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あちぃ

 8月7日(日) 晴れ


 チューリッヒに来てから、一週間。

ずうっと晴れ。ぴかぴか。


 生活パターンもだいたい決まってきた。

朝、たかしを送り出した後、洗濯と掃除。

調理本をイロイロめくって、昼と夜のご飯メニューを決めて、

ふらっと散歩した後に買い物へ。

電子辞書片手に買い物。約1時間。長い。。。


 洗濯は地下の洗濯室で、する。

スイスの建物のほとんどには、地下室がある。

有事の際は、ここがシェルターになる。

私たちのアパートには、地下に小部屋が沢山あって、

小部屋のドアは施錠ができる。

それぞれの小部屋は、住人の地下倉庫になっていて、

我が家の倉庫は洗濯室の隣。

一番奥の一番大きな部屋が、共有洗濯室だ。


 日本では信じられないけど、

スイスのアパートでは、なんと洗濯機はアパートの共有物。

住民同士で代わる代わる、使う。


 でもとってもラッキーなことに、

私たち以外の住人(上層階のたぶんお金持ちと思われる二軒)は、

自宅に洗濯機を持ち込んでいる。

そして下の階は、会社になっている。


 だから!

この洗濯機&洗濯室は、ほぼ使いたい放題だ!

 たかしもこの点は、本当にラッキーだと言っていた。

アパートによって、洗濯機の使用ルールが違うみたいなんだけど、

洗濯機の台数と戸数の割合によっては、使える曜日が週に一度だったり、

予約をノートに書きこみ式な上に、予約の取り合いだったりで、大変らしい。


 ウチのアパートの洗濯室には、

でっかい洗い&すすぎ用のマシーン一台と、乾燥機一台がある。

全自動じゃないから、乾燥機へは自分で放り込まなくちゃだ。

頃合いをみて、エレベーターか階段で、また洗濯室へ行く。

これが結構めんどくさい。。。

けど、まだましなんだと自分に言い聞かせる。


 マシーンはどちらも、日本だったら業務用サイズ。

たかしと私の洗い物だったら、3日分入れてもまだ余裕。

私も丸ごと洗ってもらえそう。


 小さい頃、ヘンゼルとグレーテルのお話しを読んで、不思議でしかたがなかった。

最後グレーテルに、かまどにエイヤっと押し込まれてしまう、悪い魔女。

体ごと人間が入っちゃうかまどなんて、私には全く想像ができなくて、

それまではドキドキハラハラ感情移入できていたのに、

その場面になると、んっ???と、我に返ってしまっていた。

 今になってやっと、それくらいに大きなかまどが、リアルに想像できる。

こんなに大きな洗濯機が、ヨーロッパにはあるんだ。

びっくりするくらい大きなかまども、きっとあったはずだ。


 薄暗い地下室も誰かが潜んでいるのではと、初めは怖かった。

昼でも真っ先に蛍光灯をつける。


 もうすぐ三十路ですが、やっぱり古くて暗い建物は、怖い。

だってね、このアパート、、、築130年なんです。

居住スペースは、住人が変わるごとにリノベーションしてるんだけどね、

さすがに地下室はね、そのままなんです。

歴史を感じるのです。

ドラキュラとか、ホントいそう。

やっぱり本場は違うよね。

でも、貞子は出てこない感じ。

足のない幽霊には柳が似合うし、

この辺、柳ないし。。。

少なくとも、ザ.ジャパニーズ幽霊は出てこない雰囲気。

じゃあさっ、ってことは、、、きっと何も出てこないはず(笑)。

雰囲気に左右されてるんだから、

結局は、自分の気分よねー。

大丈夫、ダイジョウブ!


 と思っていたら、カサコソと物音がした。

ビクッとしていると、軽やかなハミングが。

カチャカチャ鍵の音も聞こえる。

開け放した洗濯室のドアの奥から、私は声をかけた。

「グリュッツィ」スイスドイツ語で言う、こんにちはだ。

背の高いお姉さんが、頭と肩を振り踊るようにして、

「ハッロー」という。ニッコニコだ。

そして、ハミング再開。向かいの倉庫でガサゴソしている。

下の階の社員さんだった。

陽気だなぁと感心して、部屋に戻った。



 しかし、思っていたより暑い。

あっちぃ。


 暑くてもカラッとしているからか、自然体を愛するのか、

家々にクーラーなんてものは、ないことが多いみたい。

もちろんウチにも、ない。


 今日も日中は32℃あったから、

買い物がてら中央駅の近くのデパートへ、涼みに行った(笑)。

公共の建物や、大きなビルは冷房完備。ラッキー。

人気の涼みスポットは、湖。

ゾロゾロと湖までみんな歩いていく。

湖は、風が通るから、少々爽やかなのだ。古典的(笑)。


 今日はお寿司を握って食べようと、たかしが提案した。

まったくのど素人なんだけど、挑戦してくれるらしい。

デパートで、寿司のネタにできる=生で食べられる魚をゲットした。

鮮魚コーナーには、店員さんがいて、

丁寧にお客の相談にのってくれる。


 まだ買い物には時間がかかる。

近所のちっこいスーパーにも、

私はまだ、電子辞書が欠かせない。

いつも辞書を使うのは、魚コーナーだ。

でれーんとした切り身のナゾの魚がパックで並べてある。

ちっこいスーパーだから、店員さんもいない。

まあ、いたところで、、、

私の語学力ではやっぱり辞書が必要なんだけどね。

ナゾの魚のドイツ語名を日本語に訳すのだ。

切り方が違うのか、はたまたそもそも日本では一般的な魚でないのか

とにかく、見た目だけでは、判別不能までに、

でれーんとしている。としか言いようがない(笑)。

美味しく料理する自信もなく、

この前は、明らかに鮭だとわかるのを買おうとした。

日本円に換算してみると、切り身普通の大きさが一切れ600円くらい。

はぁ?!!!っと思い棚に戻す。

でもやっぱりぃと思い、カゴに入れる。

何回繰り返しただろう。

最後には買ってみた。

 その日は、幽庵焼きにしてみた。

少し生臭い感じがしたから。

まあまあだったけど、やっぱり美味しい焼き鮭が食べたいなぁと思った。


 ホカホカ炊きたてご飯に、焼き鮭をのせて、ハフハフいいながら食べたい。

これに、だし巻き卵と焼き海苔、お味噌汁があれば、私のハッピーセットが完成。

シンプルなおかずこそ、素材のよさが大事なんだなぁと、

こっちに来てから、身に染みて感じる。

作り方は同じなのに、どこかが違う。グッとくるうまさが、ない。

まあまあかなぁが、づっとだ。

グッとくる美味しさ。

私が恋しいんだから、たかしはなおさらだろう。

研究あるのみ、がんばろ!


 和食器売り場を探して、醤油さしや、小皿も買った。

ここには、箸や湯呑み、漆器、大きな蒸し器も置いてある。

前まで当たり前だった物が、なんだか特別なモノな感じ。

チョット残念なのは、どれも一級品じゃないコト。

おそらく、どこか日本以外で作られただろう量産品だ。

 ここに日本の伝統工芸の一級品があったら、みんなどんな反応をするだろう。

ウットリしちゃうあの美しさ、伝わるかなぁ。


 またゆっくり見に来ようと、思った。

ウチには、たかしが一人暮らし時代から使っていた食器しかまだない。

もちろんたかしの趣味だし、最低限の物しか無いし、味気ない。

たかしのお許しが出たら、存分に買わせてもらおう。

私の趣味全開で!

シメシメ!





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