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第三話 救世を黒猫に頼まれ断る


 白鳥しらとりひかる。文武両道で容姿端麗。欠点の無い性格であり、信念があるだろうが……。根っからの善人であるが、思い込みが激しいのだ。

 一面を見るだけで、その人がそうだ。と、思い込むのだ。

 信念はある。善意でもある。善人であり、良い人である。

 理想が全て現実になると思い込んでいる。

 だが、現実は理想が全て叶えるわけではない。それなら、戦争も争いも差別もとっくの昔になくなっているはずだ。

 世の中が善と悪の二種類で綺麗に分かれていると思っている。

 だが、そんなのは今日日では子供向けのアニメだってそうではない。有名な僕のお顔をお食べ。のヒーローの敵役だって、根っからの悪役とは言えないと思う。

 俺と白鳥が最初に、直接的に関わったのは高校一年の時だ。その時から、白鳥はクラスと言うか学年全体、いやひょっとしたら学校全体から知れていただろう。

 入試の試験では一位で、学力診断テストでも一位。運動神経も万能でありさらには、イケメンなのだ。お前は、どこの漫画から出て来た完璧超人だ。と、思ったものである。

 アニメや漫画のキャラクターだってもう少し、欠点があって可愛げあるぞ。

 と、思ったものである。

 接点が出来たのは、高校に入学してすぐのボランティアである。班ごとに分かれて、いくつかあるボランティア。たとえば、近くの孤児院。あるいは、老人ホームの手伝い。公園のゴミ拾い。保健所での捨て犬、捨て猫の面倒と言う四つに分けられており、班ごとに希望を言い合ってそれをやるやつだ。

 俺たちの班は孤児院でのやり方だった。まあ、別にそれに不満があったわけではない。とは言え、リーダーシップをする白鳥は、ああするべきだ。こうするべきだ。と、言った。その意見その者は間違っていないし、善人だ。だが、理想論なところが有ったのだ。

 善人で善意での行動。だからこそ、迷惑だと思ってもそれを否定出来ないのだ。孤児院であいつは、堂々と勉強会をするべきだと言ったのだ。

 孤児院と言うのでは、大変だろう。可哀想。と、当人たちの前で連発したのだ。

 俺はそれを否定した。

 確かに、孤児院……親が居ない。苦労をしている。だが、可哀想。と、言うのは相手を見くだした言い方だと俺は思うのだ。

 とは言え、可哀想と思って言うのはよい。だが、それを当人たちの前で連発するのは嫌だったのだ。だからこそ、俺はそれを否定した。

 反論したのだ。とは言え、それはどんなことをすると言うか? の、時点でそれを意見したのだ。話し合いと言うのは、反論意見も当然出るものだ。人間、全てが同じ意見であるなんて俺は思っていない。いろんな考え方、いろんな価値観があるのだ。

 戦争などにならないからこそ、それが争いになるのだ。

 だが、白鳥は無自覚な善意の押しつけだった。結果として、俺は悪者になったのである。まあ、俺は高速違反を少々しており(問題レベルではない)結果として、俺は白鳥の中で不良生徒である悪者になってしまったのだ。

 あいつは無自覚な善意の押し付けであり自分以外の価値観を否定している。

 俺はあいつを見て、昔呼んだ一文を思い出した。

 地獄への道は善意で舗装されている。

 あいつの善意は地獄への道を舗装しているのだろうか? と、考えたものだ。

 価値観がまったくかみ合わない上に、反論した俺は白鳥とは致命的に仲が悪くなった。

 さて、仲が悪いと言っても俺は対立するつもりはなかった。とは言え、白鳥は自分に対して否定するやつ=悪と言う概念があった。さらに、白鳥には、少なくともカリスマ性と言うべきか人を惹きつける人だった。

 何しろ、イケメンで文武両道の天才だ。リーダーシップもあり誰もが彼に引きつけられる。対して、俺と言うのはあえて言うなら集団からはぐれたドロップアウトだ。別に劣等生と言うわけではないが、白鳥に比べれば誰しも劣る。

 家柄もよく教師からの印象も良い白鳥と俺のどちらと仲良くなった方が良いか? 誰もが、白鳥を取った。

 まあ、かといって虐めと言うほど陰湿ではない。ついでに、数少ないが友人もいた。ただ、俺と白鳥の間にはややぴりぴりとした空気が支配していただけだ。

 とは言え、俺と白鳥の関係はあまりこの件とは関係無いだろう。

「あんまり、良い印象を抱いていないようだな」

「まあ、個人的な印象だよ。好きになれないが、悪人とは思っていないよ。まあ、世界を救えるとは思えないけれどな」

 と、俺は肩をすくめる。

 あいつは、あくまでも人間だ。何でも出来る理想を追い求めているが、世界を救えるような世界の清濁を全て理解しているとは思えない。世界を清濁全てを綺麗に分ける事は不可能なのだから……。

「勇者と言うのは、正確に言えば白の魔力を与えやすいんだよ。

 勇者が魔王を倒す。その瞬間に黒の魔力が爆発に広がる。

 ……最も、黒の魔力を放出するのには白の魔力が向いているからな。その後、勇者は秘密裏に殺されて白の魔力が世界に広がるんだよ」

「……気に入らねえな」

 ノワールの言葉に俺は眉をひそめる。

「つか、それなら勇者だけを連れて来るべきじゃねえの?」

「最近じゃ、魔王の力も魔の力も強力だからな。

 なるべく、沢山の大きな出来事を引き起こしたいんだよ。それに、黒の魔力を宿した当代の魔王は力が強い。いや、強すぎたんだ。

 で、その力を発揮するための生け贄。それに、何度も繰り返して居る内になにも知らない一般人の方が自信を失ってな。魔王の領土が盛り返しているから、人間側の大量の英雄とついでに、人口増加を目的にしたらしい」

「腹が立ってきたな」

 ノワールの言葉に俺は思わずそう呟いた。

「つまり、俺たちは使い捨ての道具扱いかよ」

「そうだ」

 あっさりと答えるノワールだが、それはそれで疑問が増える。

「それじゃ、第二の疑問。なんで、それを俺だけに伝える?」

 そう、それが最大の疑問だ。

「そんなの全員に教えれば良いじゃねえか。

 そうすれば、反旗を翻す。加護だがギフトだが、プレゼントだかお歳暮だろうが、お中元だろうが俺以外の連中はまともに戦える素質を持っているんだぜ」

 そう。俺は、何もできない役立たずだ。

 もちろん、それは戦いに関してだけであり努力すれば農作物を作る手伝い。掃除洗濯家事など、学べは人並み程度に出来ていくことがあるだろう。

 ただし、わざわざ異世界から召喚するほどの価値は無かった。それだけだ。

「なんで、異世界でお前達を選ばれたか考えたのか?」

 俺の言葉にノワールはそう言う。

「異世界から勇者の器を探すときに、条件を考えたんだよ。

 勇者の器になる資質がある人間である事。そして、理想を夢想する……夢見て、異世界に転移すると言う状況に興奮して喜び舞い上がる年齢と精神。

 そして、勇者の器を信用して心酔している集団た」

「なるほどな」

 俺は納得した。

 俺たちは若い。……そして、若いと言うのは愚かと言う言葉でもある。俺は性格がひねくれているので、この状況を不愉快に感じていた。

 ついでに、白鳥の事を嫌悪していた。

 おそらく、集団の中に入ってしまっていたのだろう。つまり、俺たちは白鳥に巻きこまれたというわけである。……今度、出会うきっかけがあったら一発、殴ってやりたくなるような話だが……。白鳥が原因であって元凶ではないので我慢しておく。

「で、その心酔が強化するように洗脳されているんだよ。あいつらは」

「うおい」

 さすがにそこは、驚く。

「洗脳?」

「そう。洗脳。勇者の放つ白い魔力がカリスマ性を強めて、ありゃ心酔だな。

 あいつが、白い犬尻尾は黒いと言えば、あいつらはそうだと主張するだろうな」

「そういや……」

 最近、あまり接触していなかったが……あいつらの白鳥への心酔はなんだか、異常になってきていた気がしていた。まあ、異世界なんて異常事態にぐんぐんと周囲を引っ張るカリスマ性。それに、見ほれていた。と、言う可能性を考えて居たのだが……。

「まあ、勇者様とやらはそれに気づいて居ないだろうがな」

「あー」

 そりゃ、気づいて居ないだろうな。自分に都合の良いようにしか、物事を判断できないやつだもん。と、俺はため息をつきながら納得する。

「だが、お前は精霊の加護を受けている。だから、洗脳がきかない。

 逆に洗脳を解いてしまう可能性があった。だから、お前を殺す。それも洗脳に違和感を与えない形でだ」

「なるほどな。けれど、洗脳されないからと行って殺すと言う理由はいくら何でも暴論じゃないのか?」

「理由は簡単だ。白と黒が封印した十の精霊王を解放する事が出来るのが精霊魔法使いだけだからだ。だから、白と黒は精霊魔法使いの資質を持つ存在を殺していった。

 だが、現れたお前はそれも達人級だったというわけだ」

「なるほど」

「それじゃ、質問だ」

 そこまで、来て俺はノワールを見る。

「黒い猫のお前は……黒の精霊王にでも仕えているのか?」

「正確に言えば、たしかに黒の精霊とは無関係じゃない。

 だが、俺はあいつと敵対している。

 人間が一枚岩でありみんな同じ事を考えて同じ王に仕えている訳じゃ無い。王に反旗を翻す人間がいるように、俺は黒の精霊王に反旗を翻した。

 そして、頼む。

 ……本当の意味で、世界を救ってくれ」

「嫌だ」

「速いな」

 即答すれば、呆れたようにノワールが言う。

「あのな。俺としては、この世界が滅びようが腐ろうが踊ろうが知った事がないんだよ」

「世界が滅びると腐るは解るが、踊るとはどんな状況だ?」

「気にするな。俺も解らないから」

 ものの例えで、勢いでつけただけなので深くツッコミを入れないで欲しい。

「とにかくだ。俺としては、元の世界に戻りたい。ただ、それだけだ」

 元の世界に戻りたい。それは、俺の迷う事なき本音だ。

 俺たちをこの世界につれてきた神……もとい、白の精霊王やらが俺たちを使い捨ての使い潰しの道具と思っているならば、帰り道を用意している保証は無い。

 そもそも、片道切符だけの可能性もある。

「世界を救ってやる理由は無い」

「だが、世界を渡るにしても力は必要なはずだ。精霊王一人で世界を渡る力を与えた。もちろん、そいつが膨大な力を蓄えていたにしても、他の精霊王を救えばその移動する力を得る事は可能かもしれないぞ。

 とにかく、そのための力をえる場所と安全な場所に行く。

 その中で、考えれば良いのさ。

 世界を救うか? それとも、見捨てるのか? あるいは復讐するのか?

 そもそも、俺は世界を救って欲しい訳じゃ無い」

「頼んどいて言うか?」

 ノワールの言葉に俺が言えば、

「まあ、お約束というやつだ。……本当の望みは別だ」

 と、ノワールは前置きして望みを口にした

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