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ドキドキしちゃうよ再会は!

 またまたの、7月30日(土)晴れ


 これ新鮮!!!


 東京とチューリッヒの時差は、マイナス8時間なのだ。

なので、まだまだ30日。


 長崎さんの奥様、晶子さんは、

優しく朗らかな女性で、私は気兼ねなくいろいろな事を話せた。


 最初は突然のことにびっくりしたし、

緊張しちゃうなぁと思ったけれど、

晶子さんはとっても細やかに気遣いをしてくれる。


 離陸の瞬間、私は思わず感傷的になってしまった。

しばらく無言で窓の外を見入っていた。

涙が目のふちギリギリまで、溢れてきた。


 その時、晶子さんは、

隣でただただ静かに、私を見守ってくれている感じがした。

直前まで話していたのだけど、もう離陸するとわかった時から、

なんとなく会話が止まっていた。

私の肩越しに、晶子さんも故郷をみていたのかもしれない。

私以上に、想いはたくさんあったのかもしれない。


 晶子さんとここで出会えて、私はラッキーだ。


 上の子のめぐちゃんは、シンガポールで生まれて、

弟のゆうたくんは、ロンドンで生まれたらしい。


 スゲ〜っ!!!


 出産自体が私にはまったくもって未知のもので、

それはそれは大きなことなのに、

それをシンガポールとロンドンでやってきたなんてっ!!!

なのに晶子さんは、それをサラッと言っちゃうのだ。


「赤ちゃんができた事を知るのは、いつも日本なの。お腹に赤ちゃんができると、主人に転勤の辞令が来るという、もうそれが我が家のパターンだったの、どういうわけかね。めぐを妊娠中にシンガポールに引っ越して、シンガポールには3年いてね、その後は2年日本で暮らしてて。また赤ちゃんができたと知ったら、今度はロンドンに転勤でね。で、今はチューリッヒ。ふふふっ。」


 スゴイっ!


 たしか前に、たかしに聞いた話では、

支店長(この後の結婚式で会う予定)もお子様は、3人いて、

世界の支店を転々としているから、みんな生まれた国が違うらしい。

支店長ファミリーが特別なのかと思っていたけれど、

別に珍しいことでもないんじゃぁ、ないかい?!!

 もしかして、、、私もそうなるの?

私は、いつかは子供が欲しいと思っている。

すぐにはまだ考えられないんだけど、いつかは。


 なんだか、頭がぐるぐるしてくる。


 日本を出たら、医療は金で買うものだと認識しておいた方がいいかもしれない。

できる限りのいい保険契約をしておいた方がいい。

支店長から、たかしはそうアドバイスされたそうだ。

 先進国でも保険の契約内容によっては、

駆け込んだはずの病院で診察を断られることもある。

自分がどんな状況でも、診察してくれない時もある。

支店長家族は、病院の通路でもめている患者を散々見てきたそうだ。


 国によって医療制度は、様々だ。

日本のように、国民皆保険ではない国もたくさんある。

自分で保険会社を探して選んで、契約するのが一般的な国もある。

スイスもそうだ。

 私が出国するのを知った恩人たちは、

海外経験が多い人ほど皆口々に言った。

とにかく、体に気をつけて。健康第一ですと。

症状一つ伝えるのにも、考えをめぐらす必要があるからねーと。


 晶子さんとたくさんたくさん、お話ししているうちに、

そろそろチューリッヒに到着だ。

窓の外は、緑であふれている。

森や畑や牧草地。

7月のチューリッヒは、爽やかな空気に包まれている感じがした。

2ヶ月前に初めて来た時よりも、大地そのものを愛おしく恋しく感じた。


 飛行機のタイヤがキュッキュと地面と擦れたのがわかる。

着陸。


 着いちゃったよ〜ぅ 。


 たかしが、空港に迎えに来ているはずだ。

どんな顔してるかな。


 でも私は、なるべくなるべく冷静にならねば。

だって、会社のご家族がここにいるのだから。

そしてなんと、めぐちゃんは私以上に興奮している。

年ごろの女子は、花嫁と花婿の感動の再会シーンを想像して、

さっきからドキドキしているらしい。


 たかしって、そもそもこんな時どんな風に私を迎えてくれる人なんだろう。


 何を隠そう、私たちは知り合って間も無い。

なんとなくの運命を感じて、ここまできたけど、

お互いにまだ謎のブブンが、たくさんある。ありまくり。

何よりたかしは、私が上司家族と一緒だという事実をまだ知らない。

 抱きしめられたらどうしよう。

ちゅーとか、、、しないよね。。。


 私のテンションも、どんな塩梅がいいんでしょう、神さまぁ。


 長崎ファミリーも、同じ気持ちだったらしい。

再会を邪魔してはいけないと、私と微妙な距離をおきつつ、

トランクを引き取り、出口にむかって歩いている。

めぐちゃんはずっと、私をガン見(笑)。

 ここは、誰よりもはやくたかしを見つけて、

長崎ファミリーの存在をアピールしなければ。

そうすれば、たかしは、

あんなことやこんなことは、しないはず。


 ガラス張りの出口が見えた。

たかしはぁ、どこだっ、、、たかし、たかしぃぃぃ

ぃぃいたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 これまで見たこともないような、弾けるようなたかしの笑顔に、

ゴメンっと、心の中でちょこっと謝り、

私は、たかしになるべくわかりやすく大げさに、長崎さんの方に顔をむける。

気づいて気づい〜って、会社の人だよ〜っと。


 すぐに気がついたたかしは、ハッと驚いてのけ反った。


 ごめんね、めぐちゃん。

ありのままをお見せするわけには、いきませぬ。。。

お姉ちゃん、恥ずかしいから。イロイロと。

でもね、二人きりでも、

結構あっさりだったかもしれないよ。

その辺は、お姉ちゃんもわかんない。

まだまだ、たかしを研究中なんだ。


 ん?

研究中で、私は結婚したんだな(笑)!

我ながら、オメデタイ性格だ。

でもたぶん、たかしもそうだ。

似たもの夫婦ってやつか。

結婚生活しながら恋愛継続な感じで、ちょうどいいではないか。

1年契約の更新制なつもりで、いつの間にやら、お婆ちゃんとお爺ちゃん。

気がつけば、銀婚式ってのも素敵だ。


 ふっと気がつくと、たかしと長崎ファミリーと私が、

ケラケラ笑いながら、みんな輪になって立っていた。


 こんにちは、チューリッヒ。

よろしく、チューリッヒ。












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