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62 モコちゃん

あ、危うく2ヶ月マークが付くところでした……。


 色々とスッキリして落ち着いた後、部屋に戻った私は自分の身に起こった事をマレイトさんに話していた。真っ先に話題に上ったのは、やはり例の毛玉ちゃんの事だ。


「変な話し方をする、白い毛玉のぅ……」

「マレイトさんにも分かりませんか?」

「さすがにそれだけじゃとな。

 魔力を食べる事からして、魔法的な生き物のようではあるようじゃが……」


 やっぱり白いもふもふに目が2つとか、手触りがいいとかじゃ分からないか。


 今更だけどその辺のこと、本人(?)に聞いとけばよかったかもしんない。

でもあの時は、色々と余裕なかったからなぁ……。


「そうですか……。

 ところで、この鏡ってなんなんですか?」


 そう言いながら、壁に立てかけられた鏡に目を向ける。それは相変らず部屋の風景を写してはいるが、そこにあるべき人の姿は見当たらない。


「あぁ、この鏡はわしの知人が預けていった物でな。ちょっとした仕事を依頼をされておったんじゃよ」

「依頼、ですか」

「うむ。この鏡は彼の家に古くからある魔法の道具でな、少しでも魔力が篭った物なら、なんでも取り込んでしまうという性質があるらしいんじゃ。

 ところがつい先日、形見である大切な腕輪を誤って取り込まれてしまったらしくての、どうにかして取り出せんかと、わしの所に持ってきたんじゃ」

「誤って取り込まれたって……、こんな人すら取り込むような危ない物をなんで普通に置いてるんですか」

「いや、人が触れても大丈夫と聞いておったし、実際わしが触った時も、なにも起こらんかったのじゃが……。

 あやつも粗大ゴミ専用のゴミ箱として活用しておったぐらいじゃし」

「いや、ゴミ箱て……」


 そりゃこの中に入れちゃえば、きれいさっぱり跡形もなく消せるんだろうけどさ。

魔法の道具の使い方としてどーなんだそれは。


「なにはともあれ、無事に出てこれてよかったわい。

 あの中で動いてるのを見た時は、心底驚いたんじゃぞ」

「あはは……、ご心配をおかけしました」

「ま、とりあえず、今日の実験はここまでじゃな。

 実験を続けようにも部屋がこの有様じゃとな……さすがにこれを片付けるには今日いっぱい掛かるじゃろうて、明日また来てくれるかの?」

「それは構いませんけど……。

 片付け、手伝いますよ?」


 これ、半分は私がやったよーなもんだし、鏡の件で余計な時間取らせちゃったから、微妙に責任感じるんだよね。


「いや、気持ちはありがたいがわし一人で十分じゃ。

 それに、さすがにさっきみたいな事はもうないじゃろうが、そのまま触るとちとまずい物もいくつか置いてあるでな」

「そうですか……、分かりました」


 そういう事情ならしょうがないと諦める。

1つ1つマレイトさんに聞きながら片付ける方法もあるだろうが、それならば一人でやったほうが効率もいいだろう。


 帰り支度をし、空き瓶が詰まった箱を発掘すると(崩れた資料に埋もれてた)マレイトさんに別れの挨拶をする。

そして部屋から出ようと扉に手を掛けた時、頭の中で声が響いた。


(主、待つ)

「えっ?」

「む、どうしたんじゃ?」

「いえ、その……、モコちゃんの声がしたもので」

「モコちゃん?」

「あ、えーと、毛玉毛玉と呼ぶのもなんなので、思いつきで命名してみたんですけど……」

「はあ……。それで、そのモコちゃんとやらの声が聞こえたと?」

「ええ。私を呼び止める声が聞こえたんですけど……モコちゃん、どこにいるの?」


 部屋内を見回してみるが、あの白くてふわふわした姿はどこにも見当たらない。

なんとなく鏡のほうにも目を向けてみるが、そこには相変らず風景のみを映す鏡があるのみだ。


(我、此処に)


 キョロキョロと辺りを見回していると、再び頭の中に声が響く。

それと同時に、スゥッと染み出すかのように、真っ白な毛玉が机の上に現れた。


「そんなとこに……」


 もー驚かないぞ。鏡の中なんてモノを体験した上に、そこから引っ張り出してくれたこの子なら、どんな現れ方しても不思議じゃないんだし。


「あ、マレイトさん、この子です、この子」

「う、うむ……」


 いきなり現れた所為か、呆気に取られてそれを見つめていたマレイトさんだったが、やがて興味が湧いてきたのかモコちゃんの観察をつぶさに始める。


「それでモコちゃん、私になにか用?」

(我、主、共に在る)

「もうちょっと分かりやすく話してくれると嬉しいんだけど……。えーっとつまり、私と一緒に来るって事?」

(是)

「そのぐらいなら、好きにすればいいと思うけど……」

「あー……、嬢ちゃんや、ちょっとええかの」

「? なんですか?」

「様子を見るに、嬢ちゃんがこのモコちゃん……じゃったか? と会話をしてるように思えるんじゃが……」

「ええ、そうですけど」

「いや、わしには嬢ちゃんが一方的に言葉を掛けてるようにしか見えんでな、本当に話しをしておるのかと思っての」

「あれ、マレイトさんにはこの声が聞こえないんですか?」

「悪いがさっぱりじゃ。まだ耳までは耄碌しとらんはずじゃが……。

 どんな声なんじゃ?」

「んー、声っていいますか、なんていうかこう、頭の中に直に響くような感じで単語をぶつ切りに伝えてくるんですけど……」

「頭の中に直にじゃと? それはまさか念話か?」

「念話?」

「うむ。念話というのは簡単に言えば、言葉を介さずに意思を伝える方法じゃな。

 さっきの話から推測するに、そのモコちゃんが念話を使ったと思われるんじゃが……」


 要するにテレパシーって事か。

なるほど、言われてみれば、モコちゃんのあの話し方はテレパシーって言われたらしっくり来る。


「へぇ、モコちゃん凄い。そんなことが出来るんだ」

「……いや、嬢ちゃんや。凄いのひと言で済まさんでくれ。

 念話というのは。ユニコーンやペガサスをはじめとした幻獣や、年老いたドラゴンといった、一部の高位の者達が使えるのみなんじゃ。

 それをさも何事もなかったかのように認められると……」


 がっくりと脱力したように言うマレイトさん。

すみません、魔法を初めとした不思議な事を色々と体験したもんだから、もうなんでもありかと思ってました。


 つかユニコーンやドラゴンって……。そんなモンまでいるんだ、この世界。


「あはは……、ごめんなさい。少しその辺の常識に疎いもんでして」

「はぁ……まぁよかろう。

 それでお主、一体何者なんじゃ? 念話まで使うとなると、ただの変な生き物ではあるまい?」


 モコちゃんに向かって真面目な顔つきで問いかけるマレイトさん。

本人達はいたって真面目なんだろうけど、傍から見てる私からすると、ちょっとおかしな光景に見える。


 あとマレイトさん、今、さらっと酷い事言ったよね。変な生き物って。


 そんな少しズレたことを考えたところで、モコちゃんからの答えが頭の中に響いた。


(我、生き物、否。我、精霊)


「え、精霊?」

「なに、精霊じゃと?」


 あ、ちょっとハモった。てか、マレイトさんにも聞こえたんだ、今の声。


「……ふむ。すまんが嬢ちゃん、少々こやつと話をしてみたいでな。それなりに時間が掛かるじゃろうから、もう帰ってくれても構わんぞい」


 個人的な質問タイムってとこだろうか。でもそういう事なら───。


「あ、それなら私、ここで話が終わるのを待ちますよ?」

「む? 待つのは別に構わんが、恐らく退屈じゃぞ?」

「私もついでにこの子に聞きたい事とかありますし。

 あとそれから、さっきの話の内容になるんですけど、この子、なんか私の事を主って呼んで付いて来たがってるみたいなんですよ。

 多分ですけど、私が帰ると勝手にこっちにくっ付いて来ちゃうと思いますよ?」


 多分ってか絶対ついて来ると思う。この子、微妙に話聞かないとこあるしなぁ……。


「主じゃと? ……まぁええ、その辺も含めて色々聞いてみる事にするわい。

 すまんな、嬢ちゃん。悪いが少し、時間をもらうぞい」

「はい、分かりました」






「ふむ、大体こんなもんじゃろ」

「結構時間掛かりましたね……、お疲れ様です」


 時計のメーターが下から3/4辺りを指し示す頃……時間にして21時といったところだろうか、ようやくマレイトさんの質問タイムが終了した。

外はもうとっくに日が暮れて真っ暗になっているだろう。


 いやまさか、ここまで時間が掛かるとはねー……。


 ここまで遅くなった原因は、当然ながらマレイトさんからの質問の嵐……ではなく、モコちゃんからの返事が原因だったりする。

質問に答えてくれるのはいいのだが、返ってくる答えのほぼ全てがぶつ切りの単語状態なので、言いたい事をこちらが理解するまでにかなり時間を取られたのだ。


 そして、その並べられた単語の意味をなんとなくの感覚で理解する私と、1つ1つの意味をキッチリ確かめていく研究者らしいマレイトさん。


 これの所為で倍以上の時間が掛かったんじゃないかな……。


 まあ、それはさておき。モコちゃんから聞き出した内容(+マレイトさんの考察)をまとめると、大体次のような感じだった。


 モコちゃんは自分を精霊といったが普通の精霊ではなく、火や水といった特定の属性を持たない、精霊の中でも珍しい部類の精霊になるらしい。


 また普通の精霊と違って実体があり、今は例の鏡を寄り代にしているとのこと。

そして、鏡を通じてこちらの物を中に取り込むといった能力を持っているようだ。


 ちなみに、取り込んだ物を取り出すことも可能だった。

モコちゃんにお願いしてみたら、マレイトさんがお願いされていた腕輪、アッサリ出てきたんだよね……。

思わぬとこでマレイトさんの仕事がひとつ片付いてしまった。


 それから、大事な事が1つ。

これは、モコちゃんが私の事を主と呼ぶ理由を尋ねた事から発覚したのだが……私はいつの間にか、このモコちゃんと"契約"というものをしていたらしい。

……いや、なんでよ。


 無論私にはそんな事をした覚えはないのだが、話を聞いてみると、どうやら鏡の中でモコちゃんに魔力を食べさせた事が原因らしい。


 たったアレだけの事で……? と思いマレイトさんに尋ねたところ、このような契約の仕方はかなり稀ではあるが、皆無ではないとのこと。

相手によほど気に入られたのではないかと言われてしまった。


 いや確かに魔力が美味しいって言ってたけどさ。


 一応この辺の事もモコちゃんに聞いてみたのだが、返ってくる答えが"魔力、美味"の

単語2つのみだったので、こう推測するに留まっている。


 余談になるが、魔力が篭ったものを片っ端から取り込んでいたのは、お腹を空かせたモコちゃんが、魔力を得るためにやっていたようだ。

満腹になった今、勝手に物を取り込むような事はなくなったようなのだが……。まあ、お願いしたら取り込んでくれるけどね。


 大体こんなとこだろうか。言葉にするとこれだけなんだけど、あの単語の羅列からここまで理解するのはホント大変だったよ……。


「ああ、ところで嬢ちゃんや、どうやってその鏡を持って帰るつもりなんじゃ?」

「え、持って帰る……ですか?」

「そうじゃ。さっきの話からするに、こやつはその鏡に憑いとるんじゃろ?

 そうなると、そやつが嬢ちゃんと同行するには、この鏡を持っていかねばならんと思うのじゃが……」

「あー……」


 言われてみれば確かにそうだ。モコちゃんがどの程度鏡から離れられるかは分からないが、さすがに無制限に動けるって事はないだろう。


 とはいえ、この大きくて豪華な鏡を持ち帰るというのも無理がある。

ごてごてと付いた装飾品の所為で、軽く見積もっても20kg以上の重さがありそうだし、例え『軽量』の魔法が使えたとしても、この大きさだけはどうしようもない。


「いや、さすがに無理ですよ。こんな大きな鏡なんて持って帰れませんって。

 それにこれって確か、預かり物なんですよね? 持って帰ったりなんかしたらマズイんじゃないですか?」

「あぁいや、その心配は無用じゃ。

 実はあの鏡、わしが引き取る事になっておっての」

「え、そうなんですか?」

「エバス……わしの知人なんじゃが、あやつの事情での、手数料の代わりに、これを研究材料にと言ってきおったんじゃ」


 えーとそれはつまり、この鏡は代金でもあると。


「よかったんですか? それで」

「わし自身、なんでも物を取り込むという道具に興味が湧いての。それで引き受けることにしたんじゃが、まさか精霊が住み着いとるとはのぅ……。

 と、話が逸れたの。持ち帰れんのならどうしたもんかの」

「うーん……」

(我、同行、否?)


 悩んでいるところに、不安そうな意思を伝えてくるモコちゃん。

どうにかしてあげたいんだけどねー……。


 マレイトさんと2人で色々と考えを巡らせたが、人手がないと持ち帰るのは無理という事になり、今日のところは諦めるしかないかと結論付けたところで、その事をモコちゃんに伝えると───。


(我、移住)

「移住? どういう事?」


 詳しく聞いてみると、どうやら寄り代となる鏡を別の物に換える事が出来るらしい。


 移住先は鏡であれば形や大きさは問わないという事なので、それならばとマレイトさんにお願いして、店の商品から1つ鏡を譲ってもらう事に。


 こうして、モコちゃんは小さな手鏡に移り住み、私と行動を共にする事になった。






 マレイトさんの元を辞して宿に帰りついた私が部屋の扉を開くと、ベッドに寝そべっていたスフィルが上半身を起こして挨拶をしてきた。


「お帰りー、ハルナ。遅かったね?」

「ただいまー。今日はちょっと色々あってね……」


 魔法実験の手伝いに行ってミニ竜巻が発生するわ鏡の中に閉じ込められるわ、挙句の果てには知らない内に精霊と契約だもんな……。色々と濃い1日だったわ、ホント。


「あ、そうだスフィル?」

「なに?」

「ちょっと紹介したい子がいるんだけど……、驚かないでね」


 一体なんなのよ、と不審な目でこちらを見るスフィルをよそに、鏡を取り出しそれに向かって呼びかける。


「モコちゃん、出てきてー」


 呼びかけに答え、スウッと染み出すかのように現れたモコちゃんは、そのまま私の腕の中に納まった。


「か、可愛い───っ!」


 それを見た途端に目を輝かせるスフィル。どうやらかなりツボだったようだ。


「ねえ、なにこれ、生き物なの? どこで拾ったの? すっごい可愛いんだけど」

「え、いや、ちょ、近いって、とりあえず落ち着いて───」


 目線をモコちゃんに固定したまま、妙な迫力を放ちながら迫るスフィルをなだめつつ、今日体験した事を一から順に説明していった。


 途中何度か質問を交えつつ、説明を終えた私にスフィルが発した一言はというと。


「ねえハルナ、この子アタシにくれない?」

「私の話ちゃんと聞いてたよねっ!?」


 思わずツッコんでしまった私は悪くないと思う。


「てゆか説明終わって第一声がそれ? もうちょっと他に言う事あるんじゃないの?」

「いや、なんていうかさ、アンタの事を普通の枠で考えてるとついてけないっていうか。

 それならとりあえず、希望を伝えてみようかなーと」

「あのねー……。

 それにさっき言ったと思うけど、モコちゃんは私と契約? してるんだから、あげるあげないって問題じゃないと思うよ?」

「そっかー、残念」


 抱いて寝たかったのになーと呟きながら、未だ諦めきれない様子でモコちゃんを見つめるスフィル。


 確かに気持ちよさそうだなー、と思いかけたところで頭をぶんぶんと振って気を取り直す。見た目はそれっぽくても、ぬいぐるみじゃないんだしさ。


 話がひと段落したところで、今日買ってきた品──ガラス瓶1ケース(聖水用)──を片付けてしまおうと、鏡に入れて持ち帰った木箱を取り出すと、スフィルが目を丸くしてそれを見つめていた。


「ハルナ……それ、どっから出したのよ」

「さっきモコちゃんのこと話したでしょ? 持って帰るにはちょっと大きかったから、この子に持ってもらったの」

「へー、今のをこの子がね……。

 実際目にすると不思議なもんねー」


 感心したように木箱を見つめるスフィル。

確かに、空中に突然物が浮き出てくる様は傍から見るとかなり不思議な光景だろう。


 私が片付ける様子をしばらく眺めていたスフィルだったが、やがてなにかを思いついたのか、勢い込んで声を掛けてきた。


「ところでこの子ってさ、結構前から物を取り込んだりしてるんだよね?

 だったら、なにか珍しい物とか持ってないのかな。

 あ、それともハルナが預けたものじゃないとダメだとか?」

「え? えーと。んー、どうなんだろ?」


 その辺の事を尋ねてみると、別に私が渡した物に限らず、取り込んでそのままになっている物なら取り出す事は出来るとのこと。


「一応出来るらしいよ」

「じゃ、ちょっと出して見せてよ。どんな物があるか気になるんだよね」


 うーん、期待しているスフィルには悪いけど、ゴミ箱にされてたっていうから、ゴミが出てくるだけじゃないかなー。

それに……。


「出すのは別にいいけど、珍しい物かどうかってのは、この子には分からないんじゃ?」

「あ、そっか……。

 じゃあ、持ってる物の中で一番古い物、でどう?」

「古い物っか。まあ、それなら……」


 モコちゃんに、持ってる物の中から一番古い物を出せるかと聞いてみると、是、と返事が返ってきたので、念のために床に大きな布を敷いてから(汚れ対策)、そこに出してもらう事に。


「これって……」


 出てきたのは、1冊の本だった。


 見た目はグリモアに似た雰囲気を持ったハードカバーの本なのだが、私の持つそれとは違いカバーの色が濃い赤色をしている。


「これって、魔法に使うグリモア……の色違い?」

「かな? 確かに似てるけど……」


 スフィルが見守る中、本に手を伸ばし中をあけてみると、そこには複数の簡単な魔法陣らしき図形と、その解説と思われる文字が書かれている。


 魔法陣とその説明、か……?

うーむ、さっぱり分からん。まだ文字は読めないんだよなー。


「……スフィル、読める?」


 後ろから覗き込んでいたスフィルに聞いてみるが、彼女も首を横に振るだけだった。


「ごめん、アタシも読めないわ。

 なんかこれ、普通の字じゃないみたいで、途切れ途切れにしか……」

「スフィルでも読めないんだ……」


 続けさまにページをめくってみるが、どのページも似たような構成で、簡単な図柄と、その解説らしき文字が書かれているのみだった。

一体なんなんだろうか、この本は。


 ページをめくり続け、一通り最後まで目を通したが、スフィルが文の一部を途切れ途切れに読みとれたのみで、意味が通じる部分はひとつもなかった。


「本はここまでっか。

 うーん、面白くはあったけど、なんかスッキリしないなぁ」

「あ、じゃあこれ、明日にでもマレイトさんの所に持っていってみるわ。

 あの人なら、なにか分かるかもしれないし」

「それならさ、なんか分かったらアタシにも教えてよ。

 このままじゃ、気になってしょうがないし」

「ん、了解。なにか分かったらまた教えるね」


 本をパタンと閉じたところで時計を見ると、もうそろそろ真夜中に差し掛かろうかという時間を示していた。

いつの間にやら結構な時間が経っていたらしい。


 そろそろお開きにしよう、とスフィルに声を掛けてから、本を再びモコちゃんに預かってもらう。


 ここが一番忘れそうにないしね。


 そのまま手早く明日の準備を整えると、着替えを済ませてベッドに入って目を閉じる。


 お休みなさい、また明日───。


たらたらと時間をかけてた所為か、次話に使う予定のネタが他の作品で使われてるのを見つけてしまいました。


詳細は違うけど名称が全く同じってゆー……。

どうしたもんか。

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