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空灼は手にある【EWA】メモリを自身の腕輪型のReceptionアイテムに挿す。
≪TransferEvolution≫
「Armament」
【EWA】メモリが起動、戦闘スーツが全身を包み、鎧装が武装される。
「それが貴方の・・」
空灼の【EWA】は鷲も模した焦茶色の鎧装をし、背には翼、足には15㎝ほどの鋭い爪のある【EWA】。空中戦を得意とする。
「そうだ、これが俺の【EWA】・・・そして・・・みんなを守るための力だ」
空灼の瞳が焦茶色に変化する。
「貴方、その瞳は・・」
「これは俺にもよくわからない。研究員達も何故こうなるかはわからないらしい」
「フフッ、その瞳でワタクシだけを見ていてほしいですね」
背にあるコウモリの翼を大きく広げるエニマ。
「・・・」
空灼も背にある翼を広げる。
そして、ほぼ同時に空へと飛ぶ二人。
エニマと一定の距離を取り、隙を窺う空灼。
「いきますよ空灼さん」
それとは対照に空灼に接近してくるエニマ。それと同時に足の鉤爪をこちらに向けてくる。
ヒュンッ! シュッ! シュシュンッ!!
それをかわし距離を取る空灼。
「どうしたんですか空灼さん?逃げてばかりでは何もできませんよ」
空灼もそんなことは重々わかっているが、こんな状況でも戦う事などしたくはない。
ではどうやってこの場を切り抜けるか。
『手荒な事はしたくはしたくないけど、一番は・・・』
旋回しエニマに真正面から突っ込んでいく空灼。
『相手を気絶させる』
軽度の衝撃を与え、対象を気絶させる。戦いを避ける空灼にとっての唯一の戦法。
しかしもちろんそんな情報も・・・
「甘いですよ空灼さん」
シュンッ!
「くっ・・」
「貴方がそういう戦い方をするのは既に把握済みです」
いつもならば櫂や亜昂と連携を取り、対象の無力化を図るが、その二人は今は向こうで戦闘中。
「どうしたものかな・・・」
スピードだけなら空灼の方が上だが、戦法がまるわかりな以上うかつに近づいて、あの鉤爪に捕まりでもしたら終わりだ。
そんな空灼の考えとは逆に間を開けることなく接近してくるエニマ。
先程からこの繰り返し。
この状況を打破する手を考えていると、
「あまり長引いてもいけないので、そろそろ鬼ごっこも終わりにしましょうか」
エニマはそう言うと、掌を此方に向けてくる。
「・・・何だ?」
瞬間―――。
キィィィィィン―――――。
「ッ!?くぅっ!これはっ」
耳だけでなく脳に、全身に響くこれは・・・
「超音波ですよ」
エニマの掌から絶え間なく響く超音波。動くことができず、その場に留まる空灼。
「がら空きですね」
いつの間にか至近距離にまで接近していたエニマの攻撃をまともに食らい、地面へと落下していく空灼。
「まず・・い・・・」
落下するその先に―――。
――――――――
――――――
――――
ギュイイィィンッ!! バチチッバチッ!! ドゴォォォッ!!
ステマリーの猛攻に悪戦苦闘する櫂と亜昂。
「・・・どうやら向こうは決着がついたようだな」
ステマリーの言葉に空を見上げる二人。
「あれはっ―――!?」
「空灼さんっ!?」
此方に向かって落ちてくる空灼。
「流石エニマだ」
向こうに気を取られているステマリーの隙を突き空灼の方へと行こうとする二人だが・・・。
「バレバレだ」
「ッ!?」
瞬時に防がれてしまう。
「く、空灼さんがっ!?」
後数10㎝で地面という所で・・・、
「あら危ないわ」
エニマが空灼を胸に抱きかかえ、地面との衝突を阻止する。
そのまま降り立つエニマ。
「くっ・・・離せ・・」
もがく空灼だが体に力が入らない。
「空灼を離しなさい!」
「あら、ワタクシが助けたんですよ。それにこの方はワタクシのモノですから」
空灼が敵の手にいる以上、下手な手をだせない二人。
「さぁ、次は貴方達の番です」
エニマが二人に掌を向ける。
キィィィィィン―――――。
「な・・に・・・」
「み・・耳が・・・」
先程同様に二人に超音波を浴びせるエニマ。
「ステマリー、頼みます」
「はい、エニマ」
エニマの超音波攻撃で相手の動きを止め、ステマリーが速度攻撃を仕掛ける。
これがフィリピンの【EWA】所持者、二人のコンビネーション。
「・・よせ・・」
止めようとする空灼だが、まだ体が動かない。
「さらばだ」
ステマリーが攻撃を仕掛けようとした時・・・。
「空灼さんを・・・返して・・下さいッ!!」
亜昂が渾身の一撃を地面へと叩きつけ、大きく地面が割れる。
「なにっ!?」
「まだ動けるの」
地割れを避けるため横に避けるエニマとステマリー。
「空灼ッ!!」
エニマへと攻撃する櫂。それと同時に鞭で空灼をエニマから引きはがす。
その攻撃を防ぐエニマ。
「亜昂、引くわよ。今のままじゃ、次は厳しいわ」
「わわ、わかりました!」
空灼を胸に抱え、亜昂と共に撤退する櫂。
「逃がさん」
それを追おうとするステマリーだったが、
「いいわステマリー。今回はここまでにしておきましょう。けれど次は必ず仕留めるわ」
「わかりました。エニマが言うのであれば」
撤退していく空灼を見つめるエニマ。
「そう・・・次こそね」
胸に残る空灼の温もりを感じながら、エニマはそう言った。