:1 年齢:16 種族:ヒューマン
【所持スキル】
[SP:6]
【DEX】
隠密行動 3
生命探知 1
魔力探知 1
障害物探知 2
気配遮断 3