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第二話 黒猫と脱獄したならば世界の真実を


 俺はというと、とにかく黒猫に言われるがままに出る事を決めていた。

 まあ、このままだと殺されるのは間違いが無いのだ。しかも、それが本当に仕組まれているのならば、逃げた方が良い。

 この後、なにかあって生き延びたとしても二度も同じ事が起きない保証は無い。

「わるいな。キョート。オーサカ」

 幼なじみと特に仲の良かった友人にそう呟き、俺は黒猫と共に脱獄した。

 黒猫はどうやってかは知らないが、闇から闇へと空間を移動出来る魔法が出来た。

「黒猫だって魔法が使えるのに俺は魔法が使えないのか」

 思わず嘆きたくなる。

「嘆くなよ」

 と、牢獄から逃げ出して王都が一望できる小高い丘にいた。

 ちなみに、脱獄がばれないようにと黒猫が持って来た偽の死体がそこにある。

「つかさ。お前、俺になにをさせたいんだよ?」

 と、俺は黒猫に尋ねる。その顔色が青いのは当然だろう。

「牢獄になんであんなもんを」

「あんなものを残さないと、脱獄がばれるだろ」

「……だからってなぁ。俺は死んでしまった事になるじゃないか」

 黒猫がどこからか持って来たのは俺の死体だった。自分でも、まるで俺の死体のようであり手首を自分で切り落とした死体だった。

 自分の死体なんて二度と見たくない。

 思い出して、胃の中のものが逆流しそうになる。

「それに、あいつらに知られると厄介だからな」

「だから、お前さ。いい加減に理由を」

「話ながら説明する。俺たちは逃亡者だ」

 そう言うと、黒猫はすっと何かを取り出す。

 一言で言えば、真っ黒なローブだ。詳しく言うなら、黒いシーツを頭から被ってテルテルボーズみたいな服を作った。そんな印象を与える。

「これは?」

「旅人の一般的なローブだ。顔も隠せるしな」

 黒猫はそう言うとただの黒猫状態になると、俺の胸元にはいる。

「男の胸に包まれても楽しくはないが……。まあ、我慢してやる」

「可愛くねえ」

 犬派か猫派かと聞かれれば、躊躇無く猫。世界一、有名なポケットに入るモンスターたちの電気ネズミ派か喋る小判の化け猫派かと聞かれたら、悩んで答えが出せない程度には猫派だが……。

 なんだか、猫への好感度が減っている気がする。

 そう思いながら、俺は黒猫について行く。

「で、名前は?」

「ノワールだ。

 黒猫のノワール。守護騎士としてナイトの爵位を持っているんだぞ」

「猫が?」

「……猫ぐらいしか守ってられない姫君のためだ」

 俺の言葉にノワールはそう言う。その言葉には妙な重みがあった。

「……どう言う意味だよ?」

「五年後に魔王が復活する。と、言うのは知って居るか?」

「その復活する魔王のせいで、俺たちは親元家族の元から離されたんだよ。

 故郷に帰れる保証があるかどうかすら、怪しいんだよ」

 いろいろと、俺としては文句を言いたい。

「そもそもだ。魔王が復活したら大変だぁ~。と、慌てるのはこの国の連中だろうが! つか、この世界の連中だろうが!

 なら、自分たちの世界ぐらい自分たちで守れよ。

 自分のケツもふけねえのか? この世界の連中は」

「あいにくと、尻を拭くのは人間だけだ」

「そう言う問題か?」

 黒猫……ノワールの言葉に俺はそうツッコミを入れる。

 つか、猫相手にケツの話をしているのもどうかと思う。

「まあ、魔王が五年後に復活する。それじゃ、今は魔王はどうしていると思う?」

 と、ノワールが真面目な顔(だと思う)をして、尋ねてくる。……封印されている魔王がどこにいるか?

「うーん。俺達の世界のゲーム。

 ……架空の物語とかだと、前人未踏の場所。最果ての孤島とか魔王城の最深部とか、あるいは何かものすごい秘宝の中に封印されている? とか?」

「じゃあ、問題。なんで、人間は魔王が五年後に復活すると正確な時間が解って居て、場所が解っていないと思ったの?」

「……いや。たとえば、場所が解っていてもそこまでいけない。行く方法が難しいと言う可能性だって有るだろ」

「……魔王は五年後に復活する。

 それは、人間側も魔族側も決めている決定事項なんだ」

「……………」

 ノワールの言葉に俺は一瞬、なにを言われたのかがわからなかった。

「この世界は腐っているんだよ。根っこから」

 と、ノワールは語り始めた。


 昔々、世界には十二の精霊王が存在していた。

 神が作ったが世界を作り終えて寿命やくめを果たした神は、居なくなった。また異なる世界を作りに向かった。あるいは、世界その者となった。あるいは、寿命だった。と、諸説があるが太古の昔の事なのでその真相はわからないらしい。

 代わりに崇められていた……神に近い存在。それが精霊王だった。

 水、空の力を司る青の精霊王。

 炎、熱の力を司る赤の精霊王。

 感情を司る黄色の精霊王。

 欲望を司る桃色の精霊王。

 植物を司る緑の精霊王。

 生命を司る紫の精霊精霊王。

 幻を司る藍色の精霊王。

 大地や岩を司る茶色の精霊王。

 鉱物、宝石を司る金色の精霊王。

 機械、科学を司る銀色の精霊王。

 そして、光や聖を司る白の精霊王と闇と魔を司る黒の精霊王。

 彼らが調和して、魔族も人間も精霊も妖精も全ては平和に暮らしていた。

 だが、白と黒が反旗を翻した。

 魔も聖も神もそして、魔を象徴する驚異も力もないので軽く見られている。それが我慢できなかった二体は、生み出したのだ。

 聖の象徴である勇者と魔の象徴である魔王を生み出した。

 その結果、バランスを崩してしまう。魔と聖と言う決められた戦いを繰り返す中で、白の精霊王と黒の精霊王は精霊とは違う別格の力の持ち主となった。

 だが、それは世界のバランスを崩す事だった。

 定期的に行われる魔と聖の戦いを繰り返されることで、世界はゆがまれた。

「もう、白と黒は精霊じゃない存在へとなっている。

 そして、他の精霊達は……その二体によって滅ぼされた。

 だが、白と黒を止めるには精霊の力が必要なんだ」

「なるほどな。だから、俺を見つけた。

 それじゃ、質問その二だ。俺が精霊魔法使いだから狙われた理由は?」

「人間にも一部は、真相を知っている。特権階級。

 国の王とそして司祭や特別階級の持ち主だ。そして、魔族の魔王の腹心とされている七大将軍たちだ。他の連中はそれを知らない。

 やつらは、それを手を貸す代わりに永遠の命を約束されている」 

「……それが、本当なら気に入らねえな。

 で、なんで俺たちは召喚されたんだ?」

「一人、ギフトに勇者がいたはずだ」

「ああ。居たな」

 ノワールの言葉に俺は思いだした。うちのクラスから現れた【勇者様】とやらを……。

 名前を、白鳥しらとりひかる

 クラス委員長で文武両道、成績優秀で運動神経も強い。大抵の事はすぐに人並み程度に出来てしまい、正義感もある善意に溢れた善人。

 だが、俺はあまり好きではなかった。

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