23 調査開始!
書き上がってから読み直したところ、話を展開するテンポが妙に早い気がする部分がありましたので、色々と手を加えました。
その結果いつもより描写が少し多目になってると思います。
1話毎の進みが遅いのは最早仕様としか……。
2011/11/13 誤字修正 報告感謝っ
次の日の朝、私は冒険者ギルドを目指して歩いていた。
屋敷の調査を行う為に、スフィルとギルドで待ち合わせをしているからだ。
さて、冒険者ギルドに到着。スフィルはもう着てるかなー?
ギルドの中を見回すといくつかあるテーブルの内の1つに陣取り、何かを食べているスフィルを発見。朝食かな?
「お早う、スフィル」
「あ、お早うハルナ。早かったね。これ食べちゃうからもうちょっと待ってて」
「どうぞごゆっくり」
パンに具を挟んだサンドイッチを食べるスフィルを横目に、私は持ち物の確認をする。
……とは言ってもいつも通りなんだけど。
ちなみに今日は死神印の黒いローブも装備している。屋敷の中は埃が凄そうだからだ。
あと一応念のためグリモアは持ってきた。魔法があると色々と便利だろうと思っての事だ。
「ハルナ、お待たせ」
いつの間にか食べ終わったスフィルが手を拭きながら声を掛けてきた。
「あらら、もういいの?」
「元々朝はそんなに食べないからね。それじゃ行きましょうか」
「りょーかい」
冒険者ギルドを出て、昨日下見に行った廃屋までの道を歩く道すがら、スフィルに気になってた事を聞いてみることにした。
「ね、スフィル。ちょっと気になったんだけど、調査って何を調べるの?」
「んーとね? 一言で言うなら、まだ使えそうな価値のある物が残ってないか調べるの」
……家捜し?
「なんでまたそんな事を……」
「ほら、あの建物ってもうボロボロだったじゃない? アレじゃもう引き取り手が居ないって事で一旦壊す事になったみたいなのよ」
「うん?」
「で、いくらボロボロでも、元はかなり立派な屋敷だったから普通に壊すにはかなりの手間が掛かるって話になったらしくてねー。
それで、どうにか手間を省けないかって考えられた方法ってのがまた派手でさ。魔術師ギルドに応援を頼んで、屋敷を囲む特大サイズの魔法陣を準備して、屋敷を吹き飛ばすって方法を使うらしいよ」
爆破解体ですかっ!?
「うわ、そんなことしたら周りにも被害が出るんじゃ……」
「そこは気をつけるでしょ。なんでも魔術師十数人呼んで一気に片付けるつもりらしいから、周りに被害を出さない為の結界作る人も配置するだろうし」
結界なんて魔法もあるのか。メモメモ。
「まあ、そんなわけで全部吹き飛ばす前に一応中を確認しとこうってのが今回の調査ってワケ」
「なるほど、よく分かったわ」
「でも家ごと吹き飛ばすから事前調査ってのはアタシも初めてだわ……。
いつもなら、売られた建物の痛み具合や残された物を調べるって調査なんだけどね。
まあ、アタシがやる事はいつもと変わんないんだけどさ」
ため息を吐きつつぶちぶちと愚痴るスフィル。
でも爆破解体ってまた派手な事考えたもんだなー。でももし時間が合うなら見に行きたいような気もする。
あの建物が溶けるように崩れてくっての一度目の前で見てみたかったんだよね。
まあ、ホントにそうなるかは分かんないんだけど。
廃屋の前に到着した私とスフィルは入り口の扉の前に立って準備をしていた。
スフィルは持っていた鞄からごそごそとノートのような物を取り出した。
「スフィル、それは?」
「前回アタシがある程度まで調査した結果をまとめたやつよ。前と同じところを調査するのも時間の無駄でしょ」
「そっか、これで2回目なんだっけ」
「そういう事。それじゃ中へ入るわよ」
ギシギシと軋む両開きの扉を開けて中へと足を踏み入れる。
窓がないのか、朝だというのに中はかなりの暗さだ。
私の横ではスフィルが早速ランタンを出し、光を灯していた。
ランタンの光に照らされ中がぼんやりと浮かび上がる。
扉を閉め少しすると目が慣れてきたのか、ランタンの放つ淡い光だけでも中の様子がうっすらと分かるようになってきた。
入ってすぐ正面は縦長のホールになっているようで、右手に両開きの扉が見えていた。
左手にはやたらと幅の広い階段があり、途中の踊り場で折り返して2階へと続いているようだ。
階段の奥には扉が1つ見えており、床には色褪せた絨毯が敷かれている。
これ1人だと相当怖いかも……。
「確か右の扉は食堂に通じてたわね。そっちの奥の調査がまだ終わってないから、まずはそこから行きましょ」
「了解」
右手にある両開きの扉を開けて中へと入る。
中は確かに食堂のようだ。ここの床も絨毯が敷かれており、中央に大きなテーブルが置いてある。装飾が施された椅子がテーブルを囲うようにして置かれていた。
扉の正面にある壁は窓になっているようだが、今は雨戸のようなもので塞がれているため、中はかなり暗い。
部屋を見回せば右手には大きな暖炉が、左手にまた両開きの扉があった。
「次はこっちの部屋?」
「ええ、確かそこは調理室だったわ」
扉を開けて部屋の中へ入る事にする。
中は確かに調理室のようだった。中央には作業用と思われるテーブルがあり、右手には流し台が備え付けられている。
左手の奥の壁には隣の部屋へ通じると思われる扉が見えていた。
それにしても、今までの部屋全てが埃まみれである。どれだけ放置されてたんだか。
ローブを着てきて正解だったかなこりゃ。
そう言えばどこまで調査が終わっているんだろう?
「ねえ、スフィル。前回の調査ってどこまで進んだの?」
「えーと……、調理室を抜けた先の先の部屋、なんか書斎っぽいところだったかな。
その部屋に入るときはハルナ、よろしくね?」
「よろしくって……扉を開けたらいいの?」
「あと部屋になんか居ないか確認してくれると助かるかな」
「はいはい、了解っと」
てすると私も明かりを持ってた方がいいか。
「スフィル、ちょっと待って。私も明かりを準備するから」
「ん、了解」
ごそごそとグリモアを取り出し『光源』の魔法陣の見本を呼び出す。
魔力を流して魔法陣を作成しようとしたとこで、ある事に気が付き動きを止める。
しまった、何に掛けよう。
光の球を浮かべるだけでは持ち運びが出来ないし、かと言って手軽に手元に持っておけるような物は何も持っていない。
一瞬ローブに掛けてピカピカ光らせようかとも思ったが、帰り道の事を考えてそれは自重する。そんな恥ずかしい格好で外を歩きたくはない。
少し考えた後、財布から銅貨を1枚取り出しそれに掛ける事にした。
これなら持ち運びにも困らないだろう。
グリモアを左手に、銅貨を右手に持ち、右手で魔法陣を作成する。
魔法陣が完成したところで銅貨と魔法陣に同時に魔力を流し、ピカピカ光る銅貨の完成だ。
「スフィル、お待たせ……どうしたの?」
スフィルは少し驚いた顔で光るコインを見つめている。
「いやゴメン、ちょっとびっくりしてさ。ハルナって普通の魔法も使えたんだ?」
「うん、少しだけだけどね」
「そっか……こんな事ならランタン買わなくてもよかったのかなー」
「それ、私に何を期待してるかよく分かるわ……」
「あははは。じゃ、明かりも準備出来たようだし次の部屋に行きましょ」
「了解」
光る銅貨を片手に、左手に見える扉を目指して歩き出したところで足元に違和感を感じた。
なんて言うか、妙に足音が響く部分があるのだ。
不思議に思って足元を照らして見ると、埃まみれの床にうっすらと四角く走る切れ込みを発見。
……地下がある?
取りあえずスフィルに知らせる事にした。
「スフィル、ちょっと待って。ここ、下になんかあるよ」
「ん? ああ、ゴメン言い忘れてたわ。そこは保管庫よ。もう調査済み」
あらら、調査済みだったよーで。
「なんだ、もう見つけてたんだ?」
「前回の調査の時に、足音に違和感を感じてね。地下にあった物も全部調べてあるから、そこはもういいわ」
「了解、じゃ次の部屋だね」
「隣は確か客間だったかな、行きましょ」
扉を開けて次の部屋を覗き込む。
正面向かいには暖炉があり、その上には大き目の鏡が備え付けられていた。
部屋の中央にはテーブルと椅子が備え付けられており、控え室のような感じだ。
暖炉の左には問題の書斎へと続くと思われる扉が備え付けられていた。
「問題の部屋ってあの扉の向こうだよね?」
「そうよ。じゃハルナ、よろしくね?」
「はいはい」
扉に手を伸ばしそっと開き、銅貨で中を照らしつつ覗き込んで見る。
床には絨毯が敷かれており、部屋の正面には大きめの机が置いてあるのが見える。
その後ろの壁には窓があるものの、ここも食堂と同様に雨戸のような物で閉じられていた。
右の壁際には本棚があり、本がたくさん収められているのが見て取れる。
ざっと中を見回すが怪しい物は見えないし、においも感じられない。
ゴーストの類はこの部屋に居ないはずだ。
絨毯の上には横になったまま放置されたランタンなどのちょっとした荷物が無造作に置かれているが、恐らくこれはスフィルの忘れ物なのだろう。
部屋の中へと足を踏み入れスフィルを呼ぶ。
「スフィル? 大丈夫だよ、この部屋には何も居ないよ」
「ホント?」
「ホントだって。スフィルの忘れ物が転がってるぐらいかな」
スフィルは部屋に入ってくると、キョロキョロと辺りを見回している。
「ホントに大丈夫だよね……」
「大丈夫だって、信用しなさい」
ニャー……。
……なんか聞こえた。
それと同時にスフィルが目に見えてうろたえだす。
「今なんか聞こえなかった!?」
「確かにネコの鳴き声っぽいのは聞こえたけど、外に居た野良ネコじゃないの?」
部屋の中に動く物は何もない。となると外で見掛けた野良ネコのはずだ。
「ほら、早く調査しないと今日中に終わんないよ」
「分かってるわよ……」
多少ぎこちないながらもスフィルが行動を開始する。
「ねえ、なんか手伝おうっか?」
「いいわよ。そんな事よりなんか居ないか探ってて」
「りょーかい」
なにも居ないんだけどなぁ。においだって感じないし。
動いてるうちに調子を取り戻してきたのか、スフィルは部屋の物を見たり触ったりしながら手元のノートに何かを書き加えていた。
せっせと動くスフィルをぼーっと眺めてると、本棚の方へ移動していたスフィルがぴたっと足を止めた。
何かあったのかと思い、スフィルに近付き声を掛ける。
「どーしたの、なんかあった?」
「ハルナ……本当にこの部屋なにも居ないよね?」
「居ないよ、断言したげる」
「急にアタシの足が動かなくなっちゃったんだけど……」
えぇぇ、ホント!?
ペイントで簡単な見取り図を作り、それを元にして話を進めてます。
部屋の描写って難しい……。