6 魔王
その日、勇者は魔王城の城門前にいた。
勇者の脇には、騎士団長と獣人の剣士が控えている。
「さてと・・・」
勇者は、神の力を借りた強力な魔法を発動する。
「いけえッ!」
その凶悪な光は、城門どころか堅牢な扉さえ破壊する。
「さあ!
みんなは、城に残った連中を説得してくれ!
魔王は僕が、相手をする!」
「わかった!」
「できるなら、魔王様を説得してください!」
勇者は、魔王の間へ、さして苦もなく突入する。
「よくぞ来た勇者よ!」
「あなたは、王様が度々送り込んだ使者を殺していたそうだな。」
勇者は、魔王に剣を向けた。
「力で屈服させるのが、悪いことか?」
「そうだ。
例えそうでも、この世界は「礼」こそ力。
あなたは、それを欠いている。
あなたの理論だと、あなたは「弱者」だ。」
瞬く間に、勇者は魔王の首筋に剣を突きつける。
「なぜあなたは、人の国や山野の動物たちに迷惑をかける?
皆は、謝罪して協調すればお互いが共に生きられる。
暴力で接すれば、暴力で返される。
だが、礼で・・・
優しさで接すれば優しさで返される。
あなたの民は、人の国での魔族の待遇を知らなかった。
暴力だけでひどい目にあっていると、みな思っていた。
しかし、みな幸せに生きている。」