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20 おいしい話

ついに20話目まで到達する事が出来ました。


お気に入り登録してくれた方、評価して下さった方、ありがとうございます。


2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正

 私は今、譲ってもらったばかりのグリモアを片手に用意された的の前に立っている。

今から攻撃魔法の試し撃ちをする為だ。


 10mぐらい離れた位置には使い古された革鎧が1着。アレが今回の的らしい。


 なんで鎧がここに……と疑問に思い聞いてみれば、なんでも実験用に鍛冶屋さんが下取りした古くて使い物にならないやつを貰ってきたとかなんとか。


 この分だと色々な物が実験用として置いてありそうな気がする。


「嬢ちゃん、準備はよいかの?」

「大丈夫です」

「では、あの的に向かって全力で『火炎弾』を撃ってみてくれ……と本来なら言うところなんじゃが」

「…………?」


 本来なら?


「いや、今までの嬢ちゃんを見とったら、初級の攻撃魔法とはいえ全力で撃ったらとんでもない事になりそうな気がするでの……」


 いやまあ、否定はしませんが……。


「え、えーと。要するに加減して撃てばいいんですよね?」

「うむ。本来なら自らの全力を把握してもらうとこなんじゃがのう……」

「具体的にはどのぐらい魔力を込めればいいんですか?」

「そうじゃの……ロッドを使った時ぐらいの魔力でやってみてくれい」

「分かりました」


 グリモアを開き左手に持つ。『火炎弾』の魔法陣を選択し準備はOK。

表示された見本を見ながら右手で魔法陣を作成する。


「では、いきますよー」


 魔法陣が完成したところで一言声を掛け魔法陣に魔力を流す。


 魔力を流された魔法陣は赤く発光し、ボンッと言う音と共にスイカ程の大きさの炎の塊を吐き出す。

炎の塊はそのまま的になっている鎧へと向かい、命中した瞬間じゅわっ……と言う音がして革鎧に大穴が開き、やがて燃え尽きてしまった。


 これ、人にぶつけたら死んじゃうんじゃ……?


「えーと、鎧、燃え尽きちゃいましたね……」

「嬢ちゃん、ちゃんと加減はしたのかの? わしが全力でやって、なんとかあれと同じ位の威力じゃぞ」

「精一杯加減はした筈なんですけど……」

「いやはや、凄まじいの……まあ、やり過ぎ感はあるが自衛にはなるからいいのかの」


 初級の攻撃魔法で即死級ってなんか間違ってる気がします……。


「でもこれ、人に当てたりしたら死んじゃいますよ?」

「ふむ、モンスター相手になら問題はないと思うが、相手が人間だとちとまずいかの……。そうじゃな、ちょっと待っておれ」


 なにかを思いついたのか、マレイトさんは部屋を出て行ってしまった。

……てゆかモンスター居るんだ、この世界って。やだなぁ。


 5分程待っているとマレイトさんは戻ってきた。手には金属製の鎧を抱えている。


 あれ、重くないんだろーか。


「マレイトさん、それは……?」

「これも実験用として貰ってきた鎧じゃ。ただし今度は鉄製じゃがの」

「えーと、重くないですか?」

「大丈夫じゃ。『軽量』の魔法を使ったでの」


 ナルホド。鎧を覆う微かなもやはそれですか。


「それをどうするんですか?」


 鎧をさっきの革鎧と同じ位置に置きつつマレイトさんが返事をする。


「さっきの嬢ちゃんの魔法の威力を見て思いついたんじゃがな、『送風』の魔法を使えんかと思っての」

「『送風』ですか……それはまだ使った事ないですけど、風を起こすだけの魔法ですよね?」

「うむ、それだけじゃがの。嬢ちゃん程の魔力があるなら強風を吹かせて足止めぐらいなら出来るんじゃないかと思っての」

「はあ、マレイトさんは出来るんですか?」

「いや、わしには無理じゃ」


 ヲイ。何をやらせようとするかなこの人は。


「……それ、私に出来るんですか?」

「そのための実験じゃ。この重量のある鉄製の鎧を風で吹き飛ばす事が出来ればいけるじゃろ」

「さすがにそれは吹き飛ばせたとしても無理があると思いますが……」


 室内と屋外じゃ色々と条件も違うんだし。


「やはりそうかのう……」

「もっと別の方法でお願いします……」


 その後、魔法の修練を続けつつアイデアを出していくが、結局いい案は浮かばず陽が傾いてきたので今日は解散する事になった。

今のところ、王都に出発する日まではまだ時間があるので、その間に考えようという事になっている。


 やっぱり新しい魔法を買うとかするしかないのかなー。






 屋敷に戻り部屋で休んでいるとノックの音が響いた。

グリックさんかな? 夕食の時間にはまだ少し早いと思うけど……。


「ハルナ君、私だ。少し話があるのだが……」


 え、セルデスさん?


「はーい、今開けます」


 ドアを開けるとセルデスさんが立っていた。


「どうぞ中へ、今お茶を入れますので」

「ああ、すまないね」


 セルデスさんを招き入れ、お茶を入れてテーブルの上に置く。

自分の分のお茶も入れ、席についたところでセルデスさんに用件を聞く事にする。


「それで、お話があるとの事ですけど……」

「うむ、実は冒険者ギルドの方から連絡があってね。ハルナ君に依頼を1つ手伝って欲しいと言ってきたのだよ」


 え、指名ですか?


「私はギルド員でもなんでもありませんけど?」

「ああ、まずは背景から話しておこう。

 以前君は町外れにある墓地のゴーストを退治した事があったろう?

 あの後、冒険者ギルドにもゴーストが退治された事を伝えたのは覚えてると思うが、その時に私の客人がやったと伝えたのだ。今回の話はその絡みから来てるようだな」


 あれ、それって事はまたゴースト絡み?


「またゴーストが出るかもしれない話なんですか?」

「うむ。外部の人間であり、私の大事な客人である君に伝える話ではないと断ったのだが、話だけでも、と頼み込まれてしまってね……」

「はあ……」

「話を聞くつもりがないなら、それはそれで構わないと私は思うぞ? 義理はこれで果たしたわけだからね、あとは私の方でなんとかしよう。

 まあ、この話を請けた場合はギルドに貸しを1つ作れる事になるが……」


 セルデスさん、頼もしいです。

でもゴースト絡みかー。聞くだけ聞いてみるかな?


「一応話を聞かせてください、見習いエクソシストとして経験も積んでおきたいですし」

「見習いと言うが……君の実力は宝石持ちレベルだろうに」


 呆れたように言うセルデスさん。


「まだ儀式を通過してませんし、見習いでもいいんじゃないですか?」

「まあ、そうかもしれんが……とりあえず概要を伝えよう」


 さて、どんな話かな?


「依頼の内容は廃屋となったある屋敷の調査への同行だそうだ。

 ちょうどここと市場との中間ぐらいの位置にある屋敷でな、今度取り壊す事が決まっているのだがその下準備という事らしい」

「えーと、中にゴーストが住み着いてるとかですか?」

「正確には住み着いてるかもしれない、といった話のようだ。

 この話を受けるつもりがあるなら、もう少し細かな話と報酬の話をギルドで行うから、明日冒険者ギルドに寄って欲しいとの事だ」


 廃屋の調査かー。でも気になることは別にある。


「同行って事は誰か別に調査する人が居て、私はそのゴーストが出たときの保険って事ですか?」

「大体そんなとこだろう」


 それだけで外部の人である私を呼ぶ?


「わざわざ外部の人間に頼むような事じゃないように思えるんですけど……」

「ああ、その辺りは私も聞いてみたよ。ギルド員のエクソシストを使えばいいのではないか、とね」

「それで、どうだったんですか?」

「屋敷に住み着いてるかもしれないゴーストの強さが不明な為、出来るだけレベルの高いエクソシストに同行して貰いたいが、すぐに連絡のつくレベルの高いエクソシストが居ない上、取り壊しの期日も迫ってる為、一番エクソシストとしてのレベルが高くて連絡の取れそうな相手として挙がったそうだ」

「なるほど……それで以前中級のゴーストを退治した事のある私に話が来たと」

「その通りだ」

「住み着いてるって確定じゃないですよね。そんな相手にそこまでしますかー……」

「期日がギリギリなのだろう。建築ギルドから私のところへ来ていた申請書を見た限りだが、解体を行う日までそれほど間がなかった筈だ。

 もし低級でもゴーストが出た場合は、そこで調査が止まってしまうからな」

「そうですか……」


 少し考え結論を出す。とりあえずこの話を受けても問題は無いだろう。


「分かりました、この話請けさせてもらいます」

「君が決めたのなら構わないが……いいのかね?」

「ええ、構いません。明日冒険者ギルドへ行けばいいんですね?」

「ああ。ギルドへは今日中に連絡を出しておこう」

「お願いします」

「なに、無茶を言ってるのはこちらの方なのだ。気にしないでほしい。

 では、私はこれで失礼するよ。連絡を出したいのでね」

「はい、よろしくお願いします」


 それだけ言うとセルデスさんは退室していってしまった。






 部屋に残された私は今の話について考えをまとめていた。


 セルデスさんはああ言ってたが、ゴーストは存在しない、でほぼ確定のはずだ。

何故なら、においを感じないからである。


 徒歩30分近く掛かる距離のゴーストの存在が分かるのだから、それより距離が近いところに存在するゴーストが分からない事は、多分だけど無いはずだ。


 万一ゴーストに遭遇してもなんとかする自信はあるしね。


 つまり同行して廃屋の調査を手伝うだけでギルドに対して貸しが1つ作れるという事になる。将来どうなるかは分からないがこれは請けた方が後々お得なのだ。


 あとは明日ギルドで詳しい話を聞いて、っと。






 今日の夜はこうして更けていった。


少々端折った部分はありますが、この日はここで終了です。

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