エピローグ
勇者の斬撃が、魔王の両腕を斬り落とした。
続いて、両脚を叩き斬る。
「おのれ・・・!
ここまで、我を追い込んで楽しいか!?」
「楽しくない!
なぜ、歩み寄ろうとしない!
なぜ、自分が弱者であることに気付かない!
ここでは、「暴力」こそ弱者の証だ!
なぜ僕が、あなたの民を従えられたかあなたは理解していない!」
そう。
勇者は、可能な限り、「対話」で解決してきた。
しかし、魔王は相手を屈服させることのみ。
「人も、動物も、話し合いや譲歩で事を進めている!
それが「力」だ!」
「おのれ・・・
たわごとを!」
「王様は、僕なんかより強い!
なぜなら、あなたに「強者」になってもらおうと努力してきた!
しかし、あなたの「弱さ加減」に我慢も尽きた!」
「我が弱いだと!?」
「そうだ!
本当の強さとは、「礼」と「寛容」・・・
それがないあなたは、切り捨てられるだけの「悪」だ!」
今、魔王は得体の知れない恐怖を感じていた。
それを認めるのは、彼の矜持が許さなかった。
しかし・・・
「・・・
すまなかった・・・
我の命など、奪ってくれてかまわない。
が、そなたに降った者たちだけでも、助けてやってはくれまいか?」
勇者は、何かの術を起動させた。
魔王の両腕両足が、元通りになっていく・・・
「わかりました。
王様に会談の要請をしておきましょう。
そして、あなたはここで死んではいけません。
王様やみなのために生きるという「戦い」が待っています。」
伝説は伝える・・・
時の王と魔王の橋渡しをした、「仁徳の勇者」を。
「力」ではなく、「交渉」と「説得」で戦った「真の強者」を。
やがてこの世界は、豊かで平和な世界へ変っていったという・・・
勇者は、自らの世界へ帰っていったというが、その後のことは伝えられていない。
-完-