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18 実践! 魔法教室 その2

2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正

 10分ぐらいごそごそと宝石箱を調べていたマレイトさんだが、ようやく顔を上げた。


「信じられん、本当に呪いが消えておる……」


 よっし、マレイトさんの調査でも問題なしっと。

完全に除去できたと見ていいかなー。私の見えない部分で残ってたりする、なんて可能性も無くはなかったんだし。


「一体どうやって……いや、見せられんぐらいじゃ、答えてはくれんのじゃろうな」


 はい、その通りです。


「質問を変えよう。嬢ちゃんはさっき、この呪いはエクソシストだから祓えると言ったの。他のエクソシストもこういったことが出来るのかの?」


 知らないよ、他のエクソシストなんて会ったことないんだし。

ついでにどんなやり方でどーやって仕事してるかなんてのもさっぱり分からない。


 ……今更ながらなんかそれってマズイ気がする。一度調べてみるべきかな。


 それにしても……んーむ、どう答えたもんか。


「他の方は分かりませんが……ゴーストを退治出来るぐらいのエクソシストであればやれるんじゃないでしょうか? 私も見た感じ呪いがゴーストに近い感じでしたので、やれるかなーと思ってやったら出来たってとこですので」

「ふむ……了解じゃ」


 納得してくれた、かな?


「いやしかし参ったの……」

「なんかマズかったですか?」

「あ、いや、嬢ちゃんの事じゃないんじゃ。わしの問題での」

「はあ……」

「ともあれ、嬢ちゃんには報酬を払わねばならんの」


 え? ……あ、そういう事? うわ、参ったなぁ……。


 元々この依頼はマレイトさんが請けてたもので、当然ながら報酬の話もあったはず。

それを私が横取りして解決しちゃったもんだからマレイトさんは何もしていない事になる。


 何もしないまま褒賞貰えてラッキー、なんて考える人じゃなさそうだから、恐らくは今日の事をそのまま依頼してきた人に話すつもりなんだろう。


 依頼する側からしてみれば、素早く確実に呪いを解けるほうに仕事を依頼したくなるのは当たり前。恐らく次の依頼があったとしても私の方に話を回したがるはず。


 マレイトさんの仕事1つ潰しちゃったようなモンだよこれじゃ。

マレイトさんが私にやらせて欲しいって言った時に強く止めなかったのは、呪いが解けるのかどうかが半信半疑だったのと、何をするのか興味があったのだろう。


 うー、軽率だったなぁ。とにかくこの状況をなんとかしないと。


「報酬なんて要りません、私が勝手にした事ですし」


 とりあえず報酬なんて受け取れない。私は仕事を請けたつもりはないのだ。


「じゃが、実際に呪いを解いたのはお主じゃろうに」

「ダメです、受け取れません。私は仕事を請けたつもりはないですし、請けるつもりもないです。マレイトさんのお仕事を横取りする気はありません」

「なんじゃ、気付いとったのか。まあ、止めんかったわしもわしじゃがの」

「この呪いは、たまたま雇ったマレイトさんの助手が実験で呪いを吹き飛ばしてしまった。ではダメですか?」

「……嬢ちゃん、お主はそれで構わんのか? 大口の依頼じゃぞ?」

「構いません。マレイトさんには色々教えてもらった恩がありますし、さっきも言いましたが、そう言った仕事を請ける気も横取りする気もありません」


 この辺で納得してくれないかなー。仕事を請けるのはともかく横取りする気がないのは本当なんだし。


「……分かった、そうさせて貰うとしよう。ただしお主が呪いを解いたのは事実じゃからな、その辺りは報告させてもらうぞい」

「そうですね……厄介事はご免なので名前は伏せてもらえますか?」

「ふむ、了解じゃ。名前は出さんでおこう」


 なんとか一件落着、かな?






 後片付けが一段楽したところで、昨夜の魔法の実験で気になった事を聞いてみる事にした。


「ところでマレイトさん、魔法の事でいくつか質問があるんですけど」

「む、なんじゃ?」

「『光源』の魔法の消し方ってどうすればいいんですか? 昨日の夜、『光源』の消し方が分からず複数の光の球が輝く中で寝るハメになりまして。なかなか寝付けなかったんですよ……」

「ぶっ……」


 話を聞いたマレイトさんが小さく噴出す。こら、そこ笑わない。


「いや失敬、そりゃ災難じゃったの。そう言えば嬢ちゃんには『光源』の使い方までは教えんかったの。習得があまりにも早かったんで忘れておったわい」

「使い方、ですか?」

「うむ。『光源』の魔法は通常なにか別の物に掛けて使うものなんじゃ。魔法陣を作り、魔力を魔法陣に流す際に『光源』を掛けたい物を近くに置いておき、その物にも一緒に魔力を流す事でその物に『光源』の魔法が掛かる事になる。

 どれ、1度実践して見せるとしよう」


 そう言ってマレイトさんは近くの机の上にあったペンを手に取った。


「このペンに『光源』の魔法を掛けるぞい」


 さっと右手で魔法陣を作り上げ左手でペンを持ち上げて魔法陣にかざすマレイトさん。


「ここから魔法陣だけではなくこのペンにも少し魔力を流してやるんじゃ」


 魔法陣に魔力が流れ、更にはその近くにあるペンまで魔力が流れるのが見える。

すると魔法陣から生まれた光の球はペンに吸い込まれ、ペン自体が光を発しだした。


「へー、こういう事も出来るんですね」

「と言うか、こっちのやり方が本来の使い方じゃな。持ち運び出来る物に掛ければ移動も出来るし、不要になれば何かで覆ってしまえばいい」

「ナルホド」


 こーゆー使い方するのね……空中に光の球を浮かべる昨日のやり方は練習用ってとこか。


「私もやってみていいですか?」

「構わんぞい、そこの机の上にある別のペンで試すのがいいじゃろ」

「ありがとうございます」


 早速ペンを片手に見本を見ながら魔法陣を作る……そう言えばマレイトさんは何もなしに魔法陣作ってたけど、これを暗記してるんだろーか。

1つ2つなら私でも覚えられそうな気はするけど魔法の種類が増えてきたら絶対無理な気がする。なんか法則とかあるのかなー。


 魔法陣が完成したのでペンをかざしてペンと魔法陣に魔力を流す。


 魔法陣より光の球が生まれ、ペンに吸い込まれていった。

手元には光を放つペンが1本。


 おー、出来たよ。


 ここでふと疑問。魔法陣と一緒に魔力を流せば光るって事は、遠く離れてる物でも魔力を流せば光っちゃう?


 よし、聞いてみよう。


「これって、魔法陣に魔力を流す時に一緒に魔力を流した物が光るんですよね?

 例えば離れた所にある物に『光源』を掛けたい場合、そこまで魔力を流せば光るんですか?」

「ああ、光るぞい。ただ離れた場所に魔力を流すなんて難しい事はやらず、近付いてから掛けるのが普通じゃな。

 遠くまで魔力を流すのは難しい上、その分の魔力が無駄になるからの」


 難しいが光らせる事は出来るらしい。

ま、そーだよね。わざわざ難易度上げて『光源』掛ける人なんていないか。


「それもそうですね……分かりました」

「他に質問はあるかの?」

「えーと……魔法陣の大きさって魔法の効果になにか関係あったりしますか? 昨日倍の大きさで『光源』の魔法陣を作ってみたんですけど特に変わったように見えませんでしたし……」

「魔法陣の大きさを変えても魔法の効果は変わらんの。違いがあるとすれば、大きくなればなるほど魔法陣を描くために使う魔力と時間が増える事ぐらいかの」


 違いは無いんだ。


「じゃあ、小さいほうがいいって事ですか?」

「いや、一概にそうとも言えん。小さいほど魔法陣を描くのに精密な魔力の操作が必要になるからの、逆に時間が掛かったりするぐらいじゃ」


 そー言えば半分サイズの魔法陣を描くのはかなり難しかったっけ……。


「あとこれは余談じゃが、広範囲に影響を及ぼしたりするような複雑な魔法になればなるほど魔法陣が大きくなっていく傾向があるの。

 これは魔法陣の中身、これを術式と言うんじゃが、複雑な魔法になるほどこの術式の量が増えるからなんじゃ」

「へー、じゃあ魔法陣の大きさを見れば大体どのぐらい難しい魔法かが分かるんですね」

「まあ、そんなとこじゃな」


 魔法の規模と魔法陣の大きさは比例する、っと。なるほどねー。


「まだ質問はあるかの?」


 あと聞きたい事は……見えないレベルの魔法陣についてかな。説明が面倒なんで実際に見てもらうとしますか。


「ある……と言いますかちょっと見てほしいんですけど」

「なんじゃ?」

「今から右手で『光源』の魔法を使うのでちょっと見てて欲しいんです」

「ふむ、分かったぞい」


 右手をかざし、魔力を流して魔法陣を作る。

魔法陣の形が出来たところで、塗り固めないまま魔力を流す。そして生まれる光の球。


「こういうやり方なんですけど……」


 マレイトさんは驚いた顔をしたのち、なにかを悟ったような顔に変わった。


 なによその反応は。


「……ホントに大した嬢ちゃんじゃ。それは無陣法と言うてな、魔法陣を見せずに魔法を発動する高等技術なんじゃ。なんせ目を瞑って魔法陣を描くようなモンじゃからのう」


 あー……ごめんなさい、魔力見えるんです。目を瞑って魔法陣描くなんて出来ません。


「まあ、慣れない内は普通に魔法を使うことをお勧めするぞい。『光源』ぐらいならまだしも、複雑な魔法陣になれば少し間違うだけで魔法が発動しないどころかその場で爆発を起こすなんて事もありうるしの」


 げ。爆発は勘弁してください。


「それは怖いですね……分かりました、自信がつくまで普通にやる事にします」

「それがよかろう。しかしよくこの方法を思いついたの?」

「昨日の夜色々試してたらちょっと閃きまして」

「魔法を習い始めて1日2日でやる事じゃないと思うんじゃが……」


 あはは、魔力が見えるだけで色々反則だわこりゃ。


「他に何か質問はあるかの?」


 聞きたかったことは全部聞いたかな?


「いえ、もうないです。ありがとうございました」

「む、了解じゃ。

 では、昨日の続きをやるとしようかの。今日は魔法の補助道具についてじゃ」

「よろしくお願いします」


魔法の授業はまだ続く……。

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