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第五話 魔王の卵をどうするか? と、言うのはさておき塩が欲しい。


「肉が食べたい」

 と、俺は思わず呟いた。

 唐揚げ、ハンバーグ、フライドチキンにカレーライスと言った料理。いや、海老フライやお刺身、煮魚……言ってしまえば、ちょっと凝った料理が食べたい。

 なんなら、おにぎりや焼きたてのパンでも良い。

「もうちょっと文明人らしい料理が食べたい」

「贅沢を言わないでほしいですわ」

 と、俺の言葉にブランが言う。

「思うだけなら自由じゃねえか」

 と、俺は今日、ノワールが手に入れた焼き魚を焼く。

 腹の部分を切って水で腹の中身をそぎ洗う。そして、木の枝で指して火であぶって焼く。

 塩すらかけていないシンプルな味付けは野性的と言う言葉よりも、野蛮な感じだ。

「なあ。せめて、塩を手に入れて来れないか」

 調味料の基本は、日本ではさしすせそ。と、言われて居る。砂糖、塩、お酢、醤油(せいゆ)、味噌である。まあ、この世界の感覚からして醤油と味噌にお酢は我慢が出来る。

 味噌と醤油にお酢は日本文化の品だ。そもそも、お酢はさておき味噌と醤油は塩があって初めてできあがる品である。

 だが、砂糖と塩は調味料お基本である。

 国によっては、味噌や醤油にお酢が最初は無い国がある。お酢の方は、お酒を元にしているので場合によってはあるかもしれないが……。

 味噌と醤油は日本独自の調味料だ。外国には無いと聞いた事がある。

 それに、味噌と醤油は塩が無ければ作れない。 

 対して、塩と砂糖は調味料の基本だと俺は思う。どの国にも塩と砂糖はある。砂糖と言うか甘味と言うのは、果実などにもある。蜂蜜などもある意味では、砂糖の代わりだ。

 まあ、甘味は言ってしまえば娯楽の品なのだが大きいだろう。

 とは言え、

「つか、本気で塩がないと健康に問題が起きるぞ」

 と、俺は言う。

 塩と言うのは生きていく上で大切な代物だ。

「俺たちの世界じゃ、植民地化をするために塩の買い占めを行ったんだ。塩を手に入れる為に後進した行動が歴史に名を残したぐらいだからな。

 塩は取りすぎも健康に悪いが、塩がまったくないのも不健康だぞ」

 と、俺は言う。

 つか、日本人として魚料理にすら塩がないのが辛い。

 サリアはすでに慣れたようだが、俺はまだまだ塩分が恋しい。

「塩が食べたい。塩が欲しい。

 塩焼きの魚が食べたい」

「わがままを言いますわね」

「なあ。この精霊の道を海辺へ近づけることは出来ないのか?

 人気が無い無人島でも良いぞ」

 海さえあれば、とりあえず塩は手に入る。鍋で海水を煮詰めれば、塩ができあがる。

「魚も手に入れる事が出来るし、海草も手に入れる事が出来る。

 もう少し、まともな食生活になるかもしれない」

「海は海で危険ですわよ」

「海水をくむぐらいは出来るはずだ」

 俺は俺でどうやっても塩が欲しいのだ。

 と、俺は主張する。

「人間、生きていくのには塩が必要なんだ。塩が!」

「まあ、解りましたわ。とにかく、安全な場所に連れて行きますわ。王都から放れた海辺の町ですが……。それでも、少しは正体を隠した方がよいですわね」

 と、ブランが言う。

 ついでにサリアには、塩を入れるための器を用意して貰う。

「しかし、本気で塩は必要だったな」

 と、俺は言う。

「どう言う意味ですの?」

「まあ、お前達が用意してきた料理とかにたまに塩があったみたいだが……。

 人間は生きていく上で、塩分は必要なんだよ。

 塩分不足で死ぬ人間もいるからな」

 塩分過剰で死ぬ人間もいるが、それを抑えて逆に塩不足で死ぬ人間もいる。ちなみに、汗などでも塩分などのミネラルが減る事がある。そのため、脱水症状が出たときはただの水ではなく、微量の塩を混ぜた塩水を飲ませた方が良い。

 他にも塩飴などをなめるのも一つの手だ。

 サリアがあまり、体を動かせないのはその塩分不足などもあるのではないのだろうか? と、言うのが俺の推測だ。

 むしろ、今までこうして生きて居られたのは一つの驚きだ。

 ひょっとしたら、魔王の卵だからかもしれない。

 魔王の卵が病気や栄養失調で死亡したと言うのは、間抜け以外の何者でもないし……。「俺は文明的な生活がしたい。

 百歩譲って俺が世界を救うにしても本拠地が必要だ。

 だとしたら、ここが本拠地になるはずだ」

 と、俺は主張する。

「せめて、塩と食料の安定した確保は必要だ」

 人間、生きていくには水と塩があれば生きていける。と、言う言葉がある。……まあ、ある程度でありやがては死んでしまうだろうが……。

 とにかく、塩は必要だ。塩は、

「つか、よくサリアは今まで生きて居られたよな」

 と、精霊の小道をブランの案内で歩きながら俺は呟く。

 ちなみに、俺は簡単な変装をしている。黒髪を気の汁で土色のような茶色の髪の毛にしている。俺は重罪人だが、死者だし王都から放れているかなり田舎らしい。

 そのために、俺の顔を知って居る人間も居ない。異世界から来た救世主たちと言うのも、全員が黒髪黒目ていどしか知られて居ないらしい。

 どうでも良いが、魔王が黒の精霊王ならむしろ黒は忌避されそうだが……。

 と、俺は内心で疑問を抱く。

 まあ、そう言うのは遺伝なのだからあまり関係はないかもしれない。と、俺は思いながら妖精の小道を出ると、

「うわ」

 寂れた海岸沿いの町があった。

「し……あそことは随分と違うな」

 と、俺は呟く。あそこは、金を湯水のように使っていた。だが、ここは田舎町と言う事をさっ引いてもかなり寂れている。

「そりゃ、そうでしょうね」

 と、俺の懐にいるブランが言う。

「王都は魔王の侵略などに縁が無いけれど、郊外付近の場所は魔物に定期的に被害を受けているわ。脅威としてなるように、定期的に魔物に領地として奪われる。そして、魔物から取り戻される事をわざと繰り返して居るのよ」

 と、言うブラン。

「うわ。被害者じゃねえか」

「とは言え、真実を知るものはいないから国を信じて居る。

 そして、真実を語ろうとするものは国からの内通者によって殺される」

 俺の言葉にブランが言う。

「魚もものすごく高いわ。魔物もいるから、魚を釣るだけでも大変よ。

 死者が出るわ」

 ブランの言葉を聞いて、俺は港から海を除くと、がばっと何かが迫ってきてとっさに避ける。その瞬間に海から巨大なピラニアのような鰐のような魚が飛んできた。

 あと、少し遅かったら首が食いちぎられていた。そんな中で魔物はどぼんと沈んでいく。

「魚も希少なのよ」

「うーみゅ。とは言え、塩は手に入るだろう」

 と、俺は呟く。

 最悪、海水をくむと言う手段もあるのだ。こんな時のために、バケツだけは持って来たのだ。あと、出来れば海草などがあると良い。

 昆布は偉大な出汁となる。人並み程度に料理が出来るので、料理の基本には出汁が必要だと言う事ぐらいは常識だ。

 たとえ、なくても昆布やわかめは美味しいかもしれない。と、俺は思いながらお店へ行く。塩を売っているお店を見て見るが……。

「考えて見ればお金が無かったな」

 と、俺は思い出す。悲しきかな。俺は無一文だった。

「海水を組んで帰るか……」

 と、俺は呟く。

 砂浜へと行けば、遊ぶ人間も一人もいない。まあ、寒空なので冬なのだろう。冬に水遊びしろと言われても俺でも断る。それに、あの魚を見る限りでは泳いでも楽しくは無さそうだ。そう思いながら、俺は海水を組む。

 ちなみに、貝殻は元より海草すらなかった。

 しょうがないので、俺は塩を作る事にする。

 野外でも出来る塩の作り方。

 その1、海水を金属の鍋(無ければ、バケツ)でもくみ上げます。この時、ゴミなどが入らないように気をつけましょう。

 と、言う事で俺は海水をくみ上げる。

 そこに、

「あんた、なにをしているの?」

 と、言う声がした。

「?」

 と、俺はそちらの方を見ると、一人の女性がいた。

「? あんたは?」

「あたい? あたいは、イリアだよ。この町の住民。あんた、見かけない面だね」

「ああ。まあ、ちょっと旅人でな。今は、塩をつくって居るんだ。

 金が無くてね」

「塩? 塩は作れるものなのかい?」

 俺の言葉にイリアが驚いたように言う。

「? なあ。塩ってどうやって手に入れてきたんだ?」

 イリアの言葉に俺は逆に驚く。俺たちの世界では、塩はそれこそ海水から出来ている。おかげで、日本では昔から塩を材料に使った調味料である醤油や味噌が出来たのだろう。 なにしろ、日本は小さな島国なので塩を手に入れるのは簡単だ。

 そう思っている中で、

「塩は岩塩から取るに決まっているじゃ無い。専門の岩塩採掘者だっているのよ」

 と、断言するイリア。

「あー。海水から塩は作れるんだぞ」

 と、俺が言えば、

「そりゃ、まじかい?」

 と、目を見開いて驚いた様子のイリア。

「今からつくって居るんだよ。……なあ。作るのを手伝ってくれたら塩をわけてやるぞ。ついでに、作り方を知れば便利だろ」

「ああ。良いけれど、あたしは大した事は出来ないよ」

「鍋。金属のでかい鍋にザルと布を持って来てくれ。あと丈夫な糸」

 と、俺はそう言った。

 別に鍋以外は無くても良いが、あった方が便利なのだ。

 俺の言葉にイリアは持ってくる。それを受け取り、バケツに組んだ海水を鍋に入れながら改めて、イリアを見る。

 赤毛というやつだろう。赤色と言うよりもオレンジ色に近い髪の毛に日焼けした健康的な小麦色の肌。そばかすのついているが愛嬌のあるトパーズ色の瞳からして健康美と言う印象だ。……ただし、もう少しふくよかだったらだ。やせていると言うよりも、やつれている印象でありあまり健康的ではない。

 まあ、見ていたところではこの町の住民の全員がこんなもんだ。……どうやら、城は随分と裕福らしい。と、俺は思う。

 そんな中で、でかい鍋に布とザルで海水を越して、火にかける。火にかけるためのコンロは近くの岩を積み重ねた。

 そして、木の枝は持って来た代物である。それに火をつける。火種だけは、イリアから借り受けている。その後、強火でぐつぐつと煮込む。

「ねえ。蓋を使えばもっと早くに立つわよ」

「金属の蓋だと水蒸気が出て行かないんだよ。

 これの目的は水蒸気を逃がすことなんだよ」

 と、イリアの言葉に俺は言う。

 しばらくして海水が三分の一ほどに減ったのを確認すると木べらでかき混ぜていく。

 そのまま、さらに煮詰めれば、

「なんだか、白くなってきたんだけれど……」

「大丈夫だ」

 と、俺は言うとゴミを取った布とザルでまたも海水をろ過する。

 さらにろ過した海水をさらに、火にかける。今度は中火にしてかき混ぜながら煮詰め続ければ、さらに水分が無くなり白くなっていく。

 やがて、

「なんか、塊みたいになっているんだけれど」

「これで良いんだよ」

 そう言うと、さらに越して残ったのが塩だ。

 俺はそういうとイリアに塩を差し差し出す。

「舐めて見ろ」

 その言葉を聞いてイリアは舐めて、

「しょっぱい。塩だ」

「だろ。これが、塩。海水と言うのは言ってしまえば、塩水なんだよ。

 火にかければ、水の部分は蒸発して空気の中へと消えて行く。

 そして、残った塩の成分が残る」

 俺はそう言ってバケツの上に先ほどの布を乗せて鍋の海水を入れる。そして絞り上げれば、かなりの塩が残る。

 かなり形が歪な塩だが、十分だろう。

「残った水はかなり苦いぞ。まあ、これも使えるんだが……。今は使い道がないな」

 と、俺は捨てる。大豆があれば、豆腐が出来るのだが……。この世界に大豆があるのかは謎だ。

「すごい。こんな事で塩が出来るなんて」

「まあ、材料はともかく火をおこす鍋と手間はかかるけれどな」

 と、イリアの言葉に俺は言う。

 そのまま俺はというとイリアと一緒に何度も海水をろ過して塩を集めたのだった。そして、イリアは半分の塩に喜び、塩を入れる器に魚を三匹も暮れたのだった。

 かくして、俺は久方ぶりに魚の塩焼きを食べることが出来たのだった。

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