6話 斬亜
じ、自分としては頭の中で色々と考えていて更新しているつもりになっていて気がついたら四ヶ月近く未更新だったという……これがウラシマ効果というやつか!
後四ヶ月もあったら前の自分と今の自分との書き方の違いだとか自分の未熟さとか色々分かって恥ずかしいけど直しようもないので今はこのまま続けます。
「えーとバトルドレスフルメタルカッタースカートとツインソードテールにメタルクロースラッシャー二つと……」
物々しい単語を口走りながら俺は今、ヨシの新アバターを作っている。
ギルドの話は結局名称未設定でとりあえず作ったが、ホームを貸してくれているヨシに先にアバターを作るべきという意見により取り掛かっている。
材料となる既存アバターから欲しいパーツ情報を抜き取り新規アバターカードに付与していく作業だ。
マシン系がいいと言っていたのでマシン系の金属パーツと、ヨシの性格上接近戦以外は出来ないだろうから堅く丈夫で軽くて動きやすく何よりよく切れる……日本刀とロボを混ぜたような感じに仕上げようと思っている。
それにリアルが女であると明かした以上今更性別を偽る必要もないし何より彼女は俺のマッハアークよりミィのスチルレインを見ていることが多かったしな、あの頃はヨシがミィの事好きなのかと思っていたが今になって思えばああ言うアバターが良かったんだろう。
基本は細身の女性像に全身凶器とも言える刃の数々、髪型はツインテールだがそれも日本刀、手も指先が鋭利な刃物になっている感じで金属パーツが多いので全体的に見て銀色か……後は能力と技能、それから名前だな、基礎能力と技能は使ったパーツに付随しているものがセットされているがこれを更に抽出して別のものをセットする作業と一番大事な名称決めだ、このアバターは等級がユニークになるはずだ。
アバターの等級はユニーク、オリジナル、クローン、レア、ノーマルの五つで解釈として、俺みたいなのが作ったアバターがユニーク、これは完成した時点で公式アナウンスとして情報が開示される、それから他の連中が課金して購入するか材料さえ揃っていれば複製することができる、この時購入した物、複製されたものがクローンで、最初に作られたものがユニークからオリジナルに等級が落ちる。
そして後のレアとかノーマルっていうのは基本的に素材のことだ、ゲーム内で入手可能なものは全てこのどちらかで、課金して手に入るものは全てレアである。
表記としてはレアになるが、ボスモンスターからドロップするものをスーパーレアだとか、公式イベントランキング上位報酬なんかはウルトラレアとか言う。
とりあえず能力や技能に関してはヨシの希望を聞くべきだろう名称も一緒に。
「おーい、ヨシ……ってお前いつから後ろに居たんだよ?」
呼ぼうとした当人が振り返ったら真後ろに居ました……この感じからすると結構前から居たな、作業に集中しすぎて全く気がつかなかった。
「最初からだ、メーカーは私のことなんか全く気にならないらしいな、後ろから抱きついても何の反応もなかったぞ」
今のヨシはリアルアバター、現実の姿である……特に言及する事もなかったが彼女は巨乳である――――学生時代から凄かったが現在それと比較にならないほど大きい。
それが背後から押し付けられていたのにも関わらず無反応だったらしい……なんて惜しいことを。
「昔から作業している時は集中しすぎで作業が終わるか自分で中断するまで気がつかなかったよなお前……そういえば文化祭の時なんて――――」
文化祭か……多分準備の時の話だな、何人か、それこそミィやヨシも一緒に作業していたんだが……気づいたら一人になっていたというか日が昇っていた。
「そういえばあの時確か最初に登校して来て声をかけてくれたのはヨシだったな」
「そうだな、私は普段から早く来ていたんだが教室の戸を開けてお前が居て作業していたからびっくりして声をかけたが無反応でそれから一時間してようやく気づく有様……はぁ、お前全然変わらないんだな」
ヨシは呆れながら溜息をつく――――そんなお前も全然変わってないけどな、あの日も似たような反応だったろうに。
「とりあえず昔話はいつでもできるとして今はこの新しいアバターの能力と技能、それと名称をつけてくれ」
「おまかせ……じゃダメか?」
ヨシには全く似合わない媚びた仕草でお願いしてきた……笑顔が怖いんだけど。
「勝手に決めていいのか? 決めていいんなら能力や技能はこっちでやるけどせめて名称だけでも決めてくれ」
能力や技能は一応付き合いの長いヨシの好みなんかは把握しているから決められないことはないが、名前に関してはちょっと責任取れないしな。
「そうだな……『斬亜』でいいよ」
斬亜……実名からもじったか、別にいいけどな。
「なら後はこっちで何とかする、出来るまでもうしばらく待っててくれ」
そう言って俺は作業モードに切り替えた、こうして意識してみるとまだ傍にいるはずのヨシの気配なんか全然気にならないな……少し改めたほうがいいかな。
下地がレアアバターなので能力・技能、共に空きスロットは五つある。
ヨシのプレイスタイルはスピードを生かした接近戦だから、神速は必須で……相手の動きを見切る心眼に、魔法とかを切り裂く魔力切断、相手の接触系物理攻撃をガードして切り裂く斬撃防御、硬い鱗や鎧などを貫く装甲貫通でいいかな、似たような部分は重複というか相乗効果とかあったりする、例えば魔力切断と斬撃防御、これを揃えれば魔法ですら防御で切り裂けたりする。
次に技能か、居合い切り、斬鉄斬、鎌衣太刀、回転斬り、操剣術かな。
ああ、後武器も決めてなかったけど、これはレオグリードの愛剣・獅子王牙剣でいいかな、素材が金属じゃないからちょっと合わないかもしれないけど使い慣れた武器の方がいいだろうし。
「後は、名称を『斬亜』読み仮名にKIRIAっと……よし、これで完成だ!」
俺は両手を組んで後ろに反るように伸び凝り固まった体を解そうとしたら――――むにゅん、という感じの柔らかい感触が手のひらに伝わって来たので振り返るとヨシが居た、もちろん俺の手はヨシの胸を下から持ち上げていたさ当然だろう。
「――――覚悟は出来ているか? ……と言いたいけど今回はアバターの駄賃ということで許してやるが次はないからな?」
俺はそのまま出来立てほやほやのアバターカードをヨシに渡して逃げるように作業室から飛び出した、こういう場合は少なからず顔を赤らめるものかとも思っていたが……あんな冷え切った笑顔を見ることになるとは……これが次からは作業中でも周りに注意を払おうと心に決めた瞬間だった。
次の更新は未定、でもエタらないつもりで居る。
諦めなければエタりはしないと偉い人は言っていたし。