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44 エクソシストの定義

本当にお待たせしました。


そして説明回が続きます。

これまではっきりしてなかった部分などを中心に。


2014/03/30 ふりがな表記を一部ルビ化、残る部分をカタカナに修正

 (オン)の儀を見学したいという、私の唐突なお願いを聞いて、神殿長は一瞬驚いた顔をするも、すぐに聞き返してきた。


「よろしければ、理由をお聞きしたいのですが」


 さっきまで頭で考えていた、その理由を述べる。


「この大神殿まで来ておいて今更過ぎるんですけど、私はエクソシストについてほぼなにも知らないんですよ。

 対デーモンやゴーストの専門職ぐらいだとしか」


 ホントよくそれだけでここまで来たもんだと思う。


「知識の方は誰かに聞けばいいんですが、実際のエクソシストを見て分かる事もあるんじゃないかと思いまして。

 (オン)の儀になら結構な人数のエクソシストが集まりそうなので、それを見たいと思ったのですが……」


 そこまで話すと、神殿長は納得したといった感じで頷いた。


「なるほど、そういう事ですか……」

「どうでしょう、儀式を見学させていただけますか?」

「……そうですね、儀式のどの部分を見学なさりたいのかにもよりますが、参加者が魔石に触れるところを見たいとおっしゃるのでしたら、かなり難しいかと思われます」

「それは……どういう事ですか?」

「儀式はまず、参加者を部屋に集め、その部屋から1人ずつ順番に魔石が置かれている別の部屋へとお呼びし、私の前でそれに触れるといった手順で行われます。

 そして、その部屋に入れるのは、私と儀式を受ける人のみです」


 む、それじゃ私は中で見れないって事?


「ただ、先程のお話を聞きます限り、儀式の参加者を直接ご覧になりたいだけのように思われますので、儀式への参加者として、他のエクソシストの方と共にお集まりになられてはいかがでしょうか」


 おぉ、その手があったか。

私は元々儀式を受けに来たんだし、参加者として中に入る、でいいかな。


「……そうですね、分かりました。それでお願いします」

「では、後で儀式に参加出来るよう手配させていただきます。

 ただ、儀式を受けに来られるエクソシストの方は毎回数人ですので、ご期待に添えられるかどうかは分かりませんが……」


 あら、そーなんだ。意外と少ないのね。


「いえ、それで十分です。わがまま言ってすみません」


 ってそーだ。儀式に参加するなら、持ってきた紹介状を渡さないと。

なんかもう必要なさそうな気はするけどねー……。


「一応紹介状を持ってきてますので、これを」


 鞄を開き、底の方に大切に保管していた紹介状を取り出して見せる。


「分かりました、お預かりさせていただきます」

「それから、これもですね」


 そう言って財布から銀貨を1枚取り出し紹介状と共に手渡しすと、銀貨の意味が分からないのか、困惑した表情を見せる神殿長。


 いやそれ、ただの参加費なんだけど。

……なんか間違ってた?


 不安に思いつつも聞いてみると、儀式への参加に銀貨1枚が必要なのは確かだが、私からお金を取るなんて事は考えてなかったとのこと。


 いやいや、受け取らないとあとで困るでしょうに。


「お心遣いはありがたく頂戴しますが、あとで帳尻が合わなくなって困るんじゃないですか?」

「……確かにそうですね、ありがたく受け取らせていただきます」


 やっとといった感じで受け取る神殿長。

ただどうしても、気が引けてるという感じが抜け切らないので、またひとつお願いをしてみる事にする。


「ところで神殿長さん、わがままついでにもう1つお願いがあるのですが……」

「はい、なんでしょうか?」

「私にエクソシストの事についての、一般的な知識を教えてもらえませんか?

 先程も少し言いましたが、私はその辺りの知識が全然ないんですよ」


 簡単でいいので教えていただけませんか? とお願いしてみると、神殿長はなにやら目を閉じて考え込んでしまった。


 私、なんか変な事でも言ったっけ?


「あの……どうかされましたか?」


 恐る恐る聞いてみると、神殿長は再び目を開いた。


「いえ、なんでもありません。

 それでは、僭越ですがエクソシストについて簡単にですが説明させていただきます」


 なんだかよく分からないけど、とりあえずは説明してくれるらしい。


「……はい、よろしくお願いします」


 さて、どんな話が聞けるかな?






「エクソシストとは大まかに言いますと、なんらかの手段でもってデーモンやゴーストを排除する専門職の一種です。

 別段、排除する手段に制限はなく、(オン)の儀を通過した者でなくともエクソシストと名乗るのに制限はありません」


 ふんふん。とにかく排除すればOKで、名乗るのに制限はないんだ。


「そして、銀製の武器や大量の聖水などを持ち歩き、それらを使用してゴーストを排除するのが一般的に知られてるエクソシストとなります。

 ただ、この方法は独自で聖水などを調達出来ない限り、主にそれらを購入することになりますので、かなりお金が掛かる事になります。

 よって実践出来る人は少ないのですが……」


 以前、エクソシストは治癒魔法の使い手並みに貴重と聞いてはいたけど、まさかお金の問題だったとは……。


 何気に世知辛いなこの仕事。


 あれ、でもそーなると修行って意味なくない?


「ちょっと疑問なんですけど」

「どうされましたか?」

「以前、エクソシストになるには厳しい修行が必要って聞いたんですけど、さっきの話を伺う限りですと修行の必要がないように思えるのですが」


 確か馬車の護衛の人……エルクラムさんだっけ、そう言ってた気がする。


「ああ、そうおっしゃった方は多分、勘違いをされてますね」

「勘違い、ですか?」

「はい。先程も言いましたが、低級のゴースト等を排除するには、例えばですが大量に聖水を振りまけば誰にでも排除する事が可能です。

 もちろん、ただ水をまくだけなので、修行の必要はありません」


 へぇ、誰でも退治できるんだ。


「修行が必要になるのは、(オン)の儀を目指す者、いわゆる宝石持ちになる事を目指す方々です。

 そして、先程テーシア様が説明なされましたが、儀式を通過する条件は素質です。

 要は、この素質を開花させるために修行を行うのです」


 この辺りを混同される方が多いんですよ、としみじみ話す神殿長。


 なるほど。ただゴースト退治するだけの場合は修行は必要ではなく、儀式通過を目指す人にのみ修行が必要と。

うん、確かにややこしいわ。


「一般的なエクソシストについては大体こんなところでしょうか。なにか、分からないところとかありましたか?」

「そうですねー……。

 さっきの話の中で、銀製の武器って言葉が出てきましたけど、それって……?」

「銀製の武器といいますか、銀ですね。

 銀には聖なる力があるとされておりまして、実際、デーモンやゴーストに対して直接的な効果を及ぼす事が可能なのです」


 へー、銀がねぇ。


「銀で作られた武器を振り回して、ゴーストに対抗するエクソシストの方も結構いらっしゃいますよ。

 もっとも、材料が銀だけにそれなりの値段がしますし、手入れも難しい上扱いに気を使うと、なかなか難しいものなのですが……」

「それって、全体が銀で作られてるんですか?」

「ええ、銀のみで作られてます。ですから相当重量もありますね」


 なるほど、そりゃ純銀じゃ重いよねー。

あとオマケに、銀って金と同じぐらい柔らかかった気がするから、誤ってどっかにぶつけただけでひん曲がりそうだし。


 ……ん? 純銀じゃないとダメなのかな?


「今ふと思ったんですけど、メッキじゃダメなんですか?」

「めっき……とは、なんの事でしょうか?」


 う、通じなかったか。


「ある素材で中心部を作り、それを別の素材で覆ってしまう事です。

 例えば、鉄かなにかで芯を作り、その周りを銀で覆えば銀製品と同じ扱いになるんじゃないかと思いまして」


 私がそう説明すると、神殿長はしばらく呆けたような顔をしたあと、くわっと目を見開いた。


 うわっ!?


「それは……、確かにその通りです。

 今までにない考えです、試してみる価値はありそうですね」


 そう言って椅子から立ち上がったと思うと、ばたばたと机の方に走りより、なにやらメモを取る神殿長。


「ありがとうございます、この案が上手く行けばちょっとした革命になりますよ」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。『エクソシストはお金が掛かる』、これが一般的に思われている概念なのですが、これをある程度ひっくり返せるかもしれません」


 そ、そーなんだ……。

うん、上手く行く事を祈ってるよ。


 その後、アレコレとメッキ方法について意見を求められたが、私もそういったやり方があると知っているだけなので、詳しい事はなにも話せず、結局は色々と試行錯誤してみるといった方向に話がまとまった。


 ……あれ、なんでこーなったんだろ。


 その後、特に聞くことも話す事もなくなったので、そろそろお暇する事に。


「では、そろそろ失礼します。儀式に参加する件、よろしくお願いします」

「お任せ下さい。こちらこそ貴重なお話、ありがとうございました」


 挨拶を済ませ、部屋を退出しようとしたところで、重要な事を1つ思い出した。


「あ、最後に質問なんですけど」

「なんでしょうか?」

「今日、先輩から教えていただいた儀式の話なんですけど。

 私、口止めされてないんですけど、誰かに話してしまってもいいんですか?」


 これは大事な話っぽいので、黙ってて欲しいなら黙ってるつもりだ。


「そうですね、無闇に吹聴して回られては困りますが、特に口止めは致しません。貴方様が話してもいいと思った人物には、話してもらっても構いません」


 あら、意外。話しちゃってもいいんだ。


「それはなかなか判断が難しそうですね……分かりました」


 それでは失礼します、と一礼をして部屋を出る。


 そのまま長い廊下を歩き、神殿の外へと出たところで伸びを1つ。

ずっと座ってた所為か、凝り固まってた背中がパキパキと音を立てた。


 大分長く話し込んじゃったなぁ……今何時だろ。


 お腹も空いたしなぁ、と思いつつ鞄から時計を取り出して見てみると、青いメーターは下から1/4ぐらいを指している。


 うわ、もうこんな時間か。そりゃお腹空くはずだよ。


 宿に帰ったら遅いお昼にしようと思いながら、やや急ぎ足で帰路へとついた。


それでは皆様、よいお年を。

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