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65 明々後日からの訪問者 その1

お待たせしました、1ヵ月(+1日)ぶりの更新となります。


導入にしては約10,000文字と長めの話となってますが、会話がほとんどなのであまり話は進みません。


いや、それにしても、話し言葉って難しい……。

ガチガチにすると説明文になるし、崩しすぎると意味不明になるし……。

毎回、かなり苦労しています。


2012/11/9 一部の表記ミスを修正 ご指摘感謝。

「ねぇ、注文どうする?」

「んー、メニューがよく分かんないから、スフィルのオススメで」

「あー……、実はアタシもここ来るの初めてだから、よく分かんなかったり。

 でも、オススメはサンドイッチらしいよ。噂で聞いただけだけどさ」

「へぇ、じゃそれ行ってみましょ」


 次の日のお昼過ぎ、私は昨日スフィルと言っていた通り、2人一緒に昼食を取りに来ていた。


 ここは市場から少し離れた位置にある、ちょっとした広場のような場所──なのだが、今は丸テーブルがいくつか並び、まるでオープンカフェのような場所になっている。


 聞いたところによると、晴れた日の昼間のみ、こうやって営業しているらしい。


 私たちは今、そこにいくつか置かれている丸テーブルのうちの1つに陣取り、注文するものを決めているところだ。


 そのままの流れでサンドイッチを注文し、待つことしばし。やがて少し変わったサンドイッチが私達の前に届けられた。


 この辺りで食べるサンドイッチは、中の具に肉の塊を挟んだホットドッグのような感じのお腹にたまるものが多いのだが、ここのサンドイッチはなにやら赤っぽい色をしたソースだけが挟まれていおり、一口かじると甘酸っぱい味わいがじんわりと広がっていく。


「あ、美味しい」

「へー、イケるわね、これ」


 そんな感想を漏らしつつ、スフィルと2人で美味しくサンドイッチを頂いてから、いい香りのする甘い飲み物(果実のしぼり汁らしい)に口をつけていると、スフィルがさて、と話を切り出した。


「昨日言ってた話なんだけど……」

「うん。なんか相談だよね? また仕事手伝って欲しいって話とか?」

「違う違う。いや、それもあるかもしんないけど、今はそうじゃなくて」

「うん?」

「えーっと、アタシの友達のことなんだけどさ……」

「あ、あの! すみません。えっと、スフィルさんにハルナさん、ですよね?」

「え?」


 唐突に横から掛けられた聴き覚えのない声に、私とスフィルが揃って振り向くと、そこには灰色のローブを着た、パッと見20歳前後と思われる女性が1人立っていた。


 彼女が着ているローブにつけられた、杖の絵が描かれたワッペンがなんだか特徴的だ。


 私達に見つめられてか、幾分か緊張した様子でその女性が続けて声を発した。


「えぇっと、初めまして。わたし、魔術師ギルドに所属しています、セルティナ・メーテリルと申します。

 その、あなた達が3日後に参加される予定の、遺跡調査の件でお話しさせて頂きたいことがあるのですが……」


 そのままスフィルと2人で顔を見合わせる。一体なんの話だ。


「えーっと、ちょっと待ってくれる? セルティナさん……だっけ。アタシ達の名前知ってるみたいだけど、どこかで会いましたっけ?」


 スフィルの問い掛けに、改めて声を掛けてきた女性に目をやってみる。


 茶色い髪に茶色の目、後ろで三つ編みになった長めの髪、それからどことなく受ける少々気弱そうな印象を含めて記憶を探るが、私には全然覚えがない。


 スフィルの知り合いか?


 そう思っていると、彼女がはどこか不安そうな雰囲気を漂わせながらスフィルの問い掛けに答えた。


「いえ……、お会いするのは今日が初めてのはず、ですね」

「? よく分からないわね。それに遺跡調査っていうのは……」

「はい。あなた方が受けられた、遺跡調査隊・助手募集の依頼の事です。それについて少々お話させていただきたいんですが……」

「え? いや、ちょっと待ってください。確かにそんな依頼があるのは知ってます、冒険者ギルドの方で貼り出されてるのを見ましたから。

 でもアタシはまだそれを受けてませんよ? 誰かと勘違いしてませんか?」

「え……、そうなんですか? そちらの、ハルナさんも?」

「いや、私はそもそも冒険者ギルドに所属してませんから。あと、そんな依頼があるって話も初めて聞きましたし」

「そう、なんですか……?」


 なにやらひどく驚いた様子だ。もしかして私ってそう見えるとか? まさかね。


「ホント、別の誰かと勘違いしてませんか?」

「いえ、勘違いではないです。確かにあなた達2人に間違いありません」

「はぁ……?」


 なんつーか、言ってることが色々とかみ合ってない気がする。

スフィルも訳が分からないって顔してるし。


「でしたら、その、先程の依頼の話、あなた方お2人に受けてもらえませんでしょうか?

 なんでしたら、わたしの方からの依頼という事で、報酬を上乗せさせていただきますので……」

「え、ちょ、ちょっと待って!? なんでいきなりそうなるのよ。アタシ達の事は知ってるみたいだけど、初対面なんでしょう?

 それに、こういっちゃなんだけど、アタシはただのEランクよ? 名指ししてまで依頼するような相手じゃないと思うんだけど?」

「そんなことはありません。わたしはどうしてもあなた達に来ていただきたいんです」


 なんだか焦ったように早口で話すセルティナさんと、それに充てられアタフタと対応するスフィル。そしてそれを、なんだか妙なことになってきたなーと、他人事のように眺める私。


 ……なんなんだこの状況。


 とりあえず、2人の声が少々大きく、周りの注目を集めているようなので、それを注意することにする。


「いや、ちょっと待って2人とも。落ち着いて周りを見て、ね?」

「あっ……」

「あぅ……」


 どうやら今の状況に気が付いたらしい。2人は少々顔を赤くして黙り込んでしまった。


「えっと、とりあえずここ座って?

 それから、セルティナさん、でしたっけ? ゆっくりでいいので事情を説明してくれますか?」

「あ、はい……。

 すみません、失礼します」


 恥ずかしそうにうつむきながらも、傍にある空いている席に座ってくれた。


 私とスフィル、それからセルティナさんの3人でテーブルを囲うと、セルティナさんが適当に飲み物を注文し、それが届くとゆっくりと話し始めた。


「えっと、まずは改めて自己紹介をさせていただきます。

 わたしはセルティナ・メーテリルといいまして、今は魔術師にギルド所属しています。

 実はあなた方お2人にお願いがあるのですが……」

「お願い、ってさっき言ってた、遺跡調査の助手の事?」


 尋ねるスフィルにうなづくセルティナさん。


「はい、その件なんですが……。えっと、まず最初にわたしの目的をお話ししておきます。

 わたしの目的は、3日後に行われる遺跡の調査中に起こる事故を防ぐことです」

「事故?」

「はい、事故です。

 具体的には、遺跡に備え付けられた防犯装置が作動してしまい、大勢の調査隊の人達や同行者の方々が、亡くなったり大怪我を負ったりしてしまいます。

 わたしはこの事故を防ぎたいと思ってます。ですが、わたし1人じゃ手が足りないかもしれません。

 ですから、あなた達お2人にそれを手伝っていただきたいんです」

「…………」

「…………」


 いきなりの話に私もスフィルもなにも言えなかった。

少しの間、沈黙が場を支配していたが、やがてスフィルが口を開いた。


「えっと……、なんかその事故? が起こるのが分かってるような言い方してるけど、なにか根拠でも?」

「……根拠は、あります。

 でもそれをお話しても、信じていただけるかどうか……」

「あー……、それなら大丈夫。これでも一応色々と経験してるから、なにを言われても話はちゃんと最後まで聞けると思う。

 だから、話してもらえるかな」


 そう言いながらチラっと横目で私を見るスフィル。

コラまて、その目はどーゆー意味だ。


「……分かりました。お話しさせていただきます」


 スフィルを問い詰めようとしたところでセルティナさんが話し出したので、仕方なくそれを中止し話を聞く体制に戻る。


「わたしは実際に、その事故を体験しました。閉じられた扉、放たれる火の玉、逃げ惑う調査隊の人々、襲ってくる警備用ゴーレムの姿……、それぞれはっきりと覚えています。

 それに巻き込まれて怪我をしたわたしは、あなた達2人に助けられて逃げ出そうとしていたんですが……、覚えているのはここまでです。気付けばわたしは、魔術師ギルドにあるわたしの席に座ってたんです。

 最初は訳が分からずにぼうっとしてたんですが、聞こえてきた遺跡調査の予定の話に驚きました。行われたはずの調査の予定の話を今していることと、それが一度聞いたことのある話だったので……。

 それから色々と話を聞いた結果、どうやらわたしは事故が起こる前に戻ってきてしまったのではないかという事と、このままだと再び事故が起こってしまう事に思い当たり、それをどうにかしたくて、お2人にお願いしに来たんです。

 お2人とは、事故があった当日に知り合いまして、短い間ですが仲良くしてましたから……」


 その時に、今日ここで美味しいサンドイッチを食べたという話を聞いたんです、と付け加えて、セルティナさんは話を締めくくった。


「…………」

「…………」


 再び黙って顔を見合わせる私とスフィル。


 信じがたいというかなんというか……。要約すると、この人は事故に遭って過去に遡ったってことだよね?


「え……っと、スフィル、どう思う?」

「いや、アタシにもなんとも……。

 んー、そうねー……。それなら、アタシ達の事でなにか覚えてる事ってない?」

「お2人の事、ですか?」

「そう。アタシ達とは知り合いだったんでしょ? それなら、なにか話を聞いたとか、覚えてる事があるんじゃないかなーって」

「えっと……そうですね。

 特にこれといって話を聞いたのはありませんが、印象に残っているのは、そちらのハルナさんがなにか特別な道具を使われるといった事でしょうか」

「え、私?」

「はい。防犯装置や警備用ゴーレムから放たれる火の玉を素手で叩き落としたり、なにか棒のような物を使って真っ二つに切り裂いたりしてたんです。

 もっとも、あの時は逃げるのに必死でしたので、もしかしたら見間違いかもしれませんが……」


 えっと……。なんかその話で一気に信憑性が増した気がする。

火の玉を真っ二つにした棒のような物って、どー考えても私の大鎌だよね。

素手で叩き落としたってのは、やった事ないけど、魔法相手ならなんか出来そうな気がするし……。


 ヤバイ、否定する要素が見当たらない。この話って本当かも?


「……ハルナ、どう思う?」

「……信じらんないけど、信じるしかないんじゃないかな。アレの事も知ってるみたいだし……」


 アレとはもちろん大鎌の事だ。こんなとこで言うつもりはないので少しぼかした言い方をするが、スフィルにはこれで通じるだろう。


「そうよね……。アタシも正直、信じらんないけど……分かった、信じるわ、その話」

「……本当ですか! ありがとうございます、助かります」


 今までとは一転して、パッとする笑みを浮かべてお礼を言ってくるセルティナさん。

気のせいか、雰囲気までもが明るくなってるような気がする。


「あー……、悪いんだけど、お礼を言うにはまだ早いわよ?

 話は信じることにしたけど、アタシはまだ請けるとは言ってないんだし」

「ちょっと……スフィル?」


 ここでそれは酷いんじゃない? と意思を込めてスフィルを睨んでみるが、まあいいからといった風に手を振って、再びセルティナさんに問い掛ける。


「さすがにアタシも、大きな事故が起こると分かっててその場所に行くほど命知らずじゃないのよね。危ないって教えてくれたあなたには感謝するけど、さすがになんの保障もないまま危険な場所に飛び込むってワケにはいかないの。

 これは他の誰に聞いても、多分同じだと思うのよ」

「……そう、ですね。確かに」


 スフィルの言いたいことが分かったのか、再び沈み込んだ声を出すセルティナさん。


 そっか、確かに事故が起こるって分かってて、わざわざそこに近づく人はいないよね。

誰だって怪我したくはないだろうし……。


 ついスフィルの事睨んじゃったけど、安全を考えるならこれは断るのが正解か? でも、このまま見捨てるのもなぁ……。


 などと、内心もやもやとしながらも、スフィルは断るんだろうなーと思っていただけに、次のスフィルの言葉には驚いた。


「だから、その事故の事をもっと詳しく教えてくれる? あなた1人だけが考えるんじゃなくて、アタシ達3人で考えればきっといい計画が浮かぶと思うんだけど」

「協力していただけるんですか!? ありがとうございます……」

「ちゃんとした計画が出来たらよ? 無策に突っ込むのはゴメンだからね」

「はい!」

「じゃ、場所を変えましょうか。ここで色々と話すのもなんだしね。続きはアタシ達の泊まってる宿で、ってことで。

 あ……、でもその前に、注文したものを片付けないとダメか……」

「あ、わたしの事でしたら気になさらなくても……」


 セルティナさんの前には、話を始める前に注文した物がそのまま残っていた。


 随分と熱心に話してたからなぁ……。


「そのぐらい気にしないわよ。

 いいから飲んじゃって。落ち着いて考えをまとめるためと思って、ね」

「そうですね……。分かりました」


 セルティナさんが、ふぅ、と一息吐いてから飲み物に手を付け始める。

そしてそれを眺めながら、隣にいるスフィルにこっそりとさっきの事を尋ねてみた。


「ところでスフィル、さっきの話、請けちゃってよかったの? あの話の流れなら、てっきり断るのかと思ってたんだけど……」

「あー……、うん。

 えっとさ、実は元々、この遺跡調査の話、ハルナと一緒に請けない? って相談するつもりだったんだよね。

 遺跡に入る機会なんてそうそうあるもんじゃないし、ちょっと面白そうかなーって。

 だから、元々行くつもりだったってのがあるのかな。それから、さっきみたいな言い方したのは、あの人、なんか色々と焦ってたみたいだったから。

 他の人を巻き込んで危ないところに飛び込もうとしてるから、なるべく慎重にってことを言いたかったんだけど……。

 あとはまあ、防げる事故なら防ぎたいってとこかな?」

「ふーん……。

 って、調査の仕事は元々請けるつもりだったんだ?」

「そ。アタシの話が終わった後にでも、ハルナに聞いてみるつもりだったんだけど……」

「そうだったんだ。……って、そう言えばなんかうやむやになっちゃったけど、スフィルの話はどうするの? ほら、なんか相談があるって言ってたやつ」

「んー、それはまたの機会に、かな。今はこっちの話の方が大事だし、相談ってもアタシの友達の話だから、急ぐような話じゃないし」

「そっか、了解。

 じゃ続きは、この話が落ち着いてから?」

「多分そうなると思うわ。まあ、その時になったら、またお願い」

「ほいほい、またその時にね」






 宿へと向けて移動する道すがら、私はさっきから気になっていた、遺跡というモノについて2人に聞いてみることにした。


 いや、遺跡調査っていうと、古い建物跡かなんかでそこに残されたものを見たり調べたりするような物だと思ってたんだけど、そんな場所に警備用ゴーレム(ロボットみたいなもんか?)や防犯装置が出てくるって一体なんなんだと思ったのが始まりだ。


 その結果、ここでいう遺跡と私の思ってる遺跡とでは随分と差があることが分かった。


 まず、遺跡とは私のよく知る通り、過去の人々が活動していた場を指す言葉ではあるようなのだが、その過去とは1000年以上昔であるにもかかわらず、今よりずっと技術が進んでいた時代だったらしい。


 その証拠に、そういった遺跡からは今の技術ではとても再現が出来ない物が発掘される上、それらは未だに使用可能だというから恐ろしい。


 1000年経っても大丈夫って、なにで出来てんのよ……。


 まあ、それはさておき。そういった事情がある遺跡だからこそ、防犯装置とかが存在し、未だにそれが稼働している遺跡が存在しても、別におかしなことではないようだ。


 そして、それらの遺跡から発掘される物には総じて貴重品が多く、遺跡そのものにも研究する価値があるという事で、調査隊が繰り出されることもままある事なんだとか。


 今回は、この町の近くで見つかった遺跡に魔術師ギルドが調査隊を派遣することになったが人手が足りないため、冒険者ギルドから何人か助手(といっても雑用係のような物らしいが……)を募ることになったと、セルティナさんが教えてくれた。


 ちなみに、そんな進んだ技術を持った文明がなぜ衰退したかはまだ分かってないらしい。

空から星が降ってきただの、大地震があっただの、諸説色々とあるそうなのだが、どの説もあいまいで決定的な証拠があるわけではないらしい。


 そんな感じで遺跡について色々と話を聞いていると宿に到着したので、そのまま私達の泊まっている部屋まで案内し、そこで話の続きをすることになった。


「適当に荷物を置いて、座ってくれていいから」

「はい。……失礼します」


 部屋に到着後、各々が持っていた手荷物を置くと、椅子に腰を落ち着ける。

3人の視線が交わり微妙な緊張が生まれる中、最初に口を開いたのはスフィルだった。


「それじゃ、さっきの話の続きだけど……。

 セルティナさんの目的って、事故が起きるのを防ぐことで、自分が事故に遭わないようにするってわけじゃないのよね?」

「はい。このままだと恐らく、わたしの友達や同僚も事故に巻き込まれて、大怪我をしてしまいますので……」

「そっか。調査に参加しないってのが一番簡単なんだけどなぁ……」

「スフィル、それじゃ意味ないって」

「分かってるわよ。

 ……それじゃ、調査を延期する、もしくは取り止めるってのは?」

「それも……、難しいですね。

 わたしはただの下っ端ですから、よっぽどの理由がない限りは中止を訴えることも出来ませんし、延期するのも、ただ事故が起こるのを先延ばしにするだけですから……」

「うーん、なんにしても、理由を説明出来ないかぁ……」


 この手の事に関しては、元魔術師ギルドの偉い人らしいマレイトさんにお願いするって手もあるだろうけど、これも理由が説明出来ないしなぁ。精々事故が起きないように忠告してもらうのが関の山か?


「とりあえず、調査自体をどうこうするのは無理そうね……。

 じゃあ、事故が起こった原因って分かる?」

「はい、それはよく覚えてます。

 調査を行う場所のひとつに、すごく大きくて広い部屋があるんですけど、その部屋の奥にすごく大きな扉があるんです。高さだけでも人を3~4人縦に並べたぐらいの大きさでしょうか。本当に大きな扉なんです。

 それで、その扉は閉まってたんですけど、その奥を調べるために扉を無理にこじ開けたところで防犯装置が動き出したんです」

「え、ちょっと待って。

 いかにもその、なにかありますって扉を調べもしないで、いきなり開けたの?」

「はい。実は、今度行われる調査は2回目、2次調査になるんですけど、その前の1次調査で遺跡自体の機能は既に死んでいると報告されてたんです。

 それでもう、調査なんて面倒なことはせず、さっさと開けてしまおうって話になりまして……」

「それでつまりその、遺跡の機能がまだ生きていたと」

「そうなんです。

 扉をこじ開けた瞬間、ビーッビーッっていう警報が響き渡りまして、警備用ゴーレムがうじゃうじゃと……。

 そこからは、さっきお話しした通りです」

「はー、なるほど……。

 てことは、その大きな扉ってのを開けさせないようにすればいいのかな」


 スフィルのその問いに、セルティナさんは首を横に振って答えた。


「いえ、調査ですから開けないってのは無理だと思います。

 ですから、まずはそれとなく、この遺跡がまだ生きている事を調査隊の指揮者に伝えようかと思っています」

「なるほどね……。

 いい考えだと思うけど、大丈夫? 信用してもらえるの?」

「それはわたしがやるつもりですので、多分大丈夫かと……。

 それに最悪、証拠をでっち上げてでも信じさせますので」


 こらこら、証拠をでっち上げたらマズイでしょーが。

いや、決意の表れとしてそのぐらいやるって意味ならいいんだけどさ。


 あ、でも、実際遺跡はまだ生きてるんだし問題ないのかな? あれ?


 ……やめよ、ワケ分かんなくなってきた。


「まあ、無難なとこだし、とりあえずその方向で考えていきましょうか」


 スフィルは特に気にしてないようなので、私も気にしないようにすることにする。

そして、その後の話し合いで決めたことは以下の通りとなった。


 まず1つ目、私とスフィルの2人は助手として遺跡調査に参加する。


 まあ、これは当たり前だ。まずは参加しないと止められるものも止められない。


 そして遺跡内に入ってからは、調査員1人+助手といった形でいくつかのグループを作り、分担して調査を行うらしいので、その際には、セルティナさんが私達2人を指名して、一緒に動くことにするそうだ。


 2つ目、動力の調査、及び大扉の見張り。


 調査を始めて少ししてから、セルティナさんが調査隊の指揮者に遺跡が生きていることを伝えに行く事になった。事前にそれを伝えておくのが一番なのだろうが、信じてもらえる要素がないに等しいので、まず動力を捜し、それを証拠に遺跡が生きていることを伝える予定となっている。

また、もしある程度探しても動力が見つからない場合はでっち上げコースで行くそうだ。


 それと同時に並行して、勝手に大扉に触れる人がいないかどうかも見張る予定になっている。もし触れそうな人がいた場合には、都度セルティナさんが対応することになった。


 3つ目、出入り口の固定。


 防犯装置が作動した場合、出入り口が封鎖されるらしいので、もしもの場合に備えて、出入り口の扉にくさびを打つなりして、動かないように固定してしまう事にした。

これで、最悪の場合でも逃げることぐらいは出来るだろう。


 また、最悪の場合には私とスフィル(主にスフィル)が警備用ゴーレム相手にしながら避難時間を稼ぐことになっている。


 冒険者ギルドに依頼をしたのだから、ある程度戦える人が来そうなものだが、今回の依頼は護衛ではなく、あくまで助手の募集。よって、荒事に向いたような人は全然来なかったらしい。


 私も残るのは主に魔法対策である。防犯装置が作動した場合、警備用ゴーレムや備え付けの砲台から火の玉が発射されるらしいので(『火炎弾』の魔法か?)、私はそっちに対応することになる。


 ゴーレム相手に立ち回る自信なんてこれっぽっちもないが、スフィルと共に行動しながら、こっちに向かって飛んでくる魔法を叩き落とすぐらいなら、まあなんとかなるだろう……と思う。


 あと念のため、昨日やった『防護』の魔法をマレイトさんから借りれないか、あとで交渉してみるつもりだ。


 話に聞いた範囲ではあるが、あの魔法は今までのそれと比べてとてつもなく強力な防御効果があるようなので、万一の場合に備えて持っておきたい。


 まあ、上手く借りれるかどうかはマレイトさんとの話次第なので、これはまたあとで考えることにする。


「大体こんなとこかしらね……」


 その他2~3やるべき事を決め、スフィルがそう言って話し合いに区切りをつけた頃には、日も傾きそろそろ暗くなってくるだろうという時間帯だった。


 まあ、計画の方もかなりまとまったと思うし、あとは当日に向けて色々と準備をしていくだけだろう。


「そうですね。あとは、なにかありましたらお互いすぐに連絡をする、ぐらいでしょうか。

わたしの方には、魔術師ギルドの方に連絡を入れていただければ、すぐに伝わりますので」

「アタシ達はこの宿かな。居ない場合は、言伝を預けてもらえれば多分大丈夫のはず」

「分かりました」


 連絡先の交換が終わると、早速準備を始めるとのことで、セルティナさんは帰って行った。


「ふぅ、つっかれたー……」


 そういってベッドに突っ伏すスフィル。

そしてその体勢のまま、ぼやくような感じで話し掛けてきた。


「なんか、色々と妙なことになったわねー」

「そだねー。でもまあ、やることやったら、あとはなるようになるんじゃない?」

「ん、そうね。やること決めたんだし、これ以上アレコレ考えてもしょうがないか。

 ……これで全部嘘でしたって言われたら怒るとこだけど」

「それならそれでいいんじゃない? 事故もなにもなく、無事に終わるんだしさ」

「……それもそーね」


 無事に終わるといいなー。


 赤く染まりつつある空を窓から見上げながら、そんなことを思った。


タイトルで気付かれた方もおられると思いますが、今回の話は逆行モノです。

主人公以外が逆行してもいいじゃない! って思いつきが元で生まれました。


え、スフィルの友達の話? このエピソードでは出てきませんが、それもちゃんと考えてますよー。

それはこのエピソードが終わってから出す予定です。

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