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第一話 黒猫と理不尽への怒り


 立派なギフトを手にして居るクラスメイトたちがまともな事をしながら実力を上げて言っている。全員が、無敵最強てきな力を持っている中で俺はなにも出来なかった。

 つまり、タダ飯ぐらいの役立たずだ。

「まあ、一応とはいえ掃除ぐらいはしているんだけれどな」

「ニャー」

 と、俺はよく来る猫に愚痴をする。

 猫相手に愚痴を延々と話す人間。何というか、公園の鳩しか話し相手が居ない寂しいサラリーマンのような気分だ。

「キョートもオーサカも忙しくて、このところ会っていないんだよな」

 何というか……。まるでこの城の人間はクラスメイトから俺を孤立させようとしているような気がする。おかげで、ここ一週間ほどクラスメイトと顔を合わせていない。

 そう思いながら、俺は図書館にある魔道書グレモアを思い出す。精霊魔法に関する情報は全くない。

 そんな中だった。俺は、姫様……ただし、第三王女と言う要するに三番目のお姫様の所にお茶を持っていくように言われた。

「何人、子供がいるんだよ?」

 と、俺は呆れる。たしか、王子様を俺は二人見ている。そして、お姫様が二人見ていた。これだけで四人だがまだ後、一人はいたらしい。

 少子高齢化が進む日本では驚くような大家族だ。

 と、思いながら俺は茶を運ぶ。世界を救う救世主じゃねえのかよ? と、俺は思いながらドアを開ける。

「姫様。しつれー」

 礼儀も何も無い言い方で、ひょっとしたら駄目な部分があったかもしれない。そんなしゃべり方で俺が話しかけながらドアを開けたときだった。

 そこは、血の海だった。

「えっ………」

 驚く中で、

「きゃあああああ!」

 と、言う女性の悲鳴が響く。

「人殺し!」

 それは、明確に俺へと向けて言われた言葉だった。

「は、おい。ちょっと」

 俺は慌てて叫ぶ。

 俺は部屋にも入っていない。だが、

「大変だ。姫様が」

「おのれ、なんと言う事を」

「きさま、大人しくしろ」

 と、言う言葉と共にまるで最初からそう言う事が起きると解って居たかのように、兵士達によって取り押さえられる。

「ちょ、違う」

 と、否定するがそれも無視されて俺は牢獄に閉じ込められる。

「おい。俺は何もしていないって、ちゃんと調べろ」

「黙れ、真相は裁判で判明する」

 と、言われて俺は閉じ込められる。そして、その後に三十分もたたないうちにあっという間に裁判が行われる。

 いくら何でも速すぎる。と、言うのが俺の感想だ。

 そして、一方的に有罪が決めつけられる。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 俺は叫ぶ。

「俺が殺したって証拠はあるのか?

 そもそも、なんで俺が殺したと言う事になるんだ?

 俺は、ただの第一目撃者なだけだ」

「黙れ! お前が有罪なのは、神の声を聞く神官様からの神託で解って居るのだ」

「はぁ?」

 神の声? 神託?

 突然、言われた言葉に俺は何を言っているのか理解出来ない。

「神は言った。

 加護ギフトを宿し異界よりの救世主の中に邪悪な悪魔がいる。

 それが、何もできぬ役立たずである加護の持ち主であるお前だと」

「ちょっ、おい」

「黙れ、もはや邪悪な存在に言葉を語る権利はない。

 世界のバランスを崩す破滅の存在め。

 明朝、光の力が高まる場所でお前は光の神ルーメン様の意志により死ぬがよい」

 と、言われて牢屋に俺は送り込まれる。

「いくらなんでも、理不尽すぎるぞ」

 と、俺が呻く。

 すでに夜らしく日が暮れている。

「何というか、俺を死刑にしたいと言う意志があるな。

 けれど、なんで死刑なんだよ」

 と、俺が呟く中で、

「そりゃ、お前が精霊魔法を使えるからニャ」

 と、言う声がする。

「誰だ?」

 と、俺がそちらを見ると、牢屋の光を差し込ませる外窓。とは言え、手を一本ほど伸ばすぐらいしか出来ない狭い場所。そこに、いたのは一匹の猫だった。

 漆黒の毛並みに、エメラルドのような瞳をした黒猫で俺がよく愚痴を言っていた猫だ。

 それ以外に誰も居ない。……猫を誰かと数えて良いのかは解らないが……。そう思っていると、

「おいらだよ。おいら……。お前の愚痴を聞いていたおいらさ」

 と、黒猫が小さな隙間をくぐり抜けて入って来ると、一回転する。

 その瞬間に、俺の目の前に二足歩行の黒猫だ。深緑色の燕尾服のような衛兵のような貴族が剣をするような服装だ。腰にはレイピアと呼ばれる細身の剣がある。さらに、頭には同じ色の帽子、キャバリアハットと呼ばれる帽子をかぶっている。ご丁寧に、帽子には耳が出るようについている。

「さすが、異世界だな」

「もう少し、驚いて欲しいんだけれどな」

 俺の言葉に黒猫が肩をすくめて言う。

「もうすぐ、死にかけている状況でなにを驚けと言われても困るんだよ」

 と、俺は言う。

「それよりも、俺が精霊魔法を使えるとはどう言うことだ?

 この世界じゃ、精霊魔法は使えないんじゃないのか?」

「……それ以上を話すのは、これから少し先だな。

 失礼だが、試させて貰うぞ」

「……試すね」

 黒猫の言葉に俺は顔をしかめそして、

「ふざけんなよ!」

 と、俺は怒鳴る。

「勝手な事情でこっちの世界につれてきて、最短でも三年間は帰れない。つか、帰れる保証もない。こっちの事情や家族との別れも出来ない。

 そんな状態で、連れてきておいて……。俺の意見も意志も無理だ。

 そして、次に俺が精霊魔法が使えるから殺す? そして、試す?

 ふざけるな。俺の命を、俺の自由を何だと思っているんだ?」

 と、俺は怒鳴った。

「いくら何でも理不尽すぎるだろうが!」

 そもそも、理不尽なのだ。こっちの事情も無視して異世界に連れて来る。そして、勝手に役立たず。そのくせ、この世界の人間は俺たちを支援するだけだ。

「世界を救って欲しいと願っているのはそっちだろうが! 願っておいて願うだけ! そして、こっちの意見を無視する。

 お前もそうだ。試すと言う事は何かを頼みたいんだよな。なのに、試すなんて勝手すぎるだろうが!」

 と、俺は怒鳴れば、

「……ま、たしかにそうだな。まず、俺たちの望みを答えてほしい。だが、その望みを叶えられるには実力を確かめたい。だから、その試練に挑戦してくれ。

 そのかわり、お前の命を助ける。それと、詳しい話もする。

 ……とにかく、俺の手伝いをしてほしい。それに、死にたくは無いんだろ」

 と、黒猫は言ったのだった。

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