『歩道橋』
『DeadーEnd』。今ひそかに人気急上昇しているアングラサイト――何でも、超能力者や占い師、はては心理学者まで集めて、『死亡事故』の起きる場所を予告、さらに念写?による現場の死体写真までメルマガで送られてくるサイトらしい。
“YNK”という女性が管理人らしい位しか分からない。薄気味の悪い反面、その謎めいたところがこのサイトの魅力らしい。
1日のアクセス数が数千にものぼるこのサイトに興味を持った私も、見てみることにした。
一度見てみる位なら構わないだろう…そう思い、サイトを探した。
…あるサイト内のひとつのページにしか無い入口。だがそのページは、あまり見たくない画像ファイルだった…
生きたまま解剖された女性の画像。
顔は俯いていて判らないが、全裸にされて吊されている。
画像の下にある、小さなクリックマーク。ついに私はその領域に立ち入ってしまったのだ。登録は簡単なもので、登録料もかからなかった。住んでいるエリアとメールアドレスを登録して、後はマガジンを待つだけだった。
4日程して、ついにメールマガジンがきた。内容は
『〇〇市の△二丁目交差点の歩道橋で今日午後7時』という文で、画像ファイルが添付されていた。
「これか…」
そこには、歩道橋の上から下を見下ろす、首無しの人間がほぼ真下からのアングルで写されていた。
「何だ、これは…?」
これが『念写』による『現場写真』なのだろうか…
「今は3時か…」
5時過ぎには仕事が終わるし、間に合いそうだ。私は急いで今日の仕事を済ませて、歩道橋に向かった。
今は午後6時50分…後少しでここは『死亡事故』の現場になる。何故か、私の胸は高鳴っていた。誰も知り得ない情報を持つ、それがこんなにも刺激的だとは知らなかった。
「もし、本当に事故が起きたら…」
未だに歩道橋には人の姿は無い。やはり、予知などできる訳はない。ここで私はあの首無し死体は何を見ていたのかが気になった。
「行ってみるか…」
私は歩道橋を登り始めた。数分もしない内に、私は写真の場所に立ち、下を見ていた。
行き交う車、歩道のまばらな人影。街路樹も、特に目を引くような気配はない。普通の日常的な風景だ…
「特に何も無い、か…」
―その時、突風が吹いた―歩道橋の上にある電線が、突風に煽られて切れた。鋼線がターザンロープのようにしなり、男の首を切り落とした――
男の首はほぼ真下に落ち、その顔は真上にある自分の身体を見つめていた。
「予知通り、か…」
やがて、男の顔を真上から滝のように落ちる血が打ち始めた――