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3 秘薬? 魔法?

2013/08/04 全面的に手入れ 話の大筋は変わってません

 未だ意識が戻らないオジ様の横へと腰を落ち着け、目が覚めるのを待つ事にする。さすがにこのままハイさよならするほど薄情じゃないつもりだ。

 それに最悪、このまま目が覚めずに……、なんてこともある。もしそうなら責任を持って最後まで面倒を見るつもりだ。


 まあ、それはないと思のだが……。


 今、このオジ様から感じるにおいはない。つまり死が迫ってる、なんてことはないはずだ。ないはずなのだが……。先程からどうにも死に関する感覚が掴みづらくなっており、自信を持って言い切れない。

 なんというか、別のなにかに圧迫されているような気がしてならないのだ。


 あーもう、一体どうなっちゃったのよ私。人から見えるわ触れるわ、おまけに声まで聞こえるわ。あとなんかお腹まで空いてきたし。

 お腹が空くなんて3年ぶりだよ。ていうか、なんでお腹が空いてくるかなぁ……。


 生き返ったとか? はたまた転生したとか? 見たことのない場所にいる分、後者の方が近い気もするが……ああもう、分からない事だらけだ。


 他に異常がないか軽く自己診断してみたが、特にこれといった異常は感じられない。精々心臓が動いてる感覚があるぐらいだ。だがこの感覚は、以前からあるものなので異常の内には入らないだろう。

 以前、この感覚について先輩に聞いてみたことがあるのだが、これは生前のものが残ってるだけというお言葉を頂いた。

 それならお腹が空くこともありそうなものだが、この感覚については"死ぬ寸前の状態がずっと続く"って事らしく、あとから空腹状態にはならないらしい。


 まぁ、どうせ食べ物とかには触れないんだから、お腹空いても困るんだけどさ。


 思考が逸れ掛けたところで、隣に寝かせていたオジ様が身じろぎをして目を開けた。どうやら気が付いたらしい。


 っと、オジ様と話すならこの怪しい姿はまずいか。とりあえずフード部分だけを外して……っと。


「あの……、大丈夫ですか? 私のこと、分かります?」

「ここは……。私は、生きているのか?」


 おぉ、声まで渋いよ。それに私のこともちゃんと認識してるっぽい。


「ここはどこかの町の近くの草原です。体に異常とかはないですか?」

「あぁ、特に問題はない。……君が助けてくれたのか?」

「ええまぁ。倒れてるあなたを偶然見つけまして、なんだか危なそうな感じでしたので、応急処置を」


 アレで正しかったのかは正直よく分かんないけど。


「そうか……。いや、助かったよ。礼を言う、ありがとう」

「どういたしまして。

 それで、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが……」


 この際だから色々と尋ねてしまおう。


「ん、なにかね?」

「ここは、どこなんでしょう?」

「は……?」


 あ、オジ様が固まった。そして少ししてから再起動。


「ここはジェイルの町だが……」

「ジェイル?」


 どこよそれ。初めて聞いたよ。


 お互い黙って見つめ合う事しばし。その状態から先に口を開いたのはオジ様のほうだった。


「……なにやら色々と訳ありのようだね。

 そうだな。改めてお礼もしたいことだし、君を私の家へ君を招待する事にしよう。話はそこでゆっくりと伺うという事で、いかがかな?」

「いいんですか? 正直、困っていたとこなんで助かります」

「なに、君は私の恩人だ。遠慮はいらんよ、ぜひ寄って行ってくれ」

「ありがとうございます」

「礼を言うのは私のほうだ。

 ではこちらへ。我が家まで案内させていただこう」


 オジ様は立ち上がると私に向かって優雅に一礼をした。


 おー、かっこいいー。






 オジ様の家へと向かう道すがら、私はオジ様の名前を知らない事に今更ながら気がついた。


「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私はハルナと言います」

「ハルナ君か。私はセルデス・ルールマール。このルールマール領を治める立場にある者だ」


 え? いやちょっと待て。治める立場にある者って……。


「領主様だったんですか!?」


 そんな人がこんなとこなにしてんのよ……。


「いや、代はもう息子に譲ったのでね。今の領主は私の息子だ」

「そうなんですか。

 って、なんでそんな人がこんなとこで倒れてるんですか」


 そうするとオジ様───セルデスさんはばつが悪そうに言い出した。


「実は今、私はある病の療養中なのだが……。ここから眺める町の景色が気に入っていてね。気分転換を兼ねて家を抜け出してここまで来たのだよ」


 ほうほう、なるほどねー。

 確かにここはいい景色だから……ってちょっと待て。病人が家を抜け出しちゃマズイでしょうが。


「既にツッコミどころ満載な気がしますが、それでここまで来たところで倒れてしまったと?」

「うむ。君が見つけてくれたお陰で助かったよ」

「そういう問題じゃない気がするんですけど。

 なんにせよ、抜け出すのはやめた方がいいんじゃないですか?」

「いや君、そうは言ってもな。なかなか許可が下りんのだよ」

「だからって抜け出さないでくださいよ。

 今回たまたま私が通りかからなかったらどうしたんですか」

「いや、面目ない……」


 ここでセルデスさんは、急にまじめな顔になって話し出した。


「ところで……、今回私の処置をしてくれたとの事だが、秘薬かなにかを飲ませてくれたのかね?」


 秘薬ってナニよ。


「秘薬……? いえ、違いますが」

「ふむ、では治癒魔法で治してくれたと」


 今度は魔法と来ましたか。いやもうここまで意味不明なことが続けば、魔法でもなんでもありな気はするけどさ。

 なんかもう突っ込むのに疲れたよ……。


「あー……、厳密には違いますけど、そのような道具は使いましたね」


 大鎌も魔法の道具って事でもう。あながち間違ってもないだろうし。


「ふむ……。

 ではその道具を貸して欲しい、もしくは買い取りたいと言われたらどうするかな?」

「絶対、お断りします」


 即お断りした。

 大鎌を見せるぐらいならまだいいが、これを手放す気は毛頭ない。


「即答と来たか。一応、理由を聞かせてもらってもいいかね?」

「理由ですか……。そうですね、まずこの道具は私自身の存在意義だと思ってますので、簡単に貸し出したり手放したりする気はありません。

 よっぽど信頼出来る人ならば、私の目の届く範囲で見せたり触らせたりはするかもしれませんけど。

 それに私専用の道具でのもありますので、もし他の人に手にしても使えるかどうかは分からないですよ」


 大鎌なくして死神なんて名乗れないしねー。実際、これがないとお仕事すらままならないし。


「そうか……」

「一体どうされたんですか?」


 なにやら残念そうなセルデスさん。

 そんなに処置した方法が気になるんだろうか。てゆか治った保証もないんだけど。


「ここからは大事な話になる。よく聞いて欲しい」

「大事な話、ですか」

「ああ、大事な話だ」


 大切な事だから2回言いました……じゃなくって。

 いや、大事な話か。いかん、なんかもう意味不明。


「君が処置したという私の病気は、端的に言って、治す事が叶わず進行を抑える事すら難しい、いわゆる不治の病というやつなのだよ」


 ……げ。マジで?


「それに、君は私に施したのは応急処置だと言っていたが、私は今、こうして苦痛を感じる事もなく歩いている。

 これは進行を抑えるどころではなく、ちゃんと治療になっているという事でもある」

「えっと、じゃあそれをやっちゃった私は……」

「この事が周りに知れれば、王国にまで引っ張られるだろうな」


 王国まであるんかい。


「そして、私の病が治った事は、近々周りに知れ渡る事になるだろう」

「そうなんですか?」

「ああ。私がこの病を患っている事は周知の事実であるし、なによりそろそろ死期が近付いてたこともある」

「死期、分かってらしたんですか……」

「あぁ、大体はな。

 それもあって、最後にあそこの景色を目に焼き付けておこうと思ったのだが……」


 そーだったんだ……。

 いやでも、助かってよかったとは思うけどマズイ状況になったなー。


「すまん、話がずれたな。

 それでだ。死期を過ぎた人間が、1巡りも2巡りも生き続けていたら絶対になにかあったと思われるだろう」

「まぁ、そりゃそうでしょうね」


 1巡りってのがどのぐらいかは知らないが、死期を遥かに越えて生き延びているのなら、絶対に疑問を持つ人は現れるだろう。


「そこで聞かせてもらいたい。

 君はその道具の存在を明かして、王国に仕える気はあるかな?」


 王国、王国かー。王宮とかちょっぴり憧れる部分もあるんだけどなー。


 でも、現状がまったく分からない今、この事を明かすのは戸惑われる。

 どう響くかまったく予想出来ないしね。


「んー……。

 ひょっとしたら将来的にそうなる可能性はあるかもしれませんが、今はそんなつもりはまったくないですね」

「ふむ、そうか。しかしそうなると、少々難しい事になるな……」


 私の返事にうつむいてなにやら考え出すセルデスさん。だがすぐに考えがまとまったのか、再び顔を上げた。


「難しい事、ですか?」

「ああ。私の病が治った事が知れ渡るのは時間の問題だ。そしてそれを治した者がいるということも同時に広まるだろう。治した病が不治の病だったモノだけに、それなりの待遇で王国は迎え入れようとするだろう。治療法を求めてな。

 だが君は、今はまだ王国に仕える気はないという。ここまではいいかな?」

「ええ、分かりましたけど……。ホント難しい事になりそうですね、これ」

「ああ。私の立場からすれば、君を王国に差し出すのが正しい行動なのだろうが、恩人である君の意思を無視してそんなことをするのは、私としても本意ではない。

 それで、私から1つ提案があるのだが、聞いてもらえるかな?」

「提案ですか?」

「ああ。私の病は君が持っていた、たった1つの秘薬を使って治療したと言う事にしないかね?」


 なるほど。もう2度と手に入らないことにするのか。


「それだと作り方とか聞かれるんじゃないですか? あと材料とか」

「そこは私がなんとかしよう。一子相伝の秘薬だとか、詳細を尋ねないことが秘薬の対価だとか、いくらでも言い訳は立つ。

 そして、君の存在についても周りに漏らさないと今ここで誓おう」


 なんかものすごく破格な気がするっ!?


「……いいんですか? そこまでして頂いて」

「なに、気にするな。

 君が私を助けてくれたように、私が君のために出来ることをやるだけにすぎんよ。

 とりあえず難しい話はここまでだ。屋敷が見えてきたぞ」


 感謝のされっぷりがものすごい。ここまで言われるとなんだか逆に気が引けてくる。

 ……あ。一応念のためこれだけは言っとかないと。


「あ、最後に1ついいですか?」

「む、なにかな?」

「その、さっきの病の事なんですけど。

 こんな治し方をしたのは初めてなので、ちゃんと治ってるかどうか、専門の方にキチンと診てもらった方がいいと思うんですよ」

「む、分かった。あとで専門の者に確認を取るとしよう。

 だがここまで体が軽いのは本当に久しぶりだ。私は問題なく治ってると思うがね」

「それでも、念のため、です」

「ははは……了解した。確認をしておこう」


手直しした結果、セルデスさんがなんか愉快な性格になってしまった……。

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