39 真夜中の相談
訛りは意味が通じる程度に留めました。
よって、不自然なところがあるかもしれませんがご勘弁を。
2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正
お互いに見つめ合い固まること数秒、先に復活したのは相手の方だった。
「えーと……あんた、見たことない顔やけど、ウチのお仲間でええんよね?」
「お仲間って言うと……」
死神の仲間って事だろーか。
「いや、気配が一緒やからお仲間なんは分かってるんやけど、なんでここに居るん? 体があるってどういう事なん?」
そんなの私が知りたいよ。てゆか誰よこの人(?)
「えーっと……。どちら様ですか」
……って、何言ってんだ私は。いかんいかん。
頭をぶんぶん振って気を取り直していると、再び相手が口を開いた。
「あー、ごめんな? ちょっと性急やったわ。
ウチはテーシアっていうんや。ウチの事を御使い様って呼ぶ者もおったりする。
あんたは?」
ホントに御使い様なんだ……。
いや、今は自己紹介っと。
「私はハルナです。状況はよく分かりませんが、多分あなたと同じモノ……のはず?」
「なんで疑問系なん? その体がある事と、なんか関係があるん?」
「自分でもよく分からないんですよ。どうしてこうなったのか……」
ホント、どーしてこうなったのか。
「なんや、込み入った話みたいやな。一応お仲間なんやろ? よかったら話聞かせてくれんか」
うーん、全部話しちゃってもいいのかな? 同じ立場っぽいし、こうなった原因についてなにか分かるかもしれないけど……。
……よし、決めた。言っちゃえ。
ここで黙っててもなにも分かんないんだし。
「そうですね……。ちょっと長くなるかもしれませんが」
「かまへんかまへん」
多少長くなっても平気と言うので、今までの経緯をかいつまんで話す事に。
こことは全く違う世界で死者を送る仕事をやっていた事、その時には体がなかった事、ふと気付けば体があり、この地に立っていた事を順を追って話していく。
意外な事に、違う世界のくだりでのツッコミはなかった。なんでだろ……?
疑問に思いつつも話を続ける。
しばらくはじっと私の話を聞いてくれていたのだが、セルデスさんを助けた辺りに話がさしかかると、思わずといった感じで割って入ってきた。
「ちょ、ちょっと待ちや。死ぬはずやった人を助けられたってホンマなん!?」
「助けられたと思いますよ。におい……死の気配が消えるのを確認しましたし」
「そうなんか……」
……なんかマズかったか?
「もしかして、助けたのってダメでした?」
「いや、そんな事はないんよ。助けれるなら助けてもええと思うし。
……まあ、その辺のことはまたあとで話すわ。ごめんな、話の腰を折ってしもて」
「そうですか。それじゃ続けますけど」
続けて、墓地でゴーストを発見し送ったことが元で、エクソシストや御使い様について知る事になり、宝石持ちと言われるエクソシストになろうと思ってここまで来たことを話した。
そこまで話すと彼女は呆れたような表情になった。
「ウチのお仲間がエクソシスト目指すって、何の冗談なんそれ?」
「いや、今までやってた事と大差なさそうだし、生活の手段にちょうどいいかなーと」
「まあ、ウチと違ごうて体があるさかい、必要なモンがあるのは認めるけどなぁ。
なんかこう、複雑な気分やわ……」
まあ、そうかもしれない。私だって立場が逆ならそう思うだろうし。
「それで、私がこうなった原因ってなにか分かりました?」
「いや、さっぱり分からんわ」
結論早いなヲイ。
「ウチのお師匠様やったらなにか判るかもしらんけど……」
「お師匠様?」
「ウチを御使い様(こんな体)にした人の事や。ウチが死んで消え去るとこやったんを拾い上げてくれたんは感謝しとるけど、どうにも放任主義でなぁ」
先輩みたいなもんか。私もそーやって死神になったんだし。
「その、お師匠様とは会えますか?」
「うーん、難しいんとちゃうか。ずいぶん昔にフラっと出て行ったきり戻ってこんのや。今どこでどうしてるかなんてさっぱり分からへん」
「昔って、どのぐらいですか……?」
「そやなぁ。あれはウチがこうなって100年ぐらいしてからやったから……ざっと200年前ぐらいかな?」
200年!?
うわー……。先輩の60年も大概だと思ってたけど更に上手が居るとは。
大先輩って呼ばせてもらおうかな。
「そんなに……」
「ごめんなぁ、力になれんで」
「いえ、ここにも仲間が居ると分かったのでよかったです。
そういえば他の仲間は居ないんですか? こっちに来てから見たのはテーシア大先輩だけなんですけど」
「シアや」
「え?」
「名前、シアって呼んでくれん? 仲間内やとそう呼ばれとんのや。
あと大先輩ってのも、ちょっと勘弁してほしいんやけど……」
めちゃくちゃ歳食ってるように聞こえるから……。と呟く大先輩。
いやいやいや。100年+200年ってじゅーぶん……コワイです先輩、そう睨まないで下さい。
「……分かりました、シア先輩ですね」
「うん、それでお願いするわ」
さすが300年物の迫力……怖かった。
「あー、それでシア先輩、他の仲間は居ないんですか?」
「ウチの仲間は数が少ないんよ。ウチ含めて全部で5人しかおらんのや。
ウチがここに来たのも、ここに仲間の誰かが訪ねてきたんかと思って見に来たんやけど、来てみてびっくりや」
ナルホド、私は仲間の誰かと間違われたのか。
それにしても……。
「5人ってまたえらく少なくないですか? 死んだ人を送るのには、全然手が足りないような……」
「? ハルナはんの居たとこやと、死んだ人を1人ずつ、わざわざ送っとったん?」
「ええ、そうですけど」
「そりゃまたエライ手間やなー。
ここら辺やと、教会や神殿で弔われるだけで、死んだ人は皆勝手に消えていきよるで?」
なんですと?
「まあ、稀にゴーストになって残ったりする根性のあるヤツがおったりはするけど、そういったのはエクソシストとかの人の手で送られて逝きよるし」
「根性って……。それじゃシア先輩は普段何をしてらっしゃるんですか?」
「ウチは基本、この辺をぶらぶらして、たまにゴーストを見つけたら、そこまで行って送るぐらいやなぁ。
あと、デーモンが発生しよったら、そっちも退治しに行きよるけどな」
なんかえらくのんびりしてるなー……。いいのかそれで?
「そうなんですか……。
あとちょっと気になったんですけど、デーモンの退治ってのはどうやるんですか? 私はまだ見たことがないんですよ」
「そうなんか。でも別にコレといって特別な事はせえへんよ。この鎌でズバっとやるだけやで?」
え?
「あれ? 鎌って死者から魂を切り取るためにあるもんだとばっかり……」
「まあ、そういう使い方もあるんやけどな。ホンマの使い方はこっちのはずや」
そ、そーだったんだ……。
「そうなんですか……ありがとうございます」
とりあえずこれで、もしデーモンに遭遇しても大丈夫……かな?
なんか狂暴そうだし、別に会いたいモンでもないんだけど。
そう思っていると、おずおずといった感じでシア先輩が切り出してきた。
「ところで今更なんやけど、時間、大丈夫なんか?」
「え?」
「あんた、ウチと違ごうてちゃんと寝る必要があるんやろ? もう大分遅い時間やで」
そう言われて時計を取り出してみると、いつの間にか時計のメーターは一番上近くまで上がってきていた。
「うわ、いつの間に」
「ごめんなぁ。お仲間やったら平気と思って訪ねて来たんやけど、まさか体があるなんて思いもよらんかったし」
「さすがにそれはシア先輩の所為じゃないでしょう。それに、私も前までは眠る必要がなかったですからね」
「そう言ってもらえると助かるわ。
ほな、ウチはそろそろお暇するな。明日また来てもええやろか?」
「もちろんですよ。まだお話したい事が、たくさんありますし。
ただ、ここには友達と来てるので、また夜にしてもらえると助かりますが」
私がシア先輩と話してるところを他人が見たら、空気と話をする怪しい人に見られてしまう。
出来れば今みたいな1人の時間の方が好ましい。
シア先輩もその辺りの事情を察してくれたのか、特になにも聞いてこなかった。
「そうか……ほなまた、夜にでも来るわ。また明日なー」
「また明日です、シア先輩」
シア先輩が帰ったあと、水袋を取り出し水を一口飲み下す。
ベッドに仰向けに寝転がるも、ニヤニヤとした笑みが止まらない。
この世界にも仲間が居た。それだけでも何故だか大分ホッとした気分になる。
思ってたよりも寂しかったのかもしれない。
そのままベッドに入って目を瞑るも、しばらく眠れそうになかった。
この後も独自設定全開でお届けします。