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『ハズレ』スキル持ちは何を思うか

作者: 亜夢人

ハズレと言う割には全然ハズレてない。そんなのだからアンチテーゼ的なものを書いてみたかった。

 この世界には『スキル』が存在する。

 その種類は多種多様だが、総じて言えることは、等しく神から与えられたものである、と言うことだろう。本来であれば、そこには一切の優劣など存在しないはずである。

 残念ながらそうはならないのが現実だ。優劣というのは人の虚栄心を満たすのに都合がいいからである。

 であるなら、本当に使えない『スキル』とはいったい何になるのか。何を持って劣等の烙印を押されるのか………。





 私にとってスキルとは可能性の欠片だ。神から授かるソレは、すべての人が受け取れる訳ではない。何らかの条件により選定され、啓示を受けるかのように得る。まさに選ばれし者に与えられた特権であろう。


「そうでも考えてないとやっていられないっ!!」


 この世界には、これまで色々なスキルが確認されている。『勇者』と呼ばれるスキルから『村人』と呼ばれるスキルまで。

 そこに上下の差はあれど、どれも素晴らしく可能性の秘められたスキルで、実績を残してきている。


「それに比べて、何なんだコレは!」


 転機が訪れたのは数ヶ月前。

 その日、私はスキルを手にすることになった。そのときは歓喜に打ち震えていた。スキルを得るということは、神に選ばれ、世界に名を残すことが出来るということでもあるのだから、それはごく普通のことだった。

 しかし、次の日私を待っていたのは絶望だった。


スキル:ハズレ


 頭の中で疑問符が飛び交った。ハズレ?どういうことだ?どんな能力が?このスキルは世界に名を残すことが出来るのか?スキルを調べてくれた職員も目が点になっていたのを今でも覚えている。

 曰く、選ぶことに対して、若干のマイナス補正がかかるということだった。


「このスキルは、あなたが初めての取得者ですよ!」


 職員のそんな台詞は、慰めの一つにもならなかった。


 それから現在に至るまで、そこかしこでスキルの影響は発現していた。嫌がらせのような細かいことばかりだったのが、まだ救いなのかもしれない。

 ただ、家から出るという機会は殆どなくなった。無駄にマイナス補正がかかるなら、はなから外に出なければいいと思ったからだ。

 それでも、まだ、スキルの可能性を信じたい。そう思った。


 それから数カ月がたち、ほぼ家を出ることが無くなった。

 どうやら、私の得たスキルは成長しているようだ。以前よりもマイナス補正が酷くなったきがする。

 先日は、家を出た瞬間に強盗と鉢合わせをした。何とか事なきを得たが、今までではありえないことだった。

 本来なら、成長してるかを調べに行く必要があるが、そのためだけに無駄にスキルを発動させたくはない。

 このまま、この家に閉じこもって死んでいくのが正しい『選択』なのだろう。




ーーコンコン


「すみませーん」


 ドアがノックされたようだが、無視だな。関わってしまえばどうせ悪い方向に行くに決まっている。


ーーコンコン


………


ーードンドン!


………


ーーガシャーーン!!


「ドアを壊すとかあり得ないだろ!」


 慌てるように玄関の方へ向かうと、こちらを見てニヤリと笑う女性がいた。


「貴方が噂の『ハズレ』スキル持ちね!これからは家に引きこもれるとは思わないでちょうだい!私の実験に付き合ってもらうわよ!」


 この時になって、私は自分のスキルの恐ろしさをようやく理解した。家に引きこもると言う選択すらも『ハズレ』だったのだ。

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