5話 姉と弟と妹
ヨシのホームには今俺を含めた六人の人間がいる。
『アバターメーカー』島崎正作、『ミィ』九嶋美伊奈、『ヨシ』吉岡霧亜、そして――――ネットアイドル『サクラ』島崎作良、俺の姉でそれともう二人、『ツインズスターレイン』の『スター』島崎星(しまさ
きせい)と、『レイン』島崎雨だ、全員リアルアバターで居る。
「それで正作がメーカーって本当なの?」
姉さんは少しご立腹のようだ、黙ってた事についてか、広場から逃げ出したことについてかはわからないが。
「ああ、兄貴がメーカーだぜ、俺たちのアバターも兄貴に作ってもらったんだから」
「兄さんには黙っておくように言われてたけど、まさか姉さんもこのゲームやってるなんて知らなかったし」
一応弁護? してくれるようだ、まあ広場から逃げ出した事しか後ろめたいことはないけど、姉さんは何に怒ってるんだろう?
「あーあー、三人で内緒とか! お姉ちゃんも混ぜてくれたって良かったのになー」
「いや、姉さんがやってたとは知らなかったし……」
そう言ったが姉さんは肩をすくませやれやれと首を振り。
「そういう事じゃないの、三人でやってるって事は私にも薦めてみたりしても良かったんじゃない? って事。それで正作がメーカーだって知ることができればさ、アバター作成依頼の代金もタダで良かったんじゃないかなー損したなーって事よ」
相変わらずブレないっていうかケチだなー姉さん。
そういえば依頼してきた時も負けてくれって言って来たな、そんな事言うのは姉さんだけだったし、ケチさで気づくべきだったのかもしれない。
それにしてもミィとヨシが一言も喋らない、接点というものが一切ないから仕方ないかもしれないが、これから苦楽を共にするっていうのにこれじゃマズイだろう。
「あー……そういえば紹介がまだだったかな? こちら俺の姉さんと弟と妹。で、こちら俺の高校時代のクラスメイトの九嶋と吉岡ね。」
簡易的な説明をしてみた……後は自発的にやってくれよ。
「えっと私が正作の姉の作良、一応ネットアイドルの『サクラ』っていうのやってまーす」
「え、姉貴『サクラ』なの? うわ歳考えッ痛ッ」
「今のは星が悪い、私は妹の雨です、『ツインズスターレイン』の『レイン』でそこそこ知名度があると思います。こっちのバカは双子の弟の星、『スター』の方ですね」
姉がいい笑顔で自己紹介をしたら弟が余計な事を言って殴られ、頭を押さえている間に妹が弟の分も紹介しておくという……なんか二人共引いてるんだけど、姉さんの怒った時の笑顔って怖いからな。
「えっと島崎君の高校の時のクラスメイトの九嶋美伊奈です、一応元『アイアンレギオン』のギルマスでしたが、この間の『選別』で人数減っちゃったんで今はソロです」
「同じくクラスメイトだった吉岡霧亜だ、私も『ネイチャーファング』のギルマスだったが辞めた、理由は美伊奈と同じ」
二人共あっさりと自己紹介を終える。が、愚弟は余計な事を言う天才だな。
「『ネイチャーファング』のギルマスって男じゃなかったッ痛ッ」
容赦ない二つの拳が星を襲う、姉と妹だ。
「別にいい、私は昔からがさつだし、女キャラって柄じゃなかっただけだ」
「その割にこの部屋の少女趣ッ痛ッごめんってばもう黙るから殴ならないで!」
姉の手が速い、だけど俺は一度も殴られた事はないんだけどな。
「そのぐらいで勘弁してやってくれないか? 私もそこまでやるほどとは思っていないし」
ヨシが慌てて姉さんを止めた。
「姐さんすいません助かりました、俺もう言いませんからごめんなさい」
弟は完璧な土下座を披露した……姉と妹は蔑むような目で見ている、ミィとヨシも若干引いてるけど。
「星、それ以上はやめとけ、みんなドン引きしてるぞ」
弟は顔を上げ、すぐさま立ち上がった。
「えーとそれで、今回集まってもらったのは、俺がギルド作ろうと思うんだけど入ってくれないか? ってお誘い、こっちのミィとヨシも入ってくれるっていうし後三人いれば作れるからちょうどいいかなって」
「正作、それって単純に数合わせってことよね? お姉ちゃん悲しいな、そんなことのために呼ばれただなんて……」
涙目……多分演技だがこっちを見つめてくる。多分何か特典がないと嫌だって事なんだろう。
「えーと、加入特典は俺が新しく手に入れた力で新しいアバターを三点まで作ります。」
おおー!! などとわざとらしくみんながどよめく。最初からそれ期待してたんだろうに。
それからみんな自分がどんなアバターが欲しいかを言いたい放題言った為、ギルドの話は一時中断された。