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 第七話 戦います。だから、力を貸せ

これにて完結。仕切れトンボ


「戦う事にした」

「唐突に気が変わったな。理由は」

「塩がない食事に戻りたくないね」

「は?」

 本拠地に帰ってすぐに戦うと言えば、そんな会話になった。

 呆気にとられるというか、意味がわからないと言いたげの二匹に俺は経緯を説明する。

「つまり、お前はなにか? サリアのためじゃなく小さな町のために世界と戦うと?」

「そう言う意味じゃねえよ。少なくともサリアを助けてやりたい。と、思っていたさ」

 ノワールの言葉に俺は誤解するな。と、言いたげに言う。

「けれど、たった一人の少女のために世界と戦おう。と、思えるほど俺は男気は無かったし、度胸もなかったし、なにより勝ち目も無かった」

 立った一人で世界と戦って勝てるのか? 答えは簡単だ。無理だ。

 その不可能を可能にするのは、勇者や英雄と呼ばれる……俗に言う主人公だろう。だが、それは物語の中にしか居ない。俺の人生はあいにくと、現実にある物語りなのでいつも、朝になると起こしに来る家族のように育った幼なじみや、幼い頃に解れば慣れになった美人の女の子とかはいない。

 当然、ものすごく強敵なんだけれど自分は必ず勝てるようなライバルもいない。現実と言うのは、大概が灰色で単調で十把一絡げの人生なのだ。

 ごくまれに、成功者というか破天荒な人生を送るがそれは本当にごく少数だ。

 異世界転移なんて物語に出てくるような事があったおしても、あいにくとクラス全体だ。 たぶん、主人公と言うのは俺じゃない誰かだ。……白鳥じゃないと良いな。程度で、俺はせいぜい一度ぐらいは名前が出たら良いな。と、言う人間だと思っている。

 だが、なんの因果か本当に世界を救えるのはあなただけです。と、言われた。だからといって、主人公になれたとは思えない。

 これは、物語じゃない。現実だ。

 わかりやすい目の前で戦う相手が、ただ単純に倒して誰からも感謝される相手とは限らない。どこかで、怨まれたり憎まれたりするだろう。

 ひょっとしたら、出会い方しだいや話し合いによってもっと良い形で解決出来た可能性だってある事をするだろう。

 物語の主人公のように、常にハッピーエンドへ向けての最良の一手を決める事なんて出来ない。なにしろ、物語の主人公とは、作者がつねに理想とする結末へと向けて、無限にある可能性からたった一つの道筋だけを選んで居るのだ。

「けれど、とりあえずは戦ってやろう。と、思えたよ。

 沢山のやつを助けたい。そう思った。まだ、町の人間だけだけれどな」

 俺はそう言った。

 そして、三日後……俺は真夜中に町長の下へと訪れた。イリアと出会ってだ。

「初めまして……わしがこの町の町長です」

 と、やせ細った町長は頭を下げて言う。

「初めまして……。俺の名前は、……そうですね。トーキョーと読んでください」

 本名は、(あずま)(けい)なのだが、東京(とうきょう)と読める。その事から、あだ名がトーキョーだった。

 ちなみに、本名を名乗らなかったのには理由がある。まず、王国から目をかいくぐるためだ。この国に感じはないので、俺の事はケイ=アズマと言う名前だと思っている。

 だから、トーキョーと言う人間の名前なんて知らない。

 まあ、可能性としてはクラスメイトの誰かに気付かれるかも知れないが……。その時は、その時だ。

「俺は、精霊魔法使いです」

「なんと……ですが、精霊様は」

「死滅していません」

 町長の言葉を遮るように俺はそう断言した。

「俺は二種類の精霊魔法を使えます。王国と魔族は手を組んでいて、俺はその真実を知った。それ故に、王国に命を狙われて旅をしていました。

 この町に来たのは、ただの偶然です。正直な話、俺一人では国と戦う事は出来ません。

 俺はまだまだ未熟なものです。精霊魔法も簡単にしか使えない。

 けれど、俺はこの町の人たちに助けられました」

「いえ、それはこちらの方が」

「それだとしても、俺は恩を感じています。王国に俺の存在がばれたら俺の命は危ない。そして、俺はこの町が気に入りました。

 ……ここで、町長相談です。……俺と一緒に王国に反旗を翻しませんか?」

 俺の言葉にしばらくの沈黙が支配する。

「はぁ!?」

「俺が行ったとおり、魔族と手を組んでいます。勇者と魔王が戦い勇者が勝つのも魔族側と王国にとっては最終的には望んだ結果なのです。ですが、勇者はその事を知らず王国は勇者にその真実を隠している。

 そして、勇者が魔族と魔王と戦う理由を作ろうとしている。この町は魔族との国境間際。おそらく、遅かれ早かれ魔族の領地として蹂躙される予定でしょう。

 おそらく、この村でも定期的にそのような事が起きていたのでは?」

 その言葉に村長も心当たりがあるのか黙る。

「つまり、このままでは勇者と魔王との戦いの犠牲になっているんです。ならば、反旗を翻す時だと思います。

 もちろん、そう簡単に王国に勝てるとも思えません。魔族とも戦えないでしょう。

 けれど、俺は手伝います」

「……ですが、この島は漁業も難しく……」

「塩の製造方法。国がそれを隔離したのは、ひとえに塩を作られるのが厄介だからです。それだけじゃありません。

 もちろん、絶対に成功するなんて言えません」

 俺は万能でもなければ何も出来ない。だが、嘘やごまかしを言わない。

 俺が出来る精一杯の誠意がこれだ。

「戦って一か八かの可能性にかけるか……。このままの真綿で首を絞められ続ける一生を過ごすか……。それとも、今になって俺を売るか。好きな道を選んでください。

 ちなみに、戦うならば手を貸します。真綿に首を絞められる一生を選ぶなら、俺はもうこの町には訪れません。そして、最後を選ぶなら……俺は先にあなた方と戦います」

 本音を言えば戦いたくないが、降りかかる火の粉は払わないと行けない。

「答えはすぐじゃなくて良いです。三日後に俺はまた来ます。

 ……出来るなら、三番目以外の答えを望んでいます」

 俺はそれだけ言うと、立ち去る。

 とは言え、元の場所に戻るわけではない。向かうのは、この町の外れにある海岸の洞窟だ。その洞窟に精霊王の一体が封印されていると言うのだ。

 青の精霊王は水系列の力を持つ。精霊王を解放する事が出来れば、海のあれぐらいも落ち着き、海産物も取れる。塩も安定して手に入り、さらには魚貝類も食べられる。

 と、言っていた。

「なんでまた、協力を願う」

「理由その一、俺は文明人の生活がしたい。あそこの野良生活はいい加減に限界がある。理由その二、一人で世界を救えるか」

 ゲームだって勇者は最終的に四人ぐらいで魔王と戦うぞ。

「つーか、あの町が俺を裏切るならその時は見捨てる。その時は悪いが、あのサリアとついでにお前らを引き連れて俺は元の世界に戻る方法を見つける」

 見つかるかどうかは知らないが、この世界を救う事なんてしない。

「俺は、俺が気に入った連中しか助けない。

 そして、俺は敵まで助けるような人間じゃ無いんだ」

 なんでも出来る人間じゃないんだ。

 俺は……。

 そう言えば、

「……まあ、良いだろう。なんでも助ける。

 そんな勇者がいずれ、サリアを殺しかねないのだ」

 そう言ってノワールが頷いた。そして、俺たちは洞窟へと向かった。

 その後、この町を始まりとして王国と魔族へと戦う第三の勢力が生まれる。

 それは、時間をかけてこの世界の真実を解き明かし、魔王を救いそして勇者を打ち倒して、世界を救いだしたのであるが……。

 その者ははたして勇者なのか、はたまた魔王なのか……。それは、誰にも解らなかった。

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