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31 騒動の後

後片付けの回ってイマイチ面白くないなぁ……。


2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正

 改めて辺りを見回してみると、市場はなかなかスゴイ風景になっていた。

砕けた屋台の破片や散らばった商品、壊された露店などでかなり悲惨な事になっている。


 まるで大きな台風が通った後のような光景だ。


 そしてオマケに、横たわる巨大な蟻の死骸が3つ。


 炎の球を一山いくらってレベルで打ち込んだにも関わらず、燃え上がらなかったのは火力が足りなかった所為なのか。

いや、別の意味での火力は十分すぎるほどに足りてたけど。


 とりあえずは火事にならずに済んだようである。


 はぁ、なんとかなったかー……。


 安心したらなんだか力が抜けてその場にぺたんと座り込んでしまった。

どうやら思ってたよりもずっと緊張していたようだ。


 座り込む私を見たスフィルが慌てて声を掛けてくる。


「ハルナ、大丈夫!?」

「あー……うん。安心したらなんだか力抜けちゃってさ」

「もう、脅かさないでよ……。あの時頭でも打ったのかと思ったじゃない」

「ごめんごめん。でもそれはスフィルも一緒だからね?

 無茶してくれちゃってさ、心配したんだから……。それと、庇ってくれてありがとね」

「う。改めてそう言われると照れるわね……。

 まあ、心配掛けたのはお互い様って事で。ほら、立てる?」


 スフィルが手を貸してくれたので、それに掴まり立ち上がる。


「魔術師の嬢ちゃん、大丈夫かい?」


 蟻の足元で戦ってた人が声を掛けてきた。


「ええ、大丈夫ですよ。なんだか力抜けちゃいまして」

「まあ、無理せず休んでな。あれだけの魔法を連発したんだ、相当魔力を使っただろ?

 それから、ありがとよ。助かったぜ」


 それを皮切りにして、次々とお礼を言ってくる巨大蟻と戦ってた人達。

なんだかこそばゆい。


 幸いにも、戦ってた人達の中に重い怪我人は居ないようだ。

相手が硬すぎる事が判ってからは、時間稼に徹する事にした為らしい。


「お、ようやく自警団のお出ましか」


 言われて辺りを見回すと、揃いの青いマントを羽織った20人ぐらいの武装した集団がこちらに向かって来ているのが目に入った。


「全部片付いてから出て来るってよ……」


 戦ってた人の1人がぶちぶちと文句を言っているが、時間にして15分程度なのだ。

十分早い方だろう。


 事情説明とかあるのかなーと考えていると、手元の杖に目が留まる。

そういえば杖を借りてたんだっけ。


「スフィル、私ちょっとこの杖を返してくるね」

「それって借りてたんだっけ?」

「そ。お陰で助かったけどね」

「確かにね。それで、1人でいける?」

「平気だよ。じゃあちょっと行ってくるから」

「了解、いってらっしゃい」


 杖を手に持ち、後ろを振り返り歩き出す。目指すはさっきおっちゃんを運んだ場所だ。


 ぼちぼちと歩いておっちゃんを運んだ場所まで戻ってきたが、彼の姿は見当たらない。

どこへ行ったのかと辺りを見回していると、さっきの糸目の爺ちゃんがこっちにやって来た。


「おう、どうやら無事片付いたみてぇだな。で、どうした? キョロキョロとして」

「借りてた杖を返そうと思いまして。どこに行かれたか分かりませんか?」

「ああ、若旦那なら治療院へ運ばれちまったぞ。

 魔力切れ起こして動けねぇし、休もうにも自宅前で巨大蟻の野郎が暴れてやがるしでよ。

 怪我の事もあるし、とりあえず休める場所って事で治療院行きって寸法だ」


 なるほど。そういえば怪我もしてたんだっけ。


「そうですか……杖を返そうと思ってたんですが」

「それならワシが預かっとくぜ?

 若旦那とは顔見知りだしよ、治療院から戻ったら、そいつを手渡しゃいいんだろ?」

「いいんですか?」

「いいってよ。それに、嬢ちゃんはあれだけすげぇ魔法を連発したんだ。早く戻って休んだ方がいいんじゃねぇか?」


 意外と面倒見のいい人なのかもしれない。


「分かりました。すみませんがよろしくお願いします。えーと、親方さん?」

「おう、そう言えば自己紹介をしてなかったな。

 ワシはガーラックってんだ。見ての通りのドワーフで、そこの店で鍛冶屋をやっとる。

 親方とでも呼んでくれ」


 ドワーフ……って、実在(?)してたんだなぁ、この世界って。


「ん? どうした、嬢ちゃん?」


 いかんいかん、驚きのあまりぼーっとしてたよ。


「あ、ごめんなさい。エクソシスト見習いのハルナと言います。

 ガーラックさんですか、よろしくお願いします」

「あー……名前にさん付けで呼ばれるとなんだかむず痒くなっちまうから、他の皆のように親方って呼んでくんな」


 親方って。いやなんか妙にしっくりくる呼び名だけど。


「分かりました、親方ですね」

「それにしても嬢ちゃん、あれだけすげぇ魔法連発してるのに魔術師じゃねぇのな。

 炎の球が山ほど飛んでくのがここからでも見えたぜ?」

「アレはこの杖に入ってた魔法がすごいんですよ。撃った私が逆に驚いたぐらいです」

「ほう、そうなのか」

「とりあえず、この杖をよろしくお願いします。

 あと、お礼も一緒に伝えてください。すごく助かりましたって」


 そういって杖を親方に手渡す。


「おう、任せときな」

「それじゃ、私は失礼しますね」

「おう。もし武器とか金属製の物が入用になったら、是非ワシの店に来てくんな。安くしとくぜ」


 武器ねぇ。私には縁がなさそうだけど。


「そうですね、その時は是非」

「またな、嬢ちゃん」


 親方に杖を預け、そのままスフィルの元へととんぼ返り。

自警団の人となにやら話をしているようだ。


「お帰り、ハルナ」

「ただいま、スフィル。事情の説明中?」

「そんなとこよ。

 隊長さん、彼女がみんなの言ってた、あの巨大な蟻を魔法で倒した人よ」

「ほう、彼女が?」

「えーと……なんのお話ですか?」


 いや、大体想像はつくんだけどさ。


「失礼した。私はヴィラム・エイチャード、自警団「蒼穹の槍」よりこの隊を率いる役目を仰せ付かっている」

「はあ、隊長さんですか」

「急ぎの知らせを受けて隊を動かしたはいいが、着いてみると既に事態は終わってしまっていたのでね、居合わせた人たちに事情を聞いているところさ。

 このまま何もせずに戻ってしまえば、私が団長に叱られてしまうのからね」


 そう言って笑う隊長さん。なかなか話やすそうな人である。


「そう言ったわけだから少しだけ事情聴取に協力してくれないかな?

 あまり時間は取らせないよ」


 隊長さんはああ言ってるが、ここに居る人たちを含めて恐らく2~30人から事情を聞く事になるだろう。

よって、それなりに時間は掛かるはずである。


 まあ、断るって選択肢はないんだけどさ……。


 同じことを考えたのか、隣に居るスフィルも苦い表情をしていた。


「分かりました、どうすればいいんですか?」

「すまないね。もう少ししたら天幕が完成すると思うから、それまではこの辺りに居てくれると助かるかな」

「分かりました」

「それじゃ私は他の人達にも声を掛けてくるから……よろしく頼むよ」


 それだけ言うと隊長さんは去って行ってしまった。


「はぁ、参ったわね。これで今日の買い物は中止かな」

「しょうがないよ、スフィル。あそこで断るわけにもいかなかったでしょ」

「まあ、そうなんだけどね」

「出発まではまだ時間があるし、また明日にでも案内してくれれば助かるかな」

「そうね……よく考えたらハルナもアタシも今日はもうくたくただし、今から買い物ってのもちょっとツライかな」


 まあ、私はともかくスフィルはずっと走り回ってたからねー……。


「スフィルは明日大丈夫?」

「アタシは大丈夫。そうなると……またギルドで待ち合わせかな」

「そうだね。それじゃまたお昼からでいい?」

「了解、ギルドで待ってるわ」


 そんな話をしていると、天幕が完成したのか自警団よりお呼びが掛かる。


「あ、呼んでるね。それじゃあっちに移動しますか」

「はぁ、長くならないといいわねー……」

「それは同感だけどね……」


 そう言いながら、私とスフィルは揃って呼ばれた方へと向けて歩いて行った。






 意外と早く事情聴取の終わった私は、家へと帰り部屋で休んでいた。


 あの時、私の使った魔法は相当目立ったらしく、あの時の冒険者達の他にも、親方含む戦いを遠くから見守ってた人達からの訴えにより事情聴取の順番を早められたのだ。


 どうやら、魔力をかなり使ったと思われる私に配慮してくれたようである。


 平気ですと言っても聞き入れてもらえず、そのまますぱっと事情聴取が行われ、簡単な質問をいくつかされた後に開放された。


 使った魔法についても、杖を借りただけで詳細は知らないと言ってある。

恐らくは後日、あのおっちゃんも自衛団に呼ばれる事になるだろう。


 それにしてもあの巨大な蟻は一体なんだったんだろう。

あのサイズの生物が外から来たとしても、市場にたどり着く前に騒ぎが起きないはずはないと思うし、いきなり市場に現れたとしか思えないんだよね。


 明日もギルドに行く事になってるし、その時にその辺の事を聞いてみようかなー。


自警団の名前ってもう2度と出てこない気がする。

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