プロローグ
「国王陛下!
魔族共は、目に余ります!」
騎士団長が、箴言した。
「さよう!
野山では、強い獣ほど礼を重んじ、熊や狼ですら、こちらが頭を下げれば、下げ返してくるのですぞ!」
宰相の頭からは、湯気があがっている。
「やむを得まい・・・
弱いからこそ、「礼」を知ってもらいたかったが・・・」
この世界では、強き者ほど礼を重んじ、いかに無礼を働こうと、謝罪と礼を欠かさねば、基本的には許される。
故に、パン屋からパンを盗んだスラムの子供であっても、店のオヤジに恐怖して謝罪した場合はそのパンは譲渡され、オヤジに国が発行する「貧民保証書」を発行する役所に連れて行かれ、次の日からは食うに困らなくなる。
また、望めば国の「職業訓練校」に通い、自分に合った仕事を探し、親方に弟子入りもできる。
が、逆に言えば、謝罪をせずに済まそうとすれば、町中の人々にタコ殴りにされて、すさんだ生活を送ることになる。
どういう訳か、野生の獣たちもそれを知っているようで、一度人間を襲い、返り討ちにあえば、街まで自分にしかできない採集を行い、届けにくるのだ。
街の人々も、対価として街でしか作れない食糧を提供してやるのだ。
しかし、「魔族」は・・・
王は、決断した。
異世界から、「勇者」を召喚することを・・・