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「とんだ失態ね」

あの窮地から命からがら戻ってきた空灼達に陽照が放った言葉は空灼が想像していた通りのものだった。

「敵を前にしておめおめと撤退など」

「・・しかしあの場はあぁでもしなければ・・・」

櫂が意図を説明しようとするが、

「言い分は結構よ。下がりなさい」

「・・・・・失礼しました」

「しし、失礼しました」

櫂と亜昂が頭を下げ部屋を後にする。

それに続いて空灼も部屋を出ていこうとした時、ふと空灼が立ち止まり、

「柴禅と禹无原は悪くない・・・俺が足を引っ張ったんだ。責任は全部俺が受ける」

「・・・」

振り返ることなくそれだけ言うと部屋を出る。

――――――――

――――――

――――

部屋を出た先の所で二人が待っていた。

「・・・空灼」

「悪いな二人共、俺のせいで」

「そ、そんな事無いです!空灼さんは一人で頑張っていました!」

心配そうに空灼を見つめる櫂と、何とかフォローしようとする亜昂。

そんな二人を見て空灼は何度めかの自身の不甲斐なさを実感する。

―戦えない奴が【EWA】なんて所持していても・・・―

そんな事をここ数年考えるようになった。

その考えは今回の件でさらに重く空灼に圧し掛かる。

「そっか・・ありがとな柴禅。禹无原も」

二人に礼を言い歩き出そうとした時、急な目暗みでフラつく空灼。

「空灼さんっ!」

すぐ隣にいた亜昂が空灼の腕を掴み何とか体制を整えさせる。

「っと、悪い柴禅。まだ体がちょっとばかし言うことを聞かなくてな」

櫂や亜昂に比べ数十秒ではあるが、空灼はエニマの超音波攻撃を浴びせられていた。

まだ体が思った通りの動きを出来ないのだ。

「・・・空灼、あまり無理は・・」

「そ、そうです!自室で安静にしていた方が・・」

足を引っ張ってしまった自分に優しい言葉をかけてくれる二人。

それがさらに・・・。

「あぁ、そうさせてもらうよ」

――――――――

――――――

――――

俺の父は言っていた。

―祖国のためなら出来ることなら何だってやる。例えそれが汚いやり方だろうが何だろうが・・・。ましてや命などくれてやる―

そんな事を事あるごとに言っていた父は自らも戦場に身を置き、そして命を落とした・・・。

母は名誉ある戦死だと言っていたが。

「・・・何が・・名誉だ・・・」

超音波で脳がイカれたらしい。思い出したくない事ばかり思い出す。

そうして空灼はいつの間にか眠りにつく・・・。

――――――――

――――――

―――-

女の子が言った。

―〇〇〇、遠い所から来たの―

何をしに来たのか男の子が聞く。

―何かね、ていさつ?とか言ってた。けどよくわかんない。面白そうだから勝手についてきたの―

それではぐれたのか、と男の子がそんなことを思っていると、

―けど来てよかった。だって・・・―

だって?


―・・・空灼に会えたから―


――――――――

――――――

――――

・・・天井。

いつの間にか眠ってしまっていた事に気づく空灼。

空灼はゆっくりと体を起こし腕や脚を動かす。

「うん、大分マシになったな」

先よりは体が動くようになった事を確認する空灼。

「・・・あの子、何て名前だったか・・」

夢の中の女の子の名前が思い出せない。空灼が頭を捻っていると・・。

コンコン・・・

ドアをノックする音。

「はい」

「・・・私」

「あぁ、禹无原か。どうぞ」

ドアが開き櫂が入ってくる。

「・・どう、体は?」

「ちょっと寝たら大分良くなったよ」

「・・そう」

沈黙・・・。

「・・もしかして、心配で様子を見に来てくれた・・・とか?」

沈黙が気まずくついそんなことを口にしてしまう空灼。

「そ、そんな事は、いえ違うわけでは無いけれど、その・・・」

なんか柴禅みたいだな。と、普段はクールな櫂の、意外な一面を見た空灼。

コンコン・・・

またドアをノックする音。

「はい」

「ああ、あの空灼さん!」

「柴禅。どうぞ」

ドアが開き今度は亜昂が入ってくる。

「しし、失礼します!」

何故か空灼の部屋へ入る時はいつも以上にオドオドしている亜昂。

その理由を空灼は知る由もない・・・。

「あ、櫂さんもこちらにいたんですね」

「・・・えぇ」

「ああ、あの空灼さん!お体の方は大丈夫ですか?」

亜昂も空灼を心配して様子を見に来てくれたようだ。

「あぁ、大分良くなったよ」

「そ、そうですか。良かったです・・・。あ、あの・・」

何か言いたげな亜昂。しかし言いづらそうにしている。

「どうかしたか?」

「・・・実は先程、敵対国の反応があったらしくて・・」

「・・・そう。やはり攻めてくるわね」

もちろん分かっていたことだが、まだ体制も整えられていないこんな状態ではどうすることも出きない。

「・・空灼さんにはお伝えすべきかどうかと思ったんですが・・・」

「大方、あの人に言われたんだろう」

「は・・はい」

言われなくてもわかる。あの人しかそんなことはさせない。

「・・・行こう、禹无原、柴禅」

「・・でも空灼、貴方まだ・・」

「そそ、そうですよ!マシになったとはいえ、まだ完全じゃ・・」

「それでも・・・行くしかないだろ・・・」

そうだ、待ってるだけで誰かが傷つくなら―――。

「今度は・・・足手まといに何てならない」

立ち上がり、二人の前に立つ。

「・・・なってないわ。初めから足手まといに何て」

「は、はい!その通りです!」

二人も空灼の前に立つ。

「あ、そうだ!もう一つ・・・」

「?なんだ柴禅」

「実は、敵対国の反応ですが複数あったと・・・おそらく今現地で敵対国同士が戦闘している可能性がある・・・と」

先の件より悪化する状況・・・だがそれでも、

「行くさ、それでも」

「・・・えぇ」

「は、はい!」

対策がなくても、ボロボロになろうとも、行くしかない。

背負わされている運命は・・・重すぎる―――。

――――――――

――――――

――――




ずっと、ずっと待っていた。今日というこの日を。

「・・・・・やっと会えるね・・・・・空灼・・・・・」

愛おしい人に会える。そんな感情が伝わってくるほどの笑みを浮かべる女の子。


―――――夢の中の・・・女の子―――――。





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