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17 木箱の中身は……?

2014/03/30 ふりがな表記をカタカナに修正

 コンコン、とノックの音が響く。


「お早うございます、ハルナ様。起きてらっしゃいますでしょうか」


 あふ……もう朝かー。うぅ、あんまり寝た気がしない。


 頭を振りつつドア越しに声を掛けてきたグリックさんに返事を返す。


「お早うございます、いつもありがとうございます……」


 声に力がないのは微妙な寝起きの所為だ。


「お早うございます。朝食の用意が出来ておりますので準備が出来次第声をお掛け下さい。食堂まで案内させて頂きます」

「分かりましたー」


 部屋を見回すと空中で爛々と輝き続ける光の球が4つ。昨夜の実験で作った『光源』の魔法だ。半日持つと言うだけあってまだ輝き続けている。


 コレの所為でなかなか眠れなかったんだよねー。中途半端に寝るとツライわー……。


 んー……、と伸びをしつつ身だしなみを整える。以前の髪の毛大爆発事件よりグリックさんは朝起こす時に部屋に入ってこなくなった。

寝起きの悪い人と思われてるのかもしれない。


 準備が整ったところでグリックさんに声を掛ける。


「グリックさん、お待たせしました」

「では、食堂へと案内させて頂きます」


 恒例になりつつある会話を交わし、私は食堂へ向かうのだった。






 朝食を済ませた私は治療院に向けて道を歩いていた。目指す行き先は治療院の近くにあるという馬車ギルドだ。


 程なくして馬車の絵が描かれた看板を発見した私は、その建物の扉を開け中へと足を踏み入れる。


 中はちょっとした飲食店ぐらいの広さがあり、テーブルや椅子が食堂のような感じで置かれている。きっと待ち合わせとかに使われるのだろう。


 正面には受付と思われるカウンターがあり、数人の人が並んでいた。

私もそこの最後尾に並ぶ。


 漏れ聞こえてくる話からすると馬車に乗るだけでなく、荷物の宅配もやっているようだ。受け取りもここで出来るのか、受付のお姉さんと何かを話した後、すぐ隣のカウンターから荷物を受け取り担いで出て行く人も見られた。


 おっと、次は私の番か。


「いらっしゃいませ、本日はどういったご用件でしょうか」

「王都に行く馬車に乗りたいので予約をしたいんですが」

「かしこまりました、何日後の馬車を希望されますか?」


 えーと、14日後の3日前には到着したいから……王都まで馬車で5日だっけ。


「6日後出発の馬車でお願いします」

「かしこまりました、乗車費用としまして銀貨2枚になりますがよろしいでしょうか」

「はい、お願いします」


 聞いた通りの値段である。私は銀貨を2枚取り出し支払いを済ませる。


「ありがとうございます、では少々お待ちください」


 そう言って、なにか木片のような物を取り出してこちらに手渡してくる受付のお姉さん。


「この割符が支払い証明となります。馬車にお乗りになる際、この割符を御者に提示してください」

「分かりました」

「出発は6日後の日の出と同時となります、もし乗り遅れられた場合でも返金出来ませんのでお気をつけ下さい」


 げ、朝早いなー。起きれるかな……。


「もし乗車をキャンセルされるのであれば、前日までにお申し出下さい。ただしキャンセル料として銀貨1枚が発生しますので、その旨ご注意下さい」

「了解です」

「注意事項は以上となります、ご利用ありがとうございました」


 割符、無くさないようにしないとなー。


 そう思いつつ馬車ギルドを後にした。






 マレイトさんの所へ向かうべく雑貨屋への道を歩いてた私は奇妙なにおいに気がついた。


 なんだろ、このにおい? こないだの浮遊霊ことゴーストに似てるけどなんか違う感じがする。

うーん、マレイトさんのとこに行く予定だったのになー。しょうがない。


 気持ちを切り替えにおいの発生源を探って歩き出す。

においは前方から感じるのでとりあえずはこのまま進めばよさそうな感じである。


 感覚を頼りにどんどん歩く。市場を通り1本外れた道へと入ってまっすぐ進む。


 あれ? この道って……。


 そうして辿りついた先は1件のお店。

これから訪ねようとしていたマレイトさんの雑貨店だった。


 なんでまたここから……それに昨日はそんなにおいなんて無かったはずだし。


 疑問に思いつつも扉を開け店の中へ入る。


「すまんが今日は閉店……なんじゃ、嬢ちゃんか」

「お早うございます、マレイトさん」


 カウンターに居たマレイトさんに挨拶をしつつにおいの発生源を探す。

どうやらカウンターの裏からのようだ。


 カウンターの上からひょいと覗き込むとなにやら厳重に封をされた木箱が1つ。

どうやらにおいの発生源はこの木箱の中のようである。


「ん、なんじゃ、どうしたんじゃ?」

「マレイトさん、この箱は……?」

「ああ、この箱か。これはわしの知人が昨夜送りつけてきおった依頼の品じゃよ」

「依頼、ですか」

「なんでもどっかの遺跡から掘り出してきた物らしいんじゃが、呪われた物らしくての、解呪してくれと言って来おったんじゃ」


 呪われたって。そんなモンまであるのか……。


「それ、危なくないんですか?」

「大丈夫じゃろ。この箱の中身は宝石箱なんじゃが、その宝石箱のふたを開けるのが呪いの発動する条件らしいと依頼の手紙に書いてあったわい」

「はあ……。普通そう言うのって神殿へ持ち込むんじゃないですか?」

「まあ、その通りなんじゃがの。神殿に頼むとなるとえらく時間がかかるのが嫌なんじゃと」

「マレイトさんならすぐどうにか出来るんですか、これ?」

「そうじゃのう……ざっと見た感じじゃが1巡り掛ければといったところかの。割と強力な呪いのようじゃし……」


 1巡り……30日でこっちのが短いってどんだけ待たされるんだ神殿。


「あれ? マレイトさんが呪いを解くんですよね。マレイトさんって神官だったんですか?」

「いやいや、そうじゃなくてな。厳密に言うなら呪いを解くのではなく、呪いのみ吹き飛ばすような魔法陣を作るんじゃ」

「そんなのがあるなら1巡りもかけて作らなくても、誰かが既に作ってそうなモンですけど……」

「呪いにも色々あってな、なんでもかんでも1つの魔法陣で吹き飛ばせると言うわけではないんじゃよ。呪いの掛けられた対象、呪いの種類、波長などいろいろな要素があっての。1つの魔法陣で解ける呪いは1つだけと思ってもらっても構わんぐらいじゃ」

「この呪い専用の魔法陣が必要ってことですか」

「うむ、そういう事じゃな」


 それにしても呪われた箱ね……。このにおいからすると、その箱にゴーストが取り憑いてますって言われた方がまだしっくりくるんだけど。


「マレイトさん、その呪われた箱って見てもいいですか?」

「なんじゃ、興味でも湧いたか?」

「ええ、そんなところです」

「下手に触らんのなら構わんよ、特にふたを開けようとするとかの」

「しませんって」


 マレイトさんの許可が下りたのでカウンターの裏に回って木箱のふたを取る。

中にはうぞうぞとうごめく半透明のもやに覆われた小さな箱が1つ。


 この半透明なのが多分ってか呪いで決まりだねー……ほぼ怨霊と化してるし。これ呪った人ってどんだけ怨念込めたんだか。

さっき思った、箱にゴーストが取り憑いてますってのもあながち間違いじゃないねこりゃ。


 ……あれ? てことはこれ私ならどーにか出来ちゃったりする?


「どうしたんじゃ?」

「この呪い、私がどうにか出来るかもしれないです」

「……どういう事かの?」

「呪いというのは言わば人の意思、怨念が物に篭った状態ですよね。少なくともこの箱はそういった類の呪いのようですし」

「まあ、魔法による呪いもあるが……これはそんな感じじゃの」

「私は見習いですがエクソシストですから、こういったモノも祓えるんじゃないかと思うんですよ」

「なるほどのう……」

「これ、私が呪いを解けるかどうか試してもいいですか?」


 ここで呪いをどーにか出来るか試せれば後々何かの役に立つかもしんない。

こんな機会滅多にないだろうしなー。


「むぅ……。しかしじゃが、これはわしの受けた依頼じゃからして……」


 さすがに渋るか。でもここは試しておきたいのでお願いする事にする。


「1回試すだけでいいので、お願い出来ませんか?」

「……分かった、1回試すだけじゃぞ」


 やった。あとは実験室辺りを借りて大鎌で……。


「ただし、わしの見ている前でやるのが条件じゃ。万一嬢ちゃんが呪われるような事になってはたまらんからの」


 ……げ。


「1人でやるのはダメですか?」

「ダメじゃ。この条件が飲めんのなら認めるわけにはいかん。解呪はわしがやる」


 むー……困った。大鎌を見せたくはないし……。


 …………よし。


「……分かりました。でもどうしても見せられない部分がありますのでその時だけ部屋の外に出て貰えませんか?」

「……よかろう、その時だけじゃぞ?」

「はい」


 ふぅ、なんとかなったー。


「それで、どこで試すつもりじゃ?」

「昨日の実験室をお借りしたいんですけど」

「分かった、行くとしようかの」


 マレイトさんが木箱ごと箱を抱えて奥へと入っていく。私も続いて中へと入る。


 実験室に到着後、木箱からそっと中身を取り出し傍にあった小さな台の上に乗せる。

これで準備は完了だ。


「準備はそれだけかの?」

「ええ、これで大丈夫です」

「えらく簡単な準備なんじゃの……」

「まあ、これが私のやり方ですから」


 それじゃ、始めるとしますか。


「では、始めますね」

「うむ」


 箱に近寄り呪いのもやに手を伸ばす。このまま掴んで引き剥がせるならそれはそれで構わないが……。


 うーやっぱダメ、こんなの触りたくないっ。


 うぞうぞと形を変える呪いのもやを前にして、嫌悪感のが勝ったのか手が止まってしまった。

触ったらなんかぬめぬめしそうだし……。やっぱり大鎌を使う事にしよう。


「どうしたんじゃ?」

「いえ、呪いの状態を確かめてまして」


 テキトーな事を言いつつ1歩下がる。


「マレイトさん、すみませんがここから見せられない部分ですので、少しだけ部屋を出て貰えますか」

「分かった、ただしその部分が終わったらすぐに呼ぶんじゃぞ」

「はい」


 扉を開けてマレイトさんが部屋を出て行く。これでこの部屋に窓は無いので外から見られる心配も無い。


 念のため、ぐるりと辺りを見回し大鎌を取り出す。


 そのままひゅんっと大鎌を振り、箱の周りを取り巻いている呪いのもやを切り裂く。


 大鎌を消し、呪いのもやの様子を見ていると、切り裂かれ呪いを維持出来なくなったのか呪いのもやが霧散し始めた。


 少しの間様子を見ているともやは完全に消えてしまった。これならもう大丈夫だろう。

外で待っているマレイトさんを呼ぶことにする。


「マレイトさん、終わりましたー。もう入ってきても大丈夫ですよ」


 呼びかけに応えて、マレイトさんが扉を開けて中へと入ってくる。


「なんじゃ、早かったの」

「見せられない部分だけ、という事でしたし。急ぎましたからね」

「そうか。それで次はどうするんじゃ?」

「いえ、これで終わりです」

「なに?」

「ですから、これで終わりです。呪いは解けてる筈です」

「なんじゃと!?」

「念のため箱を調べてみてください、確かに呪いは解けた筈ですので……」

「あ、ああ。調べさせてもらうかの……」


 やや呆然とした感じで箱に近付き、なにやら道具を持ち出し魔法陣を展開して調査を始めるマレイトさん。


 よし、呪いもどーにか出来る事も判明、っと。


 今すぐ役に立つってわけじゃないけど、やれる事が増えたってのはいい事だと思う。

あとは念のため、マレイトさんの調査待ちかなー。


次話については活動報告にて連絡しています。

もしよろしければそちらも合わせてご覧下さい。

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